僕と看護師さんのゆるい入院生活

まどうふ

文字の大きさ
12 / 69

ライド・ミシェル

しおりを挟む
僕達は食堂でお昼ご飯を一緒に食べ、休憩室で休憩していた。

「ふぅー」

ゆったりする前触れのような息を吐いて、僕はソファーに座る。......すると、るなちゃんが隣に座ってきた。ちなみに看護師さんの2人は用事があるとか言ってどこかへ行ってしまった。

「......ねえ」
「どうしたの? いつもの席に行くんじゃないの?」
「いや、奏汰...と......話...したい」
「いいよ。何話す?」

会って間もないけど、るなちゃんがどんな人間なのか少し分かってきた気がする。この行動は多分凄く珍しいやつだ。大切にしよう。

「本......とか...どう......?」
「ミシェル作品?」
「それも......話し...たい......けど......他の面白い......作品......とか...お互い...に......教え...あっ...たり...したい」

るなちゃん史上(僕の知る中で)一番長い言葉だ。...喋るの苦手とか言ってなかったっけ?
全然話しかけてくれるし、応えてくれる。
ちょっと言葉が詰まってるけど、しっかりと聞き取れるから問題は無いしね。
じゃあ入院なんてしなくてもいいんじゃ......?

「......ん?...どう...した...の...? ......別...に...嫌なら......大...丈夫」

「...あっ! 全然嫌じゃないよ! 僕も本好きだし、教え合ったりとか...ここで出来ないと思ってたからちょっとビックリしただけだよ!」

少しるなちゃんの事を考えていたら当本人を不安にさせてしまった。これでるなちゃんが仲良くしてくれなくなったら怖いな。

こうして先程まで僕の頭にあった、るなちゃんは入院しなくても生活出来る。という考えは意識しない内に消えていたのだった。

「......良かった......じゃあ...話...そ」
「うん! 話そう」

それから僕とるなちゃんは、本の話で大いに盛り上がった。

2人が読んでいないミシェル作品の『探偵は侮れない』シリーズの第一巻を、一緒に読んで、考察して楽しんだり、そのミシェル作品の多くが推理もので、同じ推理ものが好きな事で意気投合し、より仲良くなったりした。


──────────03︰00

「ごめんねー! おまた...せ?」
「おお......?」

2人が見たのは奏汰くんとるなちゃんが楽しそうに笑いながら話している所。

「担当看護師になってから結構経つけど初めて見たわ。あんなにも楽しそうなるなちゃん」

「いつの間に仲良くなったんだろうね~」

「まあ結構2人でいる時間はあっただろうし、別に不自然ってほどでも無いけど......相手がるなちゃんだからねー」

「......普通に凄いと思っちゃうわ私」
「相手がるなちゃんだからよ。凄く見えるの」

「それより入れる? あの空間に」
「入れるし入るに決まってるでしょ? 私も仲良くなりたいし!」
「えっ! ちょっと!?」

仲良くなりたいという気持ちの赴くままに静華さんは僕たちに向かってくる。

「おーい! 何話してるのー?」
「あっ! おかえりです! どこに行ってたんですか?」

「ちょっと他の看護師さんと話してたり、入院してる患者さんのヘルプに行ってたりしてたら結構時間かかっちゃった♪」

「私は、担当している患者さんはるなちゃんだけじゃないから、患者さんに何か不備はないか聞きに行ったり、静華さんと一緒に他の看護師さんと情報交換したりね」

「それでそれでー? 奏汰くん達は何してたのー?」

「......これ...推...理......小説」
「それ、るなちゃんがいっつも読んでるやつじゃない。おすすめしてあげた?」

そう言いながら神崎さんは、るなちゃんの手に持っている本を見た。
題名は『博愛の印』ライド・ミシェル作の推理小説だ。

「......もちろん。......博愛の...印...は...神作品」

「おー! 神作品......。奏汰さんはその博愛の印っていう小説は読んだ? ていうか推理もの好きなの?」

僕は質問されたのでしっかりと答えを返す。

「僕、元々推理小説は好きで、るなちゃんに勧められてその『博愛の印』の一巻を読んでみたんですけど、これがまた面白くて! るなちゃんが神作品って言うのも納得です!」

「仲......間......ゲット...」

嬉しそうな表情をしているるなちゃん。その横で、読んでみたそうな動きを全身で表してる神崎さん。

この人ほんと裏表が凄いな。女優さんになった方がいいんじゃないの?

「その『博愛の印』って推理小説、私も読んでいい?! まだ時間あるし!」

「はい...これ......読ん...で...みて。......それ...で......感想...聞か......せて」
「ありがとう! すぐ読む!」

「推理小説も良いんだけど、もう3時だし、お菓子とか買いに行ってもいいよー? るなちゃんも奏汰くんも制限されてないしねー」

「私......は...大......丈夫」

「あ...じゃあ僕、何か買いに行ってもいいですか?」

ちょうど推理小説で頭使ったばっかだから何か甘いものでも買おうかな? 飲み物は......お水があるからいいや。

「じゃあ一緒に行こー! 車椅子押してあげる!」
「大丈夫ですよ。売店まで近いですし」
「あれー? 私を頼ってくれないのぉー?」

静華さんはこっちを見てニヤつきながら、少し僕を煽るような口調で言ってきた。

「......あっ!」
まただ...また忘れてた......。

「これで2回目ね! 奏汰くんは息してるだけでもちょっと肋骨痛むんだから、もっと頼ってくれていいのに」

「頑張ります......」
「じゃ、一緒に行こっか!」
「はい......車椅子、お願いします」
「はい、喜んで!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

処理中です...