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17,守りたいのは後にも先にもただ一人
しおりを挟む姫様。エルステーネ様。貴女は俺の全てなんです。俺は貴女だけを守りたいんです。
出来得ることならば、ずっと、変わらぬ立場でも良かったから、貴女の隣に最後まで居たかった。
それが叶うはずもないと、初めから知っていたというのに。
エリシア王女の一言で、王命に暗い表情を見せていた兵士達の士気が一気に上がった。中には雄叫びを上げながらエリシアに向かって心臓を捧げる者もいる。
絶世の美女と云っても過言ではない容姿のエリシア王女。輝くばかりのピンクブロンドの髪、翡翠色の綺麗な瞳。身体はでるところは出ているし、腰や手足も細く、この方に一体どれだけの人間が虜になったのか、そんなのは数えてもキリがないだろうなと、フェロンは思った。
薄々気がついていた。彼女ーーエリシア様から好意を向けられていたことに。それでも気付かないふりをしていたのは、知らないふりをしていたのは、正直面倒だったからだ。
上目遣いで見られたら可愛い部類に入るのだろうと思うけれど、俺の目は腐っているのか、瞳孔の開いている時のエルステーネ様の方が可愛いと思ってしまう。豊満な胸をさり気無く押し付けられる度にエルステーネ様は多分もう少し小さいんだろうなとか考えるし、とにかく俺の世界はエルステーネ様を中心に回っているのだ。
だって俺が忠誠を捧げたのはこの国でも、この国の国王でもない。エルステーネ様ただ一人、愛しいあの人ただ一人なのだ。
それが覆る事は、多分、ない。
「フェロン、あれで大丈夫かしら?」
微笑みかけて来るエリシア様に頷く。
「はい。士気も随分と上がったようですし、良いんじゃないですか」
「とても緊張したけれど、貴方がいてくれたから心強かったわ」
「そうですか。立っていただけですが」
冷たく淡々と返してしまうのを一度エルステーネに咎められた事があるけれど、こればかりはどうにもならない。
昔から人に興味が無かった。だから相手が自分をどう思おうと関係なかったし、心底興味が無かった。そんな俺の壁を壊したのはいつだってエルステーネただ一人だ。
エルステーネの姉だからと言って、エリシア王女にまで心を許すなんて器用な事は俺には出来ない。
「ねぇフェロン、離れないでね」
「…何のことですか?」
「ずっと私の側に居てくれないかしら」
「申し訳ありませんが、私はエリシア様の護衛官ではありませんので」
あの人以外を守るなんて嫌だ。それどころか、あの人の姉を守るなんて冗談じゃない。
「…貴方は地位が欲しいのでしょう?今は私を愛していなくてもいいわ。結婚してからでも愛を育むことは出来るでしょう?」
「何度も言いますが、地位の為に己を犠牲にしたくはありません。私は我が身が可愛いものですから」
この身体を捧げるのはいつだってあの人だけ。
「何度同じことを言われたところで同じ返答しかしませんので。お気に召されないのならどうぞ処分でもなんでもなさいませ」
「……貴方、随分と酷な事を言うのね。けれど貴方のそんなところも素敵だと思うわ」
「思わなくていいですよ」
全く以って意味が分からない。何故この人が俺を好きなのか。好意に気付いてはいたけれど、理由なんて知らない。然程興味も無い。
ただ、俺が今するべきは一つ。
「それでは私はエルステーネ様に言われた通り、宰相閣下の護衛に行きますので」
「もう行くの?気を付けてね。…帰ったら、私のところに来て頂戴ね」
「…それは御命令ですか?」
「お願い、よ」
綺麗だとは思う。それでもやはり、欲しいとは思わない。
「御命令で無いのならば、私は他の事を優先させていただきますので」
「…分かったわ、命令でいいわ。来なさい」
「…承知しました」
嗚呼。今頃姫様は何をしているだろう。きっと宰相のジジイとイチャラブしているのだろうけれど。例えあの人が誰のものになろうと、自分にとって一番大切なのは姫様ただ一人だ。
さっきも顔を見たばかりだというのに、もう会いたくなっている。
多分俺は、近くにいる時間が長過ぎたのだ。
宰相に勝てるのはその時間くらいだな、なんて有りもしない勝負の結果を一人笑って呟いた。
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