1 / 8
第1話 魔王決戦のその後で
しおりを挟む
「――一体、どういうことなんだ……」
俺は、見知らぬ場所にいた。
赤い絨毯の敷かれた、石造りの豪華な部屋の中。
どこか、立派な城の中のようだ。
俺は、そのベッドに寝かせられていた。
「ええと……俺は、一体……」
ベッドから起き上がろうとして、何か柔らかいものに触れる。
そちらを振り向いて、
「え、えええ!?」
俺は仰天した。
そこにいたのは、美しい少女。
銀色の神秘的な長髪に、白い肌。
小柄な、十二歳くらい。
そんな女の子が、俺の傍らに寝ている。
「――ええと、どういうことだ……」
めちゃくちゃ混乱している俺。
「状況を、状況を整理しないと……」
――そうだ。
「そうだ、俺はS級パーティに所属していて……いよいよ魔王を倒すという状況になって……」
S級パーティ。
様々な冒険者たちが、様々な冒険に挑むこの世界。
そこにおける、トップの冒険者集団がS級パーティだ。
最強の能力を持ち、王や貴族からの冒険依頼も受けることができる『勇者』の所属するパーティ。
俺は、そのS級パーティの一つ『トゥルーヒーローズ』のメンバーだった。
――え? そんなパーティにいるなんて、俺もさぞかし強力な冒険者なんだろう――って思ってくれるのか?
残念でした。
俺は最弱の冒険者。
有用な戦闘能力など何もない。
何しろ、スキルを取ることができないのだ。
『スキル:失禁』のお荷物、リヒト。
それが、俺の名前。
スキル。
それは、この世界のさまざまな技術。
戦士や、剣士などは戦闘用のスキル。
魔法使いやヒーラーなどは魔法用のスキル。
それらを獲得することにより、普通の攻撃や魔法より数段強力な力を発揮することができる。
そして、勇者などの職を持つものは、その人間にのみ使用可能な、強力な『スキル』を手にすることができる。
『トゥルーヒーローズ』のリーダー、ヴァイスの持っているスキル<デスブレード>は、強力なモンスターでさえ一発で倒せる最強のスキルのひとつだ。
ところが、俺のスキルを見てくれ。
ステータス……俺の能力を示す表に現れたスキルは<失禁>。
いつでもどこでも失禁できる、というスキルだ。
スキルを見たときの、俺の絶望を想像してくれ。
それを見たとき、ヴァイスは笑ったな。
「どこでも失禁なんて、おまえらしいスキルだな! ハハハ!」
そして、その<失禁>以外、俺は何のスキルも学ぶことができないと知ると、ヴァイスの視線は凍り付いた。
スキルを習得できない以上、俺はこのあと成長することができない。
どんなに頑張っても、通常の攻撃、通常魔法しか使うことができない。
剣術学校で学ぶ、最初の突きとディフェンス。
魔法学校で学ぶ、最初のファイアボール。
その程度の基本技能が精一杯。
だが、それ以上のスキルは――
屈辱を感じた俺は、「人前で絶対おもらししない」と誓った。
だが、周りのパーティメンバーが華やかなスキルを獲得し、どんどん強力になっていくのに、俺ひとりがレベルが上がっても貧者なまま。
いつしか俺は荷物持ちのポジションになっていた。
それでも、勇者ヴァイスは俺のことを首にしなかった。
どうせ、ほかに行くところはない。
冒険者以外に、まともにできる職業なんてない。
ほかのパーティに入ることも無理だろう。
そう思い、俺は荷物持ちに甘んじていた。
俺を哀れに思ったヴァイスが、パーティへの参加を許してくれているのだろう……。
そう思っていた。
『魔王を倒すクエスト』を引き受けるまでは。
「リヒト、俺の偽物になってくれ」
「な、何だと!?」
魔王決戦のダンジョンに突入する前日、俺はヴァイスにそう持ちかけられた。
俺は、見知らぬ場所にいた。
赤い絨毯の敷かれた、石造りの豪華な部屋の中。
どこか、立派な城の中のようだ。
俺は、そのベッドに寝かせられていた。
「ええと……俺は、一体……」
ベッドから起き上がろうとして、何か柔らかいものに触れる。
そちらを振り向いて、
「え、えええ!?」
俺は仰天した。
そこにいたのは、美しい少女。
銀色の神秘的な長髪に、白い肌。
小柄な、十二歳くらい。
そんな女の子が、俺の傍らに寝ている。
「――ええと、どういうことだ……」
めちゃくちゃ混乱している俺。
「状況を、状況を整理しないと……」
――そうだ。
「そうだ、俺はS級パーティに所属していて……いよいよ魔王を倒すという状況になって……」
S級パーティ。
様々な冒険者たちが、様々な冒険に挑むこの世界。
そこにおける、トップの冒険者集団がS級パーティだ。
最強の能力を持ち、王や貴族からの冒険依頼も受けることができる『勇者』の所属するパーティ。
俺は、そのS級パーティの一つ『トゥルーヒーローズ』のメンバーだった。
――え? そんなパーティにいるなんて、俺もさぞかし強力な冒険者なんだろう――って思ってくれるのか?
残念でした。
俺は最弱の冒険者。
有用な戦闘能力など何もない。
何しろ、スキルを取ることができないのだ。
『スキル:失禁』のお荷物、リヒト。
それが、俺の名前。
スキル。
それは、この世界のさまざまな技術。
戦士や、剣士などは戦闘用のスキル。
魔法使いやヒーラーなどは魔法用のスキル。
それらを獲得することにより、普通の攻撃や魔法より数段強力な力を発揮することができる。
そして、勇者などの職を持つものは、その人間にのみ使用可能な、強力な『スキル』を手にすることができる。
『トゥルーヒーローズ』のリーダー、ヴァイスの持っているスキル<デスブレード>は、強力なモンスターでさえ一発で倒せる最強のスキルのひとつだ。
ところが、俺のスキルを見てくれ。
ステータス……俺の能力を示す表に現れたスキルは<失禁>。
いつでもどこでも失禁できる、というスキルだ。
スキルを見たときの、俺の絶望を想像してくれ。
それを見たとき、ヴァイスは笑ったな。
「どこでも失禁なんて、おまえらしいスキルだな! ハハハ!」
そして、その<失禁>以外、俺は何のスキルも学ぶことができないと知ると、ヴァイスの視線は凍り付いた。
スキルを習得できない以上、俺はこのあと成長することができない。
どんなに頑張っても、通常の攻撃、通常魔法しか使うことができない。
剣術学校で学ぶ、最初の突きとディフェンス。
魔法学校で学ぶ、最初のファイアボール。
その程度の基本技能が精一杯。
だが、それ以上のスキルは――
屈辱を感じた俺は、「人前で絶対おもらししない」と誓った。
だが、周りのパーティメンバーが華やかなスキルを獲得し、どんどん強力になっていくのに、俺ひとりがレベルが上がっても貧者なまま。
いつしか俺は荷物持ちのポジションになっていた。
それでも、勇者ヴァイスは俺のことを首にしなかった。
どうせ、ほかに行くところはない。
冒険者以外に、まともにできる職業なんてない。
ほかのパーティに入ることも無理だろう。
そう思い、俺は荷物持ちに甘んじていた。
俺を哀れに思ったヴァイスが、パーティへの参加を許してくれているのだろう……。
そう思っていた。
『魔王を倒すクエスト』を引き受けるまでは。
「リヒト、俺の偽物になってくれ」
「な、何だと!?」
魔王決戦のダンジョンに突入する前日、俺はヴァイスにそう持ちかけられた。
0
あなたにおすすめの小説
「雑草係」と追放された俺、スキル『草むしり』でドラゴンも魔王も引っこ抜く~極めた園芸スキルは、世界樹すら苗木扱いする神の力でした~
eringi
ファンタジー
「たかが雑草を抜くだけのスキルなんて、勇者パーティには不要だ!」
王立アカデミーを首席で卒業したものの、発現したスキルが『草むしり』だった少年・ノエル。
彼は幼馴染の勇者に見下され、パーティから追放されてしまう。
失意のノエルは、人里離れた「魔の森」で静かに暮らすことを決意する。
しかし彼は知らなかった。彼のスキル『草むしり』は、対象を「不要な雑草」と認識すれば、たとえドラゴンであろうと古代兵器であろうと、根こそぎ引っこ抜いて消滅させる即死チートだったのだ。
「あれ? この森の雑草、ずいぶん頑丈だな(ドラゴンを引っこ抜きながら)」
ノエルが庭の手入れをするだけで、Sランク魔物が次々と「除草」され、やがて森は伝説の聖域へと生まれ変わっていく。
その実力に惹かれ、森の精霊(美女)や、亡国の女騎士、魔王の娘までもが彼の「庭」に集まり、いつしかハーレム状態に。
一方、ノエルを追放した勇者たちは、ダンジョンの茨や毒草の処理ができずに進行不能となり、さらにはノエルが密かに「除草」していた強力な魔物たちに囲まれ、絶望の淵に立たされていた。
「ノエル! 戻ってきてくれ!」
「いや、いま家庭菜園が忙しいんで」
これは、ただ庭いじりをしているだけの少年が、無自覚に世界最強に至る物語。
神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!
yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。
しかしそれは神のミスによるものだった。
神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。
そして橘 涼太に提案をする。
『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。
橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。
しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。
さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。
これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。
転生辺境の雑用兵、知らぬ間に世界最強になっていた件 〜追放されたけど美女たちに囲まれて安寧生活〜
eringi
ファンタジー
辺境軍の雑用兵として転生した青年・レオン。異世界に転生したのに、剣も魔法も地味でパッとしない日々。ところが彼の“地味な努力”が、実は世界の理をゆるがすほどの能力だと気づく者が次々と現れる。貴族令嬢、魔族の姫、神官少女──気づけばハーレム状態に。追放された元仲間が破滅していく流れの中、本人だけは「俺、そんな強いかな?」と首をかしげる。無自覚最強×ざまぁ×追放後スローライフ×英雄伝説が交錯する、異世界逆転ストーリー。
無能と追放された鑑定士、実は物の情報を書き換える神スキル【神の万年筆】の持ち主だったので、辺境で楽園国家を創ります!
黒崎隼人
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――勇者パーティーの【鑑定士】リアムは、戦闘能力の低さを理由に、仲間と婚約者から無一文で追放された。全てを失い、流れ着いたのは寂れた辺境の村。そこで彼は自らのスキルの真価に気づく。物の情報を見るだけの【鑑定】は、実は万物の情報を書き換える神のスキル【神の万年筆】だったのだ!
「ただの石」を「最高品質のパン」に、「痩せた土地」を「豊穣な大地」に。奇跡の力で村を豊かにし、心優しい少女リーシャとの絆を育むリアム。やがて彼の村は一つの国家として世界に名を轟かせる。一方、リアムを失った勇者パーティーは転落の一途をたどっていた。今さら戻ってこいと泣きついても、もう遅い! 無能と蔑まれた青年が、世界を創り変える伝説の王となる、痛快成り上がりファンタジー、ここに開幕!
おっさん冒険者のおいしいダンジョン攻略
神崎あら
ファンタジー
冒険者歴20年以上のおっさんは、若い冒険者達のように地位や権威を得るためにダンジョンには行かない。
そう、おっさんは生活のためにダンジョンに行く。
これはそんなおっさんの冒険者ライフを描いた生活記である。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
レベル1の地図士は、世界の裏側を知ってしまった
あめとおと
ファンタジー
異世界に転移した主人公が得たスキルは【地図作成】。
戦闘能力ゼロ、初期レベル1。
冒険者ギルドでは「外れスキル」と笑われ、
新人向けの雑用クエストしか回ってこない。
しかしそのスキルは、
ダンジョンの隠し通路、未踏破エリア、消えた古代文明の痕跡まで“地図に表示する”
という、とんでもない能力だった。
生き残るために始めた地味な探索が、
やがて世界の秘密と、国家すら動かす大冒険へ――。
これは、
戦えない主人公が“冒険そのもの”で成り上がる物語。
同作品を「小説家になろう」で先行配信してます。
『王都の神童』と呼ばれた俺、職業選定でまさかの【遊び人】三連発で追放される。……が、実は「全職業のスキル」を合算して重ねがけできる唯一のバグ
よっしぃ
ファンタジー
王都で「神童」の名をほしいままにしていた少年、ディラン・アークライト(17歳)。
剣を握れば騎士団長を唸らせ、魔法を学べば賢者を凌駕する。誰もが彼を「次代の勇者」と信じて疑わなかった。
しかし、運命の職業選定で彼が得たのは――【遊び人】。
それも、三つの職業スロットすべてが【遊び人】で埋まるという、前代未聞の怪現象だった。
「期待外れだ」
「国の恥晒しめ」
掌を返した周囲によって、ディランは着の身着のままで街を追放される。 だが、かつて神童と呼ばれた彼の「分析力」は死んでいなかった。
『……Lv1なのに、ステータスが異常に高い? それに経験値が分散せず、すべて加算されている……?』
彼だけが気づいた真実。
それは【遊び人】という名に偽装された、この世界の管理者権限(Free-Hander)であり、全職業のスキルを制限なく使用・強化できるバグ技(デバッグモード)への入り口だったのだ。
これは、理不尽に捨てられた元・神童が、その頭脳とバグ能力で世界を「攻略」し、同じく不遇な扱いを受けていた美少女騎士(中身は脳筋)と共に、誰よりも自由に成り上がる物語。
【著者プロフィール】アルファポリスより『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』を出版、オリコンライトノベル部門18位を記録。本作は2月に2巻刊行予定。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる