54 / 58
【騎士二人】門番と騎士
しおりを挟む
私は、王家に仕えている。
仕えていると言っても、下っ端の下っ端の下っ端だ。しかし、私はこの仕事に誇りを持って挑んでいる。陛下から任命された職務だ。
「先輩」
最後まで残った部下だ。
軽いが、仕事はきっちりとやる。
「なんだ?」
「誰も来ませんよ」
この時間だと、貴族連中が陛下に面会を求めて訪れる。
「煩い。お前は・・・」
「はい。はい。わかっています。でも、この国はもう終わりですよ?」
「違う」
「違いませんよ」
「国王は残っていますが、有力な貴族連中も、皆が・・・」
「陛下だ。言葉を慎め。まだ陛下がいらっしゃる」
「その残っている人が問題ですよ」
「貴様は!」
「先輩。俺も・・・」
逃げ出すのか・・・。
「勝手にしろ」
これが現実だ。
この国は終わるだろう。
明日、終わるかもしれない。明後日かもしれない。しかし、私は”門番”の仕事を陛下からの任命されている。
私は、陛下が住まわれる王城を守る最初の騎士だ。
許可がない者を通すわけには行かない。それが、私の誇りであり矜持だ。
---
門番は、私だけになってしまった。
今朝、アイツも立っている俺の所まで来て、一緒に逃げようと言ってくれた。
言葉は嬉しかったが、私にはその提案を受け入れることはできなかった。
「先輩。死なないでください。帝国のやつらは、逆らわなければ命は・・・。いいですか、絶対に逆らわないでください」
アイツの言葉だ。
解っている。帝国の奴らは、王都を取り囲んでいるが、市民には手を出していない。逃げ出した貴族連中も、拘束された者は居るとは聞いているが、罪なき者を罰してはいない。
罰しているのは権力をかさに着て、立場の弱い者から搾取していた者だけだ。王国の法に則って捌いている。権力が通じないだけだ。帝国と戦って死んだ王国兵の家族には、帝国が定める見舞金と遺族年金を約束している。
全ては、先頭で戦っている騎士が行っていることだ。自国の兵でも、王国民に暴力を振るった者は、厳罰を与えている。
地方都市で、帝国兵が王国民の女性を凌辱した。激怒した騎士は地方都市の門の前で、王国民と帝国兵が見ている前で、女性を凌辱した男たちを張り付けにした。そして、自らの剣で男たちの手と足を切り落とした。男たちは、張り付けにされた状態で死んでも放置された。帝国兵の中には、男たちの助命を嘆願したものたちも居たが、騎士は嘆願してきた貴族家の者を、その場で首を刎ねた。
王国は、もう終わりだ。
王城には、陛下と最後まで共にすると言った者たちが残っている。
門番が一人になってしまった。
でも、門を守らなければ。もうすぐ、帝国が来る。帝国の騎士が門を通ろうとするだろう。
---
「起きろ!」
寝てしまったのか?
門が閉まっていることで安心した。門を背にして剣を抱いて寝てしまっていたようだ。
「あなた方は?」
「門を開けろ」
「できません。ここは、ファロウズ王国の国王陛下が住まわれる王城です。面会のお約束が無い方をお通しするわけには行きません」
「殺すぞ!」
「私も、死にたくはありません。しかし、一度、陛下から”門番”を任されたからには、殺されるからと言って逃げるわけには行きません」
「本当に殺すぞ。俺たちは、お前を殺して、門を壊すこともできる」
「解っております。しかし、私にも”門番”としての誇りがあります。貴方たちが、帝国兵としての誇りを持つのと同じです。お引き取り下さい」
「約束はどうしたら取れる?」
「所定の手続きがあります。王国では、これが”法”です」
「相分かった。手続きを教えていただけるか?」
「それは、私の権限では行えません」
「では、どうしたら?」
「わかりました。ここでお待ちいただけますか?詳しい者が居るか確認してまいります」
「お手数をおかけするが、頼めるか?」
「はい」
通用口を使って中に入る。多い時には、1,000人もの人が働いていた王城だが、現在では10名にも満たない。
寂しくなった。
