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【孝太郎×香穂編】
5.急接近(後編)
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一月四日。
香穂はマイカーで、助手席に孝太郎を乗せた。
香穂は普段はマイカー通勤をしている。
三が日を過ぎて、少し混んではいるが、わりとスムーズに車は動いた。
車中では他愛無い話。
孝太郎は免許はとったが乗る機会がない。
車を運転する香穂がかっこよく見えた。
横顔を見て、ぽっとする孝太郎。
やはり核心をついた話はしない。
初詣をしたあとは、ドライブをした二人。
香穂は、こんなふうに昼間にあちこち出かけるのは久しぶりだと言った。
(そうなんだ……)
人目を避けて会う、って言っていたし。
……ってことは、やっぱり……そういうことするしかなかったのかな、、、と孝太郎は想像しかけて首を振った。
「暗くなっちゃった、ごめんね。明日までなのに、一日もらっちゃって」
「いえ、俺は全然」
楠本家の前に到着すると、孝太郎を降ろした。
「それじゃ香穂さん、また」
「またね、おやすみ」
と香穂が孝太郎を見送る。
踵を返したが、香穂の車の助手席にもう一度乗り込んだ。
「どうしたの?」
「もうちょっと……走ってもらっていいかな」
「うん、いいけど」
孝太郎のナビで、二人は少し高い場所にある公園に着いた。
駐車場に車を止め、二人は降りた。
孝太郎はハッとした。
外灯の下に車を止めたが、いつかの状況と似ているかもしれない、と感じた。もしかしたら香穂がおびえたりするのではないか、と孝太郎は不安になった。
「あの、香穂さん」
「ん?」
「ごめん、俺デリカシーなくて」
「へ?」
「香穂さんは、俺のこと怖くない?」
「なんで?」
香穂はきょとんとした。
「その……香穂さんは、俺のことは平気なの?」
香穂は男性が近寄ると怖くてたまらない、と言ったのだ。
しかし、孝太郎にはそんな素振りはなかった。
「平気……って……うん、孝太郎君は怖くないよ。寧ろ安心する」
「えっ……そうなの? よかった」
孝太郎はホッとした。
「じゃあ、ちょっと来て」
孝太郎は香穂を手招きし、見晴台に登った。
「あ……しまった……」
そこは夜景が綺麗な場所だった。
しかし……正月なので、ネオン等は少なく、夜景はイマイチだった。
「ごめん、前走りこみのときに来て見た夜景がきれいだったから、香穂さんにも見せてあげたかったんだけど」
ぷっと吹き出す香穂。
そして、
「ありがとう」
と孝太郎を見て言った。
イマイチとは言っても、ぽつぽつとした灯りや、その奥に見える海がぼんやりとしていて、香穂はまどろんでいた。
イマイチの景色なのに香穂は嬉しそうだった。
「寒いのにごめん、ほんとごめん」
と孝太郎は帰ろうと促す。
車に戻ると、香穂は後部座席から紙袋を取り出す。
ちょっと荷物になると思うけど、これあげる、と渡す。
「何?」
「本当はもっと前にあげようと思ってたんだけどね」
「あけてもいいか?」
「どうぞ」
受け取った孝太郎はごそごそと袋をあける。
どうやらジャージらしかった。
「大学指定のがあるかもしけないけど、普段のトレーニングのときにどうかなーと思って。サイズよくわからなかったから、健輔よりちょっと足長いくらいのサイズ買った。あわなかったら処分してくれていいから」
そういう香穂に、いや絶対着る、と孝太郎は叫ぶように言った。
「サイズがあえば、ね。実用的なものならいくらあってもいいものかなあと思って」
「ありがとう、めちゃくちゃ嬉しい」
と、満面の笑みを浮かべる孝太郎。
「そんな喜ぶものじゃないと思うけど」
「でもどうして?」
孝太郎は不思議に思った。
その答えに期待してしまう孝太郎。
香穂の顔を覗き込む。
二人、見つめあう形になった。
しかし、香穂はふいっと顔を背けて、いつかのお礼よ、と言った。
「これで済まそうなんて思ってるわけじゃないけど」
他意はない、という意味なんだろうかと孝太郎は少し落ち込む。
車に乗り込もうとする香穂の手を掴み、引き寄せ、背後から抱きしめた。
怯えられたらどうしよう、と思ったがもう構わないとさえ思った。
「香穂さん、俺のことは怖くないの?」
「…………」
孝太郎の腕のなかにすっぽりと収まっている香穂の髪の香りが鼻をくすぐった。
「それとも、俺は男としてみてないから平気?」
「違う」
「香穂さん、俺……期待するよ」
もう我慢できない。
いやなら俺のこと振り払って逃げてくれたらいいから。
と、ぎゅうっと力をこめる。
「男の人は怖いよ。でも、孝太郎君は……心地いいっていうか、安心するっていうか……信じられるの」
ホッとする、と彼女は言った。
「どきどきする」
「えっ……」
どういうことだろう、と孝太郎は香穂の髪に自分の頭を乗せた。
そして、孝太郎は香穂を自分に向き直らせた。
「どういう……意味……」
香穂はぽろぽろと涙を落とした。
何で泣くの、と孝太郎は焦る。
「わかんないけど、孝太郎くんのことばっかり思い浮かぶんだ」
俯く香穂の涙を指ですくった。
目をそらす香穂。
孝太郎は胸に香穂を抱きしめる。
「俺だって、香穂さんが男と飲みに行ったってきいただけで、こう……むかむかするっていうか……モヤモヤするっていうか……香穂さんのことばっかり思い浮かんでどうしようもないっていうか」
これって……、と孝太郎は香穂の顎をあげ香穂と目を合わせた。
「俺……香穂さんのこと、気になってしょうがない」
香穂はマイカーで、助手席に孝太郎を乗せた。
香穂は普段はマイカー通勤をしている。
三が日を過ぎて、少し混んではいるが、わりとスムーズに車は動いた。
車中では他愛無い話。
孝太郎は免許はとったが乗る機会がない。
車を運転する香穂がかっこよく見えた。
横顔を見て、ぽっとする孝太郎。
やはり核心をついた話はしない。
初詣をしたあとは、ドライブをした二人。
香穂は、こんなふうに昼間にあちこち出かけるのは久しぶりだと言った。
(そうなんだ……)
人目を避けて会う、って言っていたし。
……ってことは、やっぱり……そういうことするしかなかったのかな、、、と孝太郎は想像しかけて首を振った。
「暗くなっちゃった、ごめんね。明日までなのに、一日もらっちゃって」
「いえ、俺は全然」
楠本家の前に到着すると、孝太郎を降ろした。
「それじゃ香穂さん、また」
「またね、おやすみ」
と香穂が孝太郎を見送る。
踵を返したが、香穂の車の助手席にもう一度乗り込んだ。
「どうしたの?」
「もうちょっと……走ってもらっていいかな」
「うん、いいけど」
孝太郎のナビで、二人は少し高い場所にある公園に着いた。
駐車場に車を止め、二人は降りた。
孝太郎はハッとした。
外灯の下に車を止めたが、いつかの状況と似ているかもしれない、と感じた。もしかしたら香穂がおびえたりするのではないか、と孝太郎は不安になった。
「あの、香穂さん」
「ん?」
「ごめん、俺デリカシーなくて」
「へ?」
「香穂さんは、俺のこと怖くない?」
「なんで?」
香穂はきょとんとした。
「その……香穂さんは、俺のことは平気なの?」
香穂は男性が近寄ると怖くてたまらない、と言ったのだ。
しかし、孝太郎にはそんな素振りはなかった。
「平気……って……うん、孝太郎君は怖くないよ。寧ろ安心する」
「えっ……そうなの? よかった」
孝太郎はホッとした。
「じゃあ、ちょっと来て」
孝太郎は香穂を手招きし、見晴台に登った。
「あ……しまった……」
そこは夜景が綺麗な場所だった。
しかし……正月なので、ネオン等は少なく、夜景はイマイチだった。
「ごめん、前走りこみのときに来て見た夜景がきれいだったから、香穂さんにも見せてあげたかったんだけど」
ぷっと吹き出す香穂。
そして、
「ありがとう」
と孝太郎を見て言った。
イマイチとは言っても、ぽつぽつとした灯りや、その奥に見える海がぼんやりとしていて、香穂はまどろんでいた。
イマイチの景色なのに香穂は嬉しそうだった。
「寒いのにごめん、ほんとごめん」
と孝太郎は帰ろうと促す。
車に戻ると、香穂は後部座席から紙袋を取り出す。
ちょっと荷物になると思うけど、これあげる、と渡す。
「何?」
「本当はもっと前にあげようと思ってたんだけどね」
「あけてもいいか?」
「どうぞ」
受け取った孝太郎はごそごそと袋をあける。
どうやらジャージらしかった。
「大学指定のがあるかもしけないけど、普段のトレーニングのときにどうかなーと思って。サイズよくわからなかったから、健輔よりちょっと足長いくらいのサイズ買った。あわなかったら処分してくれていいから」
そういう香穂に、いや絶対着る、と孝太郎は叫ぶように言った。
「サイズがあえば、ね。実用的なものならいくらあってもいいものかなあと思って」
「ありがとう、めちゃくちゃ嬉しい」
と、満面の笑みを浮かべる孝太郎。
「そんな喜ぶものじゃないと思うけど」
「でもどうして?」
孝太郎は不思議に思った。
その答えに期待してしまう孝太郎。
香穂の顔を覗き込む。
二人、見つめあう形になった。
しかし、香穂はふいっと顔を背けて、いつかのお礼よ、と言った。
「これで済まそうなんて思ってるわけじゃないけど」
他意はない、という意味なんだろうかと孝太郎は少し落ち込む。
車に乗り込もうとする香穂の手を掴み、引き寄せ、背後から抱きしめた。
怯えられたらどうしよう、と思ったがもう構わないとさえ思った。
「香穂さん、俺のことは怖くないの?」
「…………」
孝太郎の腕のなかにすっぽりと収まっている香穂の髪の香りが鼻をくすぐった。
「それとも、俺は男としてみてないから平気?」
「違う」
「香穂さん、俺……期待するよ」
もう我慢できない。
いやなら俺のこと振り払って逃げてくれたらいいから。
と、ぎゅうっと力をこめる。
「男の人は怖いよ。でも、孝太郎君は……心地いいっていうか、安心するっていうか……信じられるの」
ホッとする、と彼女は言った。
「どきどきする」
「えっ……」
どういうことだろう、と孝太郎は香穂の髪に自分の頭を乗せた。
そして、孝太郎は香穂を自分に向き直らせた。
「どういう……意味……」
香穂はぽろぽろと涙を落とした。
何で泣くの、と孝太郎は焦る。
「わかんないけど、孝太郎くんのことばっかり思い浮かぶんだ」
俯く香穂の涙を指ですくった。
目をそらす香穂。
孝太郎は胸に香穂を抱きしめる。
「俺だって、香穂さんが男と飲みに行ったってきいただけで、こう……むかむかするっていうか……モヤモヤするっていうか……香穂さんのことばっかり思い浮かんでどうしようもないっていうか」
これって……、と孝太郎は香穂の顎をあげ香穂と目を合わせた。
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