日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

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18.帝国を磨く刃

玉座の対話

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1942年12月24日、午前10時。
皇居・表御座所。

冬の空は高く澄み、霜を踏む音さえ届かぬ静けさのなか。
蒼月レイは、深い礼装の正装に身を包み、御所の門を静かにくぐった。

胸には帝国経済戦略本部の紋章。背筋を伸ばし、ただ一歩一歩、御前へと進む。

彼が目指す先には、万世一系の大御心が座していた。



拝謁に先立ち、侍従より儀礼が伝えられた。

「一、拝礼は三度深く頭を垂れるべし。
一、御下問あるまで口を開かぬこと。
一、着座の許しがなき限り立ち姿のままとすること」

レイは深くうなずいた。
その目には、一切の虚栄も恐れもなかった。ただ、敬意と決意だけがあった。

御簾の奥に、御影がある。

少年は、定められた距離で立ち止まり、三度、深く拝した。

──それから、沈黙。

その場にいた者すべてが、時間が止まったかのように感じた、その時——



「そなたが、民の声を集め、国の形を案じておるという少年か」

穏やかに、だが全てを見透かすような声が、御簾の奥から聞こえた。

レイは、再び深く一礼した後、慎ましく口を開いた。

「はい。恐れながら、帝国経済戦略本部の特命を拝し、国の未来に微力ながら尽くしております」

「……このたびの議会で、そなたが述べた“新しき政治の仕組み”とやら、聞かせよ」

「謹んで、上奏いたします」

レイは懐より書状を取り出し、三歩進んで、跪いたまま両手で献上した。
御簾の奥から、それを受け取る気配がある。

「語れ。そなたの考えを」

この一言により、拝謁は“進講”の段階へと移った。

レイは、膝をついたまま、まっすぐ正面を見据えずに、言葉を紡ぎ始めた。



「私は、現行の政治制度が、民の真意を反映するには至らぬと考えております」

「数を以て正義とする民主主義には、確かに限界がございます。
しかしながら、制度の不完全さを理由に放棄するのではなく、
陛下の御権威を中核に戴きつつ、“民と政の信頼の橋”として新たな仕組みを築くべきと存じます」

「それが、私が考える『新しい民主主義』でございます」

「理念と分野ごとの公共代表制により、教育、福祉、外交、労働などに長けた者が民の代弁をし、
その代表たちを、陛下の御信任によって“国の声”として正当化する——
そのような制度を設計しております」

御簾の奥で、静かに書状がめくられていく音が聞こえた。

しばしの沈黙の後——



「そなたは、朕に政治の口を開かせるつもりか」

レイは即座に深く頭を垂れた。

「滅相もございません。私は、政治の器において、
陛下の御名が“言葉を超えた規範”としてあられることこそ、最も強き導きと信じております」

「朕の名を、そなたはどう用いようとするか」

「国の中心として掲げることで、民が道を見失わぬように。
しかしその御名は、“統べる”ためではなく、“見守る”ために置かれるべきと存じます」

再び、静寂が流れた。

そして——

「……そなたは、若くしてよう見ておる」

「陛下……?」

「政(まつりごと)とは、正しきをなさんとする者にとっても、
時に苦しきものとなる。
そなたが語る仕組みには、誠の志が見える。だが……それを運ぶには、力も必要ぞ」

「心得ております。
私一人では成し得ぬゆえ、民の信と、臣下の知と、陛下の御加護をもって、
必ずや道を切り拓いて参ります」

「……ならば、そなたに道を託す。
朕は語らぬが、そなたの進む道に背を向けることはない」

レイは、その言葉に、これ以上ないほど深く伏した。

「畏れ多き御言葉……命にかえても、この道を貫きます」



退出の折、レイは再び三たび拝し、振り返ることなく静かに下がった。

その背中には、国家の未来が宿っていた。



外に出ると、霞ヶ関の空が金色に染まりはじめていた。
冬の日差しが、白い息の中に射し込む。

待っていた補佐官が、そっと問いかけた。

「……陛下は、お言葉を?」

レイは、微かに微笑みながら答えた。

「はい。“語らぬまま、進め”と……そう、受け取りました」



その日を境に、蒼月レイの“設計図”は、
「天皇の黙許を得た改革案」として、国内外の注目を集め始める。

改革は、制度へ。
制度は、行動へ。

“理想国家”を現実に築くための戦いが、本格的に動き出した。
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