日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

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26. 世界を照らす知性

静かなる火種

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1943年8月15日――
ベルリン陥落から十日あまりが経過した世界は、静けさの中に次なる嵐の胎動を感じていた。勝者となった諸国は、ただちに“戦後の世界”の設計に乗り出しつつあった。



東京・帝国政策戦略本部

蒼月レイは、白い地図を前に立っていた。赤いインクで描かれた線が、ヨーロッパからアジア、アメリカに至るまで広がっている。

「ドイツは崩壊しました。だが、世界は統一ではなく、“分裂”へと向かっています」

彼の背後には、外務省、商工省、情報局、軍政庁――あらゆる分野の要人が揃っていた。

「アメリカは“自由主義陣営”の盟主として、自国の覇権を強化するでしょう。一方、ソ連は“共産主義”を広げる口実を手に入れた。そして我々――大日本帝国は、第三の道を行く」

その言葉に、重い沈黙が広がった。

「我々が進めている“ERSP”(欧州復興支援構想)は、単なる経済政策ではありません。“思想”の投資です。民主主義でも、共産主義でもない。“共栄思想”という、新たな枠組みです」

レイは筆を取り、世界地図に三つの大きな円を描いた。
アメリカ、ソ連、そして日本――“三極の影”が、地球の上で拮抗しようとしていた。



アメリカ・ワシントンD.C./ホワイトハウス

同日、アメリカ国家安全保障会議。

「日本の支援構想“ERSP”は、我々の“マーシャル構想”よりも先行しています」

と、国家安全保障顧問が言った。

「それに加え、蒼月レイという少年――彼の存在が世界に与える影響は過小評価できません。日本は、単なる敗戦国の延命ではなく、新たな超大国となりつつある」

「ソ連の拡張も見逃せない。ヨーロッパ東部での動きが活発化している。共産主義の波は、もはや止めようがない」

アメリカはこの時、初めて“二極”ではなく“三極”という構造を意識したのだった。



満州・新京/情報分析局本部

日本の諜報機関でも、世界の構造変化は解析されていた。

「レイ閣下が提唱する“第三の道”は、倫理性と現実主義の融合です」

情報官の一人が言う。

「ソ連は、東欧に“忠実な衛星国家”を設けようと動いています。一方、アメリカは西欧と東南アジアに影響力を維持する構え。そして帝国は、アジア全域に加え、ヨーロッパの産業基盤再構築という重責を担うことになる」

「三つの思想が、ぶつからず、しかし相容れない形で存在する……これは“冷たい戦争”の始まりです」

その言葉は、まるで未来から響く鐘の音のようだった。



夜/東京・帝国中央官邸

レイの私室では、桜が紅茶を入れていた。

「……世界が、また分かれていくのね」

「そうだね」と、レイは窓の外を見つめたまま答えた。

「でも、今回は“勝者”による分断ではない。思想、価値観、そして未来の形――それぞれが“どんな世界を望むか”で分かれていく」

「じゃあ、あなたは? どんな未来を描くの?」

「僕は、“選択できる世界”をつくる。日本が、それを先導する。支配でも、従属でもなく、共に歩む道を……」

桜は頷き、そっとレイの手に触れた。

「きっと、できるよ。だって、あなたは“世界に希望を示す少年”だから」

その言葉に、レイは静かに目を閉じた。

彼の中では、もはや“戦争”の終わりではなく、“世界の始まり”が鼓動を打ち始めていた。



そして、数日後。

各国の報道機関は、日米ソ三国による非公式接触の開始を報じる。

それは、次なる時代の幕開けを意味していた。冷たく、しかし熱を孕んだ新たな時代――“冷戦”の、始まりである。
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