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【第4部】浩輔編
33.終止符
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何食わぬ顔で舞衣と会う自分がいる。
もう終わりにしないと、と自分に言い聞かせた。
祐策と話をして、決めたのだ。
(今日で、終わりにする)
久しぶりに舞衣の部屋に行き、いつものように食事を一緒にして、寛いだ。
この二ヶ月ほどは、舞衣が疲れているだろうから、とあまり長居はしないようにはした。もちろん、することはした。
今夜は、散々抱き合って果てたあとに、浩輔は切り出した。
「舞衣、もう、こういうのは終わりにする」
「え……?」
「俺から仕掛けたことだし、やめる」
「ま……待っ……え……?」
舞衣は部屋着を着る途中で、キャミソール姿だ。突然のことに動揺し、何か言おうとする言葉が紡げないでいた。
「舞衣の好意を利用して、セックスしたい欲を発散させてた。ごめん」
「え……あの……」
彼女は浩輔に近づき、すぐ側で見上げてきた。
「わ、わかってる、わかってたよ。三原君は別に好きな人がいるのもわかってるし。でも、わたしと会ってくれるから、二番目でもいいと思って……。わたしが好きなだけで、それでいいと思って……」
あの日三原君を裏切ったのはわたしだから、遊びでもいい、それは仕方ない、それでもわたしは三原君に会ってもらえるなら。
舞衣は胸のうちを吐露した。
突然のことに、舞衣は少なからずショックを受けているようで、縋るように浩輔に伝えてきた。
「舞衣、俺のこと好きなんだろ?」
舞衣は俯いて頷いた。
「……そっか」
その言葉に、再び顔を上げ、不安そうに見た。
「俺も舞衣のことは好きだけど」
「え……」
「でもそれが恋愛の好きかって言われるとわからない」
「どういう……」
「俺、ろくでもない男だよ」
「……?」
「好きでもない女と寝れるし」
「……わかった。変なこと言ってごめん」
「いや、おまえは何も言ってないぞ」
好きなのかと訊いて頷かれただけだった。
「もう、ここに来るの、やめるから」
「え……」
「おまえの気持ちを利用して毎回抱いてたんだよ。俺、クズだよ、セックスがしたかっただけの最低な男だから。舞衣が知ってる、昔の俺はもういないんだ」
「わたしのせいでしょ?」
いつの間にか涙で濡れた舞衣の顔が、さらに歪んだ。
「わたしが、流されやすい優柔不断な性格のせいで、三原君を裏切るようなことしたから」
「……舞衣のせいじゃない。優柔不断なのは、舞衣じゃなくて俺のほうなんだよ。俺は誘われれば誰でも寝られるし、ふらふらしてるんだ」
舞衣は悪くない、と濡れた顔を掌で拭ってやった。
「もう、終わりだ。舞衣を傷つけておいておまえが言うなって話だけど、もうこれ以上ひどいことはしたくない」
「そんな……」
「ごめん」
「わたしは三原君がいい……っ」
早く服着ろ、と浩輔は舞衣の身体を離し、帰り支度を始めた。
「じゃあな」
衣服を整えると、すぐに舞衣に告げた。
「待って……」
舞衣は引き留めるが、浩輔は振り返ることなく舞衣の部屋を出た。
(ダメだ……)
急いで舞衣の部屋から離れ、近くの公園の駐車場へ向かった。
「はあ……」
もう無理だ、と呟いて顔を覆った。
もう終わりにしないと、と自分に言い聞かせた。
祐策と話をして、決めたのだ。
(今日で、終わりにする)
久しぶりに舞衣の部屋に行き、いつものように食事を一緒にして、寛いだ。
この二ヶ月ほどは、舞衣が疲れているだろうから、とあまり長居はしないようにはした。もちろん、することはした。
今夜は、散々抱き合って果てたあとに、浩輔は切り出した。
「舞衣、もう、こういうのは終わりにする」
「え……?」
「俺から仕掛けたことだし、やめる」
「ま……待っ……え……?」
舞衣は部屋着を着る途中で、キャミソール姿だ。突然のことに動揺し、何か言おうとする言葉が紡げないでいた。
「舞衣の好意を利用して、セックスしたい欲を発散させてた。ごめん」
「え……あの……」
彼女は浩輔に近づき、すぐ側で見上げてきた。
「わ、わかってる、わかってたよ。三原君は別に好きな人がいるのもわかってるし。でも、わたしと会ってくれるから、二番目でもいいと思って……。わたしが好きなだけで、それでいいと思って……」
あの日三原君を裏切ったのはわたしだから、遊びでもいい、それは仕方ない、それでもわたしは三原君に会ってもらえるなら。
舞衣は胸のうちを吐露した。
突然のことに、舞衣は少なからずショックを受けているようで、縋るように浩輔に伝えてきた。
「舞衣、俺のこと好きなんだろ?」
舞衣は俯いて頷いた。
「……そっか」
その言葉に、再び顔を上げ、不安そうに見た。
「俺も舞衣のことは好きだけど」
「え……」
「でもそれが恋愛の好きかって言われるとわからない」
「どういう……」
「俺、ろくでもない男だよ」
「……?」
「好きでもない女と寝れるし」
「……わかった。変なこと言ってごめん」
「いや、おまえは何も言ってないぞ」
好きなのかと訊いて頷かれただけだった。
「もう、ここに来るの、やめるから」
「え……」
「おまえの気持ちを利用して毎回抱いてたんだよ。俺、クズだよ、セックスがしたかっただけの最低な男だから。舞衣が知ってる、昔の俺はもういないんだ」
「わたしのせいでしょ?」
いつの間にか涙で濡れた舞衣の顔が、さらに歪んだ。
「わたしが、流されやすい優柔不断な性格のせいで、三原君を裏切るようなことしたから」
「……舞衣のせいじゃない。優柔不断なのは、舞衣じゃなくて俺のほうなんだよ。俺は誘われれば誰でも寝られるし、ふらふらしてるんだ」
舞衣は悪くない、と濡れた顔を掌で拭ってやった。
「もう、終わりだ。舞衣を傷つけておいておまえが言うなって話だけど、もうこれ以上ひどいことはしたくない」
「そんな……」
「ごめん」
「わたしは三原君がいい……っ」
早く服着ろ、と浩輔は舞衣の身体を離し、帰り支度を始めた。
「じゃあな」
衣服を整えると、すぐに舞衣に告げた。
「待って……」
舞衣は引き留めるが、浩輔は振り返ることなく舞衣の部屋を出た。
(ダメだ……)
急いで舞衣の部屋から離れ、近くの公園の駐車場へ向かった。
「はあ……」
もう無理だ、と呟いて顔を覆った。
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