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第一章
5話 アルラモルモとの出会い
しおりを挟む取り敢えずサンダーフォックスの状態確認だけしようと、ビクビクしながら近づく。
目も当てられないほど、顔だけ原型が分からないほどズタズタになったサンダーフォックスが血溜まりの中に横たわっていた。僕は感情を押し殺して、視点をカーソルに合わせる。
【サンダーフォックス】◀︎
死亡
種族 : 魔獣
性別 : オス
闇属性 : 雷
あはは、やった…?殺した…勝てた。そう思うと同時に少し安堵するが、別の不快感が込み上げてくる。
サンダーフォックスは何度調べて見ても、やっぱり死んでいた。
だけど、信じられなかった。食べられると思って、怖くて、何の気なしに叩いただけの一発が。
ほ、本当に僕が…殺したのか…?
恐る恐る自分の前足を見ると、それは猫の可愛い肉球のついた前足とは似ても似つかない、長く鋭い真っ黒な鉤爪。未だ血が滴る恐ろしい前足に、自分自身なのに身震いする。
少し違う視点から自分を見る。闇そのもののような漆黒の身体、獰猛な眼光を放つ目、前足の大きな鉤爪が地面にのめり込んでいる。
そしてどう考えても、狼、ちょっと狼にしては異様なオーラを放つ巨狼だ。
こ、怖すぎる。
これ本当に自分?
ひとまずステータスで確認する。
***
【レッドウルフ】◀︎
種族 : 魔獣
闇属性 : 火
体力 : 800/800
魔力 : 50/50
スキル : 《空殺鉤爪 》 《火狼の咆哮》《糾牙》《火炎達磨》
特殊スキル : 《種族変化》 《黒神術 》 ◀︎
黒神術 : 《状態変化》 《創造》《遠吠え》《生体感知》
***
ヤバイ…なんか強いというか…前見たレッドウルフと殆ど同じステータスになっている。
だけど名前レッドついてるのに、外見ちっともレッドじゃなかった。むしろブラックウルフに改名した方良いと思うくらい。
もしかして、あのサンダーフォックスをやっつけたからかな…?
ある程度強くなると、人間に変化出来きるようになったりしたら良いけど…。でも普通ゲームだったらレベルアップで強くなったり、能力が高くなったりする筈だし…そう考えるとレベルを早く上げた方が何かと良いかもしれない。
だけどレベル上げするにあたって、サンダーフォックスのような獰猛な獣を相手に戦わなきゃいけないのは怖いな…これから生き物を殺し続けなきゃいけなくなるのは心苦しい。
でも、そうとは言ってられないことは自分でもよく分かっている。ここは弱肉強食の世界だ。僕だって元の人間の身体になりたいし、それに強くならなければ生きていけない。
僕は首を振って気持ちを持ち直す。
そういえばアルラモルモどうしたっけ…と考えた後、はっと気付いて僕はアルラモルモを吹っ飛ばした方向に向かう。
次いで倒れているアルラモルモを発見し、急いで状態確認をする。
***********************
【アルラモルモ】
状態 : 気絶
種族 : 鼠系の獣
性別 : オス
属性 : ノーマル
体力 : 7/15
魔力 : 33/50
スキル : 《穴掘りLvMAX》 《逃げ足》《暗視》
***********************
気絶してるだけのようで、ほっと安堵の息を吐く。
あ、でも体力が少なくなってるけど、大丈夫かな?
心配だから少しだけ観察してから立ち去るつもりでいたけど、状態の気絶が急に点滅し出したから、死んじゃうかと思って焦った。
パッと状態の気絶が消えたと思った瞬間、アルラモルモが入れ替わるように起き上がった。
「チュイ~」
しばらく伸びをした後、自分のすぐ側の地面に途轍もなく大きな影が差しているのを見て、アルラモルモは恐る恐る見上げた。
「ヂュッッ!?」
僕と目があった瞬間、アルラモルモは潰れたような変な声を出したかと思うと、ひっくり返ってまた気絶した。
そうだった!僕は今、オオカミの姿だった!!
立て続けに、怖い思いをさせてしまった…ごめんなさい。
取り敢えず猫の姿に戻ろう!
いや、待って、アルラモルモになれば解決では!?
