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27. 秩序の継承者たち
統治なき統治
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1943年9月15日、東京・霞ヶ関。
帝国戦略本部の上層フロアは、初秋の澄んだ陽射しを受けて柔らかく光っていた。蒼月レイは、広げられた極秘報告書の束を前に静かに指を滑らせていた。内容は、先月のポツダム会談の詳細な記録——アメリカ・イギリス・ソ連による、敗戦後のドイツ分割統治案である。
「東はソ連、西はアメリカ、そしてイギリスが北西……“分けて、支配する”旧態依然の思想か」
レイは小さく嘆息し、資料を伏せた。
「支配とは、軍靴の音でなく、信頼の静けさの中にあるべきだ。
それができない国家は、やがて支配すること自体を拒絶される」
彼の視線は、机上のもう一つの資料へと移る。
それは、日本主導の欧州復興支援構想——ERSPの最新版。そこには、戦後の経済的主導権を“支援”という名で握る、日本独自の戦略が記されていた。
「彼らが土地を分けるなら、私は未来を配る」
レイは独りごちた。
⸻
同日午後、帝国議会本会議。
「諸君、日本は領土を“持つ”ことで帝国たり得るのではない。
共に生きる者たちが、“共にある”と信じることで帝国となるのだ」
蒼月レイの演説に、議場は静まり返った。
新たに提案された法案は、朝鮮、台湾、満州の三地域を「準自治州」として位置づけ、一定の教育・行政権限を地域指導者に委譲するというものだった。ただの名ばかりの自治ではなく、長期的な自立を視野に入れた“信任統治”という前例なき制度である。
「戦火を経た世界は、もはや植民の時代ではない。
我々は、統治の正当性を、銃口ではなく、教育と共生の中に見出す」
一部の軍部議員が目を細める中、議場の後方で拍手が湧き起こった。
やがて、それは広がり、議場を包む確かなうねりとなった。
⸻
その夜、青山の官邸にて。
秋の気配が漂うテラスで、レイと桜は紅茶を挟んで向かい合っていた。
「今夜も、少しだけ話せると思って……ごめんなさい、いきなり来ちゃった」
「謝ることなんてない。君が来てくれると、安心する」
桜は微笑みながらも、どこか浮かない表情だった。
「レイ。…ねえ、私、ただの応援団でいたくないの。
あなたの隣にいたい。でも、あなたはいつも世界を見てる」
レイはその言葉に、短く目を伏せ、そして静かに応えた。
「君は旗じゃない。君は、旗を掲げる僕の隣に立っている。
君がいるから、僕は振り返らずに歩ける」
桜の目に、淡い光が灯る。
「……約束して。また、ちゃんと会いに来てくれるって」
「もちろん。戦場がどこにあっても、帰る場所は君の隣だ」
二人の指がそっと絡まり、夜風が髪を揺らした。
だが翌朝、レイは次の出張に旅立つ——香港、バンコク、カルカッタ。
戦後アジアの再構築と、日本主導の経済圏構想のために。
それは、「戦わずして統治する」未来への布石だった。
帝国戦略本部の上層フロアは、初秋の澄んだ陽射しを受けて柔らかく光っていた。蒼月レイは、広げられた極秘報告書の束を前に静かに指を滑らせていた。内容は、先月のポツダム会談の詳細な記録——アメリカ・イギリス・ソ連による、敗戦後のドイツ分割統治案である。
「東はソ連、西はアメリカ、そしてイギリスが北西……“分けて、支配する”旧態依然の思想か」
レイは小さく嘆息し、資料を伏せた。
「支配とは、軍靴の音でなく、信頼の静けさの中にあるべきだ。
それができない国家は、やがて支配すること自体を拒絶される」
彼の視線は、机上のもう一つの資料へと移る。
それは、日本主導の欧州復興支援構想——ERSPの最新版。そこには、戦後の経済的主導権を“支援”という名で握る、日本独自の戦略が記されていた。
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レイは独りごちた。
⸻
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共に生きる者たちが、“共にある”と信じることで帝国となるのだ」
蒼月レイの演説に、議場は静まり返った。
新たに提案された法案は、朝鮮、台湾、満州の三地域を「準自治州」として位置づけ、一定の教育・行政権限を地域指導者に委譲するというものだった。ただの名ばかりの自治ではなく、長期的な自立を視野に入れた“信任統治”という前例なき制度である。
「戦火を経た世界は、もはや植民の時代ではない。
我々は、統治の正当性を、銃口ではなく、教育と共生の中に見出す」
一部の軍部議員が目を細める中、議場の後方で拍手が湧き起こった。
やがて、それは広がり、議場を包む確かなうねりとなった。
⸻
その夜、青山の官邸にて。
秋の気配が漂うテラスで、レイと桜は紅茶を挟んで向かい合っていた。
「今夜も、少しだけ話せると思って……ごめんなさい、いきなり来ちゃった」
「謝ることなんてない。君が来てくれると、安心する」
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「レイ。…ねえ、私、ただの応援団でいたくないの。
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レイはその言葉に、短く目を伏せ、そして静かに応えた。
「君は旗じゃない。君は、旗を掲げる僕の隣に立っている。
君がいるから、僕は振り返らずに歩ける」
桜の目に、淡い光が灯る。
「……約束して。また、ちゃんと会いに来てくれるって」
「もちろん。戦場がどこにあっても、帰る場所は君の隣だ」
二人の指がそっと絡まり、夜風が髪を揺らした。
だが翌朝、レイは次の出張に旅立つ——香港、バンコク、カルカッタ。
戦後アジアの再構築と、日本主導の経済圏構想のために。
それは、「戦わずして統治する」未来への布石だった。
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