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第三十章 新種
第三百四話
しおりを挟む最下層に、ファビアンとイェレラとイェルンとロッホスとイェドーアが転移してきた。
呼び寄せたので、当然なのだが、本人たちは何が発生したのか混乱していた。
俺が居るのを見て、俺が何かをしたのかと考えているようだ。
表情を変えすぎの気がするが、俺を見て安堵するのは、少しだけ違う気がする。時に、ファビアンを除いた4名は、護衛の役割を含めて、ルートガーに報告して、再教育を受けてもらおう。
「揃ったな」
皆が俺の前に来て、頭を下げる。
「ツクモ様」
「攻略が終わった。今から、地上に帰る。君たちを呼び寄せたのは、コアの力だ。詳しい話は、デ・ゼーウを交えてした方がいいだろう」
「はい。お願いいたします。それにしても、ダンジョンの攻略が終わったとは・・・。それに、この場所は?」
「この場所は、ダンジョンの最下層。ボスが居た場所だ」
俺の言葉で、皆が部屋の中を見回す。
すでに地上に戻るための魔法陣は起動されている。
「全員が、魔法陣に入ったら1階層に転移する。もし、最下層を見て回るのなら、時間を預けるぞ?」
俺の言葉で、皆が嬉しそうな表情をする。
たしかに、ダンジョンの最下層なんて、来たくても来られる場所ではない。
戦闘跡は残っていない。素材も落ちてはいないが、最下層というだけで嬉しいのだろう。
壁に触ったり、床に触ったり、中心で天井を見たりしている。観察してみれば、観光地に来た人たちのようだ。流石に、ダンジョンの最下層を観光地にできるとは思えないが、ダンジョンの低階層なら観光地を作っても面白そうだ。アトラクションは、アスレチック的な物を用意すれば、勝手に競い合って遊んでもらえそうだ。低レベルのスキルカードを商品として提供してもいい。
30分ほど最下層を見て回って満足したのか、皆が俺の周りに集まってきた。
「いいのか?」
「はい。お待たせして、もうしわけありません」
ファビアンが俺に頭を下げるのと同時に4人も揃って謝罪の言葉を口にする。
「気にするな。戻っていいか?」
「はい。お願いします」
ファビアンから順番に魔法陣の上に歩いてきた。最後は、カイが魔法陣に足を踏み入れる。
魔法陣の上に全員が乗った。魔法陣が光りだして、頭の中でカウントダウンが始まる。
俺も聞いていなかったので驚いたが、皆の驚愕の声を聞いて、落ち着きを取り戻した。
カウントが終わると、光が俺たちを包み込む。演出なのは解っているが、過剰演出にしか思えない。
”イワノナカニイル”にならずに、1階層に戻ってこられた。皆が揃っているのを、目視で確認をする。
皆を確認していると、興奮しているようだ。
ダンジョンの攻略と、最下層の散策。そして、1階層に戻ってきたのだから、興奮するなというのが無理なのだろう。
「ファビアン。デ・ゼーウに報告に行きたい。ダンジョンを出てからになるが、手続きを頼む」
「かしこまりました」
ダゾレに転移先を聞いていたので、ダンジョンから出るのには苦労しなかった。
全ての分岐で右側を選んでいけば出口が見えてくると言われていた。
そういうやり方を”どこ”で覚えたのか聞いてみたいが、楽ができるから歓迎なのだが、元ネタが気になってしまう。
地上に出ると、まだ明るい時間帯だ。
「え?なんで?」
「それはこっちのセリフだ。なんで、戻ってきた!」
思いもよらない人物がダンジョンの出口に居た。
入口と出口が一緒なので、居てもおかしくはないが、一人で居るのがおかしい。
「ルート。デ・ゼーウの手伝いはいいのか?」
「アイツはダメだ。お前よりも酷い」
「ん?デ・ゼーウか?」
「あぁ。ダンジョンを確保したあとのビジョンも無ければ、ドワーフたちが煩いから鉱石を買えばいいとか言い出す」
ルートガーは、デ・ゼーウが酷いというが、エルフ大陸でも、アトフィア教の連中とか、チアル大陸に居た者たちとか、同じレベルだ。1歩や2歩先に何があるのか考えて施策を行う者の方が稀有だ。
目の前にある厄介な問題を解決するだけで精一杯で、その先を考えない。
「わかった。わかった。それで、なんでダンジョンにお前が来ている?」
「ダンジョンを確保したあとに何が必要になるのか・・・。まったく、何もない状態で驚いていたところだ」
「え?何もない?」
俺とルートガーの会話に入ってきたのは、ファビアンだ。
ファビアンとしては、施設の規模は別に、ダンジョンの周りには、いろいろな街が勝手に建てた物がある。
必要な物が揃っている認識で居るようだ。
確かに、ゼーウ街が確保するのなら、いろいろと建築した方がいいだろう。
俺たちが指摘するのは違うと思って、ファビアンにも話をしていないのだが、ルートガーがやる気になっているのなら任せてもいいかもしれない。
「ファビアン。ドワーフたちを含めた支援は決めているのか?」
「支援?」
「鉱石は低階層で採取ができる。全部を、ドワーフたちに渡すのなら、問題はないが、違うのなら取り決めをしておかないと、ドワーフたちは際限なく、要求してくるぞ?」
「え?ドワーフたちが、鉱石を・・・。え?」
「ルートガー。任せていいか?」
「俺か?」
「他に、誰が居る?」
「道筋を作るだけだぞ?」
「そこまでしなくていい。最初の交渉で、ゼーウ街が有利になれば十分だ。確かに、ゼーウ街が安定してくれれば、俺たちにもメリットがあるが、それは中央大陸への足がかりが、ゼーウ街だという話で、他の街になっても、俺は困らない。条件次第だ」
「わかった。ダンジョンの整備と、ドワーフたちへの対応だな」
「それと、他の街との交渉の前準備だ」
ファビアンは会話に加わらない。
ルートガーは少しだけ考えてから了承の意を伝えてきた。
「ダンジョンの攻略は?」
「終わったぞ。証拠も持ってきた」
「わかった。デ・ゼーウ殿に説明をするか?」
「そうだな。フェビアンに報告に行ってもらって、その後に面会を考えていた」
「そうか、ファビアン殿。一緒に、デ・ゼーウ殿に報告に行こう」
「はい」「あっ。ルート。こいつらを連れて行ってくれ」
4人をルートガーに返す。
俺の側に居られても困る。
「わかった」
「それから、攻略の証拠を渡す」
ダミー・コアを渡して、ルートガーに説明を行う。
ルートガーなら、コアを見たことがある。状況がわかるだろう。しっかりと睨まれたから、把握が出来たのだろう。
「それで、ダミー・コアでは何ができる?」
さすがは、ルートガーだ。話が早くて助かる。
ダミー・コアの機能を説明する。
「そうなると、監視というよりも、管理が近いのか?」
「そうだな。人数の把握ができる程度だと思ってくれればいい」
「いや、かなり、ゼーウ街からしたら有効なアイテムだ」
ルートガーの構想では、ダンジョンを出る時に”税”を徴収することを考えているようだ。
ダミー・コアがあれば、出る前にチェックを行い。申請した人数と出た後の人数を比べれば、”税”を逃れるために隠れて抜け出そうとする者を見つけることができる。
「そうか?ルートに任せる。あとは、素材系は、ファビアンに渡せばいいよな?」
「あぁ。売るのか?」
「いや、今回は、デ・ゼーウからの依頼で潜ってから、素材はそのまま渡す。こちらで欲しいと思った素材は確保させてもらう」
「素材の確保は、お前が好きにすればいい。文句は言わないだろう」
「ルート。頼む」
「お前はどうする?」
「あぁ」
視線を森の方角に移動する。
カイとウミから、嫌な報告があった。確認しなくてもいいとは思うが、乗り掛かった舟だ。厄介ごとの可能性があるのなら、最初に芽を摘んでおきたい。
俺の視線でルートガーも何かがあると思ったのだろう。
「わかった。交渉は任せてくれ。ファビアン殿。行きましょう」
ファビアンが慌てて、荷物を持って、頭を下げる。
同じように、4人も頭を下げてから、ファビアンの荷物を手伝うようにしている。ルートガーは、ダミー・コアを持ちながら、軽く会釈だけをして、背中を向けて歩き出した。
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