僕と看護師さんのゆるい入院生活

まどうふ

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策略

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色々あった夜ご飯を無事に済ませ、るなちゃんの状態を考えた結果今日は解散ということになった。

「......大丈夫かな」

そんなことを思いながら奏汰かなた静華しずかさんと一緒に病室へと向かう。

「大丈夫だよ。雪希子ゆきこさんを信じよ?」
「...まあ、神崎さんに任せておけば大丈夫だとは思いますけど......」
「でも心配なのは変わらないか...」
「......はい」

しんみりとした雰囲気で、2人は静かな廊下を歩いていく。

いずれ終着点に着くことが分かっていても、決して早く着くことが正解とは限らない。

早く行けば知れる事もあるが、ゆっくりと進み、その時その時の雰囲気、感じ方、想いを胸に込め、受け止めてあげることも大事。
もしかしたら自分の人生に必要になるかもしれない。

「どうしたの?  奏汰くん。もう着いたよ?」
「...いや......特に何もないです」
「そう?  私は先に入ってるよ」


そう言い、ベッドメイキングをしに行く静華さん。


何故か心がジワッとした。火を消すみたいな。
いや......ぬるま湯に浸かるのか?  ...どっちでもいいか。早く部屋に入ろ。

やっと部屋の中に入った奏汰の表情は、人を心配させるのも笑わせるのも出来るような顔だった。

どっちに転ぶかは場所や雰囲気の状況と、その状況下にいる人次第。


「......ぎゅーする?」

不意にスーッと風が通るような、自然に溶け込むみたいな言葉の発し方をする静華。


「あー......っ?!  ...しないよ!!  ていうか何でいきなり?!」

あまりにも自然すぎて一瞬気づかなかった。普通に車椅子を押してくれるのかと...。


「奏汰くんの表情がハグしてほしそうにしてたから」
「何ですかそれ。そんな表情聞いた事ありませんよ」

「えぇーそうかなぁ?」
不服そうな静華さん。

「そうですよ!」
納得させようとする奏汰。

「...ちょっと元気出た?」
「まあ...」

僕のために元気づけてくれてたのか。
いや......それでも他に方法あったよね...。
良い人ってこと以外本当に分からない人だ。

「元気出たのね、良かった」
「ちょっと楽になりました」


「よし!  それじゃあ心配を紛らわすために結果発表ー!」

静華のこの一言で場の空気が一気に明るくなった。

「結果発表?  ......あっ!  ゲームのですか?」

「そう!  結果はー......奏汰くんの勝ちー!」

「まあそうですよね」
「むしろ2回頼る事を拒ませた私、凄いよね」

「今回は僕に有利すぎた内容だったんですよ」

実際、頼ればいいだけだからね。それぐらい誰でも出来るよ。

「今回ってことは次回が...!?」
「無いですよ」
「無いかーそれは残念」

「じゃあ約束のイチゴのアイスは1個ね!
あげすぎたら私が怒られちゃう」
「それで十分です!」

「それと、ご飯の時のイチゴ増量は私の分を分けてあげるって形でいい?」
「はい大丈夫です!」

「じゃあこれにてゲームは終了ということで」
「はい!」

「...あっ!  でも痛む時とか自分じゃどうにもならない時は私に遠慮なく言ってね!  そうじゃないと怪我が悪化しちゃうかもしれないから」
「はい、分かりました」

「今はリハビリ期間じゃないんだからもっと甘えてもいいんだよ?」
「それは恥ずかしいのでちょっと......」

奏汰は恥ずかしがりながら思ったことを小声でボソッと口に出してしまう。

「2人しかいないんだから小声で言っても聞こえてるよー」

なっ......!  口に出ていた!?

「口に出てた!?  って顔してるね」

心を読まれた!?

「そんな驚かなくても。私たち看護師は心を読むのが仕事みたいなとこあるし。色んな患者さんがいるからね~」

「まあ、そう考えれば別に不自然では無い...?」
「奏汰くんはまだ読みやすい方だよ!  子供だから感情が顔に出やすいしね!」

「そう...なんですね?」

読みやすいって......。
奏汰は少し恐怖を覚えた。

「あ...ベッド座る?」
「お願いします」

奏汰も少し慣れてきたのかスっと片足で立ち上がり、ベッドにもたれかかって、静華さんに支えてもらいながら上に乗る。

「はい!  大丈夫?」
「ちょっと痛いですけど大丈夫です」
「はーい!  じゃああんまり長居してもアレだし私は戻るねー!」
「分かりましたー!」

静華さんはドアの前まで歩き、少し立ち止まり振り返った。

「8時半頃に様子見に来るからね!  あと、何かあったら直ぐにナースコールで呼んでね!」
「はい、分かりました。何かあったら呼びますね」

ありがたいけど、ちょっと心配しすぎかな?

「何かっていうのは、寂しいとか暇だから話したいとか何でもいいよ!  担当看護師だからね!」
「......分かりました」
「じゃあまたねー」

静華さんは何故かルンルンで部屋から出ていった。

本当に心配してくれてるのか......?  多分だけどサボりたいだけなんじゃ......。







奏汰は、今回のゲームの内容は僕に有利すぎたと言ったがそれは間違いである。ゲームを提案された時、既に静華の術中にハマっていた。全ては静華の手のひらの上で転がされていたのだ。

ルンルンで奏汰の部屋を出た静華は嬉しかった。その一点に限る。何故なら考えていた事が上手くいったからだ。


「ふんふふんふふーん♪」

上手くいけばイチゴを分けてあげる時にあーんって出来るかもしれない!

「静華さん何かいい事ありました?」
「んー?  どうでしょうね?」

思いっきり笑顔だし、いい事あったなこりゃ。


私が勝ったら頼ってもらえるし、あーんも出来る!  私が負けても勝って喜んでイチゴを食べる奏汰くんが見れるし、あーんのチャンスもある!

大人気おとなげないかもしれないけど、しょうがないよね!  可愛いところが見たいんだもん!

「ふふふ」
嬉しそうに笑う静華。

この後の静華はずっと笑顔だった。
奏汰には少し不審がられたが誤魔化して、笑顔のまま今日の仕事を終えた。
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