83 / 110
第四章 連合軍
第三話 トップ会談
しおりを挟む連合国から提供されたアイテムを使って、会談が実行される運びとなった。
参加国は、神聖国と王国と連合国のトップであるエルプレだ。
今までも、中央の魔王への対応で、三か国は足並みを揃えたことがあった。
しかし、今回は今までよりも大きな脅威に立ち向かう必要がある。
連合国から提供されたのは、意識を別の人間や魔物に乗り移させる道具だ。
そして・・・。
神聖国の教皇が選んだのは、魔物ではなく見目が麗しい男児だ。
王国の国王が選んだのは、自分の子供だ。使い道がなく、殺す一歩手前まで来ていた者だ。
エルプレが選んだのは、捕えていた使い道がないエルフの男だ。
そんな3名が揃って王国で会談を行うことに決まった。
この三か国が動くことは、すぐに帝国の情報部がキャッチしていた。三か国の会談の理由は推測だが、ほぼ間違っていないと思われている。
帝国が、ギルドに情報を流したタイミングで、皇国も情報を握った。情報は、すぐに各国のトップに共有される。三か国は、情報が漏れるのは解っていたが、三か国の会談内容が流れ出さなければ問題がないと考えていた。
帝国は、神聖国からの攻撃を警戒して、ギルドを通して、魔王ルブランに情報を流した。そのあとで、国境に兵を集中する様に指示をだした。帝国は、魔王ルブランの勢力が拡大して支配領域と国境を接しているが、国境を接しているのが神聖国だけとなった。他の場所は、踏破が不可能だと思われている山脈などの自然の脅威に守られている。その為に、帝国は魔王ルブランが安泰の状態が好ましい状況になっている。
神聖国と連合国から使節団が王国に向っている。
視察と銘打っているが、乗っ取られた3名によるトップ会談が行われる。乗っ取られた人物は、既に精神が破壊されている。アイテムを解除すれば、精神が抜けた廃人となる。
各国のトップは、それで問題がないと思っている。
自分たちの安全が保証されている状態で、トップ会談ができる状況が重要だ。アイテムを渡された神聖国と王国は、連合国を信じたわけではない。実際に、奴隷にアイテムを使わせて、実験を繰り返して、問題がないと判断して、連合国からの会談の要請を受け入れた。
会談の場所は、神聖国からの要望を受け入れて、王国で行うことになった。
数回の事前打ち合わせを経て、トップ会談が実現される。
事前打ち合わせで、殆どの事が決定されている。
神聖国が魔王カミドネを攻める。
連合国と王国が、それぞれの国から魔王ルブランを攻める。タイミングを合わせる事で、状況を有利に進める。
王国から皇国に魔王ルブランを”神敵”認定ができないか打診を行う。
”魔王ルブランは人類にとって脅威”というのが、打診の骨子だが、連合国と王国と神聖国にとっての脅威で人類の脅威ではない。帝国は、魔王ルブランに攻め込んで多いに打撃を受けたが、その後の対応から、帝国は”魔王ルブラン”を利用する方向に舵を切った。その結果、国内の不穏分子は一掃された。神聖国の影響を受けていた貴族が粛清され、皇帝の支配基盤が強固になった。領土の一部は切り取られたが、切り取られた事で、国境がシンプルになった。
事前交渉で決められたことを承認するだけのトップ会談だが、トップが直接ではないが、顔を合わせる状況だ。
どうしても、状況は予期せぬ方向に動き出す。各国の事情が絡んで居る。それだけではなく、実際にはダンジョンが支配している国が二つで、一つはトップがダンジョンマスターだ。もう一つの国も、ダンジョンを所有して、ダンジョンからの恵で成り立っている国だ。
「神聖国。貴殿の言い分も解るが、連合国は手一杯だ」
「それは、神聖国も同じだ。帝国への親征は絶対だ」
「それは、貴殿たちの利益にしかならぬ。王国としては、サポートはできるが。サポートへの見返りがなければ、軍部が納得しない」
「それでは、連合国はどうじゃ?」
「こちらから、帝国に侵攻は無理だ。距離もある。魔王ルブランに察知されてしまう。作戦が瓦解しかねない」
「それよりも、神聖国は魔王カミドネの領域にも兵を出すのだろう?」
「当然だ」
「王国も、魔王カミドネの領域には困っている。なんとかならないのか?」
「大丈夫とは言わないが、神聖国よりは対応が出来ている。それよりも、連合国は魔王ルブランに手痛い反撃を喰らっていなかったか?」
「何を根拠に?偵察部隊が多少の犠牲を払ったが、そのおかげで、魔王ルブランの戦力が理解できた。そういう神聖国は、魔王カミドネに攻め込んで、神職を失ったと聞いたが?」
「それこそ、デマだ。下級職の数名が我の命令を無視して犠牲になったが、少数で体勢への影響は皆無だ」
