転生調理令嬢は諦めることを知らない!

eggy

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第2章 ミニョレー伯爵領

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「ヤニクは、魔の森でいちばん怖い思いをしたのって、どんなとき?」
「ああ、岩鎧蜥蜴いわよろいとかげのでかいのと遭遇したときだな。高さ三ガター以上もあってよ、剣も弓矢も通じないやつだから、さしもの腕利きの魔狩人たちも遠くで見つけてさっさと回避したもんだぜ」
「話にだけは聞いたことがあるけど、そんなのが出るのかい」
「魔の森の向こう側ではな。しかしそんなのが出やすい地点は俺が把握しているから、予め避けていけるぜ」
「そうなんだあ」

 ヤニクのコップに酒をぎながら、フラヴィが感心の声を上げる。
 厨房と往復しながら何度目かにその隣の席に着いたアルムが、大男の顔を見上げた。

「そのトカゲっての、それほど厄介なのかい。小僧の大剣でも通じない?」
「無理だ。聞く限りじゃ」
「じゃあ本当に、回避しかないわけかい。ヤニクはその自信があるんだね」
「任せてほしいぜえ」
「頼もしいねえ。ヨッ兄貴」

 赤い顔をしたフラヴィが両手を打ち合わせる。
 周囲の席のどら声がちょうど重なり、店中の会話が困難なほどの賑わいになってきた。

 翌日はまた昼前に協会に集合し、最終的な雇用契約と打ち合わせをした。護衛料はこの日手付金を渡し、終了後この協会に戻った時点で、アルムの預け金から残りが支払われる。
 出発は二日後の早朝。契約は森向こうの領都まで、五日以上を見込む。
 森の中での野宿になるので、必要物を用意する。

「食事はあたしが作るから、用意の必要はないよ」
「へええ、小母ちゃんそんな、野外での料理の経験あるの」
「たいしたもんじゃないけどね。あんたたち、鍋と乾燥物を運ぶのを手伝っとくれ。肉と野草は現地調達だ」
「分かったよお」

 ジョスランはこの後、いくつか手続きに回る。
 フラヴィとグウェナエルは手が空いていると言うと、アルムに頼まれた。

「じゃあ二人、午後から手伝ってくれないかい」
「何するの」
「森の浅いところに出向いて、茸とアヒイをできるだけ採取してきたいのさ」
「なるほど、小母ちゃんの命綱だもんねえ。あたいたちにも重要用件だ」
「いいかい? 小僧も」
「ああ」

 そろそろ見慣れてきた、グウェナエルが引く車にアルムを乗せて出かけていった。
 夕方近く戻ってきた三人は、三種類の採取物をそれぞれ大袋一杯にして運んできた。
 これを、アルムが残りの時間で乾燥する。すでに準備している分と合わせ、乾燥した分だけ嵩が減ってそれぞれ袋一杯。途中の森中で採取できる見込みもあり、五日あまりの旅程に十分だろうということだ。

 二日後の早朝、比較的北門寄りの『魔肉飯店まにくめしてん』前に集合した。
 魔狩人たちは肘と胸、膝を隠す形の革の防具を着けている。兎魔獣の牙程度なら、これで受けても肌を守れるものだ。
 アルムの旅装束は先日も見た、男物のシャツとズボンだ。特に防具は着けず、粉類を入れた大袋などの荷物を抱えている。
 朝早いが、店主が見送りに出てきている。

「旦那さんにはお世話になったねえ」
「こちらこそだ。人手不足の中で何人分も働いてくれたし、いろいろ料理を考案してくれたのもありがたい」
「そう言ってもらえると、嬉しいよ。ああ、あと、前に言ったこと――」
「おう。あんたの傍でやっているときだけ、無意識に料理の腕が上がっていたかもしれないってやつだろ。気をつけるよ」
「そう、忘れないでおくれね」
「気をつけて行くんだぞ。またここへ来たら、寄ってくれ」
「あいよ」

 この店主や周辺の者には、アルムは南へ向けて旅立つと言ってある。北の森を越えて領都を目指すという旅程はまず一般の者は目指さないので、妙な噂になりかねないのだ。
 魔狩人の護衛をつけたし見たことのない車に乗って移動ということで、この店主も少し安心しているらしい。
 ジョスランたちも手を振って、店主と別れを告げた。

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