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【第1部】8.都合のいい女
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はじめは、トモは彼女にタクシー代を握らせようとしたが、
「そんなつもりでしたわけじゃありません!」
と強く拒否してきた。
「けど、これからもおまえを抱くぞ」
と念押しをすれば、
「別に……わたしの意志です」
彼女ははっきりとした口調で言った。
気の強い女らしい言い方だった。
ほかの女は、金をせびることはないものの、タクシー代だと言って出せば喜んで金を受け取っていたので、拒否されるとは思わなかった。
(俺に本気で「本気」かよ……)
「じゃあな」
帰り際そう言うと、女たちはキスをしてくる。
自分からはしない。
「また誘ってね」
香水臭い女たちは、そう言う。
だが彼女は、男を知らないせいなのか、そんなことはしない。
ビジネスのように、それでは、と言って去っていこうとするので、トモから頭をぽんぽんと撫でてやるようになった。
「またな」
トモのほうが言ってしまう。
彼女の寝るのは気持ちいいだけでなく、心地いい。香水の匂いもしない、他の男の臭いもしない。なんと言っても身体が自分好みなのだ。経験のない女は初めてだったが、その分もっと自分好みにすることができる。
潤んだ瞳で自分を見つめ、トモの全部を受け入れ、啼く。
(でも、こいつは俺に惚れている)
本気にさせてはいけない。
遊びの相手でしかないとわからせるしかない。
そんなことをしても、トモの良心は痛まなかった。
はじめは、トモは彼女にタクシー代を握らせようとしたが、
「そんなつもりでしたわけじゃありません!」
と強く拒否してきた。
「けど、これからもおまえを抱くぞ」
と念押しをすれば、
「別に……わたしの意志です」
彼女ははっきりとした口調で言った。
気の強い女らしい言い方だった。
ほかの女は、金をせびることはないものの、タクシー代だと言って出せば喜んで金を受け取っていたので、拒否されるとは思わなかった。
(俺に本気で「本気」かよ……)
「じゃあな」
帰り際そう言うと、女たちはキスをしてくる。
自分からはしない。
「また誘ってね」
香水臭い女たちは、そう言う。
だが彼女は、男を知らないせいなのか、そんなことはしない。
ビジネスのように、それでは、と言って去っていこうとするので、トモから頭をぽんぽんと撫でてやるようになった。
「またな」
トモのほうが言ってしまう。
彼女の寝るのは気持ちいいだけでなく、心地いい。香水の匂いもしない、他の男の臭いもしない。なんと言っても身体が自分好みなのだ。経験のない女は初めてだったが、その分もっと自分好みにすることができる。
潤んだ瞳で自分を見つめ、トモの全部を受け入れ、啼く。
(でも、こいつは俺に惚れている)
本気にさせてはいけない。
遊びの相手でしかないとわからせるしかない。
そんなことをしても、トモの良心は痛まなかった。
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