スキルイータ

北きつね

文字の大きさ
231 / 323
第二十三章 旅行

第二百三十一話

しおりを挟む

「シロ。ありがとう」

「ううん。カズトさん。僕・・。嬉しいです」

「それで、騙していたようで悪いけど、来週のシロの誕生日だけどな」

「うん」

「誕生日の前日と前々日とその前の3日間を使って結婚式をやる事が決まっている」

「え?結婚式?だれの?」

「俺とシロの結婚式を3日かけて行う」

「聞いてないよ?」

「うん。言ってないからな」

「どうして?」

「シロを驚かせようと、誰かがいいだした」

「だれ?」

「うーん。覚えてないな」

 フラビアとリカルダだったと思うけど、正確じゃないからな。

 フラビアとリカルダが控えていた部屋の扉が開けられた。

「シロ様」「姫様」

「フラビア!リカルダ!あぁぁ!!カズトさんに進言したの、二人だな!」

 フラビアとリカルダは顔をそむけた。

「シロ。結婚式をやりたくないのか?それなら、辞めるぞ?」

「え・・。やりたくない・・・。わけではないです。ただ、ちょっと・・・。恥ずかしい・・・。かな・・・」

「シロ様」「姫様。シロ様は、可愛いですし、綺麗です。大丈夫です。自信を持ってください。それに、事前に言っていたら、絶対に嫌だと言って逃げようとしたはずです!」

「そうだぞ!シロは誰よりも綺麗だぞ!」

 シロがフラビアの言葉を聞いて目をそらした。自覚があるのだろう。

「カズトさん・・・。僕、わかりました。結婚式を・・・」「フラビア。リカルダ。そういう事だ。頼むぞ!」

 少し食い気味に決定する。シロの気が変わらないうちに決定させてしまうのがいいだろう。

「はい」「かしこまりました」

「え?」

「シロ。今日は、このペンションに泊まる。明日から、シロはフラビアとリカルダと一緒にローレンツの所に行ってくれ」

「あっ・・・。わかりました」

 フラビアとリカルダの顔を見てなにか気がついたのだろう。

「シロ様。よろしいのですよね?」

「僕は、もうアトフィア教の人間じゃない。前のように盲目的に信じられなくなっている。そんな人間が、いつまでもアトフィア教の関係者であっていいはずがない」

「はい。ローレンツには嫌な役目を押し付ける結果になってしまうのですが、シロ様と私とリカルダの3名の儀式を執り行ってもらいます」

 フラビアとリカルダからは儀式を行って、アトフィア教としてのケジメを付けるとしか聞いていない。
 脱退の儀式だとは・・・。ちょっとは思ったけど、本当にそうだったとは・・・。危険は無いと言っていたし、ローレンツは信頼できる。もう任せると言ってしまっているので、任せるのがいいだろう。

 でも、確認だけはしておく必要がある

「でも、シロも、フラビアも、リカルダも死亡した事になっているよな?」

「はい。ローレンツに頼んで、本国に確認してもらいました。私たちは、戦いで捕虜になって死亡したとなっています」

「それなら、今更儀式をしても・・・。あぁだから、ケジメなのだな」

「はい」「そうです」

「シロもいいのだな」

「はい。僕は、本当にいろいろ考えました。今思えば、初めて会ったときの事は恥ずかしいですが、あれも僕の本当の気持ちです。でも、間違いではなく・・・。違います。正しい事なのか?正しくない事なのか?僕が判断していなかった事が間違いだった。僕は、神からの言葉だと言われて信じているだけで、何も考えていなかった。僕は、カズトさんと一緒に居て、いろいろ考えました。そして、いろんな人と接しました。そして、結局は正義なんて物は、一つではなく人の数・・・。ううん。もっともっと・・・。多くの正義が存在していると知りました。僕は、僕の正義を信じて、僕の心のまま、カズト・ツクモを愛しています。そして、自分の手の届く範囲の人たちと一緒に何をしたら幸せになれるのを考えます。だから、アトフィア教の教えで正しいと思える事は取り込んで、間違いは間違いだと言えるようになるために、アトフィア教から完全に離れます。カズトさんに持っていてもいいと言われましたが、アトフィア教の経典やシンボルはローレンツに正式に返します。アトフィア教と決別します」

 シロは俺の目を見てはっきりと宣言した。
 考えていたことを一気に言って少しだけ恥ずかしそうにしている。自分の考えをこうして口に出す事もなかったのだろう。

 俺と居た時間で、皆と接した時間で、シロが考えてくれたのと思うとすごく嬉しい。

「わかった。シロ。これから、下で眷属達と宴会をするけど、参加するよな?」

「はい!もちろんです!」

「フラビアとリカルダは、準備があるから不参加だ。本当に、クリス以外の眷属が全員集まっている。スーンたちは来ていないけどな」

「え?カイ兄様とウミ姉様とライ兄、リーリア、オリヴィエ、エリン、エーファ、ティア、ティタ、レッシュ、レッチェ、エルマン、エステル、クローエ、アズリ、ペネム、ティリノ、チアル・・・。ですか?」

