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発芽
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少女が日課である丘に向かうため林道を歩いていると、傷を負った一羽の雛《ひな》を見つけた。首を上に傾ければ、木の上に作られた巣の中で親らしき鳥が心配そうな声でさえずっている。
少女はなんとか助けたいという一心から水をすくうようにして地面の雛を手に取るも、雛は一度だけか細い声で鳴いた後は動く様子も見られない。
雛の体から熱が消えていくのを感じた少女は、とにかく少しでも温めなくてはと懐の中に雛を入れると、今度はフカフカに溜まった落ち葉の中に自分の体を滑り込ませた。
やがて落ち葉の温かさに意図せず眠ってしまった少女は、耳元でピーピーと鳴く声で目を覚ます。
慌てて飛び起きた少女が胸下に視線を落とすと、さっきまで全く動かなかった雛が元気な様子で少女の頬をつついていた。
雛が元気になったことに喜ぶもすぐ違和感に気づいた。傷が最初からなかったかのように消えているのだ。
少女はとても不思議に思うも、とにかく雛が元気になってくれてよかったと雛を再び懐に入れて木を登り、親鳥が待つ巣へと返して事なきを得た。
それからも少女は傷ついた小動物などを何度か助ける機会があったことで、どうやら自分にはおかしな力があることを認識する。
ある日少女は友達のアンと連れ立って丘に向かった。丘に到着すると早速枯れかかっている花を見つけた少女は、友達に見ているよう促しながら左手を花にかざした。
程なくして少女の左手は淡い緑色の光を放つ。
アンが息を呑む音を横で聞きながら、少女は元気になれと念じながら左手に力を込めると、枯れかかっていた花は今咲いたばかりのような輝きを取り戻した。
『すごいでしょう?』
花を食い入るように見るアンの姿が嬉しくって、少女は得意げに話を続けた。
『花だけじゃないんだ。動物の傷とかも治せるの。人にはまだ試したことがないけど、きっと人だって治せると思う』
『──この力を私以外の人に見せたことある?』
アンは花に目を離すことなく見たこともない怖い顔で言う。
素早く首を横に振って否定するとアンはホッと息を吐き、少女に向き直ると今度はギョッと目を見開いた。
『目の色が緑になっている』
『え?』
『……元の赤に戻った』
『私の目の色が緑になって今は赤に戻っているってこと? ──もしかしてこの不思議な力を使うと目の色が緑に変わるのかな? だって手から出る光も緑色だし』
少女の話を黙って聞いていたアンは少女の両肩を強く掴んだ。
『そんなに強く掴まれたら痛いよ』
『この力を絶対人に見せたら駄目』
『え? どうして?』
この力を怪我をした人に使えばきっと喜んでくれるはず。
もしかしたら食べ物やお金を貰える可能性もあるだけに少女の疑問は当然のものだった。
『どうしても。もし誰かにその力をちょっとでも見せたら絶交だから』
『絶交⁉ 絶交は絶対嫌だよ‼』
『じゃあ約束して。その力は絶対人に見せないって』
強い口調で迫られ、少女は渋々ながらも首を縦に振る。
その後少女はアンとの約束を守り、アンが死んだ後も約束は頑なに守られ続けた。
それから数年ののち、ブリュンガルデ王国が隣国リーンフィル公国に宣戦布告したことで北大陸の覇権をかけた戦争が勃発。
深手を負って灰被りの街に逃れてきた兵士の傷を治したことで、隠していた少女の力はやがてブリュンガルデ王国を統べるレガード王の耳に入ることとなる────。
少女はなんとか助けたいという一心から水をすくうようにして地面の雛を手に取るも、雛は一度だけか細い声で鳴いた後は動く様子も見られない。
雛の体から熱が消えていくのを感じた少女は、とにかく少しでも温めなくてはと懐の中に雛を入れると、今度はフカフカに溜まった落ち葉の中に自分の体を滑り込ませた。
やがて落ち葉の温かさに意図せず眠ってしまった少女は、耳元でピーピーと鳴く声で目を覚ます。
慌てて飛び起きた少女が胸下に視線を落とすと、さっきまで全く動かなかった雛が元気な様子で少女の頬をつついていた。
雛が元気になったことに喜ぶもすぐ違和感に気づいた。傷が最初からなかったかのように消えているのだ。
少女はとても不思議に思うも、とにかく雛が元気になってくれてよかったと雛を再び懐に入れて木を登り、親鳥が待つ巣へと返して事なきを得た。
それからも少女は傷ついた小動物などを何度か助ける機会があったことで、どうやら自分にはおかしな力があることを認識する。
ある日少女は友達のアンと連れ立って丘に向かった。丘に到着すると早速枯れかかっている花を見つけた少女は、友達に見ているよう促しながら左手を花にかざした。
程なくして少女の左手は淡い緑色の光を放つ。
アンが息を呑む音を横で聞きながら、少女は元気になれと念じながら左手に力を込めると、枯れかかっていた花は今咲いたばかりのような輝きを取り戻した。
『すごいでしょう?』
花を食い入るように見るアンの姿が嬉しくって、少女は得意げに話を続けた。
『花だけじゃないんだ。動物の傷とかも治せるの。人にはまだ試したことがないけど、きっと人だって治せると思う』
『──この力を私以外の人に見せたことある?』
アンは花に目を離すことなく見たこともない怖い顔で言う。
素早く首を横に振って否定するとアンはホッと息を吐き、少女に向き直ると今度はギョッと目を見開いた。
『目の色が緑になっている』
『え?』
『……元の赤に戻った』
『私の目の色が緑になって今は赤に戻っているってこと? ──もしかしてこの不思議な力を使うと目の色が緑に変わるのかな? だって手から出る光も緑色だし』
少女の話を黙って聞いていたアンは少女の両肩を強く掴んだ。
『そんなに強く掴まれたら痛いよ』
『この力を絶対人に見せたら駄目』
『え? どうして?』
この力を怪我をした人に使えばきっと喜んでくれるはず。
もしかしたら食べ物やお金を貰える可能性もあるだけに少女の疑問は当然のものだった。
『どうしても。もし誰かにその力をちょっとでも見せたら絶交だから』
『絶交⁉ 絶交は絶対嫌だよ‼』
『じゃあ約束して。その力は絶対人に見せないって』
強い口調で迫られ、少女は渋々ながらも首を縦に振る。
その後少女はアンとの約束を守り、アンが死んだ後も約束は頑なに守られ続けた。
それから数年ののち、ブリュンガルデ王国が隣国リーンフィル公国に宣戦布告したことで北大陸の覇権をかけた戦争が勃発。
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