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23.世界を結ぶ声
新しき国のかたち
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1943年3月下旬。東京。
帝都の春は、柔らかな陽射しとともに訪れた。
桜並木の蕾はほころび始め、疎開や配給という言葉を聞かなくなった街には、確かな“安堵”の空気が流れている。
東京駅前。巨大な掲示板には、新しい制度を知らせる公告が貼り出されていた。
《帝国倫理基本法、4月1日施行》
《軍政機構、正式に「国防省」へ再編》
《新国会制度、次期通常選挙より適用開始》
かつて「統制」と呼ばれたものの多くは姿を消し、「改革」の名のもとに法と制度へと変貌した。
それは、決して革命ではない――秩序の中にある静かな進化だった。
⸻
帝国大学・講堂。
この日、蒼月レイは久しぶりに“講演”という形で人々の前に立っていた。
壇上に立つ彼の姿は、少年というにはあまりにも威厳があり、政治家というにはあまりに透明だった。
「皆さん。日本は、いま“国家のかたち”を変えようとしています」
彼の言葉に、千人近い聴衆が耳を傾ける。
「力によって支配する国は、やがて力によって滅びます。
ですが、制度と信頼によって支えられた国は、永く続く」
彼は一枚の紙を取り出す。
それは、新しい国会の「三権分立修正案」だった。
・行政の長は国民の信任によって選ばれ、
・立法府は「民意の代理人」としての機能に徹し、
・司法は政治と断絶し、独立性を保証される。
「私たちは、“不完全な民主主義”を、“希望ある民主主義”へと進めていきます。
天皇陛下の権威を損なうことなく、そのご存在のもとで民意を制度として表現する。
これが、我々が目指す――“新しき国のかたち”です」
拍手はなかった。
だが、それは沈黙という名の喝采だった。
その場にいた誰もが、その言葉の重さにただ身を委ね、声を上げることすら憚られた。
それは――最大の敬意の証だった。
⸻
講堂の裏手。
講演を終えたレイが静かに息を吐いたとき、隣で控えていた桜がそっと微笑んだ。
「……すごい演説だったわ。あんなに静かなのに、心に響いた」
「ありがとう。……でも、まだ道半ばだ」
彼は歩き出す。
「軍の改革、司法の独立、そして教育――今のうちに“未来の礎”を築いておかないと」
桜が問いかける。
「……じゃあ、あなたの理想の“日本”って、どんな国なの?」
レイは立ち止まり、振り返った。
「誰もが“未来”を持てる国。
努力が報われて、権力が私物化されず、そして――
“世界に誇れる、思慮と優しさを持つ国”だよ」
桜は黙って頷いた。そして、彼の隣に立つ。
⸻
その夜。赤坂の官邸では、首脳会議が開かれていた。
議題は、次の5年計画。
重化学工業の再編、農村部へのインフラ投資、教育制度の刷新、そしてアジア諸国への戦後支援準備――
「世界は、やがて変わる。だが、日本はその前に“変われた”」
レイはそう締めくくった。
彼の背後には、これまでともに歩んできた人々の顔があった。
加藤蔵相、島村国防大臣、結城桜――
そして、天皇陛下から授かった“信”の言葉が、今も胸に残っていた。
⸻
帝国は、目覚めた。
過去に葬られなかった希望。
そして、いまここにある静かな革命。
それは剣を掲げたものではなく、紙と制度と信頼によって作られた、もう一つの“戦後”だった。
世界がまだ戦火の中にあるなか、
この島国の片隅で、未来が始まろうとしていた――
帝都の春は、柔らかな陽射しとともに訪れた。
桜並木の蕾はほころび始め、疎開や配給という言葉を聞かなくなった街には、確かな“安堵”の空気が流れている。
東京駅前。巨大な掲示板には、新しい制度を知らせる公告が貼り出されていた。
《帝国倫理基本法、4月1日施行》
《軍政機構、正式に「国防省」へ再編》
《新国会制度、次期通常選挙より適用開始》
かつて「統制」と呼ばれたものの多くは姿を消し、「改革」の名のもとに法と制度へと変貌した。
それは、決して革命ではない――秩序の中にある静かな進化だった。
⸻
帝国大学・講堂。
この日、蒼月レイは久しぶりに“講演”という形で人々の前に立っていた。
壇上に立つ彼の姿は、少年というにはあまりにも威厳があり、政治家というにはあまりに透明だった。
「皆さん。日本は、いま“国家のかたち”を変えようとしています」
彼の言葉に、千人近い聴衆が耳を傾ける。
「力によって支配する国は、やがて力によって滅びます。
ですが、制度と信頼によって支えられた国は、永く続く」
彼は一枚の紙を取り出す。
それは、新しい国会の「三権分立修正案」だった。
・行政の長は国民の信任によって選ばれ、
・立法府は「民意の代理人」としての機能に徹し、
・司法は政治と断絶し、独立性を保証される。
「私たちは、“不完全な民主主義”を、“希望ある民主主義”へと進めていきます。
天皇陛下の権威を損なうことなく、そのご存在のもとで民意を制度として表現する。
これが、我々が目指す――“新しき国のかたち”です」
拍手はなかった。
だが、それは沈黙という名の喝采だった。
その場にいた誰もが、その言葉の重さにただ身を委ね、声を上げることすら憚られた。
それは――最大の敬意の証だった。
⸻
講堂の裏手。
講演を終えたレイが静かに息を吐いたとき、隣で控えていた桜がそっと微笑んだ。
「……すごい演説だったわ。あんなに静かなのに、心に響いた」
「ありがとう。……でも、まだ道半ばだ」
彼は歩き出す。
「軍の改革、司法の独立、そして教育――今のうちに“未来の礎”を築いておかないと」
桜が問いかける。
「……じゃあ、あなたの理想の“日本”って、どんな国なの?」
レイは立ち止まり、振り返った。
「誰もが“未来”を持てる国。
努力が報われて、権力が私物化されず、そして――
“世界に誇れる、思慮と優しさを持つ国”だよ」
桜は黙って頷いた。そして、彼の隣に立つ。
⸻
その夜。赤坂の官邸では、首脳会議が開かれていた。
議題は、次の5年計画。
重化学工業の再編、農村部へのインフラ投資、教育制度の刷新、そしてアジア諸国への戦後支援準備――
「世界は、やがて変わる。だが、日本はその前に“変われた”」
レイはそう締めくくった。
彼の背後には、これまでともに歩んできた人々の顔があった。
加藤蔵相、島村国防大臣、結城桜――
そして、天皇陛下から授かった“信”の言葉が、今も胸に残っていた。
⸻
帝国は、目覚めた。
過去に葬られなかった希望。
そして、いまここにある静かな革命。
それは剣を掲げたものではなく、紙と制度と信頼によって作られた、もう一つの“戦後”だった。
世界がまだ戦火の中にあるなか、
この島国の片隅で、未来が始まろうとしていた――
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