スキルイータ

北きつね

文字の大きさ
304 / 323
第三十章 新種

第三百四話

しおりを挟む

 最下層に、ファビアンとイェレラとイェルンとロッホスとイェドーアが転移してきた。
 呼び寄せたので、当然なのだが、本人たちは何が発生したのか混乱していた。

 俺が居るのを見て、俺が何かをしたのかと考えているようだ。
 表情を変えすぎの気がするが、俺を見て安堵するのは、少しだけ違う気がする。時に、ファビアンを除いた4名は、護衛の役割を含めて、ルートガーに報告して、再教育を受けてもらおう。

「揃ったな」

 皆が俺の前に来て、頭を下げる。

「ツクモ様」

「攻略が終わった。今から、地上に帰る。君たちを呼び寄せたのは、コアの力だ。詳しい話は、デ・ゼーウを交えてした方がいいだろう」

「はい。お願いいたします。それにしても、ダンジョンの攻略が終わったとは・・・。それに、この場所は?」

「この場所は、ダンジョンの最下層。ボスが居た場所だ」

 俺の言葉で、皆が部屋の中を見回す。
 すでに地上に戻るための魔法陣は起動されている。

「全員が、魔法陣に入ったら1階層に転移する。もし、最下層を見て回るのなら、時間を預けるぞ?」

 俺の言葉で、皆が嬉しそうな表情をする。
 たしかに、ダンジョンの最下層なんて、来たくても来られる場所ではない。

 戦闘跡は残っていない。素材も落ちてはいないが、最下層というだけで嬉しいのだろう。
 壁に触ったり、床に触ったり、中心で天井を見たりしている。観察してみれば、観光地に来た人たちのようだ。流石に、ダンジョンの最下層を観光地にできるとは思えないが、ダンジョンの低階層なら観光地を作っても面白そうだ。アトラクションは、アスレチック的な物を用意すれば、勝手に競い合って遊んでもらえそうだ。低レベルのスキルカードを商品として提供してもいい。

 30分ほど最下層を見て回って満足したのか、皆が俺の周りに集まってきた。

「いいのか?」

「はい。お待たせして、もうしわけありません」

 ファビアンが俺に頭を下げるのと同時に4人も揃って謝罪の言葉を口にする。

「気にするな。戻っていいか?」

「はい。お願いします」

 ファビアンから順番に魔法陣の上に歩いてきた。最後は、カイが魔法陣に足を踏み入れる。

 魔法陣の上に全員が乗った。魔法陣が光りだして、頭の中でカウントダウンが始まる。
 俺も聞いていなかったので驚いたが、皆の驚愕の声を聞いて、落ち着きを取り戻した。

 カウントが終わると、光が俺たちを包み込む。演出なのは解っているが、過剰演出にしか思えない。

 ”イワノナカニイル”にならずに、1階層に戻ってこられた。皆が揃っているのを、目視で確認をする。
 皆を確認していると、興奮しているようだ。

 ダンジョンの攻略と、最下層の散策。そして、1階層に戻ってきたのだから、興奮するなというのが無理なのだろう。

「ファビアン。デ・ゼーウに報告に行きたい。ダンジョンを出てからになるが、手続きを頼む」

「かしこまりました」

 ダゾレに転移先を聞いていたので、ダンジョンから出るのには苦労しなかった。
 全ての分岐で右側を選んでいけば出口が見えてくると言われていた。

 そういうやり方を”どこ”で覚えたのか聞いてみたいが、楽ができるから歓迎なのだが、元ネタが気になってしまう。

 地上に出ると、まだ明るい時間帯だ。

「え?なんで?」

「それはこっちのセリフだ。なんで、戻ってきた!」

 思いもよらない人物がダンジョンの出口に居た。
 入口と出口が一緒なので、居てもおかしくはないが、一人で居るのがおかしい。

「ルート。デ・ゼーウの手伝いはいいのか?」

「アイツはダメだ。お前よりも酷い」

「ん?デ・ゼーウか?」

「あぁ。ダンジョンを確保したあとのビジョンも無ければ、ドワーフたちが煩いから鉱石を買えばいいとか言い出す」

 ルートガーは、デ・ゼーウが酷いというが、エルフ大陸でも、アトフィア教の連中とか、チアル大陸に居た者たちとか、同じレベルだ。1歩や2歩先に何があるのか考えて施策を行う者の方が稀有だ。
 目の前にある厄介な問題を解決するだけで精一杯で、その先を考えない。

「わかった。わかった。それで、なんでダンジョンにお前が来ている?」

「ダンジョンを確保したあとに何が必要になるのか・・・。まったく、何もない状態で驚いていたところだ」

「え?何もない?」

 俺とルートガーの会話に入ってきたのは、ファビアンだ。

 ファビアンとしては、施設の規模は別に、ダンジョンの周りには、いろいろな街が勝手に建てた物がある。
 必要な物が揃っている認識で居るようだ。

 確かに、ゼーウ街が確保するのなら、いろいろと建築した方がいいだろう。
 俺たちが指摘するのは違うと思って、ファビアンにも話をしていないのだが、ルートガーがやる気になっているのなら任せてもいいかもしれない。

「ファビアン。ドワーフたちを含めた支援は決めているのか?」

「支援?」

「鉱石は低階層で採取ができる。全部を、ドワーフたちに渡すのなら、問題はないが、違うのなら取り決めをしておかないと、ドワーフたちは際限なく、要求してくるぞ?」

「え?ドワーフたちが、鉱石を・・・。え?」

「ルートガー。任せていいか?」

「俺か?」

「他に、誰が居る?」

「道筋を作るだけだぞ?」

「そこまでしなくていい。最初の交渉で、ゼーウ街が有利になれば十分だ。確かに、ゼーウ街が安定してくれれば、俺たちにもメリットがあるが、それは中央大陸への足がかりが、ゼーウ街だという話で、他の街になっても、俺は困らない。条件次第だ」

「わかった。ダンジョンの整備と、ドワーフたちへの対応だな」

「それと、他の街との交渉の前準備だ」

 ファビアンは会話に加わらない。
 ルートガーは少しだけ考えてから了承の意を伝えてきた。

「ダンジョンの攻略は?」

「終わったぞ。証拠も持ってきた」

「わかった。デ・ゼーウ殿に説明をするか?」

「そうだな。フェビアンに報告に行ってもらって、その後に面会を考えていた」

「そうか、ファビアン殿。一緒に、デ・ゼーウ殿に報告に行こう」

「はい」「あっ。ルート。こいつらを連れて行ってくれ」

 4人をルートガーに返す。
 俺の側に居られても困る。

「わかった」

「それから、攻略の証拠を渡す」

 ダミー・コアを渡して、ルートガーに説明を行う。
 ルートガーなら、コアを見たことがある。状況がわかるだろう。しっかりと睨まれたから、把握が出来たのだろう。

「それで、ダミー・コアでは何ができる?」

 さすがは、ルートガーだ。話が早くて助かる。
 ダミー・コアの機能を説明する。

「そうなると、監視というよりも、管理が近いのか?」

「そうだな。人数の把握ができる程度だと思ってくれればいい」

「いや、かなり、ゼーウ街からしたら有効なアイテムだ」

 ルートガーの構想では、ダンジョンを出る時に”税”を徴収することを考えているようだ。
 ダミー・コアがあれば、出る前にチェックを行い。申請した人数と出た後の人数を比べれば、”税”を逃れるために隠れて抜け出そうとする者を見つけることができる。

「そうか?ルートに任せる。あとは、素材系は、ファビアンに渡せばいいよな?」

「あぁ。売るのか?」

「いや、今回は、デ・ゼーウからの依頼で潜ってから、素材はそのまま渡す。こちらで欲しいと思った素材は確保させてもらう」

「素材の確保は、お前が好きにすればいい。文句は言わないだろう」

「ルート。頼む」

「お前はどうする?」

「あぁ」

 視線を森の方角に移動する。
 カイとウミから、嫌な報告があった。確認しなくてもいいとは思うが、乗り掛かった舟だ。厄介ごとの可能性があるのなら、最初に芽を摘んでおきたい。

 俺の視線でルートガーも何かがあると思ったのだろう。

「わかった。交渉は任せてくれ。ファビアン殿。行きましょう」

 ファビアンが慌てて、荷物を持って、頭を下げる。
 同じように、4人も頭を下げてから、ファビアンの荷物を手伝うようにしている。ルートガーは、ダミー・コアを持ちながら、軽く会釈だけをして、背中を向けて歩き出した。
しおりを挟む
感想 193

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...