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第五章 共和国
第二十二話 ボス戦
しおりを挟む最下層に降りてきて感じたのは、ウーレンフートの最下層と違うということだけだ。
本当に最下層なのか疑問はあるが、それは自分の感覚を信じる。
そして・・・。
「エイダ!」
『最下層です』
エイダが断言したのだから、最下層なのだろう。
ここで、今まで作っていたプログラムを試してみる。
W-ZERO3を起動して、準備していたプログラムを起動する。
探索を行うプログラムだが、確かにこの階層から下に降りる階段は見つけられない。扉で塞がれた場所も、空気(魔素?)が入り込めれば探索ができる。やっと完成した魔法だ。まだ、魔石にはセットアップしていないが、W-ZERO3からなら起動が可能だ。使いどころが難しい・・・。言葉を選ばなければ、殆ど意味がない魔法だから、ランチャーから起動が出来れば十分だと考えた。表示領域もいじっていないから、標準出力に結果が表示される。
表示もこだわっていないから、ローグ風の出力になっている。ASCII文字だけで表示される地図は、解る人にしか解らないだろう。地図の移動は、カーソルにした。さすがに、”h j k l y u b n”はキーボードをブラインドタッチしている時でないと使いにくい。
魔法陣なんかの転移トラップがあれば、罠表示するようにしてあるので、扉の中には階段も罠もないようだ。モンスターは、データベースには入れていない物のようだ。魔力パターンを記憶させているから、データベースに乗っている魔物はA-Yで表示される。タップすれば、戦闘履歴などが表示される。未見の魔物はZで表示される。
この階層には、上の階に戻る階段しか存在しない。
『マスター?』
「あぁ調べていただけだ」
W-ZERO3でマップを確認した。
解りやすい隠し部屋はなさそうだ。俺とアルバンとエイダ以外も、魔力を纏っているのは扉の奥に居る”主”だけだ。眷属を召喚されたりしたら増える可能性もあるが、現状では1体だけだ。大きさは解らないが、今までの強さからいきなり10倍の強さになったとしても対応は可能だろう。
それに、ウィルスではないが扉には罠の類が設定されていない。
閉まる仕組み位は組み込まれている可能性はあるが、ボスを倒さなければ、扉が開かないような”罠”は仕掛けられていない。この”罠”はウーレンフートで判明している。罠の解除を行えば、戦闘中でもボスの前から逃げられる。だから、罠が扉に仕掛けられていないことを考えると、途中退場ができる設定になっているのだろう。
この魔法は気合を入れて作ったけど、使いどころが難しい。
多分、ダンジョンのように閉鎖された場所なら使えるけど、外ではプログラムとして制限を掛けなければ動かないだろう。異常系をどこまで考えられるかが、システム構築では必須なスキルだ。特にエラー内容を読まないで、安易にキャッチしてスルーしているようなシステムでは、イレギュラーな状況に対処が出来なくなってしまう。
ランチャーでの起動で十分な魔法で、俺だけが使うことを想定しているプログラムだから、異常系もあまり深く考えていない。
「アル。次がボスの部屋だ」
「うん!攻略する?」
「そうだな。ウーレンフートのような罠はないようだし、攻略してしまっても問題はないだろう」
「わかった!兄ちゃん。おいらに戦わせて」
「そうだな。まずは、ボスを見てからにしよう」
「うん!」
扉を開けると、中央に居るのは、ベヒーモスのような姿だが、ベヒーモスならデータベースに登録されている。上位種には見えない。大きさも知っているベヒーモスよりも格段に小さい。
「エイダ!」
『レッサーベヒーモスだと推測します。ベヒーモスよりもランクが低い魔物です』
ベヒーモスなら、アルバンだけだと倒せないだろうけど、ランクが低い魔物ならなんとかなる可能性が高い。
「アル。やってみるか?」
「うん!」
俺とアルとエイダは、開いた扉からボスが居る部屋に入る。
アルが、双剣になるように構えて飛び出す。