陛下の世話係をしている老女を捕まえて、事情を説明する。
内政官が残っておられた。責任者は逃げてしまっていたが、実務を取り仕切っていた者が残っていた。面識がある。他にも、数名手続きに詳しい者たちを連れて、門に戻ると、馬上に居た騎士だけが残っていた。
剣を地面に突き刺している立っている姿は、騎士の名に恥じない姿だ。
金髪の髪が何故に靡いている。
絵画の一部だと言われても信じてしまうだろう。
声から察していたが、姿を見て確認した。
この者が、帝国軍の最高責任者。姫騎士で間違いない。そして、帝国の第一継承権を持っている。オリビア殿下だ。
他の者も、姿を見て確信したのだろう。
跪こうとするが、皆が踏みとどまった。
私が、殿下の前に出て、話始めたからだ。
私の役目は、門番だ。
帝国の第一継承権を持つ姫騎士でも、私のやることは変らない。
許可がない者を通すわけには行かない。
---
王国は、自らの子を食べる獣と同じだ。
自ら決めた”法”を守らないだけではなく、貴族連中が横柄に振舞っている。
帝国も同じ穴の狢だったために、長年に渡って小競り合いを予定調和の様に繰り返していた。
私は、そんなくだらない戦争に終止符を打ちたかった。
国内の不穏分子を掣肘するには力が居る。
私が、第一位の継承権を持っていようとも、追い落とそうとする者たちは多い。私の立場は、万全ではない。父上である陛下がご存命の間に、確固たる地位と足場を確保しなければならない。
それに、私の背後を守らせる従士が必要だ。
駒は揃った、武力に秀でた者。知恵に秀でた者。皆が私に忠誠を誓ってくれている。
だが・・・。私が欲しいと思う最後のピースが見つからなかった。私を守り、私にさえも従わない者。
見つからないまま、王国に侵攻した。
最初の戦いに勝利をおさめて、宮廷貴族共の帰還命令を無視して、戦場を駆け巡った。
部下にと押し付けられた貴族の子弟が、王国の都市で軍規違反を起こし始めた。たるみ始めていた。
「殿下!ご再考を!」
貴族の子弟に泣き付かれた貴族たちが帝国から駆けつけてきた。
ご苦労なことだ。
「軍規違反だ。一考する価値もない。くっ」
薬か?
一部の貴族が、違法薬物を扱っていると聞いたことがある。
「やっと効いたか。女の癖に・・・。おい。姫殿下はお疲れのようだ!」
「貴様ら!」
「あとは、お任せを、貴女の戦果も全部、私たちが頂きましょう。貴女は、明日・・・。卑劣な王国兵に討たれるのです」
私の天幕を見れば、見たことがない者に変っている。
番をしていた者が買収されたか?
不覚。仲間を信じすぎたか?
短剣を取り出して、自分の腿を突き刺す。
その勢いで、貴族たちの首と、従者たちの首を切り落とす。
「誰か!」
「は」
私の意識は、闇に閉ざされた。
報告では、倒れた私を見つけた部下の一人が事情を察して緘口令を発布した。
薬が抜けた私は、軍規違反を起こした者たちを処断した。
王国の王都を半包囲して、半月が経過した。
逃げ出してきた貴族や商人から情報を得て、王都に残っているのは、国王と数名だけだと解った。
王国の命運も、あとわずかだ。
明日。
王国の命運を断ち切る。部下の前で、宣言をする。
やはり、王国も帝国も同じだ。
腐った貴族連中が蔓延っている。豪商と言われる者たちも同じだ。王国を飲み込んだあとは、帝国だ。腐敗の温床である宮廷貴族共を一掃する。
その為にも、最後のピースが必要だ。
---
部下に宣言して、王都に踏み入った。
逃げ出せなかった市民たちが、窓の隙間や路地から私たちを見ている。無様な姿を見せられない。市民を害するつもりもない。
少数で王城に向かう事にした。
部下たちは、捕えた貴族や豪商の屋敷を抑えに行った。中に証拠が残っている可能性もある。
また、王都の入口で炊き出しの指示を出した。
報告では、半年以上も物資が不足していたはずだ。配給を行うように指示しても、豪商や貴族たちが奪い合っていたようだ。腐っている。本当に、一度殺しただけでは足りない連中だ。
王城には簡単に到着した。
門番が残っているのか?
寝ているとは、こんな状況で残っているのも凄いが、寝てしまっているのも凄いな。
「起きろ!」
「あなた方は?」
私たちを見ても驚かない。想像はしていたのだろう。それでも、しっかりと起きて立ち上がった姿は、門番の基本をしっかりと抑えている。
「門を開けろ」
部下の言葉は乱暴だが、甘くみられるわけにはいかない。
「できません。ここは、ファロウズ王国の国王が住まわれる王城です。面会のお約束が無い方をお通しするわけには行きません」
なっ
少数といっても、30名は居るのだぞ?
気でも狂っているのか?
「殺すぞ!」
部下が剣を抜いて門番の首筋を狙う。
他の者たちも剣を抜いている。
無暗に殺す必要はないとは言っているが、門番が剣を抜いたら、そのまま殺すだろう。
門番は、直立の体勢を崩さない。
剣も手に持っているが、門番のスタイルのままだ。
「私も、死にたくはありません。しかし、一度、陛下から”門番”を任されたからには、殺されるからと言って逃げるわけには行きません」
意味が解らない。
死にたくないのなら、門を開ければいい。
「本当に殺すぞ。俺たちは、お前を殺して、門を壊すこともできる」
「解っております。しかし、私にも”門番”としての誇りがあります。貴方たちが、帝国兵としての誇りを持つのと同じです。お引き取り下さい」
”誇り”か?
確かに、部下は”誇り”を持っているのか?
この門番は、殺すには惜しい。
今まで殺してきた貴族や豪商とは違う。本当の騎士だ。
部下を下がらせて、馬上のまま門番の前に出る。
「約束はどうしたら取れる?」
私の声を聞いて、眉を動かしたが、すぐに表情を戻した。
声を聞けば、私が”女”であることもわかるだろう。帝国の文様を鎧に刻んでいることで、私の身分もわかるだろう。
「所定の手続きがあります。王国では、これが”法”です」
”法”か、私のことを知っていて、”法”を持ち出したのかもしれない。
「相分かった。手続きを教えていただけるか?」
「それは、私の権限では行えません」
「では、どうしたら?」
「わかりました。ここでお待ちいただけますか?詳しい者が居るか確認してまいります」
「お手数をおかけするが、頼めるか?」
「はい」
どこまでも無礼な男だ。
だが、心地よい無礼だ。
その後、門番が連れてきた者たちは、王城に残っていた者たちだ。
話を聞けば、上司が逃げ出したが、自分たちは、国民の税で生活をしてきた。死にたくはないが、税で生きてきた者として、陛下からの指示がない限りは、自分の職制の中で動かなければならないと言い切っていた。
気持ちがよい男たちだ。
このような者たちが、軍のトップに居たら、王国のトップを占めていたら、立場は逆になっていただろう。
命運を司る神は、私に何をお望みなのだ?
---
「貴殿が居てくれたから、私は安心できる」
「陛下。ありがたきお言葉。しかし、私は門番としての職責を果たしているだけです」
「わかっている。私が、帝国を倒せたのも、貴殿を得たからだ」
「それは違います。陛下。私は、陛下が住まう場所を守る門番です。それ以上でも、それ未満でもありません」
「そうだな」
私は、王国で最後のピースを見つけた。
彼の名は、”キール=デ・ファロウズ”。王国の名前と同じ”姓”を持つ人物だ。
キールは、何時になったら、私からの求婚を受けてくれるのだろう。元王国国王の許可は出ているのに・・・。
---
門番の男から紹介された男たちに手順の詳細を聞いた。
6回に渡って、約束が取り次げないと言葉を貰った。
「オリビア殿下。陛下が”明後日なら大丈夫だ”という伝言をお預かりしました」
「門番殿には、面倒をおかけした」
「私の職責です。オリビア殿下は、手順を守られたのです」
「・・・」
私が立ち去ろうとしたら、門が開く音がした。
何度か聞いているが、このタイミングで開けられるとは思っていなかった。
振り返った私を、門番はいつもの体勢から、深々と頭を下げた。
「(・・・・)」
門番が何と言ったのか聞き取れなかった。
聞き取れなかったが、頭を上げた門番の表情が、今までと違っていた。
---
約束の日に、私は数名の部下を連れて、王城に向った。
部下の中には、強硬論を唱える者も多かったが、ここまで来て強硬しても何も得る事がないと、部下たちを押さえつけた。忠誠心は高いが・・・。
「門番殿」
「オリビア殿下。お約束は?」
「シンシア=デ・ファロウズ陛下との面談の約束だ。お取次ぎを願おう」
「お聞きしております。どうぞ、部下の方々もどうぞ、そのままでお通りください」
「いいのか?」
「はい。陛下から、帯剣のままでよいと言われています。もし、帯剣の必要がなければ、私の職責でお預かりいたします」
「そうか」
「はい。確かにお預かりいたします」
---
今日で、王国は終わる。
陛下はどうするのだろう?
帯剣の許可をだした事から、玉座で最後を迎えるのか?
今年ので7歳になる。
逃げ出した前々国王の孫にして、私の義弟。陛下が居たから、私は門番としての職責を全うすることができた。前国王は、金目の物とお気に入りの女中を連れて逃げ出した。父だが、父とは思えない。母を殺して逃げ出した者を父と呼べるわけがない。私への当てつけなのか、義弟に継承権を与えて、王太子に任命していた。そして、私に門番の職責を与えた。義弟を守れと命令を出した。
シンシアは、7歳だが、私よりも賢い。シンシアが平時の王になれば、王国も繁栄した未来が有ったかもしれない。
そんな未来は来ない。
馬の歩く音が聞こえる。
王国を終わらせるために、王城を訪ねて来る。
凛とした佇まいを持つ帝国の騎士だ。
いつものやり取りを行う。
これが最後かと思うと寂しくもある。
陛下から帯剣の許可が出ていると伝えたが、オリビア殿下は剣を私に渡してきた。
驚いたが、オリビア殿下なら、交わした約束をお守り頂けると思っていた。
剣を受け取る手が振るえないように、しっかりと大地を踏みしめる。
私は、陛下の門番だ。陛下の命がある限り、職責を全うするのみ。
どの位の時間が経過したのか?
すでに、陽が傾いている。
「兄上!」
え?
「陛下!このような。それに、兄などと・・・」
「いいのです。兄上。僕は、もう国王ではなくなりました」
「え?」
何が何やら、この数時間で何があった?
朝の段階では、陛下は”最後の王”になることを心に刻んで覚悟を決めておられた。
「兄上。陛下がお待ちです。早く、玉座に向ってください。あっその剣は持っていってください」
「はい」
なんとなく想像していた。
一歩。一歩、踏みしめて歩く。陛下が後ろから着いて来てくれる。恥ずかしい真似は出来ない。
私は、この剣で殺されるのだろう。
それでいい。王国最後の門番として、門以外で死ぬのは本望ではないが、陛下の代わりに、義弟の代わりに死ねるのなら・・・。
玉座には、オリビア殿下が座っている。
義弟がオリビア殿下の前まで行って跪いた。そして、臣下の礼を取る。
「キール。現在の王国は、オリビア陛下が国王だ。陛下に忠誠を誓え」
そうか、シンシアはオリビア殿下に禅譲したのか?
王国の法を持って、王国を統合する。
オリビア殿下の宣言が心を穿つ。
「キール=デ・ファロウズ。余が、オリビア=デ・ファロウズだ。貴殿に、新しい命を与える」
「はっ」
「キール=デ・ファロウズ。余が住まう場所の門番に命じる。いかなる時にも、余の許可なき者を通すな」
「はっ」
私は、陛下から任命された門番だ。
---
オリビアは、最後のピースを得た。
王国全土に新しい国王として戴冠したことを通知した。反発した、帝国兵もいたが、7割がオリビアに従った。従うしかなかったのだ。王国として、腐った貴族や豪商が駆逐されている。残ったのは、職責を全うしようとした者たちだ。オリビアは、その者たちをシンシアに預けた。
王国の再建は信じられない速度で進んだ。
”帝国皇帝の崩御”
オリビアの下に届けられた情報だ。続報を聞いて、オリビアの表情が変る。挙兵を決意するには十分な情報だった。
帝国は醜い内戦に突入した。
オリビアが国境に兵を集めても、帝国はまとまった兵力での迎撃が出来ない。
オリビアの進軍を期待する市民まで出てしまっている。
そして、オリビアは帝国の帝都に軍を進めた。
傍らには、王国で手に入れた奇貨が控えていた。
オリビアは、奇貨を得て、自らの信じる道を邁進することが出来た。
二人は出会うべくして出会った。
「キール」
「はい。陛下」
「新たな命だ」
門番は守るべき騎士を得た。
騎士は最高の門番を得た。
二つの国を併呑して尚も二人の歩みは止まらない。
仕えていると言っても、下っ端の下っ端の下っ端だ。しかし、私はこの仕事に誇りを持って挑んでいる。陛下から任命された職務だ。
「先輩」
最後まで残った部下だ。
軽いが、仕事はきっちりとやる。
「なんだ?」
「誰も来ませんよ」
この時間だと、貴族連中が陛下に面会を求めて訪れる。
「煩い。お前は・・・」
「はい。はい。わかっています。でも、この国はもう終わりですよ?」
「違う」
「違いませんよ」
「国王は残っていますが、有力な貴族連中も、皆が・・・」
「陛下だ。言葉を慎め。まだ陛下がいらっしゃる」
「その残っている人が問題ですよ」
「貴様は!」
「先輩。俺も・・・」
逃げ出すのか・・・。
「勝手にしろ」
これが現実だ。
この国は終わるだろう。
明日、終わるかもしれない。明後日かもしれない。しかし、私は”門番”の仕事を陛下からの任命されている。
私は、陛下が住まわれる王城を守る最初の騎士だ。
許可がない者を通すわけには行かない。それが、私の誇りであり矜持だ。
---
門番は、私だけになってしまった。
今朝、アイツも立っている俺の所まで来て、一緒に逃げようと言ってくれた。
言葉は嬉しかったが、私にはその提案を受け入れることはできなかった。
「先輩。死なないでください。帝国のやつらは、逆らわなければ命は・・・。いいですか、絶対に逆らわないでください」
アイツの言葉だ。
解っている。帝国の奴らは、王都を取り囲んでいるが、市民には手を出していない。逃げ出した貴族連中も、拘束された者は居るとは聞いているが、罪なき者を罰してはいない。
罰しているのは権力をかさに着て、立場の弱い者から搾取していた者だけだ。王国の法に則って捌いている。権力が通じないだけだ。帝国と戦って死んだ王国兵の家族には、帝国が定める見舞金と遺族年金を約束している。
全ては、先頭で戦っている騎士が行っていることだ。自国の兵でも、王国民に暴力を振るった者は、厳罰を与えている。
地方都市で、帝国兵が王国民の女性を凌辱した。激怒した騎士は地方都市の門の前で、王国民と帝国兵が見ている前で、女性を凌辱した男たちを張り付けにした。そして、自らの剣で男たちの手と足を切り落とした。男たちは、張り付けにされた状態で死んでも放置された。帝国兵の中には、男たちの助命を嘆願したものたちも居たが、騎士は嘆願してきた貴族家の者を、その場で首を刎ねた。
王国は、もう終わりだ。
王城には、陛下と最後まで共にすると言った者たちが残っている。
門番が一人になってしまった。
でも、門を守らなければ。もうすぐ、帝国が来る。帝国の騎士が門を通ろうとするだろう。
---
「起きろ!」
寝てしまったのか?
門が閉まっていることで安心した。門を背にして剣を抱いて寝てしまっていたようだ。
「あなた方は?」
「門を開けろ」
「できません。ここは、ファロウズ王国の国王陛下が住まわれる王城です。面会のお約束が無い方をお通しするわけには行きません」
「殺すぞ!」
「私も、死にたくはありません。しかし、一度、陛下から”門番”を任されたからには、殺されるからと言って逃げるわけには行きません」
「本当に殺すぞ。俺たちは、お前を殺して、門を壊すこともできる」
「解っております。しかし、私にも”門番”としての誇りがあります。貴方たちが、帝国兵としての誇りを持つのと同じです。お引き取り下さい」
「約束はどうしたら取れる?」
「所定の手続きがあります。王国では、これが”法”です」
「相分かった。手続きを教えていただけるか?」
「それは、私の権限では行えません」
「では、どうしたら?」
「わかりました。ここでお待ちいただけますか?詳しい者が居るか確認してまいります」
「お手数をおかけするが、頼めるか?」
「はい」
通用口を使って中に入る。多い時には、1,000人もの人が働いていた王城だが、現在では10名にも満たない。
寂しくなった。
陛下の世話係をしている老女を捕まえて、事情を説明する。
内政官が残っておられた。責任者は逃げてしまっていたが、実務を取り仕切っていた者が残っていた。面識がある。他にも、数名手続きに詳しい者たちを連れて、門に戻ると、馬上に居た騎士だけが残っていた。
剣を地面に突き刺している立っている姿は、騎士の名に恥じない姿だ。
金髪の髪が何故に靡いている。
絵画の一部だと言われても信じてしまうだろう。
声から察していたが、姿を見て確認した。
この者が、帝国軍の最高責任者。姫騎士で間違いない。そして、帝国の第一継承権を持っている。オリビア殿下だ。
他の者も、姿を見て確信したのだろう。
跪こうとするが、皆が踏みとどまった。
私が、殿下の前に出て、話始めたからだ。
私の役目は、門番だ。
帝国の第一継承権を持つ姫騎士でも、私のやることは変らない。
許可がない者を通すわけには行かない。
---
王国は、自らの子を食べる獣と同じだ。
自ら決めた”法”を守らないだけではなく、貴族連中が横柄に振舞っている。
帝国も同じ穴の狢だったために、長年に渡って小競り合いを予定調和の様に繰り返していた。
私は、そんなくだらない戦争に終止符を打ちたかった。
国内の不穏分子を掣肘するには力が居る。
私が、第一位の継承権を持っていようとも、追い落とそうとする者たちは多い。私の立場は、万全ではない。父上である陛下がご存命の間に、確固たる地位と足場を確保しなければならない。
それに、私の背後を守らせる従士が必要だ。
駒は揃った、武力に秀でた者。知恵に秀でた者。皆が私に忠誠を誓ってくれている。
だが・・・。私が欲しいと思う最後のピースが見つからなかった。私を守り、私にさえも従わない者。
見つからないまま、王国に侵攻した。
最初の戦いに勝利をおさめて、宮廷貴族共の帰還命令を無視して、戦場を駆け巡った。
部下にと押し付けられた貴族の子弟が、王国の都市で軍規違反を起こし始めた。たるみ始めていた。
「殿下!ご再考を!」
貴族の子弟に泣き付かれた貴族たちが帝国から駆けつけてきた。
ご苦労なことだ。
「軍規違反だ。一考する価値もない。くっ」
薬か?
一部の貴族が、違法薬物を扱っていると聞いたことがある。
「やっと効いたか。女の癖に・・・。おい。姫殿下はお疲れのようだ!」
「貴様ら!」
「あとは、お任せを、貴女の戦果も全部、私たちが頂きましょう。貴女は、明日・・・。卑劣な王国兵に討たれるのです」
私の天幕を見れば、見たことがない者に変っている。
番をしていた者が買収されたか?
不覚。仲間を信じすぎたか?
短剣を取り出して、自分の腿を突き刺す。
その勢いで、貴族たちの首と、従者たちの首を切り落とす。
「誰か!」
「は」
私の意識は、闇に閉ざされた。
報告では、倒れた私を見つけた部下の一人が事情を察して緘口令を発布した。
薬が抜けた私は、軍規違反を起こした者たちを処断した。
王国の王都を半包囲して、半月が経過した。
逃げ出してきた貴族や商人から情報を得て、王都に残っているのは、国王と数名だけだと解った。
王国の命運も、あとわずかだ。
明日。
王国の命運を断ち切る。部下の前で、宣言をする。
やはり、王国も帝国も同じだ。
腐った貴族連中が蔓延っている。豪商と言われる者たちも同じだ。王国を飲み込んだあとは、帝国だ。腐敗の温床である宮廷貴族共を一掃する。
その為にも、最後のピースが必要だ。
---
部下に宣言して、王都に踏み入った。
逃げ出せなかった市民たちが、窓の隙間や路地から私たちを見ている。無様な姿を見せられない。市民を害するつもりもない。
少数で王城に向かう事にした。
部下たちは、捕えた貴族や豪商の屋敷を抑えに行った。中に証拠が残っている可能性もある。
また、王都の入口で炊き出しの指示を出した。
報告では、半年以上も物資が不足していたはずだ。配給を行うように指示しても、豪商や貴族たちが奪い合っていたようだ。腐っている。本当に、一度殺しただけでは足りない連中だ。
王城には簡単に到着した。
門番が残っているのか?
寝ているとは、こんな状況で残っているのも凄いが、寝てしまっているのも凄いな。
「起きろ!」
「あなた方は?」
私たちを見ても驚かない。想像はしていたのだろう。それでも、しっかりと起きて立ち上がった姿は、門番の基本をしっかりと抑えている。
「門を開けろ」
部下の言葉は乱暴だが、甘くみられるわけにはいかない。
「できません。ここは、ファロウズ王国の国王が住まわれる王城です。面会のお約束が無い方をお通しするわけには行きません」
なっ
少数といっても、30名は居るのだぞ?
気でも狂っているのか?
「殺すぞ!」
部下が剣を抜いて門番の首筋を狙う。
他の者たちも剣を抜いている。
無暗に殺す必要はないとは言っているが、門番が剣を抜いたら、そのまま殺すだろう。
門番は、直立の体勢を崩さない。
剣も手に持っているが、門番のスタイルのままだ。
「私も、死にたくはありません。しかし、一度、陛下から”門番”を任されたからには、殺されるからと言って逃げるわけには行きません」
意味が解らない。
死にたくないのなら、門を開ければいい。
「本当に殺すぞ。俺たちは、お前を殺して、門を壊すこともできる」
「解っております。しかし、私にも”門番”としての誇りがあります。貴方たちが、帝国兵としての誇りを持つのと同じです。お引き取り下さい」
”誇り”か?
確かに、部下は”誇り”を持っているのか?
この門番は、殺すには惜しい。
今まで殺してきた貴族や豪商とは違う。本当の騎士だ。
部下を下がらせて、馬上のまま門番の前に出る。
「約束はどうしたら取れる?」
私の声を聞いて、眉を動かしたが、すぐに表情を戻した。
声を聞けば、私が”女”であることもわかるだろう。帝国の文様を鎧に刻んでいることで、私の身分もわかるだろう。
「所定の手続きがあります。王国では、これが”法”です」
”法”か、私のことを知っていて、”法”を持ち出したのかもしれない。
「相分かった。手続きを教えていただけるか?」
「それは、私の権限では行えません」
「では、どうしたら?」
「わかりました。ここでお待ちいただけますか?詳しい者が居るか確認してまいります」
「お手数をおかけするが、頼めるか?」
「はい」
どこまでも無礼な男だ。
だが、心地よい無礼だ。
その後、門番が連れてきた者たちは、王城に残っていた者たちだ。
話を聞けば、上司が逃げ出したが、自分たちは、国民の税で生活をしてきた。死にたくはないが、税で生きてきた者として、陛下からの指示がない限りは、自分の職制の中で動かなければならないと言い切っていた。
気持ちがよい男たちだ。
このような者たちが、軍のトップに居たら、王国のトップを占めていたら、立場は逆になっていただろう。
命運を司る神は、私に何をお望みなのだ?
---
「貴殿が居てくれたから、私は安心できる」
「陛下。ありがたきお言葉。しかし、私は門番としての職責を果たしているだけです」
「わかっている。私が、帝国を倒せたのも、貴殿を得たからだ」
「それは違います。陛下。私は、陛下が住まう場所を守る門番です。それ以上でも、それ未満でもありません」
「そうだな」
私は、王国で最後のピースを見つけた。
彼の名は、”キール=デ・ファロウズ”。王国の名前と同じ”姓”を持つ人物だ。
キールは、何時になったら、私からの求婚を受けてくれるのだろう。元王国国王の許可は出ているのに・・・。
---
門番の男から紹介された男たちに手順の詳細を聞いた。
6回に渡って、約束が取り次げないと言葉を貰った。
「オリビア殿下。陛下が”明後日なら大丈夫だ”という伝言をお預かりしました」
「門番殿には、面倒をおかけした」
「私の職責です。オリビア殿下は、手順を守られたのです」
「・・・」
私が立ち去ろうとしたら、門が開く音がした。
何度か聞いているが、このタイミングで開けられるとは思っていなかった。
振り返った私を、門番はいつもの体勢から、深々と頭を下げた。
「(・・・・)」
門番が何と言ったのか聞き取れなかった。
聞き取れなかったが、頭を上げた門番の表情が、今までと違っていた。
---
約束の日に、私は数名の部下を連れて、王城に向った。
部下の中には、強硬論を唱える者も多かったが、ここまで来て強硬しても何も得る事がないと、部下たちを押さえつけた。忠誠心は高いが・・・。
「門番殿」
「オリビア殿下。お約束は?」
「シンシア=デ・ファロウズ陛下との面談の約束だ。お取次ぎを願おう」
「お聞きしております。どうぞ、部下の方々もどうぞ、そのままでお通りください」
「いいのか?」
「はい。陛下から、帯剣のままでよいと言われています。もし、帯剣の必要がなければ、私の職責でお預かりいたします」
「そうか」
「はい。確かにお預かりいたします」
---
今日で、王国は終わる。
陛下はどうするのだろう?
