性悪エリート高校の「たのしいうんどうかい」

ゴオルド

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第一部 青蝶編

8 ミーティング

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 主に顔を中心に殴られたせいで、仰向けになって寝返りも打てずに就寝した。仰向けだと顔を守れるかわりに腰や背中が痛んだが、眠るためには耐えるしかなかった。

 翌朝になると、痛みが少し引いていた。腰のあたりを骨折していたらやばいなと心配だったが、どうやら大丈夫だったみたいだ。もしかして団長にもらったグミが効いたのか? 低分子コラーゲンとビタミンCとクエン酸が入っている、ちょっと高そうなグミだった。味はなんか知らねえ南国のフルーツ「グアバ味」って書いてあった。バナナと林檎を足して2で割った味だ。どこで売ってんだよ、こんなマニアックなグミ。でも、このグミのおかげで骨折が治ったんだ……いや、さすがにグミで骨が治るわけないし、ただの打撲だったのだろう。とはいえ、グミを食べたら気持ち的なものは結構回復した。団長には感謝だな。

 気分は上向きになったが、体のほうは多少マシになったとはいえ完全に痛みがなくなったわけではない。動くとまだビリっとくる。
 どうする、休むか登校するか。ベッドの中で数秒考えてから、起き上がった。

 制服姿でリビングに行くと、両親が驚いた顔をした。
「亮平ったら、今日も学校に行くの? 昨日も行ったのに、二日連続で登校するの?」
「ああ」
「まあ、珍しい。やっとやる気になってくれたのねえ。今夜はお赤飯を炊いてお祝いするね」
「お赤飯はちょっと……カレーとかにして……」
「亮平はいっつもカレーって言うから、お母さんつまんない。じゃあ、間を取って炊き込みご飯にしようね」
「え、まあ、うん……」
 お赤飯とカレーの間って炊き込みご飯なんだっけ? 謎だが、せっかく作ってくれるというので、ツッコミを入れるのはやめておいた。

 ダイニングテーブルの椅子に腰掛けて新聞を読んでいた父が、俺の顔を下から覗き込むようにした。
「しかし、顔色が赤と青と紫と黄色と……いやにカラフルだが、休んだほうがいいんじゃないのか」
「いや、行くよ。体育祭のミーティングあるし」
 両親は顔を見合わせる。
「何でもないときは休みたがるくせに、クラスメートと喧嘩して怪我すると登校したがるって、我が子ながらよくわからないわねえ」
「でも、この分なら、転校しなくても大丈夫じゃないか?」
 俺は台所でごはんと味噌汁をよそって、ダイニングテーブルに運んだ。あ、箸を忘れたな。箸を取りに台所に戻りながら、返事をした。

「転校はする」
「なんでよ」
「何度も言ってるじゃん、勉強が難し過ぎてついていけないんだって」
「頑張ればなんとかなるんじゃないのか」
「そうよねえ、まだ1年の1学期なんだし、決めつけるのは良くないよね」

 俺はうええ、と小さく呟きながら、自席についた。

 父は新聞を畳むと、俺の前に置いた。読んでイイヨってことだ。でも読む気に……ならないんだ……新聞って読んでると眠くなるんだ……こんな息子で申しわけない……。

 父は明るい未来を信じて疑わないという顔で、続けた。
「せめて2学期が終わるまでは頑張ってみたらいいんじゃないか。せっかく良い高校に入れたんだ、今踏ん張れば、良い大学に行けるかもしれないんだからな。俺は学歴がなくて悔しい思いをたくさんしたから、亮平には良い大学に行ってほしい」
「うん、お父さんの言うとおりだってお母さんも思う」

 父はタイル工ってやつで、家の壁とか浴室とかにタイルを貼る腕の良い職人だ。そんな父と職場結婚した母も同じくタイル工だ。俺はそんな両親を格好いいって思ってるし、将来は俺も同じように手に職つけたいと思っている。だから学歴なんかなくても良くないか? 高校を卒業したら就職すれば良くないか? と軽く考えてしまうのだが、俺を良い大学にやりたいと思ってくれている親に、そんなことを言うわけにもいかず。
 そういや中学の時にも、親の金で大学に行くよりも、自分で稼いで生きていくほうが格好いいから、そうしたいって言ったら、格好いいとか悪いとかで将来を決めるなって怒られたんだよな。

 まあ、こういうわけで、転校の話もなかなか進まないのだった。



 その朝、顔色がレインボーな俺が出席しても、担任もクラスメートも特に何も言ってこなかった。俺に殴られた生徒たちも顔に青タンをこさえていたが、俺と目を合わせることすらしない。
 表面的には何もなかったかのように朝のホームルームが始まった。

「体育祭についてだが」
 担任は重要な説明でもするかのように、重々しく告げる。
「これから10月まで、週に2回の体育の授業は中止だ。そのかわりに週に2時間、体育祭の準備時間に充てられることになっている。それぞれチームの団長の指示に従うように」
 週に2時間も何をやるんだろう。リレー用バトンの受け渡しの練習とか? そんなことを週2も?

「なにか質問のあるやつは?」
 まあ、いつものように誰も何も言わない。本気で何も疑問に思わないんだろう。せっかくなので挙手してみた。スルーされた。だろうな。わかってたからショックじゃねえし。ほんとだし!

「それじゃあ、毎週頑張れよ。先輩方の言うことをよく聞いて、言われたことは何でもやるんだ。わかったな。あ、白いチームは何もやらなくていいぞ。チーム全員が不登校になってくれてもいいぐらいだ」
 どっと笑いが沸き起こる。
 ほんと性悪っぷりが一致団結してるやつらだ。



 わけわからん難易度の授業を耐え抜き、放課後になった。

 今日のミーティング場所は、サイエンス棟の空き部屋だ。サイエンス棟というのは、説明不要かと思うから説明しないでもいいんだけど一応説明すると、理系授業の実習のための建物だ。藤棚広場の近くにある。最上階には天文設備もあって、天体観測もできるらしい。噂では高額の天体望遠鏡が置いてあるそうで、だから、偏差値が低い生徒は最上階に入れてもらえないという話だ。いいけど。望遠鏡とか興味ないし。

 しかし、なんで体育祭のミーティングがサイエンス棟なんだ?

 首をひねりながら、白ハチマキをしっかり頭に結んで、指定された空き部屋に入った。室内では、集まった白月チームの生徒たちが、猫背で椅子に腰掛け、覇気のない顔で世間話をしていた。

 誰もハチマキしてねえし。

 ハチマキ装着者は俺だけのようだ。まあ、この白ハチマキをするのはちょっと、という気持ちもわからないでもない。昼行灯とか昼の月とかの象徴だって言われてるわけだしな。

 だが! 反発心というか反抗心というか、そういうものを刺激されてしまった俺は、逆に白ハチマキをしっかりと身につけることで、他のカラーチームごときには負けねえ、文句あるやつはかかってこいやという気分なのだった。


 部屋の真ん中で、一人だけ背を伸ばして座っている生徒がいた。団長だ。隣にいる金髪の男と話をしている。こっちは副長だな。時折楽しそうに笑い合っている。今日は水着じゃなくてちゃんと制服を着ていた。え、制服を着るのかよ、じゃあ、逆に初回の水着は何だったんだよという気持ちになる。

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