28 / 96
第二章 帰還勇者の事情
第十三話 見世物
しおりを挟むポーションの確認を終えて、記者会見をしていた会場に戻ってきたら、記者の数が半分になっていた。ポーションの確認から外された最前列に陣取っていた記者たちが、帰ってしまっていた。機材を抱えていた者も半数が帰っているので、会場で待っている者の数も減ってしまっていた。
司会が状況を説明しているが、それでも詰め寄る者は存在していた。
”弾かれた”記者たちだ。残っていた者たちには、佐川から動画が送られることで落ち着いた。佐川の研究資料が付いているので、記事にするのには十分な資料になる。
森田と14番にも群がった。傷の具合を聞いている。
二人は、曖昧な返答をしているが、ユウキからの”答え”は何も出さないことになっている。二人の率直な意見を述べるようにだけお願いしていた。
森下の提案で、休憩を挟むことになった。
今川が確認して、会場の時間を延長も決まった。記者たちは、煩い”最前列”が居なくなって喜んでいる。
「ユウキ!(スペイン語)ポーションは残っていないのか?」
「俺たちが使う分として残しておきたい。どうして?」
「(スペイン語)ミスター佐川は信頼しているが、別の国の研究機関での検証が必要だとは思わないか?」
14番は、興奮してユウキに詰め寄る。
ようするに、自分の国でもポーションを調べさせるということだ。
ユウキが周りを見ると、同じように考えているのだろう者たちが居る。
ユウキは、息を吐き出してから、サトシたちを見るが、サトシたちは、ユウキの好きにしろと伝えてきた。
「佐川さん。今川さん。森下さん」
ユウキは、この場で信頼できる3人の大人を呼んだ。
「なんだ?」
佐川がユウキの近くに居たために、最初に反応した。
「海外の記者たちが、母国でもポーションの検証をしたいと言っているのです」
「当然じゃな」
「え?」
「なんだ?」
「いえ、佐川さんが反対されると思っていたので・・・」
「おぬしが、儂をどう見ているのかわからんが、一つの研究施設だけの結論に、なんの意味がある。複数で試験を行って、検証した物に意味がある。儂は賛成じゃ。できれば、どこの研究所か教えてもらいたい。検証結果を突き合わせれば、違う見え方がする可能性がある。それに、儂が考えない発見があるかもしれない」
「わかりました。えぇと、今川さんも森下さんも、大丈夫ですか?」
二人も、ユウキが大丈夫なら問題はないと宣言した。
「えぇと、14番さん」
「アロンソだ。偉大なF1ドライバーと同じとおぼえてくれ」
「え?あっはい。それで、アロンソさん。今の佐川さんの話で、依頼する研究施設の情報は開示してくれますか?」
「問題はない。できれば、ミスター佐川の意見も聞きたい」
ユウキは、佐川を見る。佐川は、頷いているので、問題は無いのだろう。
「アロンソさん。先に、希望する記者を募りたいのですが・・・?提供できるポーションの数にも影響します」
「それはそうだな」
アロンソは、記者たちを集めて話を始める。
森下はサポートに向かった。
「ユウキくん」
「解っていますよ。佐川さんには、中級ポーションを渡します」
「うんうん。それで、儂の経験から、4本のポーションがあると、検証が楽にできる」
「4本ですか?」
「一度、瓶の蓋を空けてしまうと、もう検証として正しいとは限らない。しかし、試さないと納得が出来ない」
「はぁ」
「それで、一本は、実験で使う。もう一本は、成分分析にまわす。そして、もう一本は、成分分析の結果の追試用だ」
「もう一本は?」
「予備だ」
ユウキは、佐川の目を覗き込むように見る。
”嘘ではないが、本当でもない”という意識を読み取った。実際には、読み取った感じでは、”予備”なのは間違い無いが、”目的”は違うように感じた。仲間に覗かせればもう少しだけ深い感情が読み取れる可能性もある。だが、ユウキは佐川を信じることに決めた。
「まぁわかりました。ようするに、佐川さんは、初級ポーションと中級ポーションを4本ずつ所望しているということですね」
「そうだ。できるか?」