三か国は、お互いが得た情報を小出しにする事で、会談で優位に立とうするが、同じ程度の情報で潰されてしまっている。
三か国のトップ会談は、事前交渉で決められた部分から、自国のメリットを増やそうと駆け引きを行う。
その都度、話を聞いている配下が、交渉の為に会談から離れて、交渉を始める。正確な情報は、配下が握っていて、トップが握っている情報は、正しいが、正確ではない為だ。
結局、魔王カミドネの領域には、神聖国と王国が兵を差し向ける。魔王ルブランの支配領域で最も重要だと3か国が判断したカプレカ島には、王国が全力で攻め込んで魔王ルブランの動きを封じる。カプレカ島と城塞街を王国が抑えている間に、魔王ルブランのダンジョンに神聖国と連合国が同時に攻め込む事で、魔王ルブランのダンジョンを攻略する。
攻める兵数の総数は、公称80万。
前代未聞の巨大な作戦になる。
神聖国は、この作戦と同時に、帝国に残っている人族主義の貴族を扇動して、内乱を起こさせ、帝国の一部。重要な鉱山を奪う計画がある。
実際に、会談は成功と言ってもいい。
しかし、会談の内容が既に外に漏れてしまっている。
事前交渉の範囲内なら、情報が外に漏れることは無かったのだが、トップ会談の最中に自国のメリットを優先した為に、交渉が行われて、交渉を配下の者たちが緊急で行う。変更に変更が加えられる。それによって、現場は混乱した。
魔王ルブランの配下だけではなく、各国の情報部がトップ会談の内容を手にするのには、労力を使わなかった。
---
目の前に居る物から封蝋がされた状態の親書を受け取る。
王国からの親書なのは、封蝋を見れば解るが、男にとっては、どこからの封蝋だろうが、ほぼ無意味だ。
「それで?」
王国からの親書を乱暴に開封する。
飾る言葉が羅列されている書簡を、投げる。
「はっ。王国からは、”魔王ルブランを神敵”の認定を求められました」
男の前に居る物は、書簡を受け取って、中身を確認する。
かなり要約された内容を答える。
この場に居る二人には、それだけ解れば十分だ。
「拒否だ」
男は、少しだけ考えてから、”拒否”の決定を伝える。
「かしこまりました」
拒否の理由は必要ではない。
”拒否”と決められたことを実行するだけだ。
「魔王ルブランと魔王カミドネ。神聖国と連合国の魔王を相手に生き残れるのか?そういえば、王国には、奴も居たな。今回は、奴が絡んでいるのか?」
男は、勝者がどちらになるのか?
それによって、事体が動くことを期待している。現状は、魔王ルブランの登場で、各国の動きが加速されている状況だが、男が期待する。混沌とした世界にはなっていない。
王国には、ダンジョンの攻略を得意とする男が存在している。
王国に居る男は、単騎でダンジョンを攻略している(ことになっている)王国最強の男で、神聖国や連合国も認める男だ。
「我が主よ。確認をしますか?」
「必要ない」
男は、一言だけ告げてから、自分の思考に沈んでいく。
男の目の前に居る物は、静かに気配を消していく。闇に解けるように、姿が消えていく。
一人になった男が、目を開けた時には、すっかりぬるくなってしまったワインが注がれたグラスだけが残されていた。
男は、テーブルの上に置かれている呼び鈴を鳴らした。
0
あなたにおすすめの小説
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
悪役皇子、ざまぁされたので反省する ~ 馬鹿は死ななきゃ治らないって… 一度、死んだからな、同じ轍(てつ)は踏まんよ ~
shiba
ファンタジー
魂だけの存在となり、邯鄲(かんたん)の夢にて
無名の英雄
愛を知らぬ商人
気狂いの賢者など
様々な英霊達の人生を追体験した凡愚な皇子は自身の無能さを痛感する。
それゆえに悪徳貴族の嫡男に生まれ変わった後、謎の強迫観念に背中を押されるまま
幼い頃から努力を積み上げていた彼は、図らずも超越者への道を歩み出す。
妖精の森の、日常のおはなし。
華衣
ファンタジー
気づいたら、知らない森の中に居た僕。火事に巻き込まれて死んだはずだけど、これってもしかして転生した?
でも、なにかがおかしい。まわりの物が全部大きすぎるのだ! 草も、石も、花も、僕の体より大きい。巨人の国に来てしまったのかと思ったけど、よく見たら、僕の方が縮んでいるらしい。
あれ、身体が軽い。ん!?背中から羽が生えてる!?
「僕、妖精になってるー!?」
これは、妖精になった僕の、ただの日常の物語である。
・毎日18時投稿、たまに休みます。
・お気に入り&♡ありがとうございます!
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる