『闇属性黒猫の異世界救出物語』〜魔物転生!?いや人間になりたい!

藤村ゆんた

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第一章 

7 モフモフ天国

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『お前の名前はクロに決めた!!』


…いや、そのままじゃないか!思わずツッコミそうになったのを辛うじて言葉を飲み込んだ。
少し考える風な感じは、一体何だったというのだ。

『どうだ、クロ。お前にぴったしだろー?気に入ったか?』

そりゃ全身真っ黒だもん、ぴったしに決まってるさ。
まぁ…折角イテスさんが考えてくれた名前だし、アルラモルモのフリの間はこの名前で通そう。

『うん、ありがとう…イテス』

僕の言葉を聞いてイテスさんは満足そうに頷いて再び歩き出す。
その後ろを、名乗る名前ちゃんと決めとかないとな…と思いながら追った。

根っこに突っかからないよう注意しながら進んで暫く、急に目の前が明るくなった。

驚いて前を見ると、眩く視界が開けた広い空間があった。
イテスが先に今まで歩いていたトンネルから出て下に降りる。
僕も下に降りようとして、通路の先を進むと、広い空間の全体が見えて目を見開いた。

広い空間の中にそびえ立つ一本の無茶苦茶大きい青緑色の大木。広い空間はみんな大小様々の根っこに囲まれていて、上から木漏れ日が降り注いでいる。
そしていたるところにアルラモルモ、アルラモルモ、アルラモルモの大群。
根っこや木々に洞窟っぽいのがいくつもあって、そこからアルラモルモ達が出入りしている。

それに…ん?なんかもふもふしたウサギっぽいのとか、アルラモルモよりずっと大きい山羊っぽいのとかいる。
アルラモルモ達だけじゃなくて、他の小動物も一緒に共生しているのかな…?

取り敢えず、なんか凄い別世界に来ちゃった感がした。

『おーい、こっちだぞ~』

イテスの声が下から聞こえた。僕は通路から下に伸びている根っこを伝って降り、アルラモルモさんの元に駆け寄る。

『余所から来たってつーことで、まず村長と会うことになるが良いか?』

イテスの村長という言葉に驚いた。
てっきり族長ならいるかも知れないと思っていた。
村長か…つまりここは村なのか。周りをよく見ればアルラモルモの他に沢山種族がいて、みんな自然に会話っぽいのをしたりして混じっている。だから一族の長じゃなくて村長なのか…と納得した。

どうやら思っていた以上にこの世界の生き物は人間に近い生活を送っているようだ。


今は何にも分かんない事だらけだし、断る必要もないので『全然大丈夫だよ』とイテスに伝える。むしろ、村長さんに会って色々聞きたい。

僕の返事を聞いて、イテスは早速村長さんの元へ案内してくれた。空間の真ん中にそびえ立つ大木の下に向かうと、花のレリーフが沢山飾ってあるアルラモルモ一匹分の丸い穴があった。
そこにイテスが入る。続けて僕も入った。
穴の向こうは暖かな光を放つキノコがいたるところに生えてて、明るい広い部屋になっていた。
アルラモルモサイズの机っぽい石や、キノコの椅子。様々な種類の果物や植物が入った大きなツボがいくつもあって、部屋全体が良い香りがした。

頭にお花をつけた小柄なアルラモルモや小さな丸いフワフワの生き物がパタパタと部屋の中を忙しそうに駆け回っている。
部屋の向こうにキノコに腰掛けていた白い一匹がこちらに気付き、何か杖っぽい小枝を持ちながらヨタヨタと歩いて来る。


『おお、どうしたんじゃ。ん、そちらの方は?珍しい毛色で見かけない方じゃのう』


『よぉ、村長さん。こいつは余所から来たアルラモルモらしい。俺が森の外で倒れているところを介抱してくれたんだ』

どうやらこのこの方が村長さんらしい。というかイテス、僕に介抱されたって思ってくれてたんだ…。

『ほぅ、他所さんから来た同族を見るのは久方振りじゃのう…。ってお前さんまた森の外に行っておったのか!単独じゃと危険じゃって何べんも言うとるのに聞かなん奴じゃの!』

真っ白な身体をしたアルラモルモの村長さんが、イテスをポカポカ杖で叩き出した。目の前で突然起きたその様子に、僕は少し戸惑うけど、取り敢えず様子を見といた。

単独行動の常習犯…だからイテスは群れから外れて独りで居たのか。そりゃ危険だし現に死にかけてるから僕からも注意しないとなって思った。でも短期間で二度も怖い目にあった筈だから反省はしてる筈だし、もう大丈夫だろうなぁ…。
イテスは目だけ瞑ってて、大人しく叩かれてるけど…

