『闇属性黒猫の異世界救出物語』〜魔物転生!?いや人間になりたい!

藤村ゆんた

文字の大きさ
31 / 79
第一章 

23 クローゼル家の呪い

しおりを挟む
それから無事ナーシアの部屋に辿り着いた僕は、魔術の稽古から帰ってきたナーシアを出迎えた。

「*****~」

扉を開けるなり駆け寄ってくる黒猫をナーシアは嬉しそうに抱きとめ、膝の上で撫で始めた。言葉は分からないけど、今日の出来事とかを話してくれているのだろう。

間近で鑑定しても大丈夫かな、バレないよね…?と少し不安に思いつつ、僕はナーシアを鑑定した。

***********************

【ナーシア・ミュラ・クローゼル 】(呪:強◀︎)
年齢:10
種族 : 人族(女)
属性:水 氷 風 土 
体力:52
魔力 : 3023
スキル : 【スノーフレリアル(氷華)】【ドロップショット】【アイスアローズ(氷矢)】【ガーネットアイヴィ(呼び声に応える種子)】【ミュラの聖歌】【エアシールド】
特殊スキル : 【コネクトレイク(鏡界雫繋)】
術式展開魔法: Ⅳ(チクュエ級)

***********************

うわぁ!?なんか凄い!

驚いて尻尾が膨らむと同時に、「ナーァ」となんとも気の抜けた猫らしい鳴き声が出てしまった。

「ナ~ァ、****?」

ナーシアが僕の声を真似したので目を丸くして上を向く。くすっと笑うナーシアの優しい微笑みが間近で見え、僕の小さな猫のハートを容易く打ち抜いた。

黒猫を見つめる桃色の瞳はどこまでも澄み渡っていて、見透かすようで。
首を傾げると、癖一つない絹のような薄紫色の長髪がサラサラと溢れる。艶の無い影のような猫の頭を撫でるのは、白く雪のような肌の小さな細い手。
落ち着いた色だけどフリルや繊細な刺繍があしらわれた服装は、服なんてちっとも分かんない僕から見ても本当にお洒落で、ナーシアにとても似合っていた。

こんなに可愛くて優しくて素敵な子なのに、ステータスの能力がお父さんと変わらないなんて!
いや、待って…ステータスを良く見ると、ナーシアはどうやらゼフィルスさんより魔力が高い!

属性も四つも持っていて、お父さんより一つ多いし…きっと才能があるのだろう。それにしても10歳のナーシアでもこんなにスキルを持っているなんて…人間はみんなこんなに強いのかな。それとも貴族の血筋故にナーシア達が凄いのか。

ふんふんと頷いていると、あれ?と思った。
ナーシアの名前の横に(呪:強◀︎)と表示されている事に気付いた。
なんだか『呪』って良くない感じがする…。

なんとなく気になってカーソルを開くように念じる。文字がぼやけて、モヤモヤした黒い物が現れる。

なんだこれ…?何かさっきと違う文字が現れたように感じるけど、なんともいえないノイズのようなモヤモヤが邪魔して見え辛い。

(うーん邪魔だなぁ…消えて)

そう思った瞬間、パッとモヤモヤは拡散するように消えた。消えてくれないかなぁっていう希望的観測で思っただけなのに、綺麗に消えてくれて少し驚いた。

隠されてた文字が僕の頭の中で浮かび上がってくる。

【 憎悪の呪い◀︎(ディザスタルヴァ)(強):  厄災(エビル) 】

うわっ、呪い!?厄災って書いてあるしやっぱり良くないやつだ!ナーシア大丈夫なのかな!?

なんでナーシアが呪いなんか…!というかどんな呪いなんだろう!?
あ、まだカーソルがある…ということはまだ何か調べられる…!
混乱する頭で、カーソルを急いで開くように強く念じて展開させる。

(ゔゔッこれ、は)

【  魔法スキル制限  / 呪解不可  / 受難  /  クローゼル  /  不吉  /  女  /  病魔  /  短命  /  誘起  /  災害  /  凶禍  /  血族  /  魔力  /  魔物  /  誘引  /  死   】

術者のモノなのか、憎悪と共に強烈な思念が脳内に入り込み、気が狂いそうになる感覚がした。
呪いの全容か効果なのか、表示された言葉の一つ一つが何かを歪ませるような強い力を感じ、本能が非常に危険と頭に訴えかけていた。

そんな…嘘だ…このままじゃナーシアが危険だ!

「***っ?***!?」

ナーシアの呪いの事で気持ちが一杯一杯になっていた僕は、ナーシアが心配して必死に話しかけてくれていたことに今になって気付いた。

目を見開き瞳孔が極限まで細くなって、口を開きっぱなしで全身硬直した黒猫を見たら心配になるよね、ごめんね。病気かと思われたら嫌だな。獣医に見られたら一発で魔物か得体の知れないモノだとバレてしまう。

少し混乱から落ち着いた僕は、心配しないでとナーシアの手に頭を摺り