267 / 293
第十一章 ユーラット
第七話 第一回 報告会
しおりを挟む今日は、私が議長を務める会議が神殿の一室で行われます。ギルドが入っている場所です。ふぅ・・・。少しだけ、本当に少しだけ心配です。
もう、何度も行っているので、会議には不安はありません。初めての議題で、皆の感心が高いです。感心が高いために、参加者の数も多いのが少しだけ心配です。予定の調整を行って、準備された会議室の広さからも、注目度がわかります。
自分が提案した会議です。資料もしっかりと作り込みました。
新しく加わる議題が少々・・・。では、なく・・・。面倒です。
前半は、報告がメインです。ミスがなければ、問題にはなりません。そのあとで、会議室を変えて行われる後半がどうなるのか解らないのがネックです。
ヤス様も、リーゼ様も、依頼でエルフの里に出かけて、なんで帝国の姫を拾ってくるのでしょうか?
それもとびっきり面倒な『オリビア・ド・ラ・ミナルディ・ラインラント・アデヴィット』を・・・。会って、話をすれば、”いい子”だと解るけど・・・。
本人は、”身分は捨てた”と言っていますが、帝国に確認した所、しっかりとオリビアは、帝国の姫として認識されていて、現在も”姫”として登録されています。”籍”を消す手続きは無いのでしょう。帝国で、オリビア姫が”死んだ”ことにならない限りは、”身分は捨てた”ことにならないのでしょう。
辺境伯の娘である私が言えたことではないが、王国の王女が出入りして、屋台で焼き鳥を買って食べるような場所ですから、帝国の姫が居ても不思議ではないとは思います。
神殿は、神殿なので、対王国なら問題はありません。しかし、同じ理屈が帝国には通用しません。それこそ、帝国で政権交代が発生して、オリビア姫の価値がなくなる状態にならなければ、無理でしょう。辺境伯である。お父様も同じように考えているようです。
しかし、お父様・・・。
娘に”任せる”だけは酷いと思います。それも、意味がない”注視している”だけ書かれても嬉しくもありません。お父様のことを考えて、細かく、それも詳細に、資料をまとめて送ったら、概要だけで十分だと言われてしまいました。忙しいのはわかりますが、辺境伯であるお父様が、帝国の姫から齎した情報を蔑ろにするのは間違っていると思います。
今日の資料と、資料の作成時にまとめたメモを含めて、お父様に送り付けることが決定しています。お兄様にも、お送りします。是非、読み込んで欲しいです。辺境伯の軍の一部を解体したのを知っています。神殿が王国に攻めてきたらどうするつもりなのですか?確かに、攻められたら、対応が不可能なのはわかりますが・・・。
ダメですね。資料を読みながら、お父様の対応を思い出して、”怒り”が戻ってきました。
深呼吸をして感情を落ち着かせましょう。
「お嬢様?」
マリーカが、ホットチョコレートを持ってきてくれた。お礼を言って受け取る。疲れた頭には優しい甘さが嬉しい。
会議まではまだ時間があるようです。もう一度、資料を読み込んでおいた方がいいでしょう。
後半に繋がる情報はないとは思いますが、確認は無駄ではないでしょう。前半の資料は回収しますが、皆が心配しているのも解ります。特に、ユーラットでは問題になっています。情報の抜けがあると、ユーラット対応が間違える可能性があります。注意しなければなりません。
そもそも、資料に突っ込みを入れて来るような者は居まいと思います。私が資料をまとめている間にも、リーゼ様とご本人が動き回っていたので、ある程度の情報は、皆と共有が出来ています。私は、拡散してしまった情報をまとめて、時系列にまとめて、必要な補足をつけ足しただけです。それでも、膨大な資料になってしまいました。
前半は、大きな問題は無いでしょう。問題は、後半です。アフネス様ではなく、ラナ殿が代わりに参加すると言ってきてくれたのが、唯一の救いです。しかし、それを合わせて、考えれば、ヤス様に提言しなければならない時期が来ているかもしれない。
「マリーカ。前半の問題点は?」
「カイル様とイチカ様からの証言しだいですが、問題はないと思われます。ルーサ様からも証言を頂いております」
イチカは、後半も参加するので、大丈夫でしょう。
今日まで、カイルと膝を付き合わせて話が出来なかったのが悔やまれます。
「リーゼは来ないのよね?」
「はい。オリビア様とカート場に居ると思われます。こちらに向った時には、ファーストから連絡が入ります」
よかった。
リーゼが来ると話せない内容が増えてしまいます。
私は、話してもいいと思っていますが・・・。アフネス様が・・・。怖いから考えてはダメです。私は、まだ死にたくありません。
「問題は、アデーだけね?」
「アーデルベルト殿下は、後半からの参加です」
後半が面倒なことは既に解っています。紛糾するとは思っていません。序列も決まっています。決まっていないのは、序列が一番上だと思われているご本人が自由すぎることです。