レッドウルフに変化成功出来るなら、アルラモルモにも恐らく変化できるはずだ。
そう思い、僕は早速目の前のアルラモルモになることを想像してみる。その途端、思った通り身体が変わっていく感覚がした。
ぐんぐん自分の身体が小さくなっていくのを感じ、視点を変えながらその様子を見る。
小さい耳に小さいお手手、そしてふわふわの丸い尻尾にクリクリのお目目。どこからどう見ても完璧にアルラモルモになった。……身体の色以外は。
僕の身体となったアルラモルモは、変化した猫やカラス、レッドウルフと全く同じ全身漆黒の毛色になっていた。
何故だか僕が変化するとみんな黒くなるらしい。
これもレベルが上がると修繕されていくのだろうか。黒いと、せっかく変化したのにまた怖がれるかもしれない。
僕が不安に思っていると、アルラモルモが再び目を覚ました。
「チュイ?チュイ~」
あれ?なんか悪い夢見た気がするけどまぁいいっかーみたいな感じだ。
ふと、隣にいた僕と目が合った。僕の心臓は恐怖と若干違う意味でバクバクする。
「チュ、チュイー!?」
な、なんだお前ーー!?みたいな感じで、アルラモルモが驚いて後ずさる。
どうしよう、なんて説明すればいいんだ、というか話通じるのか!?僕もチュイチュイ言えばいいのか!?
取り敢えず、僕は普通に喋る事にした。
「チュ、チュイチューイ!」
ぼ、僕は怪しいアルラモルモじゃないよ!と言ったつもりだった。
あれ?日本語で喋ったはずなのにチュイ語になってる!?
【特殊スキル : 獣語を獲得しました】
…ん?…獣語?
僕が混乱してると、あっちから返事が返ってきた。
「チュイチュイチュー!!チュイ、チュ」
真っ黒でどう見ても怪しいじゃないかー!!お前、見たこともないなしい怪しすぎる。
と言われているようだった。あれ?もしかして僕、このアルラモルモが言っている意味が分かる!?
取り敢えず怪しいままは嫌なので、なんとか信用してもらえるよう必死に身振り手振りで言葉を捻り出す。
「チュイッチュ、チュイ。チュイ~~、チュイチュイ」
(僕はこの森に来るのが初めてで、迷ってしまって。僕と似ている君が倒れているのを見つけて、心配になって近づいただけなんだ)
うーひどい嘘だ。さっきまで狼だったくせに。嘘を付いてしまったことにちょっと罪悪感を感じつつ言い切った。
長い説明だったけど、チュイ語だったら短く済んで驚いた。この意味伝わってるかな?
僕は不安な表情でアルラモルモを見つめる。
アルラモルモは疑念の表情で短い手を組んで…組めてないので手先を合わせている。超可愛い。
「チュイ、チュイチュイチュ」
(まぁ、なるほどな。たしかに森の外にならお前みたいな色が違う種類がいるかもしれないな)
僕の説明に納得した感じでコクコクと頷くアルラモルモさん。よ、良かった…。
「チュチュイ~。チュイ、チュ」
(それにお前、心配して寄ってくれたのか。なら悪いことしたな、疑ってすまない)
そんな感じでぺこりと頭を下げた。
小動物が人間みたいに振る舞う様子に、さっきから僕の心に激震が入りまくってる。
か、可愛すぎる、この子僕を萌え死なせる気ですか、そうですね。
はっ駄目だ、ここで僕の思いを爆発させたら せっかく仲良くなれそうな雰囲気がパーになって、逃げられてしまう!
僕は急いで平静を取り戻し返事をする。
「チュイ~、チュイ。チュイチュチュイ」
(大丈夫、気にしてないよ。それに元気そうで何よりだよ)と僕は笑顔で言った。黒い顔になってるけど、笑顔なこと分かるかな…?
するとアルラモルモさんは柔らかな、ちょっと照れたような笑みを浮かべて頭を掻いた。
ついでにアルラモルモさんの表情が容易にわかった事が自分でも驚いた。
「チュイ~、チュイチュ。……チュイチュイ。チュチュチュ」
(ありがとう、優しいやつだなお前は。…一人で森に迷っ大変だっただろう。俺の仲間の元に案内してやるよ)
アルラモルモさんの言葉に僕は再び驚いている間に、アルラモルモさんはクルッと向きを変えてさっさと走り始める。
すぐその後を、一体どんな所なんだろう…と少し期待を寄せながら、いや大いに胸を膨らませながら、慌てて追いかけた。
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