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23.世界を結ぶ声
終わらせる者たち
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1943年3月中旬。東京・霞が関。
帝国議会に隣接する仮設庁舎には、各省庁の長官や次官たちが静かに並んでいた。
その前に立つのは、かつて“少年”と呼ばれた者──今や誰もがその名を畏敬とともに語る、特命全権代表・蒼月レイ。
「皆さん、今日の議題は三つです。第一に、旧勢力の再発防止策。第二に、軍部の文民統制化。第三に、次代の官僚倫理制度の制定です」
会議室に緊張が走った。
⸻
旧勢力の一斉検挙は、すでに2月の時点で完了していた。
不正な利権構造に関与していた政財界の重鎮たち、レイの暗殺未遂に関わった特高警察の一部勢力、そして法の目をかいくぐっていた軍部内の密命機関――それらはすべて、証拠とともに粛々と摘発され、裁判の準備が整えられている。
だが、それだけでは“終わらない”。
「私たちは、“過去を処罰する”ことで満足してはならない」
レイは言葉に力を込めた。
「必要なのは、“再発させない制度”です」
掲げられたのは、新たな倫理法案――“公的職責者行動規範法”。
政治家・官僚・軍人・企業経営者など、すべての公的立場にある者に対し、明文化された責任基準と罰則、そして外部からの監査制度を導入するというものだった。
「我々は、道徳に期待するだけの時代を終えねばなりません。
法と制度により、常に“見られている状態”を構築する。
それが、再発防止への唯一の道です」
その視線は、次に軍部に向けられた。
「そして――軍部です」
一瞬、空気が凍る。
「今の日本は、戦争を終えました。にもかかわらず、未だに“武力”が政治を脅かす存在であり続けている。これは異常です」
資料が配られる。
《帝国安全保障体制改革案》
そこには、以下の提言が記されていた:
・ 陸海軍を再編し、「国防省」として内閣直属に再統合
・ 軍の最高意思決定は、内閣および議会の承認を必須とする
・ 軍幹部の昇進・人事は、民間の監査機関による事前検証を通す
・ 「軍政官」として、文民出身の補佐官制度を導入
「軍が暴走しないこと。それが、真の“平和”と“国力”の基盤です」
レイの瞳には、もし制度の改革を怠れば――この国が瓦礫と化す未来が、はっきりと見えていた。
「我々の目指す帝国とは、剣ではなく知性と制度で築かれる国です」
静まりかえった室内で、ひとりの老人が小さく拍手を打った。
それを皮切りに、次第に大きな拍手の波が広がっていった。
⸻
夜。
レイは赤坂の官邸の書斎で、桜と向かい合っていた。
彼女は静かに彼の手を握った。
「……あなたが“終わらせた”ものは、過去の歪みよ。けれど、本当に大変なのは“これから”じゃない?」
レイは小さく微笑む。
「そうだね。終わらせた者には、次を築く責任がある。
でも、君がいてくれるなら――きっと、乗り越えられる」
桜の頬がわずかに赤く染まり、そのまま肩を預けてくる。
官邸の窓の外には、春の訪れを告げる夜風が、そっとカーテンを揺らしていた。
⸻
こうして、帝国は“再構築”の段階へと歩み始めた。
剣を収め、制度を磨き、そして人を育てる。
それは、戦後とは呼ばれない新しい“始まりの時代”だった。
そしてその中心にいるのは、
決して民意を裏切らず、権力に溺れず、未来だけを見据える少年――
蒼月レイ。
新たな時代を“始める者”でもあった。
帝国議会に隣接する仮設庁舎には、各省庁の長官や次官たちが静かに並んでいた。
その前に立つのは、かつて“少年”と呼ばれた者──今や誰もがその名を畏敬とともに語る、特命全権代表・蒼月レイ。
「皆さん、今日の議題は三つです。第一に、旧勢力の再発防止策。第二に、軍部の文民統制化。第三に、次代の官僚倫理制度の制定です」
会議室に緊張が走った。
⸻
旧勢力の一斉検挙は、すでに2月の時点で完了していた。
不正な利権構造に関与していた政財界の重鎮たち、レイの暗殺未遂に関わった特高警察の一部勢力、そして法の目をかいくぐっていた軍部内の密命機関――それらはすべて、証拠とともに粛々と摘発され、裁判の準備が整えられている。
だが、それだけでは“終わらない”。
「私たちは、“過去を処罰する”ことで満足してはならない」
レイは言葉に力を込めた。
「必要なのは、“再発させない制度”です」
掲げられたのは、新たな倫理法案――“公的職責者行動規範法”。
政治家・官僚・軍人・企業経営者など、すべての公的立場にある者に対し、明文化された責任基準と罰則、そして外部からの監査制度を導入するというものだった。
「我々は、道徳に期待するだけの時代を終えねばなりません。
法と制度により、常に“見られている状態”を構築する。
それが、再発防止への唯一の道です」
その視線は、次に軍部に向けられた。
「そして――軍部です」
一瞬、空気が凍る。
「今の日本は、戦争を終えました。にもかかわらず、未だに“武力”が政治を脅かす存在であり続けている。これは異常です」
資料が配られる。
《帝国安全保障体制改革案》
そこには、以下の提言が記されていた:
・ 陸海軍を再編し、「国防省」として内閣直属に再統合
・ 軍の最高意思決定は、内閣および議会の承認を必須とする
・ 軍幹部の昇進・人事は、民間の監査機関による事前検証を通す
・ 「軍政官」として、文民出身の補佐官制度を導入
「軍が暴走しないこと。それが、真の“平和”と“国力”の基盤です」
レイの瞳には、もし制度の改革を怠れば――この国が瓦礫と化す未来が、はっきりと見えていた。
「我々の目指す帝国とは、剣ではなく知性と制度で築かれる国です」
静まりかえった室内で、ひとりの老人が小さく拍手を打った。
それを皮切りに、次第に大きな拍手の波が広がっていった。
⸻
夜。
レイは赤坂の官邸の書斎で、桜と向かい合っていた。
彼女は静かに彼の手を握った。
「……あなたが“終わらせた”ものは、過去の歪みよ。けれど、本当に大変なのは“これから”じゃない?」
レイは小さく微笑む。
「そうだね。終わらせた者には、次を築く責任がある。
でも、君がいてくれるなら――きっと、乗り越えられる」
桜の頬がわずかに赤く染まり、そのまま肩を預けてくる。
官邸の窓の外には、春の訪れを告げる夜風が、そっとカーテンを揺らしていた。
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それは、戦後とは呼ばれない新しい“始まりの時代”だった。
そしてその中心にいるのは、
決して民意を裏切らず、権力に溺れず、未来だけを見据える少年――
蒼月レイ。
新たな時代を“始める者”でもあった。
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