帰還した召喚勇者の憂鬱 ~ 復讐を嗜むには、俺は幼すぎるのか? ~

北きつね

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第三章 復讐の前に

第二十五話 人員

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 前田教諭から、妹さんの詳しい状態を聞いた。
 確かに、ミドル・ポーションなら快癒も可能だろう。準備が出来るのなら、ハイ・ポーションを用意しよう。

 しかし、もう一つの可能性を考えて、該当するスキルを持っている者からの協力を取り付けたい。万全を期したい。
 治療などと大きなことを言うつもりはないが、頼まれて、承諾したからには、しっかりと対処を行うつもりだ。ポーションを渡して終わりにはしたくない。せっかくの駒になりそうな人物だ。しっかりと恩を売っておきたい。

 学校では、他に大きなイベントが起きなかった。
 憎しみが込められた視線は感じるが、脅威とは思えない。

 バイト先では違う視線を感じる。
 尾行しているのか?
 複数の気配がある。バイクで帰宅すると、家の近くに見慣れない車が停まっている。俺がカバンから、スマホを取り出すと、逃げるように動き出した所を見ると、後ろめたい職業の人か、身バレを気にしなければならない人なのだろう。
 警察だとは思えないから、マスコミが有力なのだろう。
 あとで、記憶を映像にして、今川さんに問い合わせを行おう。

 些細なイベントではなく、襲撃のようなイベントを期待しているのだけど、相手も慎重になっているのか?
 それとも、”俺”だと解って、手の出し方を考えているのか?

 尾行やらイベントやらも気になるが、今は頼まれているポーションと治療に専念しよう。
 アインスたちの様子を確認してからレナートに移動しよう。

「ユウキ!急にどうした?忘れ物か?」

 転移した場所に、サトシが居た。
 この場所は、サトシが来るような場所ではない。

 マイかセシリアを怒らせて逃げているのか?

「フェリアとニコレッタは?」

 廊下を気にしている様子なので、やはり”何か”をして、逃げているのだろう。
 少しだけ・・・。本当に、少しだけ、こいつに”王位”を渡して大丈夫なのか心配になってくる。

 しかし、サトシに”べたぼれ”しているマイとセシリアが居れば大丈夫だろう。

「さぁ」

 相変わらずだ。
 雰囲気からは、何かを知っているのは解る。

 嘘が苦手なのは、こいつの憎めない所だ。

「わかった。わかった。マイは?」

「マイなら、国王と話をしているはず」

 怒らせたのは、マイではないな。セシリアか?

 本来なら、”お前がしなければならない話をマイがしているだけだろう”とは言っても無駄だと解っている。

 レナートの王城にある執務室に入ると資料が山積みにされていた。
 俺が関係する資料ではないようだ。サトシが処理しなければならない書類のようだ。

 俺が部屋に入ったのを感じたのか、メイドが部屋にやってきて、何か用事がないか聞いてきた。

 マイの用事が終わったら、”俺が探していた”と伝えてもらった。
 同時に、俺の状況と新しい協力者が得られそうだと伝える。前田教諭に関する解っていることと、妹さんの状況をまとめた資料を持っていってもらう。

 メイドが部屋を出て行ったのを確認して、書類を眺めている。
 問題になりそうな書類はなさそうだ。マイとセシリアがサトシに重要な書類を回すとは思えない。無視されても問題にならない書類か、最終の処理が残されている書類だけだろう。

 書類を整理して待っていると、マイがフェリアとニコレッタを連れて部屋に入ってきた。

「話が早くて助かる」

 マイが連れてきたのは、妹さんを”治す”のに必要になるスキルを持っている二人だ。

「協力は大丈夫だよ」

 フェリアが大丈夫だと言えば、ニコレッタが頷いている。

「そうだ。ユウキ。ロレッタは、時間は大丈夫?」

「解らないけど、大丈夫だと思うぞ?今は、何も無かったと思う」

「それなら、ロレッタと一緒に行動をして」

「ん?あぁ」

 フェリアもニコレッタも、美女。美少女だ。日本に居れば目立ってしまうのは間違いない。
 ロレッタが居れば、認識をずらすことができる。
 俺のスキルに近い事ができるはずだ。

 それに、ロレッタとフェリアとニコレッタは仲が良かった。
 静岡の街中なら多少は目立つけど、散策を行って、買い物を楽しんでも大丈夫だろう。言葉の問題がないから、3人が帰るというまで放置でいいだろう。ロレッタはスマホを持っている。いろいろ大丈夫だろう。