私とアデーとドーリスとイチカとアドバイザー役としてのラナ殿です。”女子会”と呼ばれる会合です。他にも、数名の”女子”が参加を希望しているのだが、資格を有していないと断っています。正確には・・・。
ヤス様の”正妻”がリーゼなのは本人以外には確定な事ですが、なんとか”夫人”や”側室”に滑り込めないか考えています。この考えになったのは、アデーが持ってきた情報が拍車をかけました。
「マリーカ。アデーが持ってきた情報を”どう”考える?」
「”どう”と、言われましても、そのままだと思います」
「真偽は考えないのね?」
「意味がありません」
「え?」
「そもそも、どうやって確認をされるのですか?」
「あっ・・・。そうか、リーゼが選ばれても・・・。問題は、私たちではどうやっても確認ができない」
「はい。ですので、”ある”と考えて、行動するのが”よい”と思っております」
確かに、アデーが持ってきた”過去の神殿攻略者”の情報でも、王国の始祖と言われる人物は、該当から外れている。
情報が無くても、ヤス様の”夫人”や”側室”になりたいと思うのは自然な流れです。
神殿の主であり、一国の王と同等の権限を持ち、経済力では、お父様を越えて、陛下に届きかねません。それも、陛下の個人資産ではなく、王国の総資産です。支配領域の大きさでは、120:1だと考えれば、ヤス様の資産の大きさが異常だと解ります。
”物流”を握ってしまっているヤス様は、どんな豪商も太刀打ちできません。そして、獲得した資金を惜しみなく神殿に投下してきます。困ってしまう位に・・・。
私は、辺境伯の予算会議にも出席をしています。
神殿の予算会議は、辺境伯家や王国の貴族家で行われる会議と根本が違います。辺境伯では、各部署が予算の取り合いを行うのが、恒例行事でした。しかし、神殿は、予算は有り余っています。その為に、予算を奪い合う状況にはなりません。それどころか、より良い提案をして、予算を押し付け合う場合もあります。
予算を余らせると、次回に余った予算が追加されてしまいます。そして、予算枠が膨れ上がっていきます。お父様も、貴族の矜持とか面倒なことを思わなければ、神殿から予算を回すことができます。ヤス様も、『必要なら使ってくれ』と言ってくれています。
神殿という環境が、不正を許しません。なので、予算が余るのです。
ユーラットの街道整備を行っていた者が着服を行ったことがあります。その時には、即日、神殿への入場が出来なくなってしまいました。
神殿の入場審査は、清く正しくではなく、”神殿に不利益”を与えなければ大丈夫だと言われても、誰も怖くて試すことができません。
「お嬢様。そろそろ・・・」
部屋に表示されている”時計”を見ると、確かに『第一回 報告会』の時間が迫ってきています。
続々と会議室に人が集まってきます。
各部署のトップだけではなく、補佐を行う者たちも多い状況です。それだけ、今回の会議を重要だと考えているのでしょう。
資料をまとめるだけでも、1ヶ月近い時間が必要でした。情報の精査を行って、真偽を確認しました。本当に、疲れました。
「お嬢様」
マリーカの声で、現実に引き戻されます。
参加予定者が揃っているのを確認して宣言を行います。私の本当に疲れる一日の始まりです。
「第一回 観察対象者『オリビア・ド・ラ・ミナルディ・ラインラント・アデヴィット』に関する報告会を行います」
0
あなたにおすすめの小説
文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
コンバット
サクラ近衛将監
ファンタジー
藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。
ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。
忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。
担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。
その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。
その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。
かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。
この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。
しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。
この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。
一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる