婚約破棄された王女が全力で喜びましたが、何か問題でも?

yukiya

文字の大きさ
17 / 29

17,守りたいのは後にも先にもただ一人

しおりを挟む


 姫様。エルステーネ様。貴女は俺の全てなんです。俺は貴女だけを守りたいんです。
 出来得ることならば、ずっと、変わらぬ立場でも良かったから、貴女の隣に最後まで居たかった。

 それが叶うはずもないと、初めから知っていたというのに。





 エリシア王女の一言で、王命に暗い表情を見せていた兵士達の士気が一気に上がった。中には雄叫びを上げながらエリシアに向かって心臓を捧げる者もいる。
 絶世の美女と云っても過言ではない容姿のエリシア王女。輝くばかりのピンクブロンドの髪、翡翠色の綺麗な瞳。身体はでるところは出ているし、腰や手足も細く、この方に一体どれだけの人間が虜になったのか、そんなのは数えてもキリがないだろうなと、フェロンは思った。
 薄々気がついていた。彼女ーーエリシア様から好意を向けられていたことに。それでも気付かないふりをしていたのは、知らないふりをしていたのは、正直面倒だったからだ。
 上目遣いで見られたら可愛い部類に入るのだろうと思うけれど、俺の目は腐っているのか、瞳孔の開いている時のエルステーネ様の方が可愛いと思ってしまう。豊満な胸をさり気無く押し付けられる度にエルステーネ様は多分もう少し小さいんだろうなとか考えるし、とにかく俺の世界はエルステーネ様を中心に回っているのだ。
 だって俺が忠誠を捧げたのはこの国でも、この国の国王でもない。エルステーネ様ただ一人、愛しいあの人ただ一人なのだ。
 それが覆る事は、多分、ない。

「フェロン、あれで大丈夫かしら?」
 微笑みかけて来るエリシア様に頷く。
「はい。士気も随分と上がったようですし、良いんじゃないですか」
「とても緊張したけれど、貴方がいてくれたから心強かったわ」
「そうですか。立っていただけですが」
 冷たく淡々と返してしまうのを一度エルステーネに咎められた事があるけれど、こればかりはどうにもならない。
 昔から人に興味が無かった。だから相手が自分をどう思おうと関係なかったし、心底興味が無かった。そんな俺の壁を壊したのはいつだってエルステーネただ一人だ。
 エルステーネの姉だからと言って、エリシア王女にまで心を許すなんて器用な事は俺には出来ない。
「ねぇフェロン、離れないでね」
「…何のことですか?」
「ずっと私の側に居てくれないかしら」
「申し訳ありませんが、私はエリシア様の護衛官ではありませんので」
 あの人以外を守るなんて嫌だ。それどころか、あの人の姉を守るなんて冗談じゃない。
「…貴方は地位が欲しいのでしょう?今は私を愛していなくてもいいわ。結婚してからでも愛を育むことは出来るでしょう?」
「何度も言いますが、地位の為に己を犠牲にしたくはありません。私は我が身が可愛いものですから」
 この身体を捧げるのはいつだってあの人だけ。
「何度同じことを言われたところで同じ返答しかしませんので。お気に召されないのならどうぞ処分でもなんでもなさいませ」
「……貴方、随分と酷な事を言うのね。けれど貴方のそんなところも素敵だと思うわ」
「思わなくていいですよ」
 全く以って意味が分からない。何故この人が俺を好きなのか。好意に気付いてはいたけれど、理由なんて知らない。然程興味も無い。
 ただ、俺が今するべきは一つ。
「それでは私はエルステーネ様に言われた通り、宰相閣下の護衛に行きますので」
「もう行くの?気を付けてね。…帰ったら、私のところに来て頂戴ね」
「…それは御命令ですか?」
「お願い、よ」
 綺麗だとは思う。それでもやはり、欲しいとは思わない。
「御命令で無いのならば、私は他の事を優先させていただきますので」
「…分かったわ、命令でいいわ。来なさい」
「…承知しました」
 嗚呼。今頃姫様は何をしているだろう。きっと宰相のジジイとイチャラブしているのだろうけれど。例えあの人が誰のものになろうと、自分にとって一番大切なのは姫様ただ一人だ。
 さっきも顔を見たばかりだというのに、もう会いたくなっている。
 多分俺は、近くにいる時間が長過ぎたのだ。
 宰相に勝てるのはその時間くらいだな、なんて有りもしない勝負の結果を一人笑って呟いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。

桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。 「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」 「はい、喜んで!」  ……えっ? 喜んじゃうの? ※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。 ※1ページの文字数は少な目です。 ☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」  セルビオとミュリアの出会いの物語。 ※10/1から連載し、10/7に完結します。 ※1日おきの更新です。 ※1ページの文字数は少な目です。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年12月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

処理中です...