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第一章
21 人間の国
しおりを挟むうぅ、ここは一体何処なんだーーー!?
人間の国に向かう方法を模索しながら、取り敢えず、僕は魔竜の姿のまま散策する事、なんと3週間目。
適当な体感で日数を数えてたから、本当に3週間経ったのかよく分かんない程長くここにいる。
いつまで経っても森を抜けない。ループしているんじゃないかと錯覚するくらい、延々と同じような木々が立ち並ぶ森。もう疲れた。精神が病みそう。というか、大河だったり森だっり永遠と続き過ぎる気がするんだけど…どうなってるのここ。
今更ながらに思ったけど、この体は食事を摂らなくても何故かお腹が空かない。サバイバルで一番困るのは食料問題だから、餓死する心配がなくて本当に良かった。
森の中だから、魔物とかに襲われる心配をしていたんだけど、生き物だと思わしき気配は察知した途端消えるように離れていくし…寧ろ生き物と全く会わなすぎて不気味。この時ばかりは魔物でもいいから何か現れてと切実に思った。
余りの孤独感で精神が死にそうになってくるので、時折僕はまた自分の分身である黒い生き物達を操って、あたかも賑やかな雰囲気に居るように自分を誤魔化していた。
独りハイクォリティおままごと…はぁ。
時々空を飛んだりするけど、誰かからの『視線』を感じる。長時間飛んでいると『視線』は時間が経つ毎に強く感じて、怖くなって森に駆け込む事を繰り返している。
あの絡め取られるような不気味な『視線』の正体は一体なんなんだろうか。見られているというより、観測しようと探るられているような『視線』だから、【生体感知】のようなスキルの上位版を僕限定に使っているのかもしれない。
なーんて、この世界のスキルに詳しくなったつもりで憶測を言ってみたけど、正直合っているのかよく分からない。ただ全て感覚頼りなだけ。
確かに見られてるなぁって気はして、気になる。僕は人の恐れるドラゴンらしいし、見つかったら確実に殺されるかもしれない。
僕は視線を感じない森の中を、オルシヴィオンの身体でシュルシュルと蜥蜴のように散策した。
そうする事、1週間目。光るキノコの他に光る花を見つけたり、この世界には小さな虫が意外と少なく、虫は大抵魔物で異様に大きい事に気付いたり、森の中では様々な発見があった。けどそれ以上に…いい加減森から出たくて飽き飽きしていた。
このままじゃ、人間になってこの世界の事を知る、という僕の目的が遠のきそうだった。
勿論、影裂界で人間のいる場所を目安にワープした方が手っ取り早い。
だけど、1週間前みたいにいきなり人の前に現れて、あんなに驚かせて怖がらせる事なんてもう二度としたくないんだ!
どうしてあの時ワープしたのがドラゴンの姿だったのか!せめて黒猫になっていたら…って無理か。暗黒魔法の影裂界ってオルシヴィオンの持つ特殊スキルだったよね。
…。あれ?
