156 / 161
第八章 王都と契約
第十八話 マヤのスキル
しおりを挟む別室に通された ナナとミトナルは、リンと違う意味で、行動が出来ない状況になっていた。
別室に入ってすぐにマヤが妖精の姿になって、部屋から出て行ってしまった。
ミトナルとマヤは魂でつながっている。妖精の姿になっている者は、戻ってこようと思えばすぐに戻って来られる。戻って来られるという安心感から、久しぶりの王都を探索するつもりのようだ。
マヤも、妖精の姿では目立つのはわかっている。王都に行くと決まってから、準備を始めていたスキルを発動した。
マヤとミトナルは、妖精の姿になった時に、目立つだろうと考えていて、目立たなくなるスキルを探していた。
神殿には、いろいろなスキルを持つ者がいる。ギルドのメンバーもチート級のスキルを持っているのだが、マヤが選んだのはロルフが使っていたスキルだ。
ロルフが、いつの間にか現れるのは、スキルの恩恵だと知ってから、マヤとミトナルはリンにもギルドのメンバーにも黙って練習を行っていた。
マヤとミトナルは、スキルも共有している。主として所持しているスキルは、本人が実行しなければ十全の能力が発揮できない。マヤが取得したスキルをミトナルが使ってもスキルは発動する。アクティブスキルもパッシブスキルも両者に恩恵がある。
取得を目指していたスキルは、ミトナルとしても”ぜひ”ほしいと思えるスキルなので、ミトナルも協力して獲得を目指した。
”気配遮断”
王都に向かう前に取得に成功したスキルを発動した。
ミトナルには、マヤの存在は”感覚”で伝わってくるので認識は変わらないが、ナナには突然、マヤが消えたように思えた。
「ねぇミルちゃん?」
急に存在が消えたマヤを心配してナナは、辺りを見回してからミトナルに話しかける。
「マヤなら大丈夫ですよ。王都を散策すると言っていました」
ナナが何を聞きたいのかミトナルにはわかっている。聞かれると考えていたので用意していた答えを伝える。
「え?」
予想外のセリフが返ってきてナナは少しだけ戸惑の表情を見せるが、表情を戻した。
ミトナルが、何かを見せようとしているのがわかった。
ミトナルは困惑の視線が自分に向いていると認識して一つのスキルを発動した。
「スキル”気配遮断”」
マヤが取得したスキルのために、ミトナルにはまだ簡易詠唱が必要になる。マヤの能力の3-40%程度の能力になってしまう。
「ミルちゃん。スキル?」
ナナは、その場に居るミトナルの存在が希薄になったと認識した。
目の前に居るのに認識が朧気な状態だ。
こんな事が出来るのは、スキル以外にはありえない。
「うん。マヤが取得したスキル。気配を遮断して、認識ができない。認識が難しくなる」
ミトナルは、スキルの”表向き”の説明をナナに行う。マヤと相談して決めた事だ。このスキルは、”気配を遮断”するスキルではない。短縮詠唱を使っての発動なので、ナナとしても不思議に思っている。
「今は?」
ナナは自分が思った疑問をミトナルにぶつける。
少しでも情報を抜き取ろうとするのは、戦闘を生業にしていた時の癖のようなものだ。
「あっ。マヤが取得したスキル。僕が使うと、気配に敏感な人や僕が居ると知っている人には、効果が薄い」
情報を抜き出すようなナナの態度でもミトナルは気分を悪くしたりしない。
「マヤちゃんがスキルを使うとどうなるの?」
「認識しにくくなる。僕はマヤとつながっている。僕を見つけるのはリンでも難しいと思います」
「そう・・・」
ナナは、ミトナルが何かを隠しているとは思うが、これ以上は無理だと考えて話題を変えることにした。
「ミルちゃんは、これからどうするの?」
「”これから”?」
「そう、リン君は・・・」
「僕の存在理由は、リンと一緒に居る事」
「え?」
「リンが僕に”死ね”と言えば、僕は喜んで死ぬ。僕は、リンに生かされている。リンにもらった命だから、リンのために使う。マヤも同じ」
言い切るミトナルの表情をナナがしっかりと見つめている。無理をしていないのは表情からもわかる。そして、今までの行動や二人から聞いた話から、本気なのだとわかっている。
「なぜ?そこまで・・・」
当然の疑問だ。
ミトナルも、何度も聞かれたことなので、よどみなく答える事ができる。
答えるだけで真意が伝わるとは考えていない。
「リンは、僕の全て・・・。ただそれだけ・・・。マヤも同じ。同じだから、僕とマヤは一緒になった」
それだけ言うと、ミトナルはナナから視線を外した。
ナナも、これ以上は何も聞けないとわかっている。理解はできないが、ミトナルとマヤの気持ちは痛いほどによくわかる。ナナも、一人の男性に救われた。
当事者のマヤは、スキルを使って王都に飛び出していた。
(前に来た時にも感じたけど、本当に汚い場所だよね)
