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【第4部】浩輔編
12.堕落
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相変わらずミサは浩輔を呼び出してきた。
浩輔も特に断る理由もないので、よほどでなければ応じている。
ただ、ミサが不特定多数の相手がいるのだろうと思われるように、浩輔にも欲を発散する相手が増えてしまった。ミサには言ってない。相手がミサと同じ店の女性なので、ミサには言っていないし、言えない。
ミサが、知っている子はやめて、と言ったというのに、欲望には勝てなかった。
「三原君を狙っている子がいる」
と言っていた、正にその女だ。
ミサが出勤していない日に、まんまと引っかかってしまった。高虎と一緒だったが、高虎はいつものカレンと話に夢中だったし、こちらのことは気にかけていなかっただろう。
高虎が先に帰ると言って店を出た時、浩輔も慌てて外に出たが、そのあと彼女──マユカに腕を引かれて引き留められた。
「もうちょっといいでしょう?」
「あ、いや、でも神崎さんを追いかけないと」
「先に行くって言っただけでしょ。三原さんはまだ時間いいじゃない?」
「いいけど、でも」
俺は狙われている、と察した。
ミサもいないし、高虎もいない。
マユカが行動に出てきたのだと思った。
そのマユカに腕を引かれたまま、路地裏へとつれられた。
「ちょ……」
室外機と室外機の間で、建物の壁に身体を押しつけられる。
(いて……っ)
「ミサばっかりずるいよ……」
「え……」
「わたしも三原さんとずっとお話したかったんだよ。今日お話できて嬉しかったし」
「う、ん……そう、それはよかった、です」
「もっと、たくさんお話したいんだけどな」
マユカは浩輔の胸に身体を押しつけてきた。
むにゅり、と何か柔らかな感触がある。
ミサも柔らかいが、マユカも柔らかいと思った。
暗がりの中、店の表の明かりが少し届いて、上目遣いに見るマユカの表情がわかった。
「お話、したいな」
蒸し暑い夏の夜に熱い身体が、マユカの体温で更に熱くなっていく。
「いいですけど……それって……」
「個人的にってことよ?」
誘われてる、と確信した。
これは誘いに乗って良いのか、と思案してしまう。ミサに言われたのに彼女を裏切ることになってしまうからだ。
「ミサには内緒にするから。ミサだけじゃなくて、わたしとも個人的な接待させて」
「…………」
ミサに負けない大きな胸が浩輔を欲情させていく。
マユカは少し身体を離し、だらんと下がった浩輔の左手を取ってその胸に当てた。
「!?」
「ミサには敵わないけど、結構悦ばせてあげられるんだけどな」
浩輔は負けた。
ミサしか知らなかった浩輔は、マユカを関係と持ち、自信を持ち始めていた。経験が少ないことがコンプレックスだと思っていたが、数をこなせばいいものではないと感じた。
マユカと寝た時、
「ミサに全部教えてもらったんだ?」
と浩輔をサディスティックに翻弄させた。まだまだ知らないことがあるようで、それをマユカは教えてくれた。経験値の低い浩輔の行為を否定した嘲笑することはなく、ミサ同様浩輔を受け止めてくれる。
ミサとは違う愉しさと快楽を知った。
マユカとはミサほどの頻度で会うことはなかったが、次第にミサの呼び出しを断ってマユカの元へ行くことが増えた。
マユカとはホテルや車のなかで関係を持っていた。
「ミサにバレてない?」
「たぶん」
「ミサにバレたら怖いもんね。あの子、人のお気に入りは盗るのに、自分のお気に入りを盗られたら鬼みたいなんだから」
「……ははは」
女って怖いな、と浩輔は笑う。
「笑い事じゃないよ」
「ごめん」
女の世界って怖いな、と心の中では身震いだ。
(舞衣もそんな思いしたのかな……)
ふと、舞衣のことが脳裏に浮かんだ。高校一年生の時、同じ高校の先輩と付き合ったはいいが、三股をかけられ、浮気相手の一人だったために好奇の目に晒されたと、同じ施設の由里が話してくれたことを思い出した。好奇の目、そしてその相手の本命の相手には嫌がらせもあったと後に由里が教えてくれた。
(怖いよな……)
俺が相手だったらそんな思いさせなかったのに。
(なんて、今の俺は言えないけど)
「あれー、三原君、別の女の子のこと考えてるでしょー」
「えっ」
「あー図星なんだ。まかさミサのことじゃないよねえ?」
情事を終えて身体を休めているが、マユカは何度も何度も次を求めてくる。いくら体力があると言っても、浩輔も無尽蔵ではない。
「違いますよ。てか別の女のこと考えるわけないでしょ。マユカさんといるのに」
「ほんとかなあ?」
隣で横になっているマユカはつんつん、と浩輔の頬を突いてくる。
「疑うならもう今日はおしまいにしたほうがいいんじゃないかな。マユカさんも疑いながら俺に抱かれたくないでしょ」
「ヤダ。ごめん、怒った?」
「怒ってはないけど、気分はよくないよ」
天井を見上げ、甘えてくるマユカの素っ気ない態度になった。
怒ってはいない。
マユカより優位になっているのは気分が良い。
「ごめんね」
頬にチュッとキスをされ、顔を背けた。
「やっぱり怒ってる」
「怒ってない」
「怒ってる」
「怒ってない」
バカップルみたいな会話だと思った。
「俺が怒ってたらどうするの」
「三原くんのしてほしいこと、全部してあげる。それじゃ駄目?」
「いいよ」
上に乗ってくるマユカの髪を撫でてやると、芝居なのか本気なのかわからないが、
「よかったあ」
と甘い声を出した。
(芝居だろうな……)
「じゃあ、大きくしてよ」
「うん、もちろん」
マユカは嬉しそうに応え、浩輔をものに触れてくれた。
……自分がどんどん性欲に溺れ、快楽に塗れ、堕ちていく気がした。
浩輔も特に断る理由もないので、よほどでなければ応じている。
ただ、ミサが不特定多数の相手がいるのだろうと思われるように、浩輔にも欲を発散する相手が増えてしまった。ミサには言ってない。相手がミサと同じ店の女性なので、ミサには言っていないし、言えない。
ミサが、知っている子はやめて、と言ったというのに、欲望には勝てなかった。
「三原君を狙っている子がいる」
と言っていた、正にその女だ。
ミサが出勤していない日に、まんまと引っかかってしまった。高虎と一緒だったが、高虎はいつものカレンと話に夢中だったし、こちらのことは気にかけていなかっただろう。
高虎が先に帰ると言って店を出た時、浩輔も慌てて外に出たが、そのあと彼女──マユカに腕を引かれて引き留められた。
「もうちょっといいでしょう?」
「あ、いや、でも神崎さんを追いかけないと」
「先に行くって言っただけでしょ。三原さんはまだ時間いいじゃない?」
「いいけど、でも」
俺は狙われている、と察した。
ミサもいないし、高虎もいない。
マユカが行動に出てきたのだと思った。
そのマユカに腕を引かれたまま、路地裏へとつれられた。
「ちょ……」
室外機と室外機の間で、建物の壁に身体を押しつけられる。
(いて……っ)
「ミサばっかりずるいよ……」
「え……」
「わたしも三原さんとずっとお話したかったんだよ。今日お話できて嬉しかったし」
「う、ん……そう、それはよかった、です」
「もっと、たくさんお話したいんだけどな」
マユカは浩輔の胸に身体を押しつけてきた。
むにゅり、と何か柔らかな感触がある。
ミサも柔らかいが、マユカも柔らかいと思った。
暗がりの中、店の表の明かりが少し届いて、上目遣いに見るマユカの表情がわかった。
「お話、したいな」
蒸し暑い夏の夜に熱い身体が、マユカの体温で更に熱くなっていく。
「いいですけど……それって……」
「個人的にってことよ?」
誘われてる、と確信した。
これは誘いに乗って良いのか、と思案してしまう。ミサに言われたのに彼女を裏切ることになってしまうからだ。
「ミサには内緒にするから。ミサだけじゃなくて、わたしとも個人的な接待させて」
「…………」
ミサに負けない大きな胸が浩輔を欲情させていく。
マユカは少し身体を離し、だらんと下がった浩輔の左手を取ってその胸に当てた。
「!?」
「ミサには敵わないけど、結構悦ばせてあげられるんだけどな」
浩輔は負けた。
ミサしか知らなかった浩輔は、マユカを関係と持ち、自信を持ち始めていた。経験が少ないことがコンプレックスだと思っていたが、数をこなせばいいものではないと感じた。
マユカと寝た時、
「ミサに全部教えてもらったんだ?」
と浩輔をサディスティックに翻弄させた。まだまだ知らないことがあるようで、それをマユカは教えてくれた。経験値の低い浩輔の行為を否定した嘲笑することはなく、ミサ同様浩輔を受け止めてくれる。
ミサとは違う愉しさと快楽を知った。
マユカとはミサほどの頻度で会うことはなかったが、次第にミサの呼び出しを断ってマユカの元へ行くことが増えた。
マユカとはホテルや車のなかで関係を持っていた。
「ミサにバレてない?」
「たぶん」
「ミサにバレたら怖いもんね。あの子、人のお気に入りは盗るのに、自分のお気に入りを盗られたら鬼みたいなんだから」
「……ははは」
女って怖いな、と浩輔は笑う。
「笑い事じゃないよ」
「ごめん」
女の世界って怖いな、と心の中では身震いだ。
(舞衣もそんな思いしたのかな……)
ふと、舞衣のことが脳裏に浮かんだ。高校一年生の時、同じ高校の先輩と付き合ったはいいが、三股をかけられ、浮気相手の一人だったために好奇の目に晒されたと、同じ施設の由里が話してくれたことを思い出した。好奇の目、そしてその相手の本命の相手には嫌がらせもあったと後に由里が教えてくれた。
(怖いよな……)
俺が相手だったらそんな思いさせなかったのに。
(なんて、今の俺は言えないけど)
「あれー、三原君、別の女の子のこと考えてるでしょー」
「えっ」
「あー図星なんだ。まかさミサのことじゃないよねえ?」
情事を終えて身体を休めているが、マユカは何度も何度も次を求めてくる。いくら体力があると言っても、浩輔も無尽蔵ではない。
「違いますよ。てか別の女のこと考えるわけないでしょ。マユカさんといるのに」
「ほんとかなあ?」
隣で横になっているマユカはつんつん、と浩輔の頬を突いてくる。
「疑うならもう今日はおしまいにしたほうがいいんじゃないかな。マユカさんも疑いながら俺に抱かれたくないでしょ」
「ヤダ。ごめん、怒った?」
「怒ってはないけど、気分はよくないよ」
天井を見上げ、甘えてくるマユカの素っ気ない態度になった。
怒ってはいない。
マユカより優位になっているのは気分が良い。
「ごめんね」
頬にチュッとキスをされ、顔を背けた。
「やっぱり怒ってる」
「怒ってない」
「怒ってる」
「怒ってない」
バカップルみたいな会話だと思った。
「俺が怒ってたらどうするの」
「三原くんのしてほしいこと、全部してあげる。それじゃ駄目?」
「いいよ」
上に乗ってくるマユカの髪を撫でてやると、芝居なのか本気なのかわからないが、
「よかったあ」
と甘い声を出した。
(芝居だろうな……)
「じゃあ、大きくしてよ」
「うん、もちろん」
マユカは嬉しそうに応え、浩輔をものに触れてくれた。
……自分がどんどん性欲に溺れ、快楽に塗れ、堕ちていく気がした。
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