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【第2部】27.決意
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台所や浴室、洗面所など、必要な箇所を先に整え、あとは寝る場所を確保し、引っ越し作業と今日の所の片付けを終了した。といってもトモの荷物は衣類や日用品くらいだったし、聡子の部屋の荷物が後回しにして終わることになった。聡子の部屋にあった家電や家具をそのまま運んできたので、生活するには問題がない。一人暮らし用の家具なので、徐々に買い換えていく予定にしている。
「俺の部屋で寝るだろ?」
「はい、そのつもりですけど……お疲れでしたら、別々にしましょうか」
「ばっ……か、同棲初夜に別々で寝るって、そんなことあるかよ」
「……嘘ですよ」
悪戯っぽく笑う聡子に、トモは苦々しい顔をした。
初日から冗談キツいぞ、とそっぽを向くと、
「ああっ、拗ねてますか?」
聡子は笑った。
「別に拗ねてねえよ。……早く夕飯の買い物行こうぜ。今日は蕎麦にするんだろ」
急に居心地が悪くなり、財布をポケットにしまって出かける準備をし始めた。
「今日はお蕎麦、食べにいきませんか」
急に背中に聡子の温もりを感じた。彼女がしがみついてきたのだ。
「……いいよ」
腕を回し、トモの腹の前で交差させている。
「怒りましたか?」
「怒ってねえよ」
聡子の手に自分の手を添える。
「よかったです」
ぎゅっと抱き締める力が加わることに気付いた。
「……熱い抱擁は大歓迎だけど、それは夜にしよう。これから毎日一緒だし、毎晩おまえを抱けるんだし」
「ストップ! 毎晩はちょっと……」
ぶすっとした顔をしたが、抱きつく聡子には見えないだろう。
「飽きますよ?」
「飽きない」
「それに智幸さんの体力に毎晩は……」
俺より若いのに、とトモは不満げに言うが聡子から苦笑が洩れた。
「まあ……ほどほどにする。てか、とりあえず、蕎麦食いに行こう」
とんとんと手を優しく叩き、諭した。
「……わかりました」
そっと身体を離した聡子は、荷物を取りに部屋に戻った。
(ふう……)
がらにもなく少しむきになってしまった自分を恥じた。
(ちょっとドキドキしたな……)
聡子にふいに抱き締められて、心臓が高鳴った。
(これが恋をするってことか……)
身体から始めておいて、今更こんな気持ちになるなんて、と胸が苦しくなる。
聡子に惚れているのは自他共に認める事実だ。しかし、愛だとか恋だとか、そういうのがよくわかっていないのも事実だった。聡子に惚れた時点で、彼女はもう自分を好きでいてくれたから、会うまでのドキドキする気持ちや、苦しさがほぼなかった。聡子のほうは抱いていただろうけれど。
「智幸さん、準備できましたよ」
「おう」
「それじゃ引っ越し蕎麦、食べにいきましょうか」
二人で玄関に行き、履き慣れた靴を履く。
鍵を閉め、二人で外出をする。
なんだかわくわくするし、気恥ずかしい。
「行くか」
「はい」
どちらからともなく二人は手を繋ぎ、歩き出した。
「智幸さん、これからもよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくな」
二人の新しい扉が開かれた。
「俺の部屋で寝るだろ?」
「はい、そのつもりですけど……お疲れでしたら、別々にしましょうか」
「ばっ……か、同棲初夜に別々で寝るって、そんなことあるかよ」
「……嘘ですよ」
悪戯っぽく笑う聡子に、トモは苦々しい顔をした。
初日から冗談キツいぞ、とそっぽを向くと、
「ああっ、拗ねてますか?」
聡子は笑った。
「別に拗ねてねえよ。……早く夕飯の買い物行こうぜ。今日は蕎麦にするんだろ」
急に居心地が悪くなり、財布をポケットにしまって出かける準備をし始めた。
「今日はお蕎麦、食べにいきませんか」
急に背中に聡子の温もりを感じた。彼女がしがみついてきたのだ。
「……いいよ」
腕を回し、トモの腹の前で交差させている。
「怒りましたか?」
「怒ってねえよ」
聡子の手に自分の手を添える。
「よかったです」
ぎゅっと抱き締める力が加わることに気付いた。
「……熱い抱擁は大歓迎だけど、それは夜にしよう。これから毎日一緒だし、毎晩おまえを抱けるんだし」
「ストップ! 毎晩はちょっと……」
ぶすっとした顔をしたが、抱きつく聡子には見えないだろう。
「飽きますよ?」
「飽きない」
「それに智幸さんの体力に毎晩は……」
俺より若いのに、とトモは不満げに言うが聡子から苦笑が洩れた。
「まあ……ほどほどにする。てか、とりあえず、蕎麦食いに行こう」
とんとんと手を優しく叩き、諭した。
「……わかりました」
そっと身体を離した聡子は、荷物を取りに部屋に戻った。
(ふう……)
がらにもなく少しむきになってしまった自分を恥じた。
(ちょっとドキドキしたな……)
聡子にふいに抱き締められて、心臓が高鳴った。
(これが恋をするってことか……)
身体から始めておいて、今更こんな気持ちになるなんて、と胸が苦しくなる。
聡子に惚れているのは自他共に認める事実だ。しかし、愛だとか恋だとか、そういうのがよくわかっていないのも事実だった。聡子に惚れた時点で、彼女はもう自分を好きでいてくれたから、会うまでのドキドキする気持ちや、苦しさがほぼなかった。聡子のほうは抱いていただろうけれど。
「智幸さん、準備できましたよ」
「おう」
「それじゃ引っ越し蕎麦、食べにいきましょうか」
二人で玄関に行き、履き慣れた靴を履く。
鍵を閉め、二人で外出をする。
なんだかわくわくするし、気恥ずかしい。
「行くか」
「はい」
どちらからともなく二人は手を繋ぎ、歩き出した。
「智幸さん、これからもよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくな」
二人の新しい扉が開かれた。
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