『闇属性黒猫の異世界救出物語』〜魔物転生!?いや人間になりたい!

藤村ゆんた

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第一章 

8 アルラモルモの歴史

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昔、アルラモルモ達は一族だけで群れを成して生きていた。

アルラモルモは森の木や土のなかに住処を作る生き物。そんなアルラモルモは見た目通り弱く、魔獣や天敵にとってアルラモルモは絶好の獲物であった。

敵から隠れて住処を作り、見つかって襲われればまた逃げて住処を作り直す。そこには安寧な暮らしなど無く、餌を探すのも命がけ、いつ敵に襲われるか分からない不安に怯えるしかなかった。

だがある時、彼等は「魔獣に襲われない動物」を発見した。その動物は彼等と同じような餌を食し、彼等を捕食しない動物だった。

彼等と同じような大きさのも居るのに、何故その動物が魔獣に襲われる事がないのか、そこに目をつけた。もしかしたら自分達も魔獣に襲われる事が無くなるかもしれない、そう期待して。

そして調べて分かったのは、目をつけた動物達には「魔の力」というのが決まって高いという事だった。「魔の力」が高ければ高いほど、魔獣に襲われ難くなる。それに気付いたアルラモルモは、自分達にも「魔の力」は少しあるのだからそれを増やせば良いと思った。

だが、どんなに頑張ってもアルラモルモの「魔の力」は平均的に少なく、増えることはなかった。

ならどうするか、と一族が考えた末思いついた事は、「魔の力」を多く持つ動物を自分達の巣に招き入れ、魔獣を遠ざけて貰うという方法だった。

多くの失敗もあった。やはり他の種族とは相容れぬと思う事もあった。だが諦めず、一族総出であの手この手で巣に連れ込み、長い長い奮闘の歴史の末、種族ごと住処で自分達と共に繁栄し、共存の道をお互い歩む事に成功した。

やがて、自分達と同じような状況に陥っていた動物達にも目を掛け、彼等も一緒に住む事になった。

外にわざわざ出なくても、「魔の力」を持つ動物達がその力を使って植物や水などを生み出す事が出来、地下世界だけで充分暮らせるようになった。他にも様々な力があり、平和な地下世界はどんどん発展して行った。

****

ざっくり言うと、以上が村長さんに始めに聞かせてもらったアルラモルモの歴史だ。

村長さんは「魔の力」って言っていたけど、それは魔力の事だろうか。

それにしても水や植物を自ら生み出せるって魔力の高い動物は凄いなぁ。僕が思うに、それって魔法だと思うんだけど、魔法って勉強のように学んで練習したりする事で出来るもんだと思っていた。だけど村長さんに聞いたところ、その動物達は始めから知っていたと言うか、本能的に出来るらしい。

『彼等は種族毎に能力が違っとってのぅ。「魔の力」を持つ種族が増える度に、ここは発展し豊かになるんじゃ。我らアルラモルモは「魔の力」を多く持つ動物を見かけたら積極的にスカウトしに外に出ているわけじゃよ』

勿論「魔の力」を持たない動物達も大歓迎じゃ、と村長さんは付け足した。ちなみにアルラモルモはこの歴史を通して、「魔の力」を感知する能力が飛躍的に高くなったらしい。進化したんだね…。

だからこの森には生き物の気配が少なく、魔獣も少ないのか…。もしかして僕が猫になって寝ている時にアルラモルモ達が集まっていたのってスカウトしに来ていたのかな。あれ、でも猫の僕たしか魔獣だったはず…起きた時に気付いちゃったのか。
それにしても危ない、僕が悪い魔獣だったらあの中のアルラモルモは確実にモフモフしているぞっ!というか、しかけたぞっ!

村長さんにはその他にも、村長さんが知っている限りの情報を教えてくれたら。何の植物が毒か、それとも美味しいか。崖下の森には恐ろしい魔獣が住んでいるとか、この森の向こうには人間がいるから行っちゃ駄目だとか。

どれも村長さんの相当脚色されてると思われる体験談を交えて教えてもらった。穏やかそうに語ってるけど、意外と話の内容は情熱的だった。

村長さんから人間という単語を聞いて、僕は思わず身を乗り出して食いついた。

今この世界で一番知りたかった情報だ。
でも、もしかしたら人間という名前だけでオークみたいな見た目の魔獣かも知れないし、ゴリラかも知れない。僕の知らない新たなる人類かもしれない。弥生時代みたいな暮らしとか、中世ヨーロッパ時代な暮らしをしているかもしれない。
とにかく分からないから、全力投球で思った事をそのままに口を開く。

『あの、この向こうには人間が居ると聞いたんですけど、人間ってどんな感じなんですか』

口から出た言葉は、それは酷く曖昧な質問だった。
違う、なんか、なんかもっと、ちゃんとした事を聞きたかった…!
ちらっと村長さんを見ると、首の部分(恐らく)をさすりながら、何やら渋い表情をして僕を見つめていた。
もしかして旅人じゃないってバレた…?

『ふぉお、旅人クロよ。お主さんは幸い、旅の途中人間に出くわさなかったようじゃのぅ』 


『……はい』 

村長さんはどうやら僕の口ぶりから、偶然人間に合ってなかった事を察してくれた。
ま、まぁ実際に人間に会ってないし、僕だって旅人な訳だし、嘘はついてない…し。ちょっと心が痛むのは気のせいさ。


『幸い…という事は、人間は危険な生き物何ですか』

僕の問いに、村長さんは暫く考え込んでから徐に言葉を発する。

『…人間は様々じゃな。

無害なのも居れば、危険な者もおる。ただそれは会って見ないと分からなくてなぁ。危険な者は儂らが気付く暇もなく一瞬で殺したり、出会ったら最後、無慈悲な殺され方をするんじゃ。

「魔の力」なんてとてつもなく、恐ろしいのは単独で様々な能力を司る事じゃ。
昔儂らの住処に人間がやってきてのぅ、何十匹を生け捕りにして攫って行き、攫われた彼等は帰って来る事は無かった…。

……いや、一匹だけ取り返すことは…出来たんじゃ。勇気ある仲間の動物達が人間の跡を長い間追い続け、何匹も犠牲になって人間達の手から一匹だけ…!毛皮だけという変わり果てた姿になってな…』

村長さんの悲痛とも言える力の込もった話を聞いて、ゾクリと身の毛がよだった。

『……そ、そんな』

人間の恐ろしさが、アルラモルモの身になって漸く理解出来た気がする。実際生きてると思っていた仲間が皮だけになってたなんて…お、悍ましい。

でも人間達にとっては何の気なしにやっている事は明白だ。こんなにアルラモルモ達が感情豊かで、知能が高いことなんて知らなかったんだろうな。

いつのまにか僕は、自分が本当のアルラモルモのつもりになって話を聞いていたようだ。

前まで残酷な彼等と変わらない人間だったから、もっと何か、罪悪感を感じるところだと思うけど…自分の身体が人間じゃないから全くそういうのを感じなかった。自分でも不思議に思える。

『人間はここから日の出る方向にこの森を抜け、大河を越えたずっと先の方に住んでおると聞いたことがある。単独で恐ろしい程強い人間がうじゃうじゃおるなど、悪夢のようじゃがな。儂が人間の生態ついて分かることはこれぐらいじゃ。儂に言えることは、人間は特に気を付けんさいと言う事じゃな』

村長さんの重みのある忠告を受け、ずっとって一体どれ位の距離なんだろう…と恐ろしく思いながら頷く。

日の出る…つまり東の方角。
東に向かってこの森を抜けて、そして大河があるからそこを渡った先。そこに自分の本来の姿になれる方法や、僕がこの世界に来た理由を知れるかもしれない。

どれだけの距離とか危険があるか分からないけど、絶対行きたいと決心した。
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