婚約破棄された王女が全力で喜びましたが、何か問題でも?

yukiya

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8,何故捕まっているの。

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 エルステーネ、と自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。振り向くとそこには懐かしい姉の、相変わらず可愛らしい顔があった。
「お姉様!」
「エルステーネっ!おかえりなさい!」
 天使と呼ばれる笑みで抱き締めてくる姉に、エルステーネは笑う。相変わらずだなぁ、と。
「お姉様、苦しいです」
「だって貴女、全然私に会いに来てくれないから」
「…ごめんなさい」
 もしかしたらそろそろ宰相との婚約を報告されるかもと考えると、どうしても足が遠のいてしまった。そのせいで心配をかけてしまっていたのなら申し訳ない。
「そうだわエルステーネ、一緒にお茶しましょう。宰相も呼ぶわ」
「えっ」
 まさか本当に報告するのか、と身体が固くなる。けれど。ふと後ろを見ると、フェロンが自分よりも表情を固くしていた。
「…そう、ですわね。では…」
「フェロンさん、貴方も一緒にどうかしら」
「「えっ」」
 まさか姉がフェロンを誘うとは思わなかったので、二人揃って間抜けな声を出してしまう。
「嫌、かしら?」
「…いえ。俺で良ければ是非」
「ありがとうっ!さぁエルステーネ、行きましょう?」
 何故フェロンも?と疑問が浮かんだけれど、多分いつもの気まぐれだろう。
 そもそもフェロンの名前を知っていたことに驚きだが。




「それでね、その時に宰相が…」
「それはエリシア様が…」
 砂糖を吐きそうなほど甘ったるい空気に、エルステーネはひたすら紅茶を飲んでいた。
「そういえばエルステーネ、お兄様も寂しがっていたわよ。エルステーネが会いに来てくれないと」
「…あぁ、お兄様のことは忘れていましたわ」
「あら。ちゃんと会いに行ってあげてね」
「お姉様が言うならそうします」
 エルステーネには姉のエリシアと、兄のエヴァンがいる。エヴァンは悪い人ではないけれど、なんというか、昔から話していて疲れる。
 いつのまにか記憶から兄の存在を消去してしまっていた。
「…姫様、紅茶のお代わりをお淹れしますね」
「ありがとう」
 本当にフェロンは気が効くな、と思う。
「そうそう、エルステーネ。あのね、私と宰相から伝えたいことがあって」
 来た。直感でそう感じた。どうしよう。もし本当に言われたら、私は。
「……私とフェロンからも、お姉様たちに伝えたいことがあって」
 気が付けばその言葉が口端から漏れていた。
「え?そうなの?」
「…あ、えっと、その」
 しまった。しまった、けれど。それを言えば楽になれると思った。
「エルステーネ?伝えたいことって?」
「あ、の、私、」
 ちらりと宰相を見ると、何の感情もない表情でこちらを見ている。
 姉と話すときはいつも笑顔なのに、私にはいつもその顔ばかり。
(…もう、いいか。諦めよう)
 愛されている方が楽に決まっている。いつまでも思い続けることに疲れてしまった。
 フェロンの言う通りだ。どうせ叶わないのだから。
「…フェロンと婚約しようと思っているの」
 にっこりと笑いかけ、フェロンの方を見る。…なんだ、その驚愕の顔は。
「……え?え、エルステーネ?どういうこと…?」
「フェロンにプロポーズされたの。ね?」
「ひ、姫様、それは、プロポーズ、オーケーということで、」
「私のこと幸せにしてくれるんでしょう?」
「もちろん、」
 当たり前です、とフェロンが続けた時だ。バンッ、と大きな音が部屋に響く。
 宰相が突然机を叩き、立ち上がったからだ。
「…さ、宰相様?」
 立ち上がったまま動かない宰相を心配して手を伸ばすと、その手を強く握られた。
「え、あの?どうなさったのですか?」
「……エルステーネ様、一緒に来て頂けますか」
 聞いているくせに返答を聞かず、エルステーネの手を引いて歩き出す宰相にエルステーネは戸惑っていた。
「え、え?」
「姫様!?え、エリシア様!?」
 何故かフェロンもお姉様に捕まっている。え、どうして私たちは二人揃って捕まっているの?

 何が何だか分からないうちに、エルステーネは宰相に引っ張られて廊下を歩いていた。
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