大人の恋愛の始め方

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【第1部】8.都合のいい女

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『近くのコンビニにいる』
 聡子にメッセージを送り、彼女の勤めるバーの近くのコンビニで待機する。
 既読になり、
『今から出ます』
 とすぐに返信があった。
 それに対して返事はせず、彼女が来るのを待った。
 到着するより先に、彼女から電話が入った。
「なんだよ」
『今日……出来ないです……』
「なんでだよ」
『その……察してもらえると……』
「ああ、そういうことか。仕方ないな、女にはそういう日があるよな。まあ妊娠してないってことだし」
 今日が出来ないのか、とものすごくがっかりしている自分がいた。
「……なら、今日は別の女探すか」
『えっ、他の人と……するんですね……』
「なんだよ、おまえには関係ないだろ」
『そ、そうですね……すみません……』
 ミヅキを抱くつもりで待っていたのに、と、なぜこんなに自分ががっかりしているのかわからない。ミヅキがだめなら他の女と寝ればいい、電話で呼び出せばホイホイ股を開く女は何人もいる。
「じゃあな、気をつけて帰れよ」
『すみません……』
 トモは電話を切ると、駐車場を出た。
 ふとルームミラー越しに聡子の姿を見た。
 彼女はコンビニに着いていて、すぐ近くから電話をしてきたようだ。
 見える位置なら、直接話せばいいのに。
(直接……)
 言いづらかったのか、とも思ったが、そんなことはもうどうでもよかった。
 聡子が向きを変えて歩き出すのが見えた。
 トモは途中車の向きを変え、聡子を追った。
「おい、乗れ」
 聡子の近くに停車し、声をかけた。
「え……」
「なんだよ。とりあえず乗れよ」
 聡子は暗い面持ちで助手席に乗った。
「どうした」
 車を発進させる。
「今日、出来ないんですよ……」
「さっき聞いた。駅まで送る」
 駅まで送ると言ったが、目的地を変更した。
 人気のない場所を探した。
 街灯も何もない辺鄙な山林道の脇道だ。
「あの……」
 聡子の手を取り、自分の股間に乗せた。
「えと……」
 ベルトを外し、スラックスを下げた。
「口でしてくれ」
「人が……」
「大丈夫だ、来ない。来てもすぐに通りすぎる車だけだ」
 運転席のトモに身体を寄せ、聡子は夢中でトモのものを咥え、扱き、しゃぶった。
 小さな口を自分のモノでいっぱいにし、舌を動かしている。
「気持ちいい……」
 んぐんぐ、と時々喉を鳴らす聡子の髪を撫でてやると、彼女は嬉しそうにもっと強く口を動かすようになった。
 彼女の口だけで果てるのは無理だと思っていたが、今日は果てることができた。自分から出されたものを口にして、飲み込もうがどうしようか困って泣きそうな顔をしたので、ティッシュの箱を渡し、吐かせた。飲み込ませるのはさすがにアブノーマルな行為だと思い、止めさせたのだ。そういうことは覚えなくていいとトモは思っている。
「飲んだほうがよかったんでしょうか」
「飲まなくていい」
「そうなんですね……」
 聡子はトモのものもきれいに拭ってくれた。
「痛かったですか」
「いや、大丈夫だ」
 後処理をしてくれる女は初めてだった。口でさせても、出したら出したままだ。
「今日はおまえとしたい気分だったんだけどな」
「すみません。あの、でも、これから別の方のところに行かれるんですよね、お時間、大丈夫ですか」
「行かねえよ」
 なんでこんな時に他の女の話をするんだ、と言ってやりたかった。おまえを抱きたかった、と言っているのに。
「今日はこれで充分だ」
 ぐいっと聡子の頭を掴み、胸に抱いた。
「我慢するかな」
「すみません……」
「ミヅキ」
「はい」
「おまえ、マジで巧くなったな。よかったよ」
「そう、ですか」
 彼女は喜んでいいのか、と言った感じの受け答えだった。
 聡子が身体を起こそうとすると、顎を掴み、唇を重ねた。
「また勃ちそうだ」
「えっ」
 聡子は下腹部に視線を落とした。
「冗談だよ」
「……」
「はあ……抱きたかったけどな」
「わ、わたしも……その……したかったです」
「そうか」
 もう一度キスをした。
 聡子の手が、ふいにトモのものに振れた。ぎゅんっと急に大きくなる。
「あ、また元気になった」
「もう一度しましょうか?」
「ああ。でも、最後までじゃなくていいぞ」
 もう一度、聡子が身を寄せた。
(そういえば……)
 聡子の口の動きを感じながら、彼女がキスに噎せないことに気付いた。
 聡子は言わないが、彼女がたばこを嫌いだと気づいて、少しづつ減らし、禁煙にこぎつけた。キスをしたあと、聡子がむせていたのだ。
 以前、
「煙草……。トモさん、喫煙されるんですね」
 そう言われたことがあった。
「嫌いか?」
 聡子は答えるのをためらっていた。それは、トモに嫌われたくないと思っているのがわかった。
 ヘビースモーカーではないが、つきあい程度には喫煙をする。聡子の働くバー店内では禁煙なので吸っていない。そういえば聡子の前で吸ったことはなかったことに気付いた。
「苦手……です……あ、でもトモさんが嫌なわけじゃなくて……」
「わかった。おまえと会う前は煙草、吸わねえようにするよ」
 あの日の聡子は複雑そうだった。
 元々本数を吸っているわけではなかったし、わりと早い期間で煙草を止めることができたのだ。
 聡子はそれに気付いたのかいないのか、むせることもなくなり、キスも嬉しそうに受け入れる。
(嬉しそうに……か)
 本当に嬉しそうなのはあいつじゃないかも、と顔に手をやった。
(なんであいつのために禁煙なんかしたんだろうな)
 お気に入りを逃したくない、ただそれだけだ、と言い聞かせた。
 彼女が一生懸命食んでいるのを見て、髪を撫で口元を緩めたのだった。

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