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第一章
6 初めての名前
しおりを挟むアルラモルモさんのお尻がフリフリしている様子を、無言で凝視しながら暫くついていく。
「チュイー」
(もうすぐで着くぜー)
そう言った数秒後、アルラモルモさんはスチャッと止まった。僕はアルラモルモさんのすぐ後を追いかけてたため、そのままアルラモルモさんの背中に飛びついてしまった。
モフッ。僕の顔がアルラモルモさんの柔らかい繊細なフサフサの背中に大きく沈む。
はぁぁ幸せ~。
「チュイチュ。チュイ」
(ここが俺らの住みかだ。ついてきな)
アルラモルモさんは僕の様子を気にすることもなく、そのまま歩き出す。
アルラモルモさんのモフモフが離れてしまって、少し寂しく思いつつ周りを見渡した。
大きな木が密集していて、全体的にちょっと暗いけど幻想的なところだった。
住みか…って言ってたけど、何処が住みかなんだろ?
アルラモルもさんがその内の大木の、盛り上がった根元の下をもぞもぞしている…と次の瞬間アルラモルモさんが根元の下に消えた。
「ウッチュ!?」
(WATS!?)
慌ててアルラモルモさんが消えて行った根元付近に近づく。根元が何重にも重なっていて、アルラモルモさんが入れるような穴なんて空いていない。
か、神隠し…?ト●ロの元に行ったの!?
僕がオロオロしていると、さっき見つめてた根元からアルラモルモさんの顔がムニュっと出た。
「チューチュイ?」
(おい、大丈夫か?)
「チューー !」
(ああ良かった!)
良かった、無事だった。だけど一体どうやって根元から出てきたんだろ…。
「チュイチューイ?」
(もしかして入り方が分かんなかったのか?)
アルラモルモさんの言葉に、分からないものは誤魔化しようもないので素直に頷く。
「チューチュチュイ。チュイ」
(あー余所から来たから分かんないよな。スマン)
アルラモルモさんが頭を掻いて謝るのを、僕は申し訳ない気分になって目を伏せる。
他所も何も、全てが分からないからなぁ。
「チュイチュイチュチュイ、チュチュチュイチュチュイ。チュイ」
(ここの太い根元の下にある根元は柔らかいから、根元の間に身体をねじ込んでいけば下の空洞に繋がるんだ。ほら、今度こそついて来な)
アルラモルモさんが目の前で分かりやすくお手本を見せてくれるようだ。
大きな根元の下の若干小さな根元の隙間に身体を滑り込ませ、もぞもぞと身体を動かしてどんどん入っていく様子を良く観察する。
アルラモルモさんが結構ムニーって潰れて入っていって、最後お尻だけになったと思ったらスルッと消えた。アルラモルモさんの通った根元の隙間はぴったりと閉じている。
「チューイ」
(待ってるぞー)
アルラモルモさんの声が根元の下から響いて聞こえた。
なるほど、こうやって入るんだ!
僕はワクワクしながら、アルラモルモさんの入った根元と根元の隙間に手を差し込んでみる。
ムニューと根元が避けて、僕の手が簡単に入った。
根がまるでゴムみたいに柔らかい。
そのまま両手を入れて、思い切って頭を突っ込んだ。
む、中々頭が入らない!
グリグリと頭を無理矢理ねじ込もうとしていると、やっと根っこが開いていくのが分かった。
僕の頭が沈み、頭が圧迫される。そのまま手足をばたつかせながら前進する。
やがて頭の先が根っこの圧迫から解放される感覚がした。そのままひょっこりと根っこから頭を出す。
僕は今逆さまになっているので、下を見下ろす感じになって見渡すと、そこはアルラモルモ二匹分の幅を持つ根っこに囲まれた通路があった。
僕は力を振り絞って根っこから脱出した。
ぽてっと地面に落ちる。立ち上がって、体にこびりついた土を払いのけてると、待っていてくれたアルラモルモさんが声をかけてくる。
「チュイ、チューイ」
(お、無事に来れたようだな。仲間はこの先にいるぞ)
手足が短い慣れてない身体で少し疲れてきてるけど、この先もう少しで癒しのモフモフ天国に行けると思ったら疲れも吹っ飛んだ。
アルラモルモさんが前を歩くのを、僕は慎重に追いかける。始めは薄暗くて、1メートル先の様子が真っ暗で見えなくて怖かったけど、だんだん目が慣れてきて今では外と変わらない明るさで視界がはっきり見る事が出来た。
ちょっと見え過ぎて怖いけど、恐らくアルラモルモの固有のスキルの【暗視】のお陰かな。凄い便利で驚いた。
トタトタとアルラモルモさんと僕の足音が狭い通路に響く。
あ、そういえば…。
アルラモルモさんの名前聞いてなかった事に今更ながら気付いた。今から沢山のアルラモルモに会う事になるだろうから、名前を聞いといた方が良いかもしれない。
『あの、名前を聞いても良いかな』
言ってから瞬時に後悔した。
なんか今の聞き方 突然だし不自然だったかな…ていうか自分から名前名乗った方が良かったかも、やばい、なんか失礼なこと言ったかもしれない。
『あ、そう言えば言ってなかったな、悪い。俺の名前は「イテス」っつーんだ』
だが、そんな僕の心配は杞憂だったようで、一瞬振り返ったアルラモルモさんは 普通に名前を言ってくれた。
イテス。イテス。良し、覚えた。
『はは、なんか名前名乗んの久しぶりだな。アルラモルモで変わってんのって俺ぐらいだと思ってたけどよ、案外他所ん所はそれが普通なのかもな』
イテスが独り言のように呟いた言葉に、僕は疑問を浮かべる。もしかして名前を聞くことがアルラモルモにとって普通じゃないことだったのか…?
あ、僕なんか流れでここまで来ちゃったけど、今更他所から来たアルラモルモじゃないってバレたら…大変な事になりそうだな。うん、バレたら全力で逃げよう。
『お前は?』
『…え?』
バレた時の最悪な事態を予想して何に変化しようと考えこんでいたから、一瞬何のこと事を言われているのか分からなかった。だけど、会話の流れでは普通そうなる事に遅れて気付く。
『名前を聞くっつー事は名前あるよな。なんつー名前なんだ?』
イテスから名前を聞かれて、一瞬言葉に詰まってしまった。
僕の日本での名前(本名)を言うべきか、それともゲームをしていた時に名乗ってた名前(仮名)にした方が良いのか、そんな些かどうでもいい事に迷った。
そんな僕の一瞬の迷いをイテスは気付いたようで、何かを察して僕を気遣うように言葉を発する。
『あーー、そういやお前毛の色全然違うから区別する名前とか必要ねーかもな。でもさ、折角だから新しいお前の呼び方を俺が考えてやるよ』
ん?と思ったけど、イテスが名前を考えてくれるようならそれでいいやと思った。
イテスは少し考える仕草をした後、ハッと閃いた表情をした。僕の呼び名はどんな感じになったのかな。期待してその先を待った。
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