『闇属性黒猫の異世界救出物語』〜魔物転生!?いや人間になりたい!

藤村ゆんた

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第一章 

1話 目覚めの始め

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(う…うぇ……何……何これ…気持ち悪い、苦しい…)

猛烈な吐き気と頭の中身が絶えず掻き回されているような感覚がした。
酷い目眩で、方向感覚も分からない。
お酒は飲んだ事は一回も無かった筈だけど、僕は二日酔いにでもなってしまったのだろうか。
人生でここまで酷く酔った事は今までなかった気がする。朦朧とした意識の中でそう思った。

言葉に表現出来ない程の気持ち悪さだった。思考すらもぐちゃぐちゃになって何も考えられない。

この脳みそがこねくり回されているような感じ、車とかで酔う感覚とは全然違う。何か自分の身に途轍もない事が起きていると本能的に分かった。
いつまで続くか分からない苦しさに恐怖しながら、何か解放される手立てはないのかと、取り敢えずあたりを見回す。

だけど、何故だか視界が黒い霧に覆われているように靄がかっていて、暗くて何も見えなかった。
いよいよ…これは末期の重い病気かも知れない。やだなぁ…まだやりたいことあったのに…。 

だけど、しばらく経ったら徐々に気持ち悪さも収まっていって落ち着いた。

良かった…けど…何がどうなって…?

もう一度あたりをゆっくり見回す。

…?まだなんか視界に黒い靄がかかっているような…。

さっきは気分の悪さ故に視界が暗く見えていたと思っていたけど、どうやら本当に黒い靄があるようだった。
黒いのがモヤモヤ辺り一面にあるようで、周りがどうなっているのかいまいち分からない。

もしかして火事?でも…それにしては煙たくないな…。

煙の向こう側を見ようと じっとしていたら、靄が徐々に薄くなっているような気がした。
どうやらここは野外っぽい…。そのうち風で煙は散開するだろう。

しばらく待っていると、黒っぽかった視界が次第に晴れ、生い茂る木々や変わった形の植物などの鮮やかな景色が視界内に現れた。

え?

全く身に覚えのない光景にしばらくポカーンとした後、我に返ってもう一度良く見回す。

地球の自然で見られないような派手な色、変な形をした虫、または植物。沢山の大きな木々が見渡す限り生い茂っている事から、日本の樹海の可能性を考えたけど…よく見たら木々も明らかに日本に…いや、地球に生えているような色をしていない。
木ってこんな青かったっけ…?緑色のもあるにはあるけれど…葉っぱも白かったり黒かったりのが多い。

そもそも僕が樹海なんて行くわけないしなぁ…そもそも怖くて行けない。

本当に、ここどこ?

見た感じ、一応森…のようだけど、全く身に覚えのなさ過ぎる場所だ。なんかの撮影現場?もしかして宇宙人とかに誘拐された?それとも幻覚?夢?…色んな可能性を考えたけど、今の状況じゃ全く分からない。
考えるだけ嫌な方へとキリが無いから、一旦辞めて取り敢えず状況確認を再開する。


見れば見る程あり得ない周りの光景に、やっぱり末期の重い病気に違いないかも…と思えてくる。

というか、さっきから目線がやたら低くてあまり遠くを見渡せない。
今の僕の目線はそこら辺に生えている発光する謎の花より目線が低い。
ってあれ?たんぽぽぐらいのサイズの植物より目線が低いって…低過ぎじゃない!?

それに気づいて、本当、なんでこんなおかしい事に気が付かなかったんだろうと思いながら立ち上がろうとする。

よいしょ……あれ?

おかしいな。何故だか立ち上がれない。


そういえば、僕は今どんな体勢をしているんだろう?


