影武者勇者の逆転英雄譚〜勇者の偽物としてやられる予定が最強スキル「奪取」に覚醒、魔王の偽物少女とエルフの村と世界も救う。勇者にざまぁします!

遠近法子

文字の大きさ
1 / 4

第1話 魔王決戦のその後で

しおりを挟む
「――一体、どういうことなんだ……」

 俺は、見知らぬ場所にいた。
 赤い絨毯の敷かれた、石造りの豪華な部屋の中。
 どこか、立派な城の中のようだ。
 俺は、そのベッドに寝かせられていた。
 
「ええと……俺は、一体……」

 ベッドから起き上がろうとして、何か柔らかいものに触れる。
 そちらを振り向いて、
「え、えええ!?」
 俺は仰天した。
 
 そこにいたのは、美しい少女。
 銀色の神秘的な長髪に、白い肌。
 小柄な、十二歳くらい。
 そんな女の子が、俺の傍らに寝ている。
 
「――ええと、どういうことだ……」

 めちゃくちゃ混乱している俺。

「状況を、状況を整理しないと……」

 ――そうだ。
 
「そうだ、俺はS級パーティに所属していて……いよいよ魔王を倒すという状況になって……」

 S級パーティ。
 様々な冒険者たちが、様々な冒険に挑むこの世界。
 そこにおける、トップの冒険者集団がS級パーティだ。
 最強の能力を持ち、王や貴族からの冒険依頼も受けることができる『勇者』の所属するパーティ。
 俺は、そのS級パーティの一つ『トゥルーヒーローズ』のメンバーだった。

 ――え? そんなパーティにいるなんて、俺もさぞかし強力な冒険者なんだろう――って思ってくれるのか?

 残念でした。
 俺は最弱の冒険者。
 有用な戦闘能力など何もない。
 何しろ、スキルを取ることができないのだ。
 
『スキル:失禁』のお荷物、リヒト。
 それが、俺の名前。
 
 スキル。
 それは、この世界のさまざまな技術。
 戦士や、剣士などは戦闘用のスキル。
 魔法使いやヒーラーなどは魔法用のスキル。
 それらを獲得することにより、普通の攻撃や魔法より数段強力な力を発揮することができる。
 そして、勇者などの職を持つものは、その人間にのみ使用可能な、強力な『スキル』を手にすることができる。

『トゥルーヒーローズ』のリーダー、ヴァイスの持っているスキル<デスブレード>は、強力なモンスターでさえ一発で倒せる最強のスキルのひとつだ。
 
 ところが、俺のスキルを見てくれ。
 ステータス……俺の能力を示す表に現れたスキルは<失禁>。
 いつでもどこでも失禁できる、というスキルだ。

 スキルを見たときの、俺の絶望を想像してくれ。
 それを見たとき、ヴァイスは笑ったな。
「どこでも失禁なんて、おまえらしいスキルだな! ハハハ!」
 
 そして、その<失禁>以外、俺は何のスキルも学ぶことができないと知ると、ヴァイスの視線は凍り付いた。
 
 スキルを習得できない以上、俺はこのあと成長することができない。
 どんなに頑張っても、通常の攻撃、通常魔法しか使うことができない。
 剣術学校で学ぶ、最初の突きとディフェンス。
 魔法学校で学ぶ、最初のファイアボール。
 その程度の基本技能が精一杯。
 だが、それ以上のスキルは――
 
 屈辱を感じた俺は、「人前で絶対おもらししない」と誓った。
 だが、周りのパーティメンバーが華やかなスキルを獲得し、どんどん強力になっていくのに、俺ひとりがレベルが上がっても貧者なまま。
 いつしか俺は荷物持ちのポジションになっていた。
 
 それでも、勇者ヴァイスは俺のことを首にしなかった。

 どうせ、ほかに行くところはない。
 冒険者以外に、まともにできる職業なんてない。
 ほかのパーティに入ることも無理だろう。
 そう思い、俺は荷物持ちに甘んじていた。
 俺を哀れに思ったヴァイスが、パーティへの参加を許してくれているのだろう……。
 
 そう思っていた。
 
『魔王を倒すクエスト』を引き受けるまでは。

「リヒト、俺の偽物になってくれ」
「な、何だと!?」

 魔王決戦のダンジョンに突入する前日、俺はヴァイスにそう持ちかけられた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...