性悪エリート高校の「たのしいうんどうかい」

ゴオルド

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第一部 青蝶編

12 最初のターゲットは青蝶

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 排水溝から鞄を救出した後、教室に戻るのもダルくなってしまったので、藤棚広場で自習することにした。

 藤棚広場は、その名のとおり藤の植えられている広場だ。鉄製アーチが、広場をぐるりと取り囲むように設置されている。藤はそのアーチを覆うように葉を茂らせて、長細い実をぶら下げていた。
 アーチの下は煉瓦敷きで、木陰で休めるように木製テーブルやベンチが置かれている。俺のお目当ては、このテーブルとベンチだ。木漏れ日が良い塩梅に当たって、風も通るし、かなり居心地がいい。人もいないしな。

 ちなみに円の中央部分のひらけた箇所にガラスケースに入った掲示板があり、さまざまな掲示物が貼ってある。体育祭のチーム分けの紙が貼られた布団サイズの掲示板もまだあった。出しっ放しの野ざらしだ。これってもしや一年間ずっと掲示しっぱなしなのか? あり得ないほど体育祭に気合いが入りすぎじゃねえの。
 掲示板から視線を横に逸らすと、ドリンクとパンの自販機が仲良く並んで立っているのが見える。近くには屋外トイレもあるし、サボるにはうってつけの場所だった。


 藤棚広場のベンチで自習したりカレーパンを食べたりしていたら、あっという間に放課後になった。
 すぐに白月の対団長班のメンバーたちがやってきた。今日はここが集合場所になっているんだ。

「お疲れさま」
 一番最初にそう声を掛けてきたのは委員長だ。お疲れなんて俺に言ってくれるとは意外だ。しかし、表情は相変わらず無愛想だ。むすっとしている。
 その後、へらへらしたイド、くねくねした副長、おどおどしたオモチという順番でやってきた。
 副長とオモチ以外はげんなりと疲れた顔をしていた。

「白月チーム、なかなかしんどいっすねー」
「ああ。まったくだよ。この高校ってどうかしてる。あり得ないよ」
 イドと委員長が、俺の近くのベンチに腰掛けて、そう愚痴った。二人とも嫌がらせをうけたらしい。委員長は辞書を盗まれ、イドは俺と同じく机と椅子を隠されたそうだ。

「ボ、ボクだけ何もなくて……」
 オモチは、突っ立ったまま申し訳なさそうに縮こまっている。

「副長が昨日暴れたおかげだろうな。良かったな、オモチ」
 俺がそう言うと、オモチは小さく頷いた。座ったら? そう声を掛けたら、おそるおそるって感じで俺の隣に座った。

「こういう感じの日々が、これから3年間も続くんだぜぇ。一度白月に入れられると、卒業までずっと白月のままだからなあ。カラーチーム同士なら偏差値の変化に合わせて入れ替えもあるけどなあ」
 白の生徒がカラーに上がることは絶対にない、そんな副長の言葉に、1年は全員顔をゆがめた。
「ちょっと無理っすねー」と軽いノリでイドが言った。
「ほんと理解できない、この高校のことも生徒のことも」と深刻そうな口調で言ったのは委員長だ。
「……うう」オモチは悲しげに顔を伏せている。
「クソですね!」俺は拳を握りしめて吐き捨てるように言った。
「だから、変えていこうとしてるんだぜ。おまえら、スマホ出せよぉ。これから連絡取れるようにしようぜぇ」

 早速5人でメッセージアプリのグループが作られた。と、同時に、副長が写真を送信してきた。4人の男女の写真だ。
「いいかあ、こいつらが団長たちだぜ。この4人に署名をもらわないと、迫害は終わらないんだぜぇ」
 傲慢そうな顔の男、短気そうな男、無表情の男、ワガママそうな女の4人だ。

「どいつから始末しますか」
 俺がそう言うと、副長は妙におかしそうに笑った。笑うと目が細くなって、猫みたいだ。金色で手足の長い猫だな。
「ゼクウはせっかちだなぁ。まあ待て、物事には順番があるからなあ。まず最初に、チームには順番があるってことから説明するぜ」

 副長はみんなに自分のスマホを見せるようにした。黄色に鹿のイラストが描かれた画像が表示されている。

「5チームは、教師からの評価で振り分けられていて、一番高評価の生徒が集まるのが黄鹿きじかチームだなあ。成績優秀で足の引っ張り合いが大好きな連中だぜぇ」
 黄色がトップか。そういやうちの高校のネクタイとリボンって黄色だけど、それと関係あるんだろうか。

「黄鹿の下が赤猪あかいの。いわば二軍だなぁ」
 今度はイノシシのイラストを表示した。
「その次が緑鳥みどり。あんまり目立たなくて地味な連中だぜぇ。団長もなんか印象薄いなぁ」
 鳥のイラストだ。
「で、青蝶あおちょう。ここは偏差値が低めの生徒が集められるって話だなあ。こいつらは派手好きなイメージがあるぜぇ。それで、最後が白月はくつきってわけだなあ。まずそこは覚えたかあ?」

 ええと、黄鹿きじか赤猪あかいの緑鳥みどり青蝶あおちょう、白月の順か。

「チームごとの偏差値の平均値も、このチーム順と同じだと思っていいぜぇ。したがって、俺たちが倒すのはまずは青蝶あおちょうからだな。偏差値が上がるほど、事を構えた時に退学のリスクも上がるからなあ。団長は夜使野よしの芽衣香めいか、この女だ」
 パーツだけ見れば美人だが、顔の四角いわがままそうな女が、あごをあげてこっちを睨んでいる写真が再度送られてきた。この写真、どこから入手したんだ、副長は。

「青蝶は4チームの中で一番下とはいえ、油断するなよぉ。夜使野《よしの》の親は衆院議員だし、偏差値を見ても黄鹿に入ってもおかしくないレベルだ」
「じゃあ、なんで黄色じゃなくて青に入れられているんですか?」
 俺が尋ねると、副長はちらりと委員長を見た。
「黄鹿は男子生徒しか入れないからだなあ」
「何だって!?」
 委員長が眼鏡をくいっとあげて、鋭い顔つきになった。
「差別的ですね。そういうのって最低だと僕は思います。性別のせいで成績を正当に評価されないなんて。それが教育機関のやることでしょうか。ああ、本当にこの高校はどうかしている!」
 委員長が義憤に燃えている。おお、まさに「委員長」って感じだ。
「まあ、うちは女子は数がそもそも少ないってのがあるからなあ。なんせ生徒の7割が男子だから、ある程度はしょうがないのかもなあ。でも、さすがに時代遅れではあるし、チーム分けだけじゃなくて、こういうのも改善できたらいいな」
 副長にそう言われて、委員長も納得したのか引き下がった。


「じゃあ、この夜使野よしのってやつの息の根をとめてやりましょう!」
 俺は勢いよく立ち上がったのだが、副長が腕を掴んできて、無理やり座らせられた。
「だから待てって。なんでゼクウはそんなにやる気なんだぁ? 空き部屋のミーティングでも、ハチマキしてたのっておまえだけだったな?」

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