あ、そうか、そういや黒神術から暗黒魔法が使えるようになったんだっけ。
黒神術は僕そのものみたいなスキルだし、種族変化しても使える特殊スキルだ。
なら、黒猫のままでワープしたらさっきみたいに怖がられる事はなさそう。
なーーんだ、うわーーさっさと気付けば良かった!なんで気が付かなかったんだろう。3週間も何してるんだ僕…。
早速黒猫の姿になり、『人間の国(だけどあんまり人が混み合ってなく、人目に付かないような場所)』と入念に念じながら早々に影裂界を発動して、小さな小さな黒い線のような亀裂を作る。いきなり大きな亀裂を作ったら、向こうにいた人が驚いてしまうからね。
因みに、影裂界の亜空間の中に入らなくても、空間と空間を出来るだけ短く繋げる想像をする事で、どこで◯ドアみたいに直接ワープ出来るようになった。
向こう側の確認をする為に早速作った小さな亀裂を少ーしだけ開いて、中を覗く。
先ず目に入ったのは暗くて木の木目のような物。
小さな隙間からガヤガヤとした音が亀裂の聞こえ、香ばしくて良い匂いが漂う。奥から差し込む光の向こうで、往き交う人の足元が見えた。
もしかして、ここはお店の中かな?美味しそうな匂いから、パン屋さんとか食べ物屋さんな気がする。
暗いこの場所から考えると…恐らくお店の棚と棚の間に開いたのだろう。しかし、食べ物屋さんの中でいきなり猫の姿で飛び出す訳にもいかないので(不衛生と思われてお店の人に迷惑が掛かってしまいそうだし、騒ぎになりそう)、もう一度亀裂を閉じて、人気のない場所を求めて亀裂を開ける。
次に開くと、見た感じどうやら路地裏っぽかった。人も近くに居そうにない。
野良猫とか路地裏によく居そうだし、ここなら大丈夫そうだと思った。
僕は慎重に亀裂からひょいとワープ先の地面に飛び移り、物陰に隠れる。
森の草や土の少し湿り気のある匂いから、どこか乾いていて煤っぽい空気を吸い込み、自分がワープした事を何となく実感した。
ふぅ、まだ安心は出来ない。
もしかしたら猫という生物がこの世界に存在しなくて、騒ぎになってしまう可能性がある。
じりじりと辺りの様子を伺いながら、いつ路地裏から移動しようかと思ってた時、スッと何かが僕の横を過ぎ去った。
茶色のシマシマ猫だった。
なーんだーこの世界にも普通に猫はいるんだ、良かった。
ホッとして路地裏から抜け、猫の跡を追うように建物の隙間を抜けると、目の前に商店街らしき建物がいくつも並んでいた。出店もある。そして、沢山の人が行き交っていた。
間違いなく人間の国だ!文明だ!うっ、感動で泣きそう!
漸く辿り着いた人間の国。まだ国名も分からないけど、早速町の中を散策しようと前に進み出る。沢山の人混みの中を歩くのは少し怖いので、なるべく人のいない通りを選んだ。
すれ違う人は僕を大きく避け、変な物を見るような不審な目で見たり、偶に「なんだあれ!?」みたいな驚愕した表情を向けられる時がある。この町の人は猫嫌いの人が多いのかな。辛い…というか、ショックだった。
キョロキョロと辺りを見渡す。お店や通り、町並みは西洋風だけど、歩いている人の服は貴族風だったり鎧を着ていたり、民族衣装だったり、色んな服の人がいる。髪や瞳の色も様々で、地球ではコスプレの人達しかいないような色鮮やかな瞳や髪や服でも、不思議と違和感を覚えなかった。
僕はお店らしき煉瓦で出来た建物の看板文字を、右にも左にも首を傾けながらじーっと穴が開くくらい観察する。
…やっぱりこの世界の人の話す言葉も看板文字もさっぱり分からなかった。日本に帰る方法とか、この世界の事とか、僕自身について知りたいのに…どうしようと項垂れる。
僕のスキルの【獣語】は、変化した種族と同じ種族じゃなきゃ話せないし…。ああー、僕が人間に変化出来たら一番手っ取り早いのに!!人間が果たして獣の内に入るのか微妙だけど!
あ、そういえばピンクの…カラーエンジェルドラゴンさんが【精神交渉】というスキルを使ってたなぁ。
カラーエンジェルドラゴンに変化したら、もしかすると【精神交渉】スキルが手に入るかもしれない。それで誰かと親しくなれば会話も…いや、親しくなる前に捕まって見世物にされるかも!?非常に珍しい妖精竜というドラゴンらしいから心配だ…。一旦保留にしておこう。
もうスキルに頼らないで、地道に本とか現地の人の話を聞いて独学で言語を学ぼう!
………。
……無理無理、出来る気がしない…!教科書と授業で学べる英語とは違う!
悩みながら、とぼとぼと塀の上を歩いている時、近くで数匹の犬の鳴き声がした。
余りにもけたたましく吠えているので、なんとなく気になって鳴き声の聞こえる方へ向かうと…
女の子が壁際まで野良犬に追い込まれていた。
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