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第二章 帰還勇者の事情
第十一話 記者会見.2
「それでは、記者会見を始めます。始めに、生還者の情報を・・・」
司会が、ユウキたちの情報を話し始める。
記者たちには、事前に情報として渡されているが、名前を呼ばれるときに立ち上がるだけでも、情報としては十分なのだろう。
10分ていどかかって、ユウキたちの諸元が発表された。
記者たちが黙って聞いているのには理由があった。まずは、ユウキたちが未成年だったことが大きな問題だ。ユウキたちは、記者会見で語られた情報に関しては公にしても問題はないと伝えている。しかし、姿かたちに関しては明言されていない。
そこに、人権や女性や子供の犯罪には厳しい対応をすることで有名や森下弁護士がオブザーバー的な立場で参加している。きっかけになった今川もネット上では有名な人物だ。
「質疑ですが、札を上げてからお願いします」
「なんの意味がある!忙しい時間を割いて来ているのだぞ!」
前列に座っている大手新聞社の人間が司会に食って掛かる。
「わかりました」
司会は、ユウキを見ると、ユウキが立ち上がった。
「大手町にある新聞社の記者さんですね。名前は、谷川聡さんですか、記者になってから、14年ですよね?あっそれから、へぇ40まで女性経験はなしですか、初めては、大阪ですか?でも、感心できませんね。売春ですか?記者さんも大変なのですね。上司の娘さんの奥さんも居るのですから、いい加減に出張を偽って、売春の旅は辞めたほうがいいですよ?気に入らないのでしたら帰ってください」
「なっ・・・。お前は、何を言っている!俺は・・・。面白いネタかと思ったが、やはりでたらめだったな!」
谷川と言われた記者は、立ち上がって出口に向って歩き出す。それを、他の記者たちが冷たい目つきで眺めている。
「指示に従っていただけないのは残念です」
司会が、会場を見回すと、皆がユウキを見つめている。
ネット配信を行っている森田が番号札を上げる。
「はい。38番の方。所属や名前は結構です」
番号を指定された森田は、立ち上がった。
「わかりました。今のお話は、どこまでが本当のことなのでしょうか?」
森田は、指示に従って、所属や名前は告げないで、直球で質問をぶつけた。
「それを、調べるのは、貴方たちのお仕事ですよね?森田さん。合同会社果実の代表さん」
「え?あっ。なぜ?」
「なぜ?先程、説明があったと思いましたが?」
「鑑定スキル?」
「そうですね。森田さん。入場時に告げた会社名は違いますよね?その会社は、知人と経営しているので、間違っても居ないのでしょうが・・・」
「ふぅ・・・。どこまでわかるのでしょうか?」
「どこまで?」
「私の過去などもわかるのでしょうか?」
「そうですね。二年前・・・。森田さんの記憶に刻まれていることならわかりますが、それ以上となると難しいです。お話したほうが、納得されますか?」
「いえ・・・。ありがとうございます」
森田は、背中に流れる冷たい汗を感じていた。さきほどの配信を見抜かれたことや、ユウキが語った”2年前”というワードが気になった。ユウキの目は、自分の愚かな行為を見抜いている。
森田は、畏怖に似た感情を抱えながら、札をおろして、椅子に座った。
「他の方」
前列に座っている記者が札を上げる。
「はい。6番の方。所属や名前は結構です」
指名された男性が立ち上がる。
「私は、6番ではない。○○新聞の飯島だ。茶番はもう大丈夫だ。さっさとポーションとやらを出してもらいたい」
「茶番?」
サトシが立ち上がりそうになるのを、マイが押さえた。
ユウキも、手で皆を制した。
「そうだろう?お前みたいな子供にできることではない。さっき、出ていった奴も、さっきの奴も、お前たちの仕込みだろう?」
ユウキは、目の前で強弁している男を見る。裏があるかもしれないと感じたからだ。
『ユウキ。こいつに裏はない。ただのやっかみ。俺たちが”仕込み”で、今川さんのスクープが偽物だと思いたいらしい』
