性悪エリート高校の「たのしいうんどうかい」

ゴオルド

文字の大きさ
13 / 20
第一部 青蝶編

13 「ごめんなさい」するところが見たい

しおりを挟む
 体育祭のチーム分け廃止活動について、頑張る気まんまんの1年生って、そんなに珍しいだろうか。
 ……珍しいか。そりゃそうか。誰もハチマキしてなかったもんな。

 俺はこれまでのこととか、今思ってることとかを整理しながら、ゆっくり話し始めた。
「俺はこの学校はクソだと思っています。それで不登校ではあるんですけど、それだけじゃなくて単純に授業についていけないので、転校するつもりでいます」
 
 偏差値59の俺には、この高校の授業はレベルが高すぎたのだ。完全に進路選びを失敗した。さっさとよそでやり直したい。東大を目指す連中と同じレベルになんてなれるわけがない。両親がなかなか納得してくれないけど、悲惨なテスト結果を見せ続ければ、そのうち現実に気付いてくれるだろう。多分。

「でも、ただ転校するだけってのも、逃げるみたいでシャクじゃないですか。まあ実際、逃げ出すわけなんですけど。せめて最後にどかんとぶちかましてみたいなって。景条館の思い出っていうか、最後の抵抗っていうか、そんな感じで」
「そうかぁ」
 副長は小さく何度も頷きながら話を聞いてくれた。

「でも、それだけじゃない……」
「うん?」
「俺がチーム分け廃止のための活動をやる気になっている理由は、ほかにもあるんです」

 ぐっと拳を握りしめた。その拳を見つめる。体育祭のチーム分けがあってから、俺はずっと思っていたことがあった。

「俺は転校する前に、白月のくせにとかいって馬鹿にしてきたムカつく連中が「ごめんなさい」するところが見たい!」

 力強く宣言する。

「クラスのやつらとか! 担任とか! 諸悪の根源と思われる校長とか!
 ああいう傲慢なやつらに、「こんな陰湿なチーム分けは間違ってました。白月の皆さん、今までごめんなさい」と言わせたい!」

 俺の魂のこもった雄叫びを聞いて、みんななぜか黙ってしまった。副長も委員長もオモチも、あっけにとられた顔のまま固まっている。え、俺って変なこと言ったか?

「あ、あの、皆さん……? どうかしましたか……?」

 すると突然、イドがはじけるように大笑いを始めた。腹をかかえてゲラゲラと楽しそうに。

「お、おい、イド、どうしたよ、大丈夫か? あれか、なんかヤバイ薬とかやってんのか?」
「この俺が薬とかやるかよ。いや、しかし……」
 イドは緑色の眼鏡をはずして、目元をぬぐった。

「俺さあ、正直、体育祭とか白月とかどうでもいいって思ってたんだよな。署名もらうだのなんだのって面倒くさいしー、そんなことを頑張る暇があったらメイド喫茶に行きたいしー」
 まあ、確かにやる気のない雰囲気をかもしだしてるやつだよな。

「だけど」
 イドは思い出し笑いをしてから、続けた。
「おまえの気持ち、ちょっとわかるわ」
「お、おお……? そ、そうか?」
「ああ。えらそうにしてる黄鹿や赤猪のやつらが、署名させられるところを見物できたら、さぞかしスッとするだろうな。俺もちょっとやる気でた」

 副長が、静かに頷いた。
「動機は人それぞれ違っていいと思うぜ。気合い入れて、署名をもらって、チーム分けを廃止させようぜぇ。ゼクウ、この高校生活の最後にいい思い出つくろうな」
「はい」

「みんなも頑張ろうぜぇ」
「はいっ!」



 話が終わり、早速俺たちは行動を開始した。
 今回のターゲット、夜使野よしの芽衣香めいかという団長に署名をもらうのだ。

 まず教室棟に戻り、夜使野のいる3年1組へとやってきた。

「そういえば、副長も同じ3年1組でしたよね」
「おお……。ゼクウはよく覚えてたなあ。偏差値59なのに偉いなあ」
「いや、いくら59でもそれぐらいの記憶力はありますよ」
 さらにいうと、副長の好きな食べ物はポテトチップスのり塩ってこともしっかり覚えているが、そんなことまで覚えてますアピールをしたらさすがに気持ち悪がられそうだからそれは言わずにおいた。ちなみに俺はポテチならカラムーチャ派だ。

「っていうか、青蝶の団長ってどういう女子なんですか?」
 3年1組の教室のドアに5人で張りついた状態で、小声で尋ねた。
「さあ?」
「クラスメートなのに、さあってことはないでしょう」
 と、委員長が突っ込む。
「なんせ俺は教室で過ごした記憶があんまりねえからなあ……」
 さすが白月の副長だ。

「どうやら教室にはいねえみたいだなあ」
 俺たちはドアから離れた。廊下で顔を見合わせる。

「もう帰っちゃったのかも……しれないですね……」と、オモチがおそるおそる言った。
「どうだろうなぁ、帰ってはいないんじゃないかあ?」

 副長があたりを見回した。ターゲットが偶然その辺を通りかかったりしないかな、と期待するような顔で。しかし残念なことに、どこにも青蝶の団長の姿はなかった。

「この時期、団長がこんな早い時間に帰るなんてありえねぇから、校内にはいるはずだ。探すぜぇ」
「はあ、面倒くさ」
 いかにもダルそうな声を出したのはイドだ。
「俺、理々姫りりひめの出勤時間までに帰りたいんですけど。っていうかもはや今すぐ帰りたいんですけど」
「イド、おまえやる気になったんじゃなかったのかよ」
 俺が突っ込むと、イドは嫌そうに呻いた。
「いや、まあ、さっきのはさっき、今は今だし……人の気持ちは変わるものなんだ……」
「気まぐれすぎる!」
「あ、そうそう! それな! 俺って気まぐれでさあ。理々姫からも、気まぐれなところが子猫ちゃんみたいで可愛いって言われてるんだよな、ふひひ」
 メイドから子猫と呼ばれて喜ぶ男子高校生。なかなかのクセがある。いや、しかし理々姫ってメイドなんだよな、メイドなのに姫ってどういうキャラ設定だよ。

「まあ、そういうわけなんで、俺は帰りますわ。早退理由は、理々姫ってことで」
 逃げようとしたイドを副長がつかまえた。
「いいから、つきあえよぉ」
 イドの肩を抱いて歩き始めたので、俺たちもその後に続く。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...