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13. 婚約の囁き
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夜更けの寝室。
いつもなら調教の余韻が残る時間。
けれど今日は、ベッドの上でただ静かに抱き合っていた。
沙耶は蓮の髪を撫でながら、少し物憂げに目を伏せている。
「……どうしたんですか?」
蓮がそっと尋ねると、沙耶は指先を止めた。
しばらく黙ったまま視線を泳がせ、それから小さく息を吐いた。
「ねぇ……蓮」
「はい」
「もし……よ。私と、このままずっと一緒にいるってなったら……」
沙耶はそこまで言うと、何故か急に視線を外した。
女王様らしくない、不器用で照れ隠しのような仕草だった。
「……っ……ずっと私の犬でいるってことよ?」
そう続けた声は、強がるように少しだけ硬い。
「……はい。それは……当たり前です」
蓮は迷わず答えた。
それを聞いて沙耶は小さく笑い、でもその瞳はどこか潤んでいた。
「バカね……そういうことじゃなくて……」
「え?」
沙耶はしばらく口を閉ざしてから、恥ずかしそうに吐き出した。
「結婚……とか、考えたことあるの? 私と……」
蓮の胸が一気に跳ねた。
(沙耶さんが……結婚って……)
「……俺、ずっと沙耶さんと一緒にいたいって思ってました」
「犬として?」
「違います……犬でもあるけど、それだけじゃなくて……沙耶さんの恋人で……家族で……」
言葉にして初めて気づく。
自分はこの人の愛玩でもペットでもあるけれど、それ以上に、ただ一人の女としての沙耶を愛していた。
「沙耶さん……俺と、ずっと一緒にいてください」
沙耶はしばらく黙ったまま、真剣に蓮を見つめていた。
そしてゆっくりと手を伸ばし、蓮の頬を撫でる。
「……本当に、私なんかでいいの?」
「沙耶さんじゃなきゃダメなんです。沙耶さんじゃなきゃ……俺、生きていけない」
そう言った瞬間、沙耶の瞳から大粒の涙が零れ落ちた。
いつも強くて冷たくて、誰も寄せつけない沙耶が、泣いていた。
「……じゃあ……いい? 私、もう決めたから……」
沙耶は少しだけ震える唇を寄せ、蓮に優しくキスをした。
「これからもずっと、私の犬でいて……でも、それ以上に……」
頬に触れる手が微かに強くなる。
「……私の旦那さんになって」
言われた瞬間、胸の奥が熱くなって、涙が一気に溢れた。
「……はい……っ……俺……沙耶さんと結婚したいです……!」
沙耶は泣き笑いしながら、蓮の額にキスを落とした。
「ふふ……良い子。愛してるわ、蓮」
「俺も……愛してます、沙耶さん……一生……」
涙と涙が触れ合うほど顔を寄せて、二人は何度も唇を重ねた。
歪んで狂った愛は、どこまでも深く――けれど確かに、本物だった。
いつもなら調教の余韻が残る時間。
けれど今日は、ベッドの上でただ静かに抱き合っていた。
沙耶は蓮の髪を撫でながら、少し物憂げに目を伏せている。
「……どうしたんですか?」
蓮がそっと尋ねると、沙耶は指先を止めた。
しばらく黙ったまま視線を泳がせ、それから小さく息を吐いた。
「ねぇ……蓮」
「はい」
「もし……よ。私と、このままずっと一緒にいるってなったら……」
沙耶はそこまで言うと、何故か急に視線を外した。
女王様らしくない、不器用で照れ隠しのような仕草だった。
「……っ……ずっと私の犬でいるってことよ?」
そう続けた声は、強がるように少しだけ硬い。
「……はい。それは……当たり前です」
蓮は迷わず答えた。
それを聞いて沙耶は小さく笑い、でもその瞳はどこか潤んでいた。
「バカね……そういうことじゃなくて……」
「え?」
沙耶はしばらく口を閉ざしてから、恥ずかしそうに吐き出した。
「結婚……とか、考えたことあるの? 私と……」
蓮の胸が一気に跳ねた。
(沙耶さんが……結婚って……)
「……俺、ずっと沙耶さんと一緒にいたいって思ってました」
「犬として?」
「違います……犬でもあるけど、それだけじゃなくて……沙耶さんの恋人で……家族で……」
言葉にして初めて気づく。
自分はこの人の愛玩でもペットでもあるけれど、それ以上に、ただ一人の女としての沙耶を愛していた。
「沙耶さん……俺と、ずっと一緒にいてください」
沙耶はしばらく黙ったまま、真剣に蓮を見つめていた。
そしてゆっくりと手を伸ばし、蓮の頬を撫でる。
「……本当に、私なんかでいいの?」
「沙耶さんじゃなきゃダメなんです。沙耶さんじゃなきゃ……俺、生きていけない」
そう言った瞬間、沙耶の瞳から大粒の涙が零れ落ちた。
いつも強くて冷たくて、誰も寄せつけない沙耶が、泣いていた。
「……じゃあ……いい? 私、もう決めたから……」
沙耶は少しだけ震える唇を寄せ、蓮に優しくキスをした。
「これからもずっと、私の犬でいて……でも、それ以上に……」
頬に触れる手が微かに強くなる。
「……私の旦那さんになって」
言われた瞬間、胸の奥が熱くなって、涙が一気に溢れた。
「……はい……っ……俺……沙耶さんと結婚したいです……!」
沙耶は泣き笑いしながら、蓮の額にキスを落とした。
「ふふ……良い子。愛してるわ、蓮」
「俺も……愛してます、沙耶さん……一生……」
涙と涙が触れ合うほど顔を寄せて、二人は何度も唇を重ねた。
歪んで狂った愛は、どこまでも深く――けれど確かに、本物だった。
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