「まぁなんとかしましょう」
佐川が満面の笑みで、ユウキの背中を叩きながら頼むと言ってから、海外の記者が話し合っている輪に加わった。
『フェリア。ニコレッタ。ポーションを作ったよな?初級を150本と中級を80本ほど俺に送ってくれ』
『了解』『ユウキ。上級は?10本くらいならあるよ?』
ニコレッタからの提案をユウキは、必要ないと断った。
中級でも破格の性能なのだ、上級ではどうなるかわからない。部位欠損が治るような物は、フィファーナでも珍しかった。作られる者は限られていた。
「ユウキ!」
アロンソが戻ってきた。
「決まったのか?」
「決まった。やはり、全ての国で検証するのが正しい行為だろうとなった」
「そうなのか、結局、何カ国だ?」
アロンソが、ユウキに国を示していく。
・イギリス・フィンランド・オランダ・メキシコ・スペイン・オーストラリア・カナダ・ドイツ・フランス・ロシア・イタリア
「11カ国?いや、佐川さんが居るから12カ国か・・・・」
「無理か?」
アロンソが少しだけ心配そうな表情で、ユウキからの返事を待つ。
「そうですね。俺たちが怪我や病気をしたときのために取っておこうと思った物ですし・・・」
「そうか、ユウキ。20分・・・。いや、10分の時間をくれ」
「え?いいですよ?」
「ありがとう」
それだけ、アロンソはまた記者の集まっている場所に戻った。
記者たちは、アロンソの話を受けて、一斉にスマホで誰かに連絡を取り始める。休憩中だったので、結界は解除していた。動画を、本社に送りたいという要望が上がってきていたためだ。
「ユウキ」
「今川さん」
「いいのか?」
「あぁポーションですか?予定にはなかったのですが、見世物には丁度いいですよね」
「そうだな。最高の見世物にはなりそうだが、他にもいろいろ有るのだろう?」
「ありますが、見世物は一度にみせるよりも、小出しにしたほうがいいですよね?」
「ハハハ。そうだな。今日のここでの発表を行ったから、次からは、会場はどこでも大丈夫だと思うぞ?」
「そうですか?今日の予定はここまでにして、次回からは最後まで残った人だけに招待状を送るとかでも大丈夫ですか?」
「そうだな」
ユウキと今川の話に1人の男が割り込んできた。
「ユウキくん。今川さん。森田です」
「あっ森田さん。ありがとうございます」
ユウキは、素直に頭を下げる。
「え、違う。俺が、お礼を言おうと思って、ポーションは本物だ。俺が、苦しんでいた後遺症もすっかりと消えた」
「それは、よかったです。こちらでの実績がなかったので、わからなかったのですが・・・」
「大丈夫だ。実験だろうと、治験だろうと、問題はない。俺が、感謝していると伝えたかっただけだ」
「そう言ってもらえると嬉しいですよ」
「それで、俺たちのボスから、一つの提案があった。断られることを、前提にしているが、聞いてくれるか?」
「伺います」「・・・・」
今川は、森田の上に誰が居るのか掴んでいた。しかし、どんな提案をしてくるのかはわからないので、黙っている。
「ボスは、ユウキくんたちに、隠れ家を渡す準備がある」
「対価は?」
「中級ポーションを2本。できれば、3本」
「隠れ家は?」
「伊豆の山中・・・。正確には、ボスに聞いてもらう必要があるが、森下弁護士なら知っているはずだ。2つの山を、そのままユウキくんたちの名義に変更する」
「え?伊豆の山?」
「主要道路から離れていて、私道がつながっているだけで、別荘地にも出来ない。交通の便を考えると、再開発をするのも難しい場所だ」
「いいのですか?」
「問題はない。一度、ボスに会って欲しい」
「わかりました。連絡は、今川さんか森下さんにお願いします」
「ありがとう」
森田は、明らかにホッとした表情をしている。ボスと言う人物から、無茶振りをされたのかもしれない。ユウキは、少しだけ同情の気持ちを込めて、森田を見送った。森田と入れわかるように、アロンソが戻ってきた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる