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第一部 青蝶編
13 「ごめんなさい」するところが見たい
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体育祭のチーム分け廃止活動について、頑張る気まんまんの1年生って、そんなに珍しいだろうか。
……珍しいか。そりゃそうか。誰もハチマキしてなかったもんな。
俺はこれまでのこととか、今思ってることとかを整理しながら、ゆっくり話し始めた。
「俺はこの学校はクソだと思っています。それで不登校ではあるんですけど、それだけじゃなくて単純に授業についていけないので、転校するつもりでいます」
偏差値59の俺には、この高校の授業はレベルが高すぎたのだ。完全に進路選びを失敗した。さっさとよそでやり直したい。東大を目指す連中と同じレベルになんてなれるわけがない。両親がなかなか納得してくれないけど、悲惨なテスト結果を見せ続ければ、そのうち現実に気付いてくれるだろう。多分。
「でも、ただ転校するだけってのも、逃げるみたいでシャクじゃないですか。まあ実際、逃げ出すわけなんですけど。せめて最後にどかんとぶちかましてみたいなって。景条館の思い出っていうか、最後の抵抗っていうか、そんな感じで」
「そうかぁ」
副長は小さく何度も頷きながら話を聞いてくれた。
「でも、それだけじゃない……」
「うん?」
「俺がチーム分け廃止のための活動をやる気になっている理由は、ほかにもあるんです」
ぐっと拳を握りしめた。その拳を見つめる。体育祭のチーム分けがあってから、俺はずっと思っていたことがあった。
「俺は転校する前に、白月のくせにとかいって馬鹿にしてきたムカつく連中が「ごめんなさい」するところが見たい!」
力強く宣言する。
「クラスのやつらとか! 担任とか! 諸悪の根源と思われる校長とか!
ああいう傲慢なやつらに、「こんな陰湿なチーム分けは間違ってました。白月の皆さん、今までごめんなさい」と言わせたい!」
俺の魂のこもった雄叫びを聞いて、みんななぜか黙ってしまった。副長も委員長もオモチも、あっけにとられた顔のまま固まっている。え、俺って変なこと言ったか?
「あ、あの、皆さん……? どうかしましたか……?」
すると突然、イドがはじけるように大笑いを始めた。腹をかかえてゲラゲラと楽しそうに。
「お、おい、イド、どうしたよ、大丈夫か? あれか、なんかヤバイ薬とかやってんのか?」
「この俺が薬とかやるかよ。いや、しかし……」
イドは緑色の眼鏡をはずして、目元をぬぐった。
「俺さあ、正直、体育祭とか白月とかどうでもいいって思ってたんだよな。署名もらうだのなんだのって面倒くさいしー、そんなことを頑張る暇があったらメイド喫茶に行きたいしー」
まあ、確かにやる気のない雰囲気をかもしだしてるやつだよな。
「だけど」
イドは思い出し笑いをしてから、続けた。
「おまえの気持ち、ちょっとわかるわ」
「お、おお……? そ、そうか?」
「ああ。えらそうにしてる黄鹿や赤猪のやつらが、署名させられるところを見物できたら、さぞかしスッとするだろうな。俺もちょっとやる気でた」
副長が、静かに頷いた。
「動機は人それぞれ違っていいと思うぜ。気合い入れて、署名をもらって、チーム分けを廃止させようぜぇ。ゼクウ、この高校生活の最後にいい思い出つくろうな」
「はい」
「みんなも頑張ろうぜぇ」
「はいっ!」
話が終わり、早速俺たちは行動を開始した。
今回のターゲット、夜使野芽衣香という団長に署名をもらうのだ。
まず教室棟に戻り、夜使野のいる3年1組へとやってきた。
「そういえば、副長も同じ3年1組でしたよね」
「おお……。ゼクウはよく覚えてたなあ。偏差値59なのに偉いなあ」
「いや、いくら59でもそれぐらいの記憶力はありますよ」
さらにいうと、副長の好きな食べ物はポテトチップスのり塩ってこともしっかり覚えているが、そんなことまで覚えてますアピールをしたらさすがに気持ち悪がられそうだからそれは言わずにおいた。ちなみに俺はポテチならカラムーチャ派だ。
「っていうか、青蝶の団長ってどういう女子なんですか?」
3年1組の教室のドアに5人で張りついた状態で、小声で尋ねた。
「さあ?」
「クラスメートなのに、さあってことはないでしょう」
と、委員長が突っ込む。
「なんせ俺は教室で過ごした記憶があんまりねえからなあ……」
さすが白月の副長だ。
「どうやら教室にはいねえみたいだなあ」
俺たちはドアから離れた。廊下で顔を見合わせる。
「もう帰っちゃったのかも……しれないですね……」と、オモチがおそるおそる言った。
「どうだろうなぁ、帰ってはいないんじゃないかあ?」
副長があたりを見回した。ターゲットが偶然その辺を通りかかったりしないかな、と期待するような顔で。しかし残念なことに、どこにも青蝶の団長の姿はなかった。
「この時期、団長がこんな早い時間に帰るなんてありえねぇから、校内にはいるはずだ。探すぜぇ」
「はあ、面倒くさ」
いかにもダルそうな声を出したのはイドだ。
「俺、理々姫の出勤時間までに帰りたいんですけど。っていうかもはや今すぐ帰りたいんですけど」
「イド、おまえやる気になったんじゃなかったのかよ」
俺が突っ込むと、イドは嫌そうに呻いた。
「いや、まあ、さっきのはさっき、今は今だし……人の気持ちは変わるものなんだ……」
「気まぐれすぎる!」
「あ、そうそう! それな! 俺って気まぐれでさあ。理々姫からも、気まぐれなところが子猫ちゃんみたいで可愛いって言われてるんだよな、ふひひ」
メイドから子猫と呼ばれて喜ぶ男子高校生。なかなかのクセがある。いや、しかし理々姫ってメイドなんだよな、メイドなのに姫ってどういうキャラ設定だよ。
「まあ、そういうわけなんで、俺は帰りますわ。早退理由は、理々姫ってことで」
逃げようとしたイドを副長がつかまえた。
「いいから、つきあえよぉ」
イドの肩を抱いて歩き始めたので、俺たちもその後に続く。
……珍しいか。そりゃそうか。誰もハチマキしてなかったもんな。
俺はこれまでのこととか、今思ってることとかを整理しながら、ゆっくり話し始めた。
「俺はこの学校はクソだと思っています。それで不登校ではあるんですけど、それだけじゃなくて単純に授業についていけないので、転校するつもりでいます」
偏差値59の俺には、この高校の授業はレベルが高すぎたのだ。完全に進路選びを失敗した。さっさとよそでやり直したい。東大を目指す連中と同じレベルになんてなれるわけがない。両親がなかなか納得してくれないけど、悲惨なテスト結果を見せ続ければ、そのうち現実に気付いてくれるだろう。多分。
「でも、ただ転校するだけってのも、逃げるみたいでシャクじゃないですか。まあ実際、逃げ出すわけなんですけど。せめて最後にどかんとぶちかましてみたいなって。景条館の思い出っていうか、最後の抵抗っていうか、そんな感じで」
「そうかぁ」
副長は小さく何度も頷きながら話を聞いてくれた。
「でも、それだけじゃない……」
「うん?」
「俺がチーム分け廃止のための活動をやる気になっている理由は、ほかにもあるんです」
ぐっと拳を握りしめた。その拳を見つめる。体育祭のチーム分けがあってから、俺はずっと思っていたことがあった。
「俺は転校する前に、白月のくせにとかいって馬鹿にしてきたムカつく連中が「ごめんなさい」するところが見たい!」
力強く宣言する。
「クラスのやつらとか! 担任とか! 諸悪の根源と思われる校長とか!
ああいう傲慢なやつらに、「こんな陰湿なチーム分けは間違ってました。白月の皆さん、今までごめんなさい」と言わせたい!」
俺の魂のこもった雄叫びを聞いて、みんななぜか黙ってしまった。副長も委員長もオモチも、あっけにとられた顔のまま固まっている。え、俺って変なこと言ったか?
「あ、あの、皆さん……? どうかしましたか……?」
すると突然、イドがはじけるように大笑いを始めた。腹をかかえてゲラゲラと楽しそうに。
「お、おい、イド、どうしたよ、大丈夫か? あれか、なんかヤバイ薬とかやってんのか?」
「この俺が薬とかやるかよ。いや、しかし……」
イドは緑色の眼鏡をはずして、目元をぬぐった。
「俺さあ、正直、体育祭とか白月とかどうでもいいって思ってたんだよな。署名もらうだのなんだのって面倒くさいしー、そんなことを頑張る暇があったらメイド喫茶に行きたいしー」
まあ、確かにやる気のない雰囲気をかもしだしてるやつだよな。
「だけど」
イドは思い出し笑いをしてから、続けた。
「おまえの気持ち、ちょっとわかるわ」
「お、おお……? そ、そうか?」
「ああ。えらそうにしてる黄鹿や赤猪のやつらが、署名させられるところを見物できたら、さぞかしスッとするだろうな。俺もちょっとやる気でた」
副長が、静かに頷いた。
「動機は人それぞれ違っていいと思うぜ。気合い入れて、署名をもらって、チーム分けを廃止させようぜぇ。ゼクウ、この高校生活の最後にいい思い出つくろうな」
「はい」
「みんなも頑張ろうぜぇ」
「はいっ!」
話が終わり、早速俺たちは行動を開始した。
今回のターゲット、夜使野芽衣香という団長に署名をもらうのだ。
まず教室棟に戻り、夜使野のいる3年1組へとやってきた。
「そういえば、副長も同じ3年1組でしたよね」
「おお……。ゼクウはよく覚えてたなあ。偏差値59なのに偉いなあ」
「いや、いくら59でもそれぐらいの記憶力はありますよ」
さらにいうと、副長の好きな食べ物はポテトチップスのり塩ってこともしっかり覚えているが、そんなことまで覚えてますアピールをしたらさすがに気持ち悪がられそうだからそれは言わずにおいた。ちなみに俺はポテチならカラムーチャ派だ。
「っていうか、青蝶の団長ってどういう女子なんですか?」
3年1組の教室のドアに5人で張りついた状態で、小声で尋ねた。
「さあ?」
「クラスメートなのに、さあってことはないでしょう」
と、委員長が突っ込む。
「なんせ俺は教室で過ごした記憶があんまりねえからなあ……」
さすが白月の副長だ。
「どうやら教室にはいねえみたいだなあ」
俺たちはドアから離れた。廊下で顔を見合わせる。
「もう帰っちゃったのかも……しれないですね……」と、オモチがおそるおそる言った。
「どうだろうなぁ、帰ってはいないんじゃないかあ?」
副長があたりを見回した。ターゲットが偶然その辺を通りかかったりしないかな、と期待するような顔で。しかし残念なことに、どこにも青蝶の団長の姿はなかった。
「この時期、団長がこんな早い時間に帰るなんてありえねぇから、校内にはいるはずだ。探すぜぇ」
「はあ、面倒くさ」
いかにもダルそうな声を出したのはイドだ。
「俺、理々姫の出勤時間までに帰りたいんですけど。っていうかもはや今すぐ帰りたいんですけど」
「イド、おまえやる気になったんじゃなかったのかよ」
俺が突っ込むと、イドは嫌そうに呻いた。
「いや、まあ、さっきのはさっき、今は今だし……人の気持ちは変わるものなんだ……」
「気まぐれすぎる!」
「あ、そうそう! それな! 俺って気まぐれでさあ。理々姫からも、気まぐれなところが子猫ちゃんみたいで可愛いって言われてるんだよな、ふひひ」
メイドから子猫と呼ばれて喜ぶ男子高校生。なかなかのクセがある。いや、しかし理々姫ってメイドなんだよな、メイドなのに姫ってどういうキャラ設定だよ。
「まあ、そういうわけなんで、俺は帰りますわ。早退理由は、理々姫ってことで」
逃げようとしたイドを副長がつかまえた。
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