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学園の授業
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僕がこの学園に来てから、数週間が経とうとしていた。
ここでは毎日が訓練の連続だ。調教はもちろん、学園らしく「授業」という名目で様々なカリキュラムが組まれている。
もっとも、それは普通の学校の授業とはまるで違う。
――従順さを徹底的に植え付けられるための授業。
僕は今、その授業の開始を告げる鐘の音を聞きながら、薄暗い講堂のような教室に並ばされていた。
◇ ◇ ◇
教室には、僕と同じM候補の少年たちが十数人。全員が同じく裸に近い軽装――というより、簡単な薄布を腰に巻いただけの姿だ。
寒くはない。けれど肌をさらされているという意識だけで、鼓動が異様に速くなる。
「全員、整列しろ。」
黒服の教官が冷たい声でそう言うと、僕たちは一斉に背筋を伸ばして並んだ。
(大丈夫……今日はただの座学かもしれない……)
そんな甘い期待を抱いたのも束の間、前に立つ教官が持っていた棒を床に軽く打ちつけた。
「今日の授業は『奉仕礼法』だ。お前たちは奴隷として、正しく美しく奉仕する動きを覚えなければならない。特に上客の前では少しの所作の乱れも許されない。わかるな?」
「……はい……」
全員が小さく声を揃えた。
「声が小さい!」
バシンッ――と棒が誰かの脇腹を打つ音がして、ひぅっと短い悲鳴が上がった。
「……はいっ!」
僕も慌てて大声を張り上げた。心臓が壊れそうなくらい速く打っている。
◇ ◇ ◇
「ではまず最初の動作。ご主人様に膝をついて挨拶する方法を学ぶ。」
教官の合図で、一人の模範役が前に出された。
その子は僕より少し幼いくらいで、細い身体が緊張で震えていた。
「いいか。お辞儀は恥じらいを持ちながらも優美に見せろ。決して猫背になるな。胸を張り、腰を落とす。そして視線は下げすぎず、相手の視界に自分を晒すように。」
教官が細かく指示を出す。そのたびに少年は小刻みに震えながら、何度もお辞儀の角度を修正させられていた。
「――玲、次はお前だ。」
突然名前を呼ばれ、僕はびくりと肩を跳ねさせた。
「は、はいっ……!」
脚が勝手にこわばってしまい、ぎこちなく前へ出る。
「膝をつけ。両手は腿の上。背筋を伸ばし、顎を少し引く。そうだ……次は視線を前へ。」
ゆっくりと顔を上げる。前には調教師候補生の見学者が数名座っていて、僕を面白そうに眺めていた。
羞恥で胸がきゅっとなり、思わず腿をきゅっと締める。
「視線を逸らすな、玲。」
「……はい……」
涙が滲みそうになるのを必死に堪えながら、僕は彼らの視線を正面から受け止めた。
(見られてる……こんな恥ずかしい格好で……でも……)
変だ。頭では屈辱で死にそうなのに、胸の奥がじんわり温かくなる。
(これが僕の役割……僕はちゃんと役に立てるんだ……)
◇ ◇ ◇
「よし、次は口上を述べろ。『ご奉仕させていただきます』だ。」
「……ご奉仕、させていただきます……」
声が小さすぎたのか、すぐに教官の棒が頬を軽く叩いた。
「もっと自分の価値を誇れ。お前は奴隷だが、それでも奉仕をすることで主人に悦びを与える貴重な存在だ。わかるな?」
「……はい……」
「もう一度だ。」
「ご奉仕……させていただきますっ……!」
声を張った瞬間、前に座っていた調教師候補の一人が口元を歪めて笑った。その視線が突き刺さって、脚の間が少しだけ疼く。
(おかしいよ……僕……)
◇ ◇ ◇
礼法の授業が終わる頃には、全身が妙な熱でぐったりしていた。
けれど最後に、教官から思いがけない言葉を掛けられた。
「玲。今日のお前は良かった。動きに迷いが少なかった。きっとお前の調教師が優秀なんだろう。」
「……ありがとうございます……」
涙が出そうだった。嬉しくて。
視界の端で、廊下の奥からこちらを見つめる灰色の瞳と目が合った。聖弥さんだ。
気づけば小さく頭を下げてしまった。向こうは何も言わずに去っていったけれど、それだけで胸がいっぱいになる。
◇ ◇ ◇
その夜、僕は自室のベッドに座り込み、小さく胸を抱えた。
(今日は褒められた……ちゃんと役目を果たせた……)
思い出すとまた胸がじんわり熱くなる。
僕はきっと、この感覚にもう逆らえないんだろう。
(もっと……上手くなりたい……ちゃんと奉仕できる奴隷になりたい……)