ユウキたちのネタは、鑑定スキルを極めた者からの報告だ。考えていることを盗み見ることができる。もちろん、妨害の手段があり、ユウキたちは対策を行っているのだが、スキルを持たない者たちには、難しい状況だ。このスキルに関しては、秘匿することが決まっている。
「ポーションですか?告知していますが、ポーションは研究所からの報告が全てです。我々からなにか発表する必要はないと考えています」
「生意気なことを言うな。必要か、必要じゃないかを判断するのが、俺たちだ。お前たちは、俺たちの要望に従っていればいい。そうしたら、お前たちは犠牲者ってことで、世間が優しく慰めてくれるぞ」
『ユウキ!コイツら、何にか・・・。最前列で俺たちを嵌めるつもりみたいだ』
『わかった』
ユウキは、仲間たちの報告を聞きながら、ニヤリと笑う。
「わかりました。ポーションの実演をしましょう。俺や仲間や、此方側に座っている人物や、先程の森田さんでは、貴方たちは納得しないでしょう。誰が実験体になってくれるのですか?」
ユウキの言葉で、札を上げている記者が固まった。ユウキの言葉は、当然のことなのだが、記者たちは”ユウキたちのポーションは偽物”だと思っていた。正確には、”偽物であるべき”だと思っていた。本物なら、わざわざ”ゴシップ記事”を得意とする週刊誌なんかに売り込むはずがない。自分たちのような大手の出版社やTVに売り込むはずだと考えた。そして、ゴシップ記事を得意とする週刊誌に売り込んだのは、”ポーションなぞ存在しない”からだと”当然のように”考えたのだ。
そして、彼らはユウキが著名な研究者や政治家からの提案を断ったことを教えられて、確信していた。
”ポーションなど存在していない”
『ガマの油売りの口上』と同じレベルの物だと・・・。
記者たちは、ユウキたちにポーションを使うように誘導した6番の記者を見る。
「どうされましたか?誰がポーションを使いますか?今日は、ポーションの予定がなかったので、2本だけ中級ポーションを持ってきています。終わった後で、研究所にわたす予定だったので・・・」
森田が、札を上げる。
「38番の記者。今、6番の方が質問をしています。お待ち下さい」
「あぁ質問を遮って申し訳ないのですが、先程、おっしゃった”中級ポーション”はどのようなものなのか、説明をして頂きたい。資料には、”ポーション”としか書かれていません」
「そうですね。ユウキさん。どうですか?」
司会が、ユウキに話を振る。
「いいですよ。研究所で、調べていただいたのは、”初級ポーション”です。お手元の資料に、あるのは”初級”の物です。中級は、切断面の結合と内臓の修復です。あとは、精神に対する作用も確認されています。そうですね”薬物依存”などの治療もできます」
「っ!」
「どうしました?」
ユウキが、森田の驚きの顔を見て、問いかける。
「いえ、なんでもありません。ありがとうございます」
「どうされますか?どなたが試されますか?中級ポーションですので、内臓の修復や薬物依存の治療は、見た目でわかりませんよ?指を切断して、結合を試しますか?先程の発言通りに、疑っていらっしゃる人がいらっしゃるようなので、私たちや司会や会場を設営して居る人、今川さん。そして、先程の質問者である森田さんは除外ですね」
一気に、言い切って、記者を見つめる。
記者は、自分が言ったセリフを飲み込みかけているが、この場所は記者会見で、録画、録音されているのは間違いない。それだけではなく、名乗ってしまっている。新聞社の看板を背負った状態で、”茶番”と言い切ってしまっている。
視線が、自分に集中しているのが解って、名乗った記者が慌て始める。
自分が、実験台になるつもりはないのだ。周りを見回して、自分よりも”身分”が低いと思える人物を探すが、この会見には”1社1人”という制限が付けられていた。
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