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頼る
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僕は今、担当看護師さんと一緒に男子トイレに入っていた。
「教えるって言っても一般のトイレとほぼ変わらないから安心してね」
「変わってるとこと言えば手すりが多いとか、洋式トイレしかないとか。後は、ここにもナースコールボタンが設置されてるって事ぐらいかなぁ」
「ここにもあるんですね」
「なんかあったらすぐ呼べるようにね!便利でしょ!」
「まあ便利ですけど、なんで看護師さんが偉そうなんです?」
「そりゃあもう私が設置したほうがいいんじゃないか?って言ったからねー!」
「じゃあ元々ついてなかったって事ですか?」
「そうなんだよー!」
「それはそれで危ないですね」
「でしょー?」
「それより早く出て行ってくれませんか?トイレしたいので」
「あっそっかごめんごめん!じゃあ外で待ってるねー。何かあったらすぐ呼んでね!」
「分かってますよ」
と、言っているが分かっていない。失敗は許されない。他の看護師さんや患者さんが通るトイレで、声を張って助けを求めるなんて恥ずかしすぎる。
まあ?普通にやればいいだけの話だけどね。
まずは座って、トイレをして、普通に立.......
「あっ.........立てない」
思った以上に手すりの位置が高い。
そして手すりを持って立ち上がろうとすると肋骨が激しく痛んでしまう。
左足だけで立とうとすると、バランスが上手く取れず、壁に骨折したところが当たってしまうかもしれない。
最悪だ、恥ずかしいのは勘弁だぞ。
「奏汰さーん大丈夫ー?」
「大丈夫ですー!」
僕は恥ずかしいから嘘をついた。本当は全然大丈夫じゃない。かなり.....いや、ものすごく悩んでいた。
看護師さんの助けを呼ぶか、肋骨が凄く痛くなってもいいから立ち上がるか。
「・・・・」
「大丈夫かなぁ?奏汰さん....」
僕はやっぱり恥ずかしいので......立ち上がろうと手すりを持とうとするとトイレのドアが開いた。
「へっ?」
「ダメでしょ!何か困ったことがあったらすぐに言う!いつでも私を頼ってって言ったよね?」
静華さんはいつになく真剣な顔で僕に怒ってくれた。
「え?.......あっ、ごめんなさい」
「今、無理して立とうとしたよね。なんで私を呼ばないの?」
「ごめんなさい。恥ずかしくって」
「ここ他の看護師さんや患者さんも通るし、恥ずかしいのも分かるけど......」
「・・・」
「それで、トイレはすんだの?」
「.....はい」
「それじゃあ支えててあげるから左足で立てる?」
「立てます.....」
「じゃあはい。寄っかかってもいいからね」
「ありがとうございます」
「車椅子乗ってー」
「はい」
「痛くならないようにゆっくりね」
いつも通り優しい静華さんに戻った。
「よーし!案内も一通り終わったし、ていうかもう夕方だし部屋に戻ろ?」
「うん。──あっ!あの.......」
「どうしたの?」
「......イチゴアイス」
「あー........明日にしよっか?もう夜ご飯の時間だし」
「......分かった」
「あっ!そうだ。さっき頼ってくれなかったし、明日は私を頼って生活してみよっか?」
「え......無理です不安でしかないです」
「ダメだよー。ちゃんと私を頼って生活してね?」
「じゃあ晩ご飯持ってくるからー」
「あ......はい」
その後持ってきてくれたご飯の味は覚えていない。――ちなみにオムライスとサラダだった――
頭の中で不安と心配が右往左往して眠れない......。と思ったが熟睡した。疲れていたのだろう。
そして今に至る。
「おはようー!奏汰さん。今日もよろしくね!」
静華さんは、朝日のような優しくて眩しい笑顔で僕を迎えてくれる。
「教えるって言っても一般のトイレとほぼ変わらないから安心してね」
「変わってるとこと言えば手すりが多いとか、洋式トイレしかないとか。後は、ここにもナースコールボタンが設置されてるって事ぐらいかなぁ」
「ここにもあるんですね」
「なんかあったらすぐ呼べるようにね!便利でしょ!」
「まあ便利ですけど、なんで看護師さんが偉そうなんです?」
「そりゃあもう私が設置したほうがいいんじゃないか?って言ったからねー!」
「じゃあ元々ついてなかったって事ですか?」
「そうなんだよー!」
「それはそれで危ないですね」
「でしょー?」
「それより早く出て行ってくれませんか?トイレしたいので」
「あっそっかごめんごめん!じゃあ外で待ってるねー。何かあったらすぐ呼んでね!」
「分かってますよ」
と、言っているが分かっていない。失敗は許されない。他の看護師さんや患者さんが通るトイレで、声を張って助けを求めるなんて恥ずかしすぎる。
まあ?普通にやればいいだけの話だけどね。
まずは座って、トイレをして、普通に立.......
「あっ.........立てない」
思った以上に手すりの位置が高い。
そして手すりを持って立ち上がろうとすると肋骨が激しく痛んでしまう。
左足だけで立とうとすると、バランスが上手く取れず、壁に骨折したところが当たってしまうかもしれない。
最悪だ、恥ずかしいのは勘弁だぞ。
「奏汰さーん大丈夫ー?」
「大丈夫ですー!」
僕は恥ずかしいから嘘をついた。本当は全然大丈夫じゃない。かなり.....いや、ものすごく悩んでいた。
看護師さんの助けを呼ぶか、肋骨が凄く痛くなってもいいから立ち上がるか。
「・・・・」
「大丈夫かなぁ?奏汰さん....」
僕はやっぱり恥ずかしいので......立ち上がろうと手すりを持とうとするとトイレのドアが開いた。
「へっ?」
「ダメでしょ!何か困ったことがあったらすぐに言う!いつでも私を頼ってって言ったよね?」
静華さんはいつになく真剣な顔で僕に怒ってくれた。
「え?.......あっ、ごめんなさい」
「今、無理して立とうとしたよね。なんで私を呼ばないの?」
「ごめんなさい。恥ずかしくって」
「ここ他の看護師さんや患者さんも通るし、恥ずかしいのも分かるけど......」
「・・・」
「それで、トイレはすんだの?」
「.....はい」
「それじゃあ支えててあげるから左足で立てる?」
「立てます.....」
「じゃあはい。寄っかかってもいいからね」
「ありがとうございます」
「車椅子乗ってー」
「はい」
「痛くならないようにゆっくりね」
いつも通り優しい静華さんに戻った。
「よーし!案内も一通り終わったし、ていうかもう夕方だし部屋に戻ろ?」
「うん。──あっ!あの.......」
「どうしたの?」
「......イチゴアイス」
「あー........明日にしよっか?もう夜ご飯の時間だし」
「......分かった」
「あっ!そうだ。さっき頼ってくれなかったし、明日は私を頼って生活してみよっか?」
「え......無理です不安でしかないです」
「ダメだよー。ちゃんと私を頼って生活してね?」
「じゃあ晩ご飯持ってくるからー」
「あ......はい」
その後持ってきてくれたご飯の味は覚えていない。――ちなみにオムライスとサラダだった――
頭の中で不安と心配が右往左往して眠れない......。と思ったが熟睡した。疲れていたのだろう。
そして今に至る。
「おはようー!奏汰さん。今日もよろしくね!」
静華さんは、朝日のような優しくて眩しい笑顔で僕を迎えてくれる。
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