通常分かってて当たり前な事に、疑問を持つことが不思議だった。それから、よく考えてゾッとした。自分の身体なのに、それがよく分からない感覚になっている。ちょっとなんて言って良いか分からないけど、なんか…なんか変。

自分の手足の感覚を探る。やはりどこについているのか分からな…いや、これは…?両手がどこにでもついている気もするし、手足が複数あるような感じまで…する。そんなあり得ない感覚の、変だ。

自分の身体に違和感があり過ぎて、身体が今どうなっているのか恐ろし過ぎて見ないようにしていたけど、勇気を振り絞ってばっと足元を見る。足が分かんないから、地面…恐らく自分の身体であろう方向と言った方が正しいか。

そこには光が一切反射しない真っ黒な水溜りがあった。
水溜り…というか、大量の墨汁だ。

考えられる事は、僕はどうやらその黒い水溜りに目元まで浸かっているらしいということだ。

相当深い穴があって、そこに墨汁らしきものと一緒に身体も埋まっているのだろう。
必死にこの怪しい水溜りから抜けようと、上へ上へとジタバタする。
その内、目線が高くなった事に気付き、抜け出せた事にほっとしながら自分の身体を見ると…

何これえええええ!!!!

自分の体?が…はっきり不可解なことになっているのに気付いてしまった。

さっきから声が出ないし、だから心の叫び声みたいになったけど、声に出して思いっきり喚き散らして頭ぶつけなきゃ現実として受け止めることが出来ない程驚いた。

その不可解というのが、さっきの墨汁が消えて、今はモヤモヤした真っ黒な霧状が自分の身体のようになっていたという事。
深い穴なんて無かった。僕の身体は埋まってなかった。つまりさっきの墨汁自体が僕の身体だったという事だ。

何これ、どうなってるの?霧って何?え?魂そのものみたいなやつ?自分でも何言ってるか分かんないや(笑)

混乱する頭をどうにか抑えて自分の手を見ようとするが…手が何処だか分からないし、そもそも体の感覚が無かった。
道理で身体の感覚がおかしいと思った、だって実際全てがおかしい。

ただ分かるのは、何故だか自分の身体だと認識しているのが真っ黒いモヤモヤとした煙のようなものだということ。
僕はちなみに雲のように宙に浮いている。

僕は訳がわからないまま、ふよふよ漂う。

この霧状の体、どういう仕組みか分からないけど、思った方向にすぃーと移動は出来るようだ。

それからしばらく、僕は森の中を彷徨い続けた。
途中、脚が六本ある凶暴な顔をした真っ赤な狼や羽が生えたウサギ、五メートル以上ある巨大な熊っぽいやつなど、地球で見たこともない動物を見かけた。
幸い、僕の姿はそのモンスター達に気付かれることは無かった。もしかして僕の姿が見えないのかもしれないけど、見るからに人を襲いそうな凶暴な顔をした動物達に近づこうとは思わなかった。

わっ!?

余所見をしていたら、木に突っ込んだ。
僕の体は実体がないのか、そのまま減速することなく通り抜けられた。

僕って一体何になったの…。幽霊?魂?何度目かわからない己への疑問に、そろそろ思考放棄したくなってきた。


森中彷徨ったけど、この霧状の身体は全然疲れない。けど混乱による精神的疲労が酷かったので、一度木の陰で自分の思考を整理する事にした。

ここはどう考えても僕が住んでいた日本ではないことは確かだと思う。でも、どうしてこんなとこに居るのかはさっぱり分からない。
自分の名前も分かるし、家族の名前も日本にいた頃の記憶も覚えている。ここに来る前の…最近の記憶がどうも曖昧なのが気になるけど…。

ここが夢の中という可能性が今のところ一番高いけど、僕が見る夢にしては非現実的過ぎた。
僕の夢は毎回、現実か夢なのか区別がつかないほどリアルな夢しか見てこなかったからだ。今まで偶然そんな夢しか見てこなかっただけかも知れないけど…。
色々考えてるうちに、だんだん黒い霧状の靄が四散して薄くなっていってる事に気付いた。
さっきまで真っ黒だったのが、今では景色がはっきり透けて見えるようになってしまっている。

え?待って待って、もしかしてこのまま消えちゃうんじゃ…

焦った僕は、咄嗟に黒い霧が体の中心に集まってくるイメージを思い浮かべ、必死に念じた。
その思いが通じたのか、黒い霧が密集して濃くなっていく。

ゴォォォオオ

霧は森の彼方此方から吸い寄せられ、僕の体が次第に大きく、荒れ狂うように渦巻いていく。

僕は自分の体がさらに得体の知れないものになっていくのを呆然として見つめた。

【特殊スキル : 黒神術を獲得しました】

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