あ、ニヤって笑った!?こりゃぜんぜん懲りてなさそうだ。それか気絶して記憶が吹っ飛んでしまったのかな。

『余所から来なすった我が同胞よ、すまんのぅ』

村長さんが我に返って僕に気付いて申し訳なさそうに謝るのに対し、いえいえと僕は首を振る。

『儂はジロフと申してな、ここで村長というのをやっておる。我らの住処へようこそ、遥々よくぞ遠くの地からお越しになった、我ら一同歓迎致します。ここでは好きにしてくれて構わんよ』

村長さんがゆっくりと頭を下げると、花の冠を頭に乗せた小柄なアルラモルモや他のミニサイズの動物が一旦足を止め、こちらを向いてぺこりと頭を下げる。そしてまた忙しそうにパタパタ駆けて行った。

その彼等の歓迎を一身に受けた僕と言ったらもう、もう本当に想いが身体から弾けて爆発しそう。

本当になんて嬉しい歓迎なんだ、ここに来て本当に良かった!!
ちょっとだけあのお花の子達を調べされてもらったら、小柄だからやっぱり女の子のアルラモルモ達だった。ほかの子達もお花をつけている子が多くいて、多分女の子がつけているんだろう。可愛いに可愛いを重ね掛けとか、きっと僕の心をピンポイントで撃ち殺しに来てるとしか思えない…!

目を細め、優しそうな表情をする村長さん。お爺ちゃん口調だけど、僕から見ると白くて小さいだけのこれまた可愛いアルラモルモに見えるからまた身悶えないようにするのに必死だ。

この方は周りのアルラモルモ達からはお爺さんに見えているんだ、可愛いなんて言ったら変な人に思われてしまうから気をつけないと…。あ、イテスにもうっかり可愛いって言わないよう気をつけなきゃ。

『良かったら暇な老人と話をしてくれんかの。他所さんとこのお話を是非聞きたい。ここのことも気になるじゃろ?一族の中で一番の長生き、知識も豊富じゃて、退屈はさせんよ』

『はい、是非』

他所さんのとこの話と聞いて一瞬ギクリとしたけど、村長さんのお話は是非聞きたい。正直凄い助かります、だって僕この世界に来て一日も経ってないもん。

『おお、そうかそうか。もうここの若いもんはわしの話なんて聞く耳も持たないからの、嬉しいことじゃ。…さぁ、あっちでお話ししようか』        

向こうの誰もいない小部屋に案内され、きのこに似たふかふかで不思議な感触、だけどとても座り心地の良い椅子に腰掛ける。目の前の机は土でできた土台に、上は平たい木の板が置かれている。黄色、青緑、ピンク、と色とりどりに光る大小様々なキノコと草花が部屋を幻想的かつメルヘンチックな内装へ演出しており、人間の僕から見てもお洒落で素敵だ。
部屋の家具とか装飾品も自然から作られた物だとは思うけど、ちゃんと作り込まれていて決して粗末ではない。そういうところから思うに、ここに住んでいる動物達の生活基準の高さや知能の高さを改めて感じた。

因みにイテスは 村長の話とか興味ねーって言って村長ハウスから出て行った…。

『ふぉふぉ、やはりここは珍しいかのぅ。なら先ずは儂らの住処の歴史からお話しようかの』

のんびりとした優しい口調で、村長さんは語り始める。

*******


突然、目が覚めたらよく分からないので異世界に居て、自分が得体の知れない存在になっていたり、凶暴なモンスターに追われたり、ハムスターやリスの中間みたいな見た目のアルラモルモという小動物と会話したり、なんだか色々常識外な事が起き過ぎた。

未だに僕は自分の身に起きている事がよく分からないし、現実感が無くてほわほわしている。こんな事になるなんて思わなくて、凄く不思議な感じがして。

もしかして僕は長いリアルな夢でも見続けているんじゃないかなって疑っている節がある。いつか、すぐ後、それとも今…。唐突に目が覚めて、またいつもの慣れ親しんだ日常に戻ってしまうんだろうなって。

先が見えない不安や、もしここが現実なら、みんなや、僕の世界ではどうなっているのかとか…その他諸々の心配は勿論ある。だけど、今はこの世界の事が少しでも早く知りたいと思った。
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