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【第4部】浩輔編
29.好きなもの(前編)
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翌日の日曜日。
高虎に組の事務所に呼び出されたあと、アパートに戻ると、舞衣が部屋の前で待っていた。スーパーの袋を手にしている。
「……舞衣、待ってたのか」
「うん」
昨日までと違って少し余所余所しい気がする。
「誰かに会ったか?」
「えーと…………二つ向こうの部屋に女性が入っていったかな。挨拶されたから同じように返したよ」
「そうか」
「あと、少し前こっちの部屋に、男性と女性が」
同じように挨拶を返したと舞衣は言った。
「ふうん……」
どちらも組の男の部屋だ。
彼らと彼らの女が入ってのだろう。
舞衣は気づいていないだろうけれど。
「まあいいや、待たして悪かったな。入ってくれ」
「あ、うん」
挙動不審な舞衣の様子は、気にしないことにした。
「三原君の好きなもの」
と言ったくらいだから、浩輔の好物をわかっているのだろう。子供の頃のことをよく覚えているものだと感心する。
作ってくれたのはハンバーグだった。
「当たってる」
ちゃんと野菜のグラッセも添えてくれている。昔は嫌いだったにんじんのグラッセだ。
舞衣は記憶しているらしかった。
「今は食べられるぞ」
「うん、そうみたいだね」
悪戯っぽく笑う舞衣に、眉間に皺を寄せて軽く睨んだ。
「小学生の頃は苦手だったけどさ、園でキャロットケーキを作ってもらったことがあって、美味いなって思ったんだよな。にんじんがケーキになるのか、って衝撃だったし」
先生と呼んでいた施設の職員の一人が、焼き菓子を作るのが好きだと言って、自分たちと一緒に作ることがあった。そのことを思い出し、にんじんが苦手でなくなったことに感謝したのだ。
「もう大人だからな、たいがいのもんは食べられるようになった」
「そうなんだ。苦手なものはないの?」
「あー……高級なものは無理かも。食べたことないから、美味いとか不味いとか、たぶんわかんないんだろうなって。まあ、食べることないだろうからいいんだけど」
そうなんだ、と舞衣は笑った。
少し前の無邪気なものとは少し違う笑いに思える。なんとなく……意識したような、控え目な笑い方だ。子供っぽさの残っていた、素の笑いではない。
(意識してるのか……)
嫌ではないのだが、少し物足りなさを感じた。
「美味いな」
「よかった」
「なんか安心する味」
「レストランとかではないでしょ」
「んー、なんか、馴染みの定食屋みたいな。お袋がいて、作ってくれたら、こんな感じなのかなって思った」
そっか、と舞衣は小さく笑った。
「男は胃袋掴まれるんだろうな」
「え……」
「いや、ふと思っただけ」
「…………」
こうやって元彼に振る舞ったのかな、と思うと苛立ってしまう。
(なんで嫉妬なんかしなきゃいけないんだ)
「三原君は……掴まれる?」
「どうかなあ……。舞衣は、料理上手くないって言ってたけど、美味しいし、俺は充分いいと思う」
「……ありがと」
彼女は顔を赤らめ、ハンバーグをカットして口に運んだ。
嬉しそうな顔だ。
そのあとは、ほぼ無言で食事をした。時折双方が他愛ない話題を出すくらいで、空気はぎこちなかった。
舞衣が片付けをしてくれたあと、ゆっくりしようかと浩輔が思っていると、
「帰るね」
そう言われて、戸惑った。
まだ二十時前だ。
いつもならもう少しゆっくり話をするというのに。
「もう帰んのかよ」
と驚いて引き留めかけた。
「日曜日だし、ちょっと早めに」
ああそうだ、と浩輔は納得した。
明日からまた学校だ、早く帰って休みたいのだろう。
しかし、浩輔はもやりとした気持ちになった。
昨夜は帰り際、意味深に「明日また行ってもいいか」なんて言ったくせに。
てっきり……その気があるのかと思ったのに。
「あ、うん。ごはん作るって約束しただけだし」
「しただけって……」
そんな言い方するのかよ、と浩輔は舞衣の前に立った。
いつもならテレビを見たりしながら話をするのに、と見下ろす。
「……男の部屋に簡単に上がってきておいて、期待させて終わりかよ」
「え……」
心臓が早鐘を打ち始めた。
欲求が口から出てきそうになっている。
「昨日、キスしただろ」
「そ……それは……」
(キスしたい)
「舞衣、よく平然としてられるよな」
彼女は困った顔で、口を開いて何かを言いかけて、閉じた。じっと見下ろしていると、彼女はそれを何度か繰り返した。じわりと涙が浮かぶのを見て、
「悪い、変なこと言った」
と浩輔は頭を撫でた。
「じゃあ……送るわ。駅まで一人で歩かせるわけないだろ」
舞衣のコートを手にして、彼女の手を引いた。
靴を履いている間はコートを預かる浩輔だが、コートを返さず、舞衣を見下ろした。
(やっぱ無理……)
舞衣が欲しすぎる、と息を飲んだ。
身体が疼き始めている。
勢いよく舞衣をドアに押しつけ、腰を折ってキスをする。
昨夜のように、だ。
また舞衣の吐息が荒くなり、瞳は虚ろになった。
舞衣の手首を掴み、押しつけて続ける。
抵抗する様子がないのを確認し、舞衣の胸の膨らみを押さえた。
一瞬びくりとはしたが、未だ抵抗することはなかった。
少し手のひらを動かしてみても、彼女はあらがわず、浩輔はニットのすそから手を入れ、そこから上らせていく。大きくはないが小さくもない形を感じ、形を押さえている下着の隙間から指を侵入させた。
「……んっ……」
びくん、と彼女の身体が反応する。
先端らしき場所に到達し、親指と人差し指で抓めば、彼女は困ったのか、ようやく浩輔の胸を押し戻した。
「身体は嫌がってないけどな……」
耳元で囁くように言うと、舞衣は瞳を潤ませ、浩輔を見返した。
ニットの裾を掴み、勢いよくめくった。
浩輔の目に、膨らみがしっかりと見え、身体が火照りが出した。
(いいな……)
ニットは舞衣の胸の上辺りで止まっているが、全貌を確認するいがまだ少し邪魔かもしれない、と、舞衣の断りもなく、脱がせた。両腕を過ぎた当たりでニットを止めた。
彼女は万歳をしている状態だ。
「えっ……やっ……」
ここまでくれば下着をずらすのは簡単だった。
下着越しにやわやわと触れ、少しずらして先端がどうなっているのか確認する。
「固くなってる」
「そ……そんな……」
じれったいなあ、と背中に手をやってホックを外すと今度はそれを少し上にずらした。
ぷるりと彼女の可愛い双房が現れ、両手で包んだ。
(やわらかいな……)
やはり大きくはない。しかし小さくもない。浩輔の手にはちょうどいい。
想像や妄想よりも大きさはあった。
柔らかさを堪能し、親指で先端をはじくと、舞衣は身悶えた。
舌先で先端を這わせると、びくんびくんと反応する。
「エッロいな……」
口に含んで揉むと、熱い息がもれた。
「かーわいい」
火照り顔の舞衣にキスをする。
抵抗はしないがやはり困った顔のままだ。
「玄関じゃ、外に丸聞こえだよな……」
おいで、と舞衣を抱き寄せ、ニットを完全に脱がせた。
ようやく両腕を下ろせた舞衣だが、身体に力が入っていない。
「セックス、しよ」
「…………」
「待ってろ」
高虎に組の事務所に呼び出されたあと、アパートに戻ると、舞衣が部屋の前で待っていた。スーパーの袋を手にしている。
「……舞衣、待ってたのか」
「うん」
昨日までと違って少し余所余所しい気がする。
「誰かに会ったか?」
「えーと…………二つ向こうの部屋に女性が入っていったかな。挨拶されたから同じように返したよ」
「そうか」
「あと、少し前こっちの部屋に、男性と女性が」
同じように挨拶を返したと舞衣は言った。
「ふうん……」
どちらも組の男の部屋だ。
彼らと彼らの女が入ってのだろう。
舞衣は気づいていないだろうけれど。
「まあいいや、待たして悪かったな。入ってくれ」
「あ、うん」
挙動不審な舞衣の様子は、気にしないことにした。
「三原君の好きなもの」
と言ったくらいだから、浩輔の好物をわかっているのだろう。子供の頃のことをよく覚えているものだと感心する。
作ってくれたのはハンバーグだった。
「当たってる」
ちゃんと野菜のグラッセも添えてくれている。昔は嫌いだったにんじんのグラッセだ。
舞衣は記憶しているらしかった。
「今は食べられるぞ」
「うん、そうみたいだね」
悪戯っぽく笑う舞衣に、眉間に皺を寄せて軽く睨んだ。
「小学生の頃は苦手だったけどさ、園でキャロットケーキを作ってもらったことがあって、美味いなって思ったんだよな。にんじんがケーキになるのか、って衝撃だったし」
先生と呼んでいた施設の職員の一人が、焼き菓子を作るのが好きだと言って、自分たちと一緒に作ることがあった。そのことを思い出し、にんじんが苦手でなくなったことに感謝したのだ。
「もう大人だからな、たいがいのもんは食べられるようになった」
「そうなんだ。苦手なものはないの?」
「あー……高級なものは無理かも。食べたことないから、美味いとか不味いとか、たぶんわかんないんだろうなって。まあ、食べることないだろうからいいんだけど」
そうなんだ、と舞衣は笑った。
少し前の無邪気なものとは少し違う笑いに思える。なんとなく……意識したような、控え目な笑い方だ。子供っぽさの残っていた、素の笑いではない。
(意識してるのか……)
嫌ではないのだが、少し物足りなさを感じた。
「美味いな」
「よかった」
「なんか安心する味」
「レストランとかではないでしょ」
「んー、なんか、馴染みの定食屋みたいな。お袋がいて、作ってくれたら、こんな感じなのかなって思った」
そっか、と舞衣は小さく笑った。
「男は胃袋掴まれるんだろうな」
「え……」
「いや、ふと思っただけ」
「…………」
こうやって元彼に振る舞ったのかな、と思うと苛立ってしまう。
(なんで嫉妬なんかしなきゃいけないんだ)
「三原君は……掴まれる?」
「どうかなあ……。舞衣は、料理上手くないって言ってたけど、美味しいし、俺は充分いいと思う」
「……ありがと」
彼女は顔を赤らめ、ハンバーグをカットして口に運んだ。
嬉しそうな顔だ。
そのあとは、ほぼ無言で食事をした。時折双方が他愛ない話題を出すくらいで、空気はぎこちなかった。
舞衣が片付けをしてくれたあと、ゆっくりしようかと浩輔が思っていると、
「帰るね」
そう言われて、戸惑った。
まだ二十時前だ。
いつもならもう少しゆっくり話をするというのに。
「もう帰んのかよ」
と驚いて引き留めかけた。
「日曜日だし、ちょっと早めに」
ああそうだ、と浩輔は納得した。
明日からまた学校だ、早く帰って休みたいのだろう。
しかし、浩輔はもやりとした気持ちになった。
昨夜は帰り際、意味深に「明日また行ってもいいか」なんて言ったくせに。
てっきり……その気があるのかと思ったのに。
「あ、うん。ごはん作るって約束しただけだし」
「しただけって……」
そんな言い方するのかよ、と浩輔は舞衣の前に立った。
いつもならテレビを見たりしながら話をするのに、と見下ろす。
「……男の部屋に簡単に上がってきておいて、期待させて終わりかよ」
「え……」
心臓が早鐘を打ち始めた。
欲求が口から出てきそうになっている。
「昨日、キスしただろ」
「そ……それは……」
(キスしたい)
「舞衣、よく平然としてられるよな」
彼女は困った顔で、口を開いて何かを言いかけて、閉じた。じっと見下ろしていると、彼女はそれを何度か繰り返した。じわりと涙が浮かぶのを見て、
「悪い、変なこと言った」
と浩輔は頭を撫でた。
「じゃあ……送るわ。駅まで一人で歩かせるわけないだろ」
舞衣のコートを手にして、彼女の手を引いた。
靴を履いている間はコートを預かる浩輔だが、コートを返さず、舞衣を見下ろした。
(やっぱ無理……)
舞衣が欲しすぎる、と息を飲んだ。
身体が疼き始めている。
勢いよく舞衣をドアに押しつけ、腰を折ってキスをする。
昨夜のように、だ。
また舞衣の吐息が荒くなり、瞳は虚ろになった。
舞衣の手首を掴み、押しつけて続ける。
抵抗する様子がないのを確認し、舞衣の胸の膨らみを押さえた。
一瞬びくりとはしたが、未だ抵抗することはなかった。
少し手のひらを動かしてみても、彼女はあらがわず、浩輔はニットのすそから手を入れ、そこから上らせていく。大きくはないが小さくもない形を感じ、形を押さえている下着の隙間から指を侵入させた。
「……んっ……」
びくん、と彼女の身体が反応する。
先端らしき場所に到達し、親指と人差し指で抓めば、彼女は困ったのか、ようやく浩輔の胸を押し戻した。
「身体は嫌がってないけどな……」
耳元で囁くように言うと、舞衣は瞳を潤ませ、浩輔を見返した。
ニットの裾を掴み、勢いよくめくった。
浩輔の目に、膨らみがしっかりと見え、身体が火照りが出した。
(いいな……)
ニットは舞衣の胸の上辺りで止まっているが、全貌を確認するいがまだ少し邪魔かもしれない、と、舞衣の断りもなく、脱がせた。両腕を過ぎた当たりでニットを止めた。
彼女は万歳をしている状態だ。
「えっ……やっ……」
ここまでくれば下着をずらすのは簡単だった。
下着越しにやわやわと触れ、少しずらして先端がどうなっているのか確認する。
「固くなってる」
「そ……そんな……」
じれったいなあ、と背中に手をやってホックを外すと今度はそれを少し上にずらした。
ぷるりと彼女の可愛い双房が現れ、両手で包んだ。
(やわらかいな……)
やはり大きくはない。しかし小さくもない。浩輔の手にはちょうどいい。
想像や妄想よりも大きさはあった。
柔らかさを堪能し、親指で先端をはじくと、舞衣は身悶えた。
舌先で先端を這わせると、びくんびくんと反応する。
「エッロいな……」
口に含んで揉むと、熱い息がもれた。
「かーわいい」
火照り顔の舞衣にキスをする。
抵抗はしないがやはり困った顔のままだ。
「玄関じゃ、外に丸聞こえだよな……」
おいで、と舞衣を抱き寄せ、ニットを完全に脱がせた。
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「…………」
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