マヤは、王都が”汚い”と表現している。
リンにもミトナルにも同じように語っているが、二人にはあまり理解されていない。
マヤは、性質が精霊に近づいてしまったために、”悪意”を感じると汚いと思ってしまう。
しかし、久しぶりの王都にマヤは浮かれていた。
姿が隠せるようになって、前では入ることが出来なかった場所に潜り込むことも可能になっている。
マヤのスキルは、本人が望んだものだ。
獲得してからは、リンの眷属に頼んでスキルの使い方を考えて、熟練度を上げるように訓練を行っていた。
マヤのスキルは既に高いレベルで安定している。
それこそ、ブロッホなどの一部の者だけにしか察知されないレベルになっている。マヤに劣ると言っても、ミトナルも動揺nスキルを使う事ができる。人の姿の状態では、認識され難くなるだけだが、それでも実力者と呼ばれる者たちが、ミトナルが居るはずだと認識していなければ見つけるのは困難だ。他にも条件はあるのだが、ミトナルも高いレベルで安定して、マヤのスキルが使える状態になっている。
二人が、このスキルを身につけたいと思ったのは、リンが望む情報を盗み出そうとするときに必要になるだろうと考えたからだ。そして、普段では入ることができない場所でも、忍び込める可能性がある。
それ以外にも、リンは絶対に命じないとはわかっているが、暗殺を考える時にも使えるスキルだ。
ミトナルがマヤのスキルを使えるように、マヤもミトナルが所持しているスキルが使える。
そして、ミトナルのスキルには凶悪なスキルが存在している。
スキル:魔法の吸収、剣技の吸収、念話
ユニークスキル:鑑定
マヤが使っても、ミトナルが得られる吸収とは差がでてしまうが、それでも吸収は発動する。
今日のマヤとミトナルの目的は、王都にある貴族家や王家が所有する訓練所に潜り込んで、魔法と剣技を吸収することだ。可能なら、回復やバフ系の魔法を吸収したい。リンの眷属は優秀だが、後方支援が弱い。
リンの性格から、戦いになった場合に、マヤやミトナルだけではなくギルドのメンバーは理由をつけて、後方支援に回すだろう。どれだけ、スキルが優秀でもリンは前線に立つのは自分だけだと考えている。
横に立てればいいが、マヤとミトナルはリンからお願いされれば、従う以外の選択肢はない。
ミトナルのスキルでは、前線での活躍は期待ができるが、後方支援ではあまりにも弱すぎる。それだけではなく、ミトナルにはゲームの知識も欠落している。ギルドメンバーは、知識の多寡には差がでているが、それでもミトナルよりもゲームで遊んだ知識があり、リンからの指示を受けても動けている。
ミトナルとマヤは、指示を受けるが、指示の確認をしなければ動けなかった。
二人で相談をして、王都にいる間に、貴族家が抱えている魔法師から魔法を吸収して、近衛や護衛たちから剣技を吸収する。そして、教会が秘匿している魔法のスキルを吸収するのが目的だ。
マヤは、ミトナルと相談して、まずは教会に向かっている。
神殿と最初にぶつかるのは、教会勢力だと考えた。
0
あなたにおすすめの小説
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
空手馬鹿の俺が転生したら規格外の治癒士になっていた 〜筋力Eのひ弱少年治癒士が高みを目指す!?〜
くまみ
ファンタジー
前世は空手部主将の「ゴリラ」男。転生先は……筋力Eのひ弱な少年治癒士!?
「資質がなんだ!俺の拳は魔法を超える!……と、思うけど……汗」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は五里羅門(ごり・らもん) 35歳独身男だ。硬派すぎて女が寄り付かず。強すぎる空手愛と鍛え抜かれた肉体のせいで不本意ながら通称「ゴリラ」と呼ばれていた。
仕事帰りにダンプに跳ねられた俺が目覚めると、そこは異世界だった。だが転生した姿は前世とは真逆。
病弱で華奢。戦闘力最低と言われる職業の「治癒士」(ヒーラー)適正の10歳の少年・ノエル。
「俺は戦闘狂だぞ!このひ弱な体じゃ、戦えねぇ!
「華奢でひ弱な体では、空手技を繰り出すのは夢のまた夢……」
魔力と資質が全てのこの世界。努力では超えられない「資質の壁」が立ちふさがる。
だが、空手馬鹿の俺の魂は諦めることを知らなかった。
「魔法が使えなきゃ、技で制す!治癒士が最強になっちゃいけないなんて誰が決めた?」
これは魔法の常識を「空手の技」で叩き壊す、一人の少年の異世界武勇伝。
伝説の騎士、美少女魔術師、そして謎の切り株(?)を巻き込み、ノエルの規格外の挑戦が今始まる!
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる