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第三十章 新種
第三百十話
しおりを挟むデ・ゼーウに情報を提供するために、ルートガーが部屋から出て行った。
方針も決まったのだし、もう大丈夫だろう。
もういい加減にチアル大陸に戻りたい。差し迫ってやることは思いつかないが、適当な理由を考えて帰ってしまおうか?
ルートガーが戻って来るまで、新種に関して、解っていることを考察しておこう。考えるだけしかできないけど・・・。
中央大陸は安定してくれた方が嬉しいが、荒れたら荒れたで接し方を変えるだけで、チアル大陸への影響は少ない。少なくなるように動けばいい。
そうなると、安全面や今後の動きを考慮すれば、”新種”はしっかりと考えておく必要がある。
チアル大陸が安全だと言い切れるまでは、可能性を潰していく必要が出て来る。その可能性も、”新種”が産まれる可能性を考えなければ、潰すこともできない。
「カイ」
俺の足下に居たカイが身を起こして、俺の横に座る。
反対側には、ウミが座っている。
他に眷属がいない時には、カイとウミは俺に甘えるように寄りかかることが多い。
ルートガーが居なくなった事が解って、ソファーの上でも大丈夫だと判断したのだろう。
『はい』
「新種は、今のところは、ゴブリンからの進化だよな?」
俺が見た”新種”はゴブリンを残していた。
”できそこない”は形が崩れているが、”ゴブリン”だったと思える。
今回も、”ゴブリン”が素体となっていると思えた。
『はい』『カズ兄。巣を攻めた時には、オークが進化したような奴らも居たよ』
カイの返事を、ウミが上書きするように、オークも居たと言ってきた。
「ウミ!他には?」
『うーん。解らない』
”蟲毒”をするのに、複数の種類の魔物を使ったのか?
オークがゴブリンの巣に居るのは・・・。無理がある。人為的に集められたと考えるのが妥当だ。
「そうか・・・」
『カズト様。何か懸念があるのですか?』
「あぁカイは気が付いているかもしれないけど、進化にはかなりの討伐が必要だ」
『はい』
「ゴブリンだけを集めることができたとして、同族同士で殺し合うような場面でも、一体が勝ち続ける状況になるのか?」
『それは』『カズ兄。巣を見ると、いくつかのグループに分かれていたよ?』
ウミの言うことは理解ができる。
「でもな。ウミ。進化した奴が率いていたのなら解るけど、ただ強いだけの個体が率いることはあるのか?」
派閥に分かれるまでは理解ができる。
このあとが解らない。
結局、一つの派閥しか生き残らなかったのか?
それとも吸収していったのか?
一つの派閥だけが生き残ったとして、残った派閥のゴブリンが、全て”新種”になったのか?
俺の様に、”名付け”が行われていれば、繋がりができるから可能なのか?
実験してみないと解らない。
でも、ダンジョンで発生する魔物を同じ所に閉じ込めても、同士討ちは行わない。
モンスターハウスのような罠を作った事がある。
数種類の属性も戦い方も違う魔物を同じ部屋に詰め込んだ罠だ。
コアが同士討ちを禁止していることもあるが、禁止しなくても、ダンジョンの魔物同士での戦闘は回避される傾向にある。
仲間意識なのか、同族でない者の場合でも戦わない。攻撃が当たることはあるが、それだけだ。
ダンジョンの外に居る魔物を集める?
それとも、ダンジョンから魔物を大量に移動させる?
どれも現実的には難しい。
増えた魔物を閉じ込める方が現実的だろう。
『カズト様。ウミの言っているオークは、新種ではありません』
『え?カイ兄。違うよ。あれは、新種になっていたよ!』
『違う。あれは、俺たちと同じように、正統進化をしたオークだ』
珍しく、カイがウミの言葉を遮るように否定する。
間違っていることを正すというよりも、自分の考えを押し通すような雰囲気だ。
カイも自信はあるが、確証がないのだろう。
カイの言い方で、気になる言葉がある。
「ちょっとまった。カイ。正統進化と新種は違うのだな」
俺の考えでは、新種は”進化体”の一つだと思っていた。オークは、新種ではなく、通常進化になったのなら、納得ができる。
しかし、カイの言い方では、進化と新種は違うとなってしまう。
『はい。新種は、進化の系譜から外れたイレギュラー体です』
イレギュラー?
その前に、進化の系譜の確認をしなければ・・・。
進化を深く考えていなかった。
スキルだけではなく、スキルカードが進化に関係している?
「カイ。進化の系譜とは?」
『はい。フォレスト・キャットでした。そこから、進化を繰り返しています』
「そうだな」
『新種は、フォレスト・キャットが何かの因子を取り込んで、例えば、シー・キャットに変ったような者たちです』
カイの説明で、一つだけ気になった事がある。
系譜とは違う”因子”を組み込めば、もしかしたら・・・。
「そうか、新種は、進化した魔物だと思ったのだが、特殊進化だと考えればいいのか?」
『わかりません。しかし、新種は通常の進化の系譜ではないと思います』
「なぜ?」
『はい。進化の系譜なら、戦い方が大きく変わることはありません。また、進化の失敗もありません。そして、意思を持つことはあっても、失うことはありません』
カイが言い切っているのなら間違いはないだろう。
意識を獲得することがあるのは、経験しているから解っている。コアも、コアの状態では、意識を持つことはない。名付けて、眷属にすることで、個性が産まれる。その時に、意識を獲得しているの。
そう考えれば、獲得した意識を失うのは、進化とは違う仕組みだと考えられる。
「ん?カイとウミは・・・。あぁ俺と契約したからか?」
『はい』
カイの言っている内容なら、検証が可能かもしれない。
ゴブリンを進化させてみて、新種にならなければ、進化と新種は別な可能性が高い。
問題は、”できそこない”の方だけど、カイの説明だと、進化の失敗に該当するのだろう。
あとは、”因子”だが・・・。
「カイ。因子に、心当たりはあるか?」
『ありません』
言い切ったが、今までと違っている。
何か、心当たりがあるのだろう。言い難いとは違う。確証が持てないのだろう。
『ゴブリンの巣は一か所だけだけど、エルフの島にいる時に襲ってきた”できそこない”たちとは、違う感じがしたよ?』
ウミの”感”は、よく当たる。
同じ”できそこない”に見えても、違う?
「ん?ウミ?違う?何が違った?」
『うーん。うまく言えないけど、元は同じゴブリンの弱い奴だけど、あ!そうだ。シロ姉とステファナの違いみたいな?』
ウミも確信は持てないようだが、もしかしたら・・・。
「人の因子を組み込んだゴブリンか?」
カイも、この結論には達していたのだろう。
ただ、確証が持てないのと、証拠がないので、”ありません”と答えたのだろう。
『うーん。よくわからないけど、同じだけど、違うみたいな感じ!』
ウミの言い方では、因子の問題では無いようにも思えるけど、的を射ているのかもしれない。
”因子”をDNAと考えればいいのか?
子供を産むのではなく、自らに取り入れて進化の時に、DNAが進化に作用する?
生殖行為だと考えるのが一般的だけど、取り込むと考えると、生殖行為ではないと思う。
そして、摂取でもないだろう。それなら、もっと前から”新種”や”できそこない”が現れていてもいいはずだ。
やはり、人為的にDNAを打ち込まれた可能性を考えるのが妥当だ。
もし、俺が考えているような方法だとしたら・・・。
実際に行った奴らを許すことができない。許しては行けない。どんな理由があっても・・・。だ。
新種の考察は、チアル大陸に帰ってから、本格的に調べないとダメだ。
シロにも、フラビアにも、リカルダにも確認をして、あとは教会勢力にも確認を行おう。
あと、奴隷商のメリエーラにも確認をしたほうがいいかもしれない。
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