大人の恋愛の始め方

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【第1部】8.都合のいい女

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 ある日、川村光輝の接待の後に呼び出さた。川村も相変わらず通って来ている。以前よりは川村に柔らかく接するようになり、腕を組んだりすることもあった。
 その日は、呼び出されていくと、トモに激しく抱かれた。かなり不機嫌だった。
 トモは、川村を見送ったのを見ていたのだろう。
「おまえ、あいつにも股広げてんのか? このエロい身体で、あいつを喜ばせてんのか? ああ!? どうなんだよ!」
 随分と乱暴なものだった。
 どうしてそんなことを言うのだろう、と聡子は疑問に思ったが、乱暴でも快楽に溺れてすぐにどうでもよくなった。
「そんなこと……してないですっ……」
「ほんとかよ」
 トモの腰が激しく打ち付けられ、胸を強く掴まれた。
「トモさんだけ……」
「あいつにもこうしてヤらせてんのか。なあ?」
 トモがどうして特定の相手に対して言うのだろう。まさか嫉妬でもしてくれているのか、と聡子は思ったが、次々に襲う快楽に思考が分断されてしまう。そんなわけがない、というのが最終的な判断だ。
「俺に抱かれて悦ぶようになったくせに……とんでもねえ女だな」
 確かにトモに何度も抱かれているうちに、快楽や快感がわかるようになってきた。
「おまえのいいところ全部知ってるのは俺だけだろ?」
「……っ……!」
「腰振ってみろよ」
 トモは寝転ぶと、聡子を上にまたがらせた。聡子が腰を振って胸を揺らすのが好みらしい。また、後ろから挿入して、まるで犯しているような体位も好んでいた。トモは聡子を独占することに満足しているようだった。
 トモはイライラしている時には彼女を激しく抱く。そのことを聡子はわかり始めていた。今日何かあったんだな、とか、いいことがあったのかな、と察するが聡子はされるままだ。
「どうして……してないのに……っ」
 イライラしていても、聡子がトモのものを口に含んで施すと、とても大人しくなった。最初は下手くそだと散々言われたが、何度もするうちに、これもトモの満足の範囲内に達したようだ。他の女性に比べればまだまだらしいが、それをしている間に髪を撫でてくれたり、艶めいた息を吐くようになっていた。
 ベッドの縁に腰をかけている彼は脚を開き、聡子は膝をついている。
「急に巧くなったな? どこで覚えたんだ? まさかほかの男に教えてもらったんじゃねえだろうな」
 咥えたまま首を振る。
 遊びの相手だとわかっていても、トモが自分を必要としてくれていることが嬉しい。
「ははっ……可愛い女だな」
 なにげにトモが言った言葉に、他意はないとは思いつつも、嬉しくなってしまう。
「従順で可愛いじゃねえか……へえ、俺好みになったな」
「んぐ……よかった……」
「嬉しいか? ならもっと俺を悦ばせてみろよ」
 咥えていた手を掴み、聡子を立たせたあと跨がらせた。
「ゴム……してないのに挿れたら……」
「ナカで出さねえよ。ちゃんと外に出す。ほら、早く腰振れよ」
 対面座位になり、聡子の腰を掴んで動くよう示した。聡子はトモにしがみつき、勝手に腰が動くのを止められずにいる。
「……っ……っ……」
 トモは言葉責めで聡子を甚振った。
 恥ずかしい言葉にゾクゾクとしてしまう。
(わたし、変態なのかな……) 
 聡子はトモしか男を知らないため、どういうふうにしているのかわからない。みんなこういう感じなのかなと疑問に思うこともあった、誰に尋ねることもできないし、トモのいうとおりに、彼の望むことは何でもした。
 ホステス仲間でも、客と寝たというものがいなくはない。
 基本はNGだが、個人的という名目でママも暗黙の了解のようだ。もしかすると、トモとの関係も感づかれているかもしれない。
「気持ちいい女だな」
「……っ……」
「うまくなった」
「……はぁ……っ……」
「気の強い女を啼かせるのって、イイんだよな」
 機嫌のいいと思われるときは、聡子を褒める。
 彼は何かにつけて「気の強い女はいい」と言う。何がいいのだろう。
(今度訊いてみようかな……)

 行為が終わると、トモは聡子には見向きもせず、ぼうっとしている。
 初めての時のように、腕枕してもらいたいな、と思ったが、男には「賢者タイム」というものがあるらしく、それを邪魔するとひどい目に遭うこともある、と先輩ホステスの雑談で耳にした。ましてや本気の相手と遊びの相手だと、それも違ってくるらしい。
(遊びの相手だもんね……)


 終わると余韻も何もなく解散する。
(遊び……自分がそれでいいって言ったんだから仕方無いけど)
 周囲の女の子たちは、彼ができて一緒に出かけたり遊んだりしている。結婚すると言う子も出てきた。早くないか、という意見もあるが、もうそんな話がでてもおかしくないのだと痛感した。
 こちらは好きな男性に、遊び相手にされている状態だというのに。
 別れ際、トモは聡子の頭をぽんぽんとなでて、
「じゃあな」
 と言って別れる。
(次があるってことだよね)
 嬉しいような寂しいような、虚しさであることは認めない聡子だった。

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