14 / 96
第一章 勇者の帰還
第九話 帰還の為に
残留組が地球で行った検証結果を聞いて、帰還組もスキルの検証を行ってから、今後の作戦を考えることになった。
特に、アリスのスキルは、フィファーナの防衛に関わってくる部分だ。
まずは、アリスとエリクをだけを連れて、地球に行くことになった。
3人だけなら、すぐに戻ってこられると考えたからだ。残留組で、港に転移できる者が、アリスの眷属を見守る。
アリスが、地球に戻ったことで、解除されないか調べるためだ。
「アリス。エリク。準備はいいか?」
二人は、自動調整が付与された服に着替えた。サトシの話を聞いて、必須だと考えたのだ。
「それじゃ、頼むな」「よろしくね!」
「任せろ!”いざ”となったら、俺が止める」
「サトシ!僕の可愛い子たちを殺さないでよ!マイ。お願いね」
「解っているよ。アリス。先に、命令を出しておいてくれると嬉しいかな」
「どんな命令?」
「沖にある島に移動させておいて、そうしたら、港への被害は軽減できるでしょ?」
「そうだね・・・。出した。指示に従って、移動を開始したよ。転移の許可も出したから、すぐに移動できると思う」
「わかった。ありがとう」
「ユウキ。もう大丈夫!」
マイと話をしていた、アリスがエリクとユウキの所に戻ってきた。
「すぐに戻ってくる。待っていてくれ」
ユウキが、スキルを発動する。
14人ではなく、2人だけなので、魔力の消費は少ないと考えていた。
魔法陣の光が収まったフィファーナは緊張に包まれていた。
「アリスの眷属は!」
サトシの言葉で、確認が行われたが、港に向かう者。沖の小島に向かう者が一斉に行動を開始した。
『確認してくる!』
ユウキがいたら、解っていたのなら、”先に動けよ”とツッコミを入れる所だが、皆が動き出したのを見て、サトシは安堵の表情を浮かべた。セシリアは、そんなサトシを見ているだけだ。注意しなくても、周りがサポートを行えばよいと考えている。
ユウキは、すぐに戻ってくると言っていたが、すぐには戻ってこない。
魔法陣の光が消えた場所を、サトシとセシリアは見つめていた。
1分後に、確認に行っていた皆が戻ってきた。
「港は、なんの問題もなかった。フェンリルが居たけど、おとなしい状態で、紋は消えていなかった。俺のことも覚えていた」
「小島も問題はなかった」
問題はないという報告を聞いて、セシリアがホッとした表情を浮かべた。
テイムのスキルは、テイムした者が死んだ場合に、紋が消えて眷属状態が解消される。
”死”は解るのだが、”転移”それも地球に移動してしまって、魔力的な繋がりが維持できるのかわからなかった。ユウキの検証や、残留組の検証でも、”念話”のスキルが繋がらないのは確認されている。
ユウキたちは、”念話”が繋がらない理由を、魔力の繋がりが途絶えたからだと考えたのだ。
テイムも、魔力的な繋がりを基礎として、眷属と繋がりを持つ。
今回の検証で、もっとも大事な検証だと言っても良かった。そして、検証の結果によっては、根本部分の練り直しが必要になってしまう所だった。
報告が集まった時に、庭に魔法陣が現れた。
ユウキたちが帰ってきたのだ。
「マイ!」
魔法陣の光が消えて、アリスがマイに駆け寄った。サトシではなく、マイがまとめていると思ったからだ。
「大丈夫だよ。アリスの友達は、皆、いい子にしていたわよ」
「よかった・・・」
「それで、アリス。地球でも、繋がりは保てたの?」
「うん。でも、いつも見たいに、意思が感じられるとは違って、繋がりを認識できるって感じだった。でも・・・」
「でも?」
「なんか、途中で強く感じられる時が有ったの・・・。だから、ユウキとエリクに言って、帰ってくるのを少しだけ待ってもらった」
「それで?」
「うん。慌てている感じだけが解った。けど、すぐに落ち着いて、繋がりが強くなった」
「そう・・・。ユウキ?」
ユウキは、アリスが繋がりを維持出来た理由を考えていたのだが、繋がりを維持しているが、指示が投げられなかった。アリスに状況を聞きながら、地球で試してみたが、状況は改善しなかったが、帰ろうと思った瞬間に繋がりが強くなったと報告があった。
理由は不明なのだが、アリスの眷属の下に、仲間たちが駆けつけたことが原因だと考えられる。暴走しなかったことで、”よかった”と手放しで喜べる状況ではない。
「マイ。眷属たちの様子は?」
「何も?いつもどおりだったらしいよ?」
「そうか、マイ。悪いけど、アリスを連れて、眷属を回ってもらえるか?」
「わかった。アリス。行こう!」
マイに連れられて、アリスが転移していった。
「ユウキ?」
「あぁすまん。エリク。エリクに聞きたいことがあった」
「なんだ?」
横から見ているセシリアは少しだけ不謹慎にも笑ってしまいそうになるのをこらえていた。
7-8歳ほど年上だった者たちが、大人だった時の口調で”子供の姿”になった今でも難しい話や、真面目な話をしている。不思議な感覚になっている。今までは、大人たちが難しい顔をして話し込んでいた。そのために、輪に入るのを躊躇っていた。勇者の称号を持っていなくても、大人たちの会話に幼い自分が入っていいのかわからなかった。サトシやマイだけなく、ユウキも気にしないから、”意見が有るのなら話して欲しい”と言ってくれた。戸惑いながらも、会議に参加していた。
しかし、今のユウキたちは自分と同世代の姿をしている。真面目な表情で、前と同じような話しをしていても、どこか背伸びをしている雰囲気が漂ってくる。
「どうした?セシリア?何かあるのか?」
「え?なんでもありません。ユウキ様。実際に、旅立つのは?」
「そうだな。予定と作戦を少しだけ変更したい」
「え?」
「向こうとこちらでスキルに違いが有りそうで、しっかりと検証をした方が良さそうだ。それに、一度、皆で戻った方が、インパクトが大きそうだ」
「・・・」
「そうなると・・・。あぁ心配しなくていい。帰還組は、長くても10日くらいだろう」
「わかりました。連絡が出来ないのが辛いですね」
「そうだな。今後のこともあるから、連絡の方法は何か考えたいのも、皆で地球に行く理由でもある」
「え?方法がありそうなのですか?」
「わからないけど、アリスの眷属が魔力の繋がりが切れなかったから、なにか方法があると思っている」
「そうなのですか・・・。出来たら、すごく嬉しいですね」
「そうだな。俺たちも安心できる。今度は、俺が毎日・・・。帰ってこようと思っている」
「ユウキ様の負担では?」
「大丈夫だと思う。それに、皆も、こちらの情報が欲しいと言い出すだろう」
「そうだと・・・。嬉しいです」
「セシリア。俺たちは、レナートを故郷だと思っている。それに、父や母になる人たちも居る。それこそ、大切な人も居るのだぞ?」
「え?あっ・・・。ありがとうございます」
「よし。セシリア。サトシが騒ぎ出す前に戻るぞ。これからのことを考える必要がある」
「はい!ユウキ様」
先を歩いているユウキの後ろを、セシリアは背中を見ながらついていく、初めてユウキたちに会った時には、セシリアはユウキたちが怖かった。
漠然とした恐怖を感じていた。流れ着いたユウキたちを、国王や将軍は歓迎した。しかし、一部の連合国に買収されていた貴族たちが、ユウキたちを売って連合国に取り入ろうとした。そのために、ユウキたちは気の休まる時間がなかった。
”ここ”でも同じなのかと、ユウキたちは、半ば諦めていた。
しかし、国王や将軍や国王派の貴族たちが、ユウキたちを守る動きをした。ユウキたちは、守られることに慣れていなかった。しかし、守られていることが解ると、今度は国王や将軍に協力する形で、連合国派閥の貴族を駆逐し始めた。
穏やかな空気が流れるようになったレナート王国で、初めてセシリアはユウキたちが同じ人間だと認識した。友を無くして、涙を流す。怪我を追った仲間を治すために、情報を集める。家族を失った民衆と共に、涙を流す。
そして、沈んだ皆を鼓舞するサトシに惹かれた。サトシが、セシリアに最初に優しい声をかけたからという単純な理由だったのだが、王女として育ったセシリアには、自分から見て大人のサトシが、自分に向って”タメ口”で話しかけてくれたのは、惚れるには十分な理由だった。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
他サイトにも投稿しております。
※本作品をAIの学習教材として使用することを禁じます。
※無断著作物利用禁止
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
37才にして遂に「剣神」の称号を得ましたが、20年前に自分を振った勇者のパーティのエルフの女剣士に今更求婚されました。
カタナヅキ
ファンタジー
20年前、異世界「マテラ」に召喚された「レオ」は当時の国王に頼まれて魔王退治の旅に出る。数多くの苦難を乗り越え、頼りになる仲間達と共に魔王を打ち倒す。旅の終わりの際、レオは共に旅をしていた仲間のエルフ族の剣士に告白するが、彼女から振られてしまう。
「すまないレオ……私は剣の道に生きる」
彼女はそれだけを告げると彼の前から立ち去り、この一件からレオは彼女の選んだ道を追うように自分も剣一筋の人生を歩む。英雄として生きるのではなく、只の冒険者として再出発した彼は様々な依頼を引き受け、遂には冒険者の頂点のSランクの階級を与えられる。
勇者としてではなく、冒険者の英雄として信頼や人望も得られた彼は冒険者を引退し、今後は指導者として冒険者ギルドの受付員として就職を果たした時、20年前に別れたはずの勇者のパーティの女性たちが訪れる。
「やっと見つけた!!頼むレオ!!私と結婚してくれ!!」
「レオ君!!私と結婚して!!」
「頼む、娘と結婚してくれ!!」
「はあっ?」
20年の時を迎え、彼は苦難を共に乗り越えた仲間達に今度は苦悩される日々を迎える。
※本格的に連載するつもりはありませんが、暇なときに投稿します。
神様の手違いで異世界転生した俺の魅了チートが、勇者のハーレムを根こそぎ奪って溺愛ハーレム作りました!
まさき
恋愛
ブラック企業で働き続けた俺、佐藤誠が過労で倒れ、気づけば異界の地。
「手違いで死なせちゃってごめん!」という神様から、お詫びに貰ったのは規格外の【魅了】スキル——。
だが、元社畜の俺にはその自覚が微塵もない!
ただ誠実に、普通に生きようとしているだけなのに、エルフの賢者、獣人の少女、最強の聖女、さらには魔王の娘までもが、俺の「社畜仕込みの優しさ」に絆されて居座り始める。
一方で、10年かけて仲間を集めたはずの「勇者・勝利」は、自身の傲慢さゆえに、誠へとなびく仲間たちを一人、また一人と失っていく。
「俺は勇者だぞ! なぜ手違い転生者に負けるんだあああ!?」
人界から天界、そして宇宙の創造へ——。
無自覚な誠実さで世界を塗り替えてしまう、元社畜の究極溺愛ハーレムファンタジー、ここに開幕!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第五章リード王国編
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。