そう思ってしまう自分を、もう止めることができなかった。
ここでは毎日が訓練の連続だ。調教はもちろん、学園らしく「授業」という名目で様々なカリキュラムが組まれている。
もっとも、それは普通の学校の授業とはまるで違う。
――従順さを徹底的に植え付けられるための授業。
僕は今、その授業の開始を告げる鐘の音を聞きながら、薄暗い講堂のような教室に並ばされていた。
◇ ◇ ◇
教室には、僕と同じM候補の少年たちが十数人。全員が同じく裸に近い軽装――というより、簡単な薄布を腰に巻いただけの姿だ。
寒くはない。けれど肌をさらされているという意識だけで、鼓動が異様に速くなる。
「全員、整列しろ。」
黒服の教官が冷たい声でそう言うと、僕たちは一斉に背筋を伸ばして並んだ。
(大丈夫……今日はただの座学かもしれない……)
そんな甘い期待を抱いたのも束の間、前に立つ教官が持っていた棒を床に軽く打ちつけた。
「今日の授業は『奉仕礼法』だ。お前たちは奴隷として、正しく美しく奉仕する動きを覚えなければならない。特に上客の前では少しの所作の乱れも許されない。わかるな?」
「……はい……」
全員が小さく声を揃えた。
「声が小さい!」
バシンッ――と棒が誰かの脇腹を打つ音がして、ひぅっと短い悲鳴が上がった。
「……はいっ!」
僕も慌てて大声を張り上げた。心臓が壊れそうなくらい速く打っている。
◇ ◇ ◇
「ではまず最初の動作。ご主人様に膝をついて挨拶する方法を学ぶ。」
教官の合図で、一人の模範役が前に出された。
その子は僕より少し幼いくらいで、細い身体が緊張で震えていた。
「いいか。お辞儀は恥じらいを持ちながらも優美に見せろ。決して猫背になるな。胸を張り、腰を落とす。そして視線は下げすぎず、相手の視界に自分を晒すように。」
教官が細かく指示を出す。そのたびに少年は小刻みに震えながら、何度もお辞儀の角度を修正させられていた。
「――玲、次はお前だ。」
突然名前を呼ばれ、僕はびくりと肩を跳ねさせた。
「は、はいっ……!」
脚が勝手にこわばってしまい、ぎこちなく前へ出る。
「膝をつけ。両手は腿の上。背筋を伸ばし、顎を少し引く。そうだ……次は視線を前へ。」
ゆっくりと顔を上げる。前には調教師候補生の見学者が数名座っていて、僕を面白そうに眺めていた。
羞恥で胸がきゅっとなり、思わず腿をきゅっと締める。
「視線を逸らすな、玲。」
「……はい……」
涙が滲みそうになるのを必死に堪えながら、僕は彼らの視線を正面から受け止めた。
(見られてる……こんな恥ずかしい格好で……でも……)
変だ。頭では屈辱で死にそうなのに、胸の奥がじんわり温かくなる。
(これが僕の役割……僕はちゃんと役に立てるんだ……)
◇ ◇ ◇
「よし、次は口上を述べろ。『ご奉仕させていただきます』だ。」
「……ご奉仕、させていただきます……」
声が小さすぎたのか、すぐに教官の棒が頬を軽く叩いた。
「もっと自分の価値を誇れ。お前は奴隷だが、それでも奉仕をすることで主人に悦びを与える貴重な存在だ。わかるな?」
「……はい……」
「もう一度だ。」
「ご奉仕……させていただきますっ……!」
声を張った瞬間、前に座っていた調教師候補の一人が口元を歪めて笑った。その視線が突き刺さって、脚の間が少しだけ疼く。
(おかしいよ……僕……)
◇ ◇ ◇
礼法の授業が終わる頃には、全身が妙な熱でぐったりしていた。
けれど最後に、教官から思いがけない言葉を掛けられた。
「玲。今日のお前は良かった。動きに迷いが少なかった。きっとお前の調教師が優秀なんだろう。」
「……ありがとうございます……」
涙が出そうだった。嬉しくて。
視界の端で、廊下の奥からこちらを見つめる灰色の瞳と目が合った。聖弥さんだ。
気づけば小さく頭を下げてしまった。向こうは何も言わずに去っていったけれど、それだけで胸がいっぱいになる。
◇ ◇ ◇
その夜、僕は自室のベッドに座り込み、小さく胸を抱えた。
(今日は褒められた……ちゃんと役目を果たせた……)
思い出すとまた胸がじんわり熱くなる。
僕はきっと、この感覚にもう逆らえないんだろう。
(もっと……上手くなりたい……ちゃんと奉仕できる奴隷になりたい……)
そう思ってしまう自分を、もう止めることができなかった。
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