「わかった。フェリアとニコレッタ。頼む。マイ。あと、ハイ・ポーションの材料が欲しい。在庫は大丈夫か?」

「大丈夫よ?ハイ・ポーションを持っていかないの?」

「そうだな。いいや。今回は、向こうで作ってみる。ダメだったら貰いに来る」

「わかった」

 マイが、材料を取りに部屋を出る。
 二人を残して、ロレッタの予定を確認する為に、拠点に戻る。

「レイヤ。ロレッタは?」

「買い物に行っている。もうすぐ帰ってくると思うぞ?」

「そうか・・・」

 レイヤに伝言を頼んで、ロレッタが大丈夫なら、メッセージを残してもらうことにして、レナートに戻った。

 タイミングよく、材料を持ったマイが戻ってきた。

「ユウキ。これで大丈夫?」

 材料は揃っている。

「機材は、向こうで買える物で作ってみる」

「わかった」

 材料を持って拠点に転移した。

 ロレッタが戻って来るまで、残留組との情報交換を行う。
 拠点でも、ポーションの作成を行っている。

 効力が、1割程度は落ちているように感じているようだ。

 ニコレッタのスキルで確認を行うと、ポーションとしては使えるようだが、飲む量を増やさなければならないようだ。
 俺たちは、フィファーナで慣れているので、1割でも多く飲むと考えると、少しだけ億劫になるが、地球で初めてポーションを飲む人間には関係ない。

 ただ、ポーションの種類によっては、拠点で作ったほうが、効力が高くなる物も存在している。

 地球で作ったデバフ系のポーションは効力が高くなる傾向にある。

 顕著だったのが、ヒナが試しに作った、”早世”のポーションだ。
 名前は、サトシが命名したのだが、それで固着してしまった。簡単に言えば、”通常の10倍から20倍の速度で老いる”ポーションだ。これが、地球だと100倍から200倍の速度で老いることになってしまった。
 作ったはいいが使いどころに困る。化粧水の様に使えば、肌の代謝が早まり、余計な老廃物が排出されて、怪我が治る効果がある。飲まなければ、問題にはならない。そんなポーションだ。そして、通常のヒール相当のポーションと色が全く同じなのだ。匂いが違うので、俺たちなら判断ができる。
 何かに使えるかと考えて、俺のアイテムボックスに入っている。死蔵一直線だ。

「お待たせ!」

 ロレッタが買い物から帰ってきた。

「おかえり。買い物は出来たのか?」

「うん。一応ね。でも、やっぱり、都会・・・。とは、言わないけど、街に行きたいかな?」

「わかった。わかった。話は聞いているよな?」

「大丈夫!」

「3人で静岡市内でも散策してくれ、問題がなければ、呼ばない。何処にいるのか解るようにしておいてくれれば、問題が発生したら迎えに行く」

 3人のテンションが上がる。
 やはり、買い物は楽しいようだ。

 レナート組の二人も、ヒナから日本円を貰っている。
 実際には、拠点での共有財産からの分配なので、二人にも受け取る権利がある現金だ。

「ユウキ!少しだけ待って!」

「いいぞ?」

「皆に、必要な物を聞いてくる!ニコレッタ!フェリア!行こう!」

 3人は、マイの肩を軽く叩いてから部屋を出て行った。

「マイ」

「こっちは大丈夫よ。お母さんとお父さんも元気」

「よかった。何か言っていたか?」

「うーん。そうね。”ユウキに辞めるように言っても無駄だろうから、自分の心に嘘はつかないようにしなさい”と伝えて欲しいそうよ」

「ははは。わかった。本丸に手を付ける前に、母さんと父さんには会いに行く、あと、アイツにも・・・」

「そうね。そうして貰えると助かる」

 マイは、そう言って部屋を出て行った。
 俺も、自分に割り当てられている部屋に移動して、3人が帰ってくるのを待つことにした。

 30分後に、3人が俺の部屋に来たので、そのまま移動を開始した。
 転移で移動しても良かったのだが、ニコレッタとフェリアの希望で、フェリーを使うことになった。

 3人はフェリーで移動して、そのまま清水と静岡を回るらしい。
 俺は、家に戻ってハイ・ポーションを作ってから、前田教諭に連絡する。

 お互いの予定を確認してから別れた。
 これなら、3人が話を聞きに行く前に、予定の確認をしてしまえばよかった。
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