僕と看護師さんのゆるい入院生活

まどうふ

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水底にある少女の薬屋さん

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 奏汰《かなた》たち4人は央光《おうこう》医療大学の図書館に来ていた。
 改めて静華《しずか》さんや神崎《かんざき》さんの凄さを実感したり、るなちゃんの新しい一面を見ちゃったりして央光見学を絶賛満喫中なのだが、恋愛小説コーナーで偶然出会った綺麗なボブヘアーの生徒さんに奏汰は話しかけられていた。


「君、名前なにー?」
「あっ......灰羽《はいば》奏汰《かなた》です」
「奏汰くんねー」

「すみません、あなたは......?」
「私は愛園《あいぞの》寧《ねい》だよ、覚えてくれたら嬉しいな」

 理事長室へ行くまでに受けた視線や理事長を出た後僕たちを囲んだ人たちとは全然違うな。落ち着いてるし、静華さんにも驚いてる様子は無いし。

「ごめんねー、大丈夫だった?」
「ぶつかってないですし大丈夫ですよ」

「良かったぁ......私は北条《ほうじょう》静華《しずか》、愛園さんも恋愛小説ですか?」

「はい、勉強の息抜きにと思いまして......北条さんも恋愛小説をお探しですか?」
「私は奏汰くんの付き添い、奏汰くんがここで読む恋愛小説を一緒に探しに来たところなの」

「そうだったんですね、でしたら私も一緒に奏汰くんの好みに合う恋愛小説探してあげましょうか?」

「いいんですか?」

 恋愛小説についてはどれが良いとか分からないからありがたい。

「勉強の時間とか、土曜日とは言っても生徒さんたちは課題とか研究とかやってますけど......」

「大丈夫だよ、こう見えて私この学校でも優秀な方だから。それで奏汰くんはどんなのが読みたいの?」

 恋愛小説コーナーはすぐそこだったので車椅子に座っている僕を考慮してくれたのか、どんなのが好きなのか、挑戦してみたい恋愛小説を聞いた後愛園さんが何冊か持ってきてくれた。

「聞いただけでよく奏汰くんが好きそうな恋愛小説持って来れますね」
「私はここを知り尽くしてるからねー」

「ありがとうございます」
「いえいえ」

 そう言い愛園さんは笑顔を見せてくれた。

「それじゃあ私たちはこれで失礼しますね、連れも待っていると思いますので」
「こちらこそ引き止めてしまってすみません。
 また何かあったらこの図書館に居ると思いますので声をかけてくださいね」

「奏汰くんもまたね!」
「はい、また」

 お互いに手を振りあって愛園さんと別れた後、僕と静華さんはフロアの中央に向かっていた。

「どう? 愛園さんに選んでもらったその2冊は、面白そう?」

「面白そうですよ。1冊目はあらすじを少し読んだんですけど学園ラブコメ系でした。2冊目は......なんですかこれ、『探求者たちの薬屋』?」

「薬かぁ......いかにも医療大学って感じがするね」
「でも恋愛小説コーナーにあるって事は恋愛ものかラブコメなのかの2択ですかね」

「そうだね、しかもこの図書館を知り尽くしてる愛園さんが選んでくれたんだから間違いないよ!」
「それもそうですね!」

 そんな話を2人でしているとフロアの中央に着いたようで、僕と静華さんは4人用の席に座り、愛園さんに選んでもらった本を読みながらるなちゃんと神崎さんが来るのを待っていた。

「あのーすみません静華さん」
「はい?」
「あの2人に中央集合って言いましたっけ?」
「うーん......言ってないかも」

 思い出して少し笑いながら静華さんは衝撃の事実を発した。

「それじゃあ待ってても来ないじゃないですか」
「そう......だね」
「探しに行きますか?」

 奏汰がそう問いかけると静華さんは自信満々に言った。

「いや大丈夫、雪希子《ゆきこ》さんなら絶対中央に来る! 私はそう信じてる!」

 ほんとに来るのかなぁ? 移動してる最中に見えたけどカウンター席とかソファーとかあったしそっちに行ってるんじゃ......まあ静華さんがそう言うなら待ってみてもいいかな、神崎と1番付き合い長いの静華さんだし。

「......じゃあ待ってみますか」
「うん!」

 ──10分後

「これ、ほんとに来ますか?」
「大丈夫大丈夫! まだるなちゃんが本選んでるかもしれないし!」
「......たしかに」

 更に10分後。

 学園ラブコメ系はやっぱりザ王道で良いなぁ。
 幼なじみに転校生、初恋相手にサラッと登場して主人公の恋を手助けする友達。まだ半分も読めてないけどこれは良い。

「あれ来ないなぁ......どうしよ......」
「ん?......あぁ、るなちゃんですか?」
「さすがにもうすぐ来ると思うんだけど......」
「探しに行きます?」
「いや......もうちょっと待ってみてもいい?」
「いいですよー」

 ──計30分後

「来ないなぁ来ないなぁ......」
「もうここに来てから30分経ってますよ」

 奏汰は静華さんが心配そうに慌てているのを横目に恋愛小説を読みながら話しかけた。

「もうダメ探しに行こう!」

 そう言って静華さんは勢いよく立ち上がり、奏汰の車椅子を押してるなちゃんを探し始めた。

「どこにいるのかなぁ......」
「意外と直ぐ見つかりますよ。僕たちは一応生徒でも先生でもないですから」
「そうね、目立つもんね。とりあえず座って本が読める場所を回って探しましょう」

 まず奏汰たちはカウンター席に向かった。

「いないね......」
「そうですね、見た限りはいなさそうです」

 そして次はソファルームへ。

「あっ、さっきぶりです」

「愛園さん! 急で悪いんだけど、ソファルームに小学3年生ぐらいの金色が混ざった白髪の女の子と、私より少し大きいぐらいの身長で黒髪ポニーテールの女性を見ませんでしたか?」

「それならさっきまで話してましたよ、本の話で少し──」
「ありがとう!」

 静華さんは愛園さんが言い切る前に奏汰の車椅子を押してソファールームに向かった。

「るなちゃーん!」
「ん......なに......?」

 全然居た、隣に神崎さんもいる。
 とりあえずは一安心かな。

「心配したんだよー!」

 そう言いながら静華さんはるなちゃんの頭を優しく撫でる。

「逆......に......どこ......いってた......の......」
「フロア中央の机とかあるとこだよ」

「あー! あそこは生徒さんたちが大勢来るからやめとこって言ってたんだよ」

「だから来なかったんですね」
「うん......それより......奏汰......これ......面白いよ......」

 そう言ってるなちゃんは奏汰に真っ白で題名だけが金色な本を見せた。

「水底にある舞踏会?」
「うん......かなり......良い──」




「そういえば静華さんはなんでソファールームに私たちが居るって分かったんですか? 一直線にこっちに向かってきてましたし」

「それはね、奏汰くんの読む本を探している時に知り合った愛園さんって人に教えてもらったんだよ」

「あー、私もその人と話しましたよ。ほらこれ」

 神崎さんは手に持っていた本を静華さんに見せた。その本は表紙が破けていたりして明らかにボロボロの古書《こしょ》だった。

「この本、その愛園さんが持ってきてくれたんだ」
「そうなんだ! でも大丈夫だった? るなちゃん」

「それが、何故か愛園さんが灰羽さんの名前を出した途端に私たちと同じぐらい喋れるようになってびっくりしたよ」

「たしか咲苺《わらめ》さんの時もそうだったよね! あの場に奏汰くんいたし!」

「これは灰羽さんに期待だな」
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