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第8話 敵から逃れて
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まったく、後で考えてみればよくあんな賭けができたのだと思う。
他に選択肢が、なかったとは言っても。
<クォンタム・テレポーテーション>
俺のスキルステータスの中に入っていた、謎のスキルの一つ。
用途は不明。
だが、俺は先ほどの戦い――偽魔王ルカと、偽勇者の俺、そして本物勇者のヴァイスとのバトルの光景を思い出していた。
ザラストロの<獄炎>が放たれたのち、どこからか俺たちに向けて、二種類のスキルが発動された。
一つが「キングダムヒール」。
そしてもう一つが「クォンタム・テレポーテーション」。
前半のスキルは回復系だと、俺はあたりをつけていた。
怪我をしていない俺たちに、効果がなかったからだ。
まあ、理屈を言うなら、俺はあのスキルを入手していたので、無効化しているのだと考えることができる。
だが、ルカにもヴァイスにも、これといった効果はなかった。
――まあ、なんとなく癒やしっぽいな、という適当なノリもあるけど。
そしてもう一つのスキル。
<クォンタム・テレポーテーション>。
このスキルが発動し、俺は意識を失った。
ということは、このスキルは何らかの方法で、状況をすべてチャラにする能力。
それからもう一つ、俺はこの能力を入手していた。
ということは、俺に関しては無効化されているはずなのだ。
だが、俺についてもきちんとこのスキルは発動している。
ということは――可能性はただ一つ。
あの『場』――状況に、スキルが発動されたのだ。
対象が俺でなく、俺の居る『場』であるなら、無効化はされない。
『場』そのものを変化させるスキル。
最も簡単なものは『場』を別のものに変更する能力。
つまり、ワープだ。
改めて考えてみると、根拠の薄さに震えるな。
――ともあれ。
気がついてみると、俺とルカは、見知らぬ森の中に吹き飛ばされていた。
あたりは夜。
森の木々の隙間から、降るような星空が見える。
鳴き交わす鳥の声が、静かに響き渡っていた。
「助かった……」
俺は自分の状況を確認し、あらためてため息をついた。
うまく、魔族の追っ手を逃れた。
信じられないようなラッキーが重なったわけだ。
――そうだ、スキルの欄は――。
俺は、自分のスキルを確認する。
<デスブレード>
<キングダムヒール>
<空欄>
やはり、あの<クォンタム・テレポーテーション>というスキルは、ワープのスキルだったようだ。
「う……うん……」
身じろぎする、傍らのルカ。
「気がついたか?」
「あ……ここは……」
「俺のスキルで、城の外にワープしたんだ」
「外に? ……魔王様のスキルみたいなことができるの、あなた?」
魔王が?
ワープのスキルを使うのか。
気になることを言うルカだが、とりあえず状況を整理したい。
「ルカ、俺の名前はリヒトだ。なんでこうなったかよくわからないけれど、俺には二つすべきことができてしまったんだ。
一つ、魔族から多分追われると思うので、生き延びなければならないということ。
そしてもう一つ、君を守らなければならないということ」
「……」
「不本意なこともあるかもしれないが、俺はそう決めてしまったんだ。だから、ルカも俺に付いてきて」
なるべく簡潔にわかりやすく情報を伝えたつもりだったのだが、訳がわからなくなってしまった。
なんかキモい感じだぞ。
昔の、ヴァイスの後ろにくっついていた頃の俺なら、到底こんな台詞は言えなかったな。
「わかった」
さも当然、という風にうなずくルカ。
「大丈夫なのか」
「さっき言った。私はリヒトのことを信じる」
「ありがとう」
俺は周囲を警戒して、あたりが無事なことを確認する。
「夜の森は危険だ。夜明けまで、変にうろつかないほうがいい。
とりあえずこのあたりは開けていて、モンスターなんかに襲われることはなさそうだ。このあたりで、夜明けを待とう」
「わかった」
俺は周囲を見渡し、枯れ木と手頃な岩を見つけて、適当にくみ上げる。
「<ファイアー>」
そこに火の魔法を浴びせて、簡易的なたき火を作り上げる。
これで、魔物はよってこられないはずだ。
――俺だって、まったくスキルが使えないわけじゃない。
この<ファイアー>であるとか、少量の水を出す<ウォーター>くらいなら、一応使用することができる。
別に、いばるほどのことではない。
この程度の、誰でもできる魔法。
それが、俺の限界点だった。
――まさか<失禁>がカギだったとはな。
相手のスキルを手に入れるという、奇妙な能力。
ともあれ、俺はこいつを手にした。
どういう能力かよくわからないところもあるが、これで俺はルカを守るしかない。
「――さて、ルカ」
「あい」
「ここまでの事柄について、ちょっとお互いの情報を共有したいんだ」
「うん」
「とりあえず、話したい内容だけでいい。ルカのこれまでのこととか、聞かせてもらえないかな」
「わかった」
……そして俺はルカの話を聞くことになった。た
他に選択肢が、なかったとは言っても。
<クォンタム・テレポーテーション>
俺のスキルステータスの中に入っていた、謎のスキルの一つ。
用途は不明。
だが、俺は先ほどの戦い――偽魔王ルカと、偽勇者の俺、そして本物勇者のヴァイスとのバトルの光景を思い出していた。
ザラストロの<獄炎>が放たれたのち、どこからか俺たちに向けて、二種類のスキルが発動された。
一つが「キングダムヒール」。
そしてもう一つが「クォンタム・テレポーテーション」。
前半のスキルは回復系だと、俺はあたりをつけていた。
怪我をしていない俺たちに、効果がなかったからだ。
まあ、理屈を言うなら、俺はあのスキルを入手していたので、無効化しているのだと考えることができる。
だが、ルカにもヴァイスにも、これといった効果はなかった。
――まあ、なんとなく癒やしっぽいな、という適当なノリもあるけど。
そしてもう一つのスキル。
<クォンタム・テレポーテーション>。
このスキルが発動し、俺は意識を失った。
ということは、このスキルは何らかの方法で、状況をすべてチャラにする能力。
それからもう一つ、俺はこの能力を入手していた。
ということは、俺に関しては無効化されているはずなのだ。
だが、俺についてもきちんとこのスキルは発動している。
ということは――可能性はただ一つ。
あの『場』――状況に、スキルが発動されたのだ。
対象が俺でなく、俺の居る『場』であるなら、無効化はされない。
『場』そのものを変化させるスキル。
最も簡単なものは『場』を別のものに変更する能力。
つまり、ワープだ。
改めて考えてみると、根拠の薄さに震えるな。
――ともあれ。
気がついてみると、俺とルカは、見知らぬ森の中に吹き飛ばされていた。
あたりは夜。
森の木々の隙間から、降るような星空が見える。
鳴き交わす鳥の声が、静かに響き渡っていた。
「助かった……」
俺は自分の状況を確認し、あらためてため息をついた。
うまく、魔族の追っ手を逃れた。
信じられないようなラッキーが重なったわけだ。
――そうだ、スキルの欄は――。
俺は、自分のスキルを確認する。
<デスブレード>
<キングダムヒール>
<空欄>
やはり、あの<クォンタム・テレポーテーション>というスキルは、ワープのスキルだったようだ。
「う……うん……」
身じろぎする、傍らのルカ。
「気がついたか?」
「あ……ここは……」
「俺のスキルで、城の外にワープしたんだ」
「外に? ……魔王様のスキルみたいなことができるの、あなた?」
魔王が?
ワープのスキルを使うのか。
気になることを言うルカだが、とりあえず状況を整理したい。
「ルカ、俺の名前はリヒトだ。なんでこうなったかよくわからないけれど、俺には二つすべきことができてしまったんだ。
一つ、魔族から多分追われると思うので、生き延びなければならないということ。
そしてもう一つ、君を守らなければならないということ」
「……」
「不本意なこともあるかもしれないが、俺はそう決めてしまったんだ。だから、ルカも俺に付いてきて」
なるべく簡潔にわかりやすく情報を伝えたつもりだったのだが、訳がわからなくなってしまった。
なんかキモい感じだぞ。
昔の、ヴァイスの後ろにくっついていた頃の俺なら、到底こんな台詞は言えなかったな。
「わかった」
さも当然、という風にうなずくルカ。
「大丈夫なのか」
「さっき言った。私はリヒトのことを信じる」
「ありがとう」
俺は周囲を警戒して、あたりが無事なことを確認する。
「夜の森は危険だ。夜明けまで、変にうろつかないほうがいい。
とりあえずこのあたりは開けていて、モンスターなんかに襲われることはなさそうだ。このあたりで、夜明けを待とう」
「わかった」
俺は周囲を見渡し、枯れ木と手頃な岩を見つけて、適当にくみ上げる。
「<ファイアー>」
そこに火の魔法を浴びせて、簡易的なたき火を作り上げる。
これで、魔物はよってこられないはずだ。
――俺だって、まったくスキルが使えないわけじゃない。
この<ファイアー>であるとか、少量の水を出す<ウォーター>くらいなら、一応使用することができる。
別に、いばるほどのことではない。
この程度の、誰でもできる魔法。
それが、俺の限界点だった。
――まさか<失禁>がカギだったとはな。
相手のスキルを手に入れるという、奇妙な能力。
ともあれ、俺はこいつを手にした。
どういう能力かよくわからないところもあるが、これで俺はルカを守るしかない。
「――さて、ルカ」
「あい」
「ここまでの事柄について、ちょっとお互いの情報を共有したいんだ」
「うん」
「とりあえず、話したい内容だけでいい。ルカのこれまでのこととか、聞かせてもらえないかな」
「わかった」
……そして俺はルカの話を聞くことになった。た
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