帯剣の許可をだした事から、玉座で最後を迎えるのか?
今年ので7歳になる。
逃げ出した前々国王の孫にして、私の義弟。陛下が居たから、私は門番としての職責を全うすることができた。前国王は、金目の物とお気に入りの女中を連れて逃げ出した。父だが、父とは思えない。母を殺して逃げ出した者を父と呼べるわけがない。私への当てつけなのか、義弟に継承権を与えて、王太子に任命していた。そして、私に門番の職責を与えた。義弟を守れと命令を出した。
シンシアは、7歳だが、私よりも賢い。シンシアが平時の王になれば、王国も繁栄した未来が有ったかもしれない。
そんな未来は来ない。
馬の歩く音が聞こえる。
王国を終わらせるために、王城を訪ねて来る。
凛とした佇まいを持つ帝国の騎士だ。
いつものやり取りを行う。
これが最後かと思うと寂しくもある。
陛下から帯剣の許可が出ていると伝えたが、オリビア殿下は剣を私に渡してきた。
驚いたが、オリビア殿下なら、交わした約束をお守り頂けると思っていた。
剣を受け取る手が振るえないように、しっかりと大地を踏みしめる。
私は、陛下の門番だ。陛下の命がある限り、職責を全うするのみ。
どの位の時間が経過したのか?
すでに、陽が傾いている。
「兄上!」
え?
「陛下!このような。それに、兄などと・・・」
「いいのです。兄上。僕は、もう国王ではなくなりました」
「え?」
何が何やら、この数時間で何があった?
朝の段階では、陛下は”最後の王”になることを心に刻んで覚悟を決めておられた。
「兄上。陛下がお待ちです。早く、玉座に向ってください。あっその剣は持っていってください」
「はい」
なんとなく想像していた。
一歩。一歩、踏みしめて歩く。陛下が後ろから着いて来てくれる。恥ずかしい真似は出来ない。
私は、この剣で殺されるのだろう。
それでいい。王国最後の門番として、門以外で死ぬのは本望ではないが、陛下の代わりに、義弟の代わりに死ねるのなら・・・。
玉座には、オリビア殿下が座っている。
義弟がオリビア殿下の前まで行って跪いた。そして、臣下の礼を取る。
「キール。現在の王国は、オリビア陛下が国王だ。陛下に忠誠を誓え」
そうか、シンシアはオリビア殿下に禅譲したのか?
王国の法を持って、王国を統合する。
オリビア殿下の宣言が心を穿つ。
「キール=デ・ファロウズ。余が、オリビア=デ・ファロウズだ。貴殿に、新しい命を与える」
「はっ」
「キール=デ・ファロウズ。余が住まう場所の門番に命じる。いかなる時にも、余の許可なき者を通すな」
「はっ」
私は、陛下から任命された門番だ。
---
オリビアは、最後のピースを得た。
王国全土に新しい国王として戴冠したことを通知した。反発した、帝国兵もいたが、7割がオリビアに従った。従うしかなかったのだ。王国として、腐った貴族や豪商が駆逐されている。残ったのは、職責を全うしようとした者たちだ。オリビアは、その者たちをシンシアに預けた。
王国の再建は信じられない速度で進んだ。
”帝国皇帝の崩御”
オリビアの下に届けられた情報だ。続報を聞いて、オリビアの表情が変る。挙兵を決意するには十分な情報だった。
帝国は醜い内戦に突入した。
オリビアが国境に兵を集めても、帝国はまとまった兵力での迎撃が出来ない。
オリビアの進軍を期待する市民まで出てしまっている。
そして、オリビアは帝国の帝都に軍を進めた。
傍らには、王国で手に入れた奇貨が控えていた。
オリビアは、奇貨を得て、自らの信じる道を邁進することが出来た。
二人は出会うべくして出会った。
「キール」
「はい。陛下」
「新たな命だ」
門番は守るべき騎士を得た。
騎士は最高の門番を得た。
二つの国を併呑して尚も二人の歩みは止まらない。
0
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる