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14.膨らむ感情
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クリスマスのイルミネーションを見に行かないか、と真緒を誘うと、彼女は承諾してくれた。
車で行くことは避け、途中までにして、そこからは電車で移動したが、人混みで二人はへとへとになってしまった。
昔、付き合っていた彼女に誘われて来たことはあったが、そのときの記憶はすっかりなくなっていた。
恋人でもないのに真緒を手を繋ぐこと出来ないと思った。満員電車の中で、潰れないように真緒を必死にかばう創平だった。
「ちょっと我慢してくれ」
『はい』
会場に向かう道の、ごった返す人混みの中で、創平は真緒の手を引いた。手を繋ぐつもりは全くなかったが、このままではぐれてしまうと思ったからだ。真緒は声を発せないし、はぐれてしまったら見つけるのが大変だ。
どさくさ紛れだが、創平は真緒の手をつないだ。
美しいイルミネーションイベントに参加することが出来て、創平は満足だった。真緒と一緒だから満足出来たのだろうということもわかっている。
写真を撮っては嬉しそうに笑う真緒を見て、年相応の女の子だということを実感した。
こんな楽しそうな顔を近くで見られるのが自分であればいいのに。
だが、そんなことを願うのはおこがましい気がした。
真緒を自宅まで送り届けると、
『帰宅したらメッセージもらえますか』
そう言われた。
「わかった、連絡入れる」
クリスマスイブやクリスマスの日は、『彼女』だった女性は創平の部屋に泊まって行ったが、真緒は彼女ではない、自分が送り届ける立場にあった。
別れてアパートに戻ると、戻ったことを伝えた。
伝えようとスマホを開くと、
《今日は誘っていただけて嬉しかったです。ありがとうございました》
とメッセージが先に届いていた。
帰ったことを伝えると、
《無事に帰れてよかったです》
とすぐに真緒から返信が届いた。
(待っててくれたのか……?)
《俺も、楽しかった。ありがとう》
真緒とのメッセージの数が増えていく。
その度に気持ちも大きくなっていく気がした。
(今日は手も繋いだしな……)
嫌がられてはなかったと思っている。
《また、誘ってもいいかな》
《是非、お願いします》
真緒は自分を嫌ってはいないんだと感じる創平だ。
前は、山岡のことを好きなのかもしれないと感じていたが、ひょっとしたら自分に好意が向いているのではと自惚れそうになる。
(いや、勘違いだ……あの子は誰にでも優しい……)
初詣にも真緒を誘ったが、彼女からは、親戚のところに行くので……とやんわり断りがとそいた。
『あの、松浦さんに誘ってもらったのがダメなわけじゃなくて、元旦が難しくて……。それと、幼馴染の友達が帰省するから会う約束もあって……』
真緒は創平と本当は行きたいんだというそぶりを見せた。
(勘違いしてしまいそうになるな……)
『実家には帰られないんですか?』
「んー……まあちょっと帰ってみるかなとは考えてる」
『そうですか』
「ごめんな」
『あの……また、誘ってくれますか?』
真緒はおずおずと言う。
「誘っていい、ってこと? もちろん! もちろん誘う」
創平は声が裏返るのも気にせず、大きく頷いた。
創平が実家に帰ると、弟が帰省しており、大学生の妹もいた。
「兄貴、久しぶり」
「おう」
弟の悠平が嬉しそうに声をかけてきた。
妹はスマホを見ながら、ちらりと視線を寄越した程度だ。
久しぶりに会った母親に、
「あんた、いつになったらお嫁さん連れてくんの」
と言われてしまった。
実家に帰ると、こういうのが面倒なのだ。
父親は何も言わないで、弟と話をしている。
古い習慣の実家だ。親戚で集まることがあれば、さらに鬱陶しい話題は増長する。結婚しないと一人前ではないだとか、結婚しても子供がいないと下に見られるし、一人だと次はまだか、と次から次へと粗探しをされる。特に女性に対しての圧力がひどい。嫁に来た女性達は上手く交わしているものだ。だが、次からはもう来ないのだろうと創平は感じていた。
「小学生の時にあんたと同じクラスだった、健二君、結婚して子供が生まれたんですって。奥さん、市役所に出てる人なんですってよ。いいわねえ」
「ふうん……」
母親は昔から人のことを羨ましがってばかりだった。
その一方で、弟がいい大学に入学した時は誇らしげだったし、国家公務員試験に合格して、いわゆる官僚の道に入った時は自慢ばかりしていた。長男は出来が悪いが、次男は誰に似たのか優秀なのよと。
(絶対母親似じゃないよな)
寡黙な父親に似たのは明らかだ。
妹は母親に似ている。母親は美人だった。その母に似た妹は、美少女だと言われてちやほやされながら育てられ、生きてきたし、生きている。三流の大学に入って、芸能界を目指しているが、兄の贔屓目で見ても「いまいち」だ。真緒に出会ってからは、特にそう思う……言えないが。
(俺はどっちに似たんだろう……て、たまに思うけど)
三白眼のような目や顔立ちは父親似で、性格や勉強の出来のほうは母親に似たと思っている。
弟は顔立ちは母親で、出来は父親だ。性格も温厚だし、一番人に好かれる人物だろう。
(俺だけいいとこ受け継いでないな……)
「悠平はどうなの」
「今はそれどころじゃないよ」
四歳年下の弟はそう言った。
だが創平は知っている。大学時代から付き合っている女性がいるということは、本人から聞いていたからだ。どうやら高校の同級生らしく、再会して付き合うことになったと言っていた。彼の帰省中、二人で一緒の所を偶然見かけ、特にそのことについて言うつもりもなかったのに、悠平のほうから、母親には言わないでくれと口止めをしてきた。
(母さんはめんどくさいしな)
「そう? 悠平のほうが顔がいいからどうかなと思ったんだけど。お役人だし、女の子は寄ってきそうなのに」
「そんなこと考えるのお母さんだけでしょ。性格じゃなくて、学歴とか職業でで選ぶの」
妹の彩花がスマホを見たまま言った。どうやら話は聞いているらしい。
「そういうのも大事でしょ。全く……あなたもちゃんとした人見つけないさいよ」
「はいはい」
母親が、父親を妥協して選んだのだろうということがここでもわかってしまう。
父親と悠平は苦笑しながら女性陣を見たのを、創平は見逃さなかった。
父親は十人並みだし、それでも自分より父親のほうが男前だし、性格も穏やかだ。勉強が出来たらしいし、仕事もそれなりにいい企業で、順調に昇進している。
(なんも受け継いでないのは俺か)
「もう、創平は早く連れてきなさいよ」
矛先はまた自分に戻ってきた。
すぐに付き合う彼女が変わっていたので、実家に連れてきたことはない。
「もうどんな人でもいいから、早く紹介してちょうだい」
母親は無茶苦茶なことを言い出した。
「……どんな人でもいいのか?」
「とりあえず道ならぬ道とかでないならね。人の奥さんとかじゃないならね。あんた、彼女いるの」
「いないよ」
まったくもう、と母親は言った。
「創兄の彼女って、ギャルとか、ケバいのとか、頭悪そうなイメージ」
「は?」
おまえが言うな、と言いたいのを堪え、スマホから視線を逸らさない彩花を睨む。
(マジで……居心地悪いわ)
「創兄が美人を連れてくるわけないし」
(自分より美人はいないってか)
創平は実家が苦手だった。自分はやんちゃな中学高校時代を過ごしてきたし、勉強もできなかった。
弟は官僚で、妹は美人。
比べられるのはうんざりなのだ。
特に母親からの言動には嫌悪感を抱いてきた。
妹は、幼い頃から美少女と言われ、地元の大学に通いながら、モデルやタレントを目指しているような、自分に絶対の自信がある妹だ。だがオーディションで最終審査まで行ったことがない。所詮田舎の美人レベルなのだろう。
そうは言っても、可愛がられている二人に比べて、かなり出来の悪い兄である自分は、居心地の悪さに、高校を出て暫くして一人暮らしを始めたのだった。
(結婚か……)
自分は二十八だが、真緒は二十一だから、まだ結婚には早い年だ。
(……なんで倉橋さんと結婚することを考えるんだ)
そういえば、真緒は妹の彩花とは一つしか変わらない。真緒の方が一つ上だが、同世代ではある。なのにこうも育ちも違うのかと呆れるしかなかった。
車で行くことは避け、途中までにして、そこからは電車で移動したが、人混みで二人はへとへとになってしまった。
昔、付き合っていた彼女に誘われて来たことはあったが、そのときの記憶はすっかりなくなっていた。
恋人でもないのに真緒を手を繋ぐこと出来ないと思った。満員電車の中で、潰れないように真緒を必死にかばう創平だった。
「ちょっと我慢してくれ」
『はい』
会場に向かう道の、ごった返す人混みの中で、創平は真緒の手を引いた。手を繋ぐつもりは全くなかったが、このままではぐれてしまうと思ったからだ。真緒は声を発せないし、はぐれてしまったら見つけるのが大変だ。
どさくさ紛れだが、創平は真緒の手をつないだ。
美しいイルミネーションイベントに参加することが出来て、創平は満足だった。真緒と一緒だから満足出来たのだろうということもわかっている。
写真を撮っては嬉しそうに笑う真緒を見て、年相応の女の子だということを実感した。
こんな楽しそうな顔を近くで見られるのが自分であればいいのに。
だが、そんなことを願うのはおこがましい気がした。
真緒を自宅まで送り届けると、
『帰宅したらメッセージもらえますか』
そう言われた。
「わかった、連絡入れる」
クリスマスイブやクリスマスの日は、『彼女』だった女性は創平の部屋に泊まって行ったが、真緒は彼女ではない、自分が送り届ける立場にあった。
別れてアパートに戻ると、戻ったことを伝えた。
伝えようとスマホを開くと、
《今日は誘っていただけて嬉しかったです。ありがとうございました》
とメッセージが先に届いていた。
帰ったことを伝えると、
《無事に帰れてよかったです》
とすぐに真緒から返信が届いた。
(待っててくれたのか……?)
《俺も、楽しかった。ありがとう》
真緒とのメッセージの数が増えていく。
その度に気持ちも大きくなっていく気がした。
(今日は手も繋いだしな……)
嫌がられてはなかったと思っている。
《また、誘ってもいいかな》
《是非、お願いします》
真緒は自分を嫌ってはいないんだと感じる創平だ。
前は、山岡のことを好きなのかもしれないと感じていたが、ひょっとしたら自分に好意が向いているのではと自惚れそうになる。
(いや、勘違いだ……あの子は誰にでも優しい……)
初詣にも真緒を誘ったが、彼女からは、親戚のところに行くので……とやんわり断りがとそいた。
『あの、松浦さんに誘ってもらったのがダメなわけじゃなくて、元旦が難しくて……。それと、幼馴染の友達が帰省するから会う約束もあって……』
真緒は創平と本当は行きたいんだというそぶりを見せた。
(勘違いしてしまいそうになるな……)
『実家には帰られないんですか?』
「んー……まあちょっと帰ってみるかなとは考えてる」
『そうですか』
「ごめんな」
『あの……また、誘ってくれますか?』
真緒はおずおずと言う。
「誘っていい、ってこと? もちろん! もちろん誘う」
創平は声が裏返るのも気にせず、大きく頷いた。
創平が実家に帰ると、弟が帰省しており、大学生の妹もいた。
「兄貴、久しぶり」
「おう」
弟の悠平が嬉しそうに声をかけてきた。
妹はスマホを見ながら、ちらりと視線を寄越した程度だ。
久しぶりに会った母親に、
「あんた、いつになったらお嫁さん連れてくんの」
と言われてしまった。
実家に帰ると、こういうのが面倒なのだ。
父親は何も言わないで、弟と話をしている。
古い習慣の実家だ。親戚で集まることがあれば、さらに鬱陶しい話題は増長する。結婚しないと一人前ではないだとか、結婚しても子供がいないと下に見られるし、一人だと次はまだか、と次から次へと粗探しをされる。特に女性に対しての圧力がひどい。嫁に来た女性達は上手く交わしているものだ。だが、次からはもう来ないのだろうと創平は感じていた。
「小学生の時にあんたと同じクラスだった、健二君、結婚して子供が生まれたんですって。奥さん、市役所に出てる人なんですってよ。いいわねえ」
「ふうん……」
母親は昔から人のことを羨ましがってばかりだった。
その一方で、弟がいい大学に入学した時は誇らしげだったし、国家公務員試験に合格して、いわゆる官僚の道に入った時は自慢ばかりしていた。長男は出来が悪いが、次男は誰に似たのか優秀なのよと。
(絶対母親似じゃないよな)
寡黙な父親に似たのは明らかだ。
妹は母親に似ている。母親は美人だった。その母に似た妹は、美少女だと言われてちやほやされながら育てられ、生きてきたし、生きている。三流の大学に入って、芸能界を目指しているが、兄の贔屓目で見ても「いまいち」だ。真緒に出会ってからは、特にそう思う……言えないが。
(俺はどっちに似たんだろう……て、たまに思うけど)
三白眼のような目や顔立ちは父親似で、性格や勉強の出来のほうは母親に似たと思っている。
弟は顔立ちは母親で、出来は父親だ。性格も温厚だし、一番人に好かれる人物だろう。
(俺だけいいとこ受け継いでないな……)
「悠平はどうなの」
「今はそれどころじゃないよ」
四歳年下の弟はそう言った。
だが創平は知っている。大学時代から付き合っている女性がいるということは、本人から聞いていたからだ。どうやら高校の同級生らしく、再会して付き合うことになったと言っていた。彼の帰省中、二人で一緒の所を偶然見かけ、特にそのことについて言うつもりもなかったのに、悠平のほうから、母親には言わないでくれと口止めをしてきた。
(母さんはめんどくさいしな)
「そう? 悠平のほうが顔がいいからどうかなと思ったんだけど。お役人だし、女の子は寄ってきそうなのに」
「そんなこと考えるのお母さんだけでしょ。性格じゃなくて、学歴とか職業でで選ぶの」
妹の彩花がスマホを見たまま言った。どうやら話は聞いているらしい。
「そういうのも大事でしょ。全く……あなたもちゃんとした人見つけないさいよ」
「はいはい」
母親が、父親を妥協して選んだのだろうということがここでもわかってしまう。
父親と悠平は苦笑しながら女性陣を見たのを、創平は見逃さなかった。
父親は十人並みだし、それでも自分より父親のほうが男前だし、性格も穏やかだ。勉強が出来たらしいし、仕事もそれなりにいい企業で、順調に昇進している。
(なんも受け継いでないのは俺か)
「もう、創平は早く連れてきなさいよ」
矛先はまた自分に戻ってきた。
すぐに付き合う彼女が変わっていたので、実家に連れてきたことはない。
「もうどんな人でもいいから、早く紹介してちょうだい」
母親は無茶苦茶なことを言い出した。
「……どんな人でもいいのか?」
「とりあえず道ならぬ道とかでないならね。人の奥さんとかじゃないならね。あんた、彼女いるの」
「いないよ」
まったくもう、と母親は言った。
「創兄の彼女って、ギャルとか、ケバいのとか、頭悪そうなイメージ」
「は?」
おまえが言うな、と言いたいのを堪え、スマホから視線を逸らさない彩花を睨む。
(マジで……居心地悪いわ)
「創兄が美人を連れてくるわけないし」
(自分より美人はいないってか)
創平は実家が苦手だった。自分はやんちゃな中学高校時代を過ごしてきたし、勉強もできなかった。
弟は官僚で、妹は美人。
比べられるのはうんざりなのだ。
特に母親からの言動には嫌悪感を抱いてきた。
妹は、幼い頃から美少女と言われ、地元の大学に通いながら、モデルやタレントを目指しているような、自分に絶対の自信がある妹だ。だがオーディションで最終審査まで行ったことがない。所詮田舎の美人レベルなのだろう。
そうは言っても、可愛がられている二人に比べて、かなり出来の悪い兄である自分は、居心地の悪さに、高校を出て暫くして一人暮らしを始めたのだった。
(結婚か……)
自分は二十八だが、真緒は二十一だから、まだ結婚には早い年だ。
(……なんで倉橋さんと結婚することを考えるんだ)
そういえば、真緒は妹の彩花とは一つしか変わらない。真緒の方が一つ上だが、同世代ではある。なのにこうも育ちも違うのかと呆れるしかなかった。
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