レッサーベヒーモスも迎撃態勢になっているが、最初の攻防はアルの方が若干だけ守勢に回っていたが、エイダの支援魔法で反応速度が上げられてからは、徐々にアルバンが優勢になる。
”ヘイヤ!”とか”アヒュゥ”とか気が抜ける声を発しているが、アルバンはしっかりとレッサーベヒーモスを追い詰めていく。
「問題はなさそうだな」
『はい』
俺とエイダが確信したのは、アルの左手に持つ剣が、レッサーベヒーモスの右目にダメージを与えたからだ。
時間にして、30分。長いのか、短いのか、判断は難しいが、アルバンが(エイダの援護があったとはいえ)単独で討伐できそうだ。
気合が入らない掛け声と、レッサーベヒーモスの咆哮だけが、ボス部屋に響いている。
俺たちが勝ちを確信してから、さらに30分の時間が経過した。
アルバンは、60分に渡って動き回っている。そこまで長期戦になるとは思っていなかったけど、アルバンの戦い方では、時間が必要になるのも想定の範囲内だ。近づいて、ダメージを与えて逃げる。この繰り返しだ。
ダメージも最初は軽い物で、レッサーベヒーモスに弾かれていたが、レッサーベヒーモスが攻撃に魔力を使い始めてから、ダメージが通るようになった。
そこからは、ダメージだけではなく動きも悪くなり、アルバンが優勢になっていく。
しかし、巨体というのは、それだけで脅威だ。
ベヒーモスよりも2-3割小さいと言っても、アルバンの数十倍の大きさだ。
動きが鈍くなってきても、攻撃のパターンもアルバンに突進を繰り返すだけになっている。
「エイダ。レッサーベヒーモスは攻撃に回すだけの魔力が無くなって来たのか?」
『はい。マスターの推測通りです』
「そうか・・・」
それから、10分が経過した。
突進の速度も目に見えて遅くなってきている。
最初は、突進を躱してもダメージを与えるのが難しかったが、今では突進の最中にダメージを与えることに成功している。
こうなると、負けるのが難しい状況だ。
「アル!」
「うん!」
アルバンが、余裕を見せ始めたから、注意の意味で声をかける。
俺からの声掛けは、”終わらせろ”と受け取ったようだ。
レッサーベヒーモスの突進を躱してから、ダメージを与えるのではなく、距離を開ける。
両手に持った剣を合わせて、短剣のような形にする。
そして、魔法を発動する。
アルバンが持っている剣は、俺が改造した物だ。
バラバラの時には、一般的な剣と同じだが、二本を合わせて持つと、回路が繋がって、お互いの剣にはめ込まれている魔石にインストールしているプログラムの起動ができるようになっている。
アルバンが、魔法の詠唱を始める。短い、単語だけを繋いだ簡素な物だ。インストールしているプログラムに渡すパラメータを詠唱すればいいだけにしてある。
魔法が発動する。詠唱が成功した証左だ。
アルバンが構えた剣に、氷属性の刃が現れる。
本人が持つ属性以外でも、プログラムで与える事で、実現が可能になっている。しかし、放出系の魔法には使えない。魔石への設置が絶対条件なので、以外と使いどころが難しい。
しかし、剣を魔剣化するにはいい技術だ。
アルバンが、氷の刃をレッサーベヒーモスの足に当てる。
”ぬおぉぉぉぉぉ”
気合が入った、気合が感じられない声をアルバンが発しながら、レッサーベヒーモスに食い込んだ氷の刃に力を入れる。
レッサーベヒーモスも、足に最後の魔力を集めているように、氷の刃を押し返そうとするが、アルバンの力と氷の刃が強い。徐々に、喰い込んでいき、足の切断に成功した。
一本の足を無くしたレッサーベヒーモスは、大きな音を立てながら倒れ込む。
アルバンは、足を切断したのを確認してから、レッサーベヒーモスから距離を取る。
倒れ込んだだけで、まだ絶命はしていない。
「アル。仕上げだ」
「うん!」
氷の刃のまま、大きく振りかぶって、レッサーベヒーモスの首に刃を当てる。
そのまま、同じように気合が入った。気が抜ける掛け声と共に、力を入れる。
すでに、魔力が尽きているレッサーベヒーモスは対抗できる手段は残されていない。
アルバンの刃が、レッサーベヒーモスの首を切断する。
「おいらの勝ち!」
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