「あぁぁステファナとレイニーも来ている。あと、シャイべが居るぞ」

「あ!」

「ステファナとレイニーは、そのままシロの従者兼護衛として、シロと過ごす事になっている」

「わかりました。それで、カズトさん。このペンションは?」

「ん?俺とシロだけの家だ。今日は、眷属達も入ってきているけど、宴会が終了したら、俺とシロ以外は許可しないと入る事ができない」

「え?それって・・・」

「そうだ。結婚式が終わったら、ここに二人だけで帰ってくる」

「そうなの・・・。ですか?」

「あぁシロがベッドを汚したら、流石に翌日にはステファナかレイニーかリーリアやオリヴィエに来てもらうけどな」

「・・・。カズトさん。メイドドリュアスさんがいいのですが・・・。ダメですか?」

「ははは。いいよ。シロのいいようにしよう」

「はい!ログハウスで、僕が一人で寝た後のベッドを綺麗にしてくれるメイドドリュアスさんが居るのですが彼女がいいです」

「わかった。オリヴィエに伝えておく」

 二階から一階に降りたらすでに料理の準備は終わっていた。

 俺たちの到着を待っていたようだが、待ちきれなくなっている者も中には居た。ダンジョンコアの一部はすでに食べて飲んでいるようだ。
 人型になれる眷属は人型になって楽しむようだ。

 俺への祝福よりも、眷属からはシロへの祝福のほうが多いようだ。

 俺の横には、カイとウミが居て、膝の上にはエリンが座っている。エリンも最初に会ったときよりも大きくなった。定位置になっている膝の上もそろそろ終わりにしたほうがいいかもしれないな。

「エリンも大きくなったな」

「うん!カズトパパとシロママも早く可愛い子を作ってね!エリンの旦那様になるのだからね!」

「え?」

「ううん。なんでも無い!カイ兄!ウミ姉!なにか食べよう!」

 エリンがカイとウミを連れて食事が置かれたテーブルに向かっていった。少し足元がおぼつかない。
 今、なんかエリンが重大なことを言った気がしたけど・・・。
 テーブルの上を見ると、ワインの瓶が一本・・・空になっている。俺は飲んでいない。カイもウミも飲まない(よな?)。そうなると、エリンが飲んだのか?
 竜族だし問題は無いかもしれないが・・・。それでも、一本は多いだろう?

 そう思って周りを見るとかなりのアルコールが持ち込まれている事が解る。

 エーファと目が合った。
 手招きすると観念した表情でコップを置いて俺のところまで来た。

「旦那様。何か、御用ですか?」

「エーファなのか?」

「なんでしょうか?」

 ワインの瓶を指差す。

「・・・」

「エーファ?」

「旦那様。私は、駄目だと言ったのですが・・・」

「それじゃ誰だ?」

「・・・」

 エーファが目で合図を送ってきた。
 目線の先では、樽を抱え込んで飲んでいる奴らが居た。

「わかった。エーファ。悪かったな」

「・・・いえ、旦那様。ペネム様もティリノ様もチアル様もクローエ様も皆喜んでいらっしゃるので・・・。あの・・・。その・・・」

「別に罰を与えようとは思わないし、構わないと思っている。ただ、節度は守れよ」

「はい!」

 そう言って頭を下げて、エーファが俺から少し離れた。

 そして・・・

「皆。旦那様からのお許しが出た!節度を守って、飲むぞ!今日は、めでたい。旦那様と奥様が結婚を決意された日だ!我らが祝わなくて誰が祝う!朝まで飲むぞ!」

 おいおい。許可を出したつもりは無いのだけどな。
 まぁ楽しんでいるし、喜んでいるから、今日くらいはいいか・・・。

 しばらく、エーファやオリヴィエやリーリアだけではなく、ダンジョンコアたちやアズリからコップに入ったワインやらどこから持ってきたのか蒸留酒を飲まされた。
 シロは早々にステファナとレイニーが連れて批難していたので、余計に俺が飲むはめになった。

 今日くらいは甘んじて受けようと思った・・・・。

 しかし、本当に朝まで飲む事になるとは思っていなかった。
 途中で気がついて”レベル6分解”のスキルカードを使わなければ倒れていたかもしれない。

 レベル6100,000円相当のスキルカードを使って、アルコールを分解したのは俺くらいだろうな。レベル4体調管理やレベル5治療も使ってみたのだが、レベル6分解でアルコールを分解するのが、アルコールの酔いには効果があった。レベル7回復でも良かったのだが、身体の中に入ったアルコール成分だけを分解できるとは思わなかった。分解して何になったのか考えると、ちょっと怖くなったのだが気にしても駄目だろう。考えないことにした。
 解毒のスキルカードとかあればそっちを使っても良かったのだろうけどな。
 今度探してみようかな・・・。それとも、ドワーフたちに聞けばなにかいい方法を教えてくれるかもしれないな。
しおりを挟む
感想 193

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

どたぬき
ファンタジー
 ある日乗っていた飛行機が事故にあり、死んだはずの井原は名もない世界に神によって召喚された。現代を生きていた井原は、そこで神に”ダンジョンマスター”になって欲しいと懇願された。自身も建物を建てたい思いもあり、二つ返事で頷いた…。そんなダンジョンマスターの”はじまお”本編とは全くテイストの違う”普通のダンジョンマスター物”です。タグは書いていくうちに足していきます。  なろうさんに、これの本編である”はじまりのまおう”があります。そちらも一緒にご覧ください。こちらもあちらも、一日一話を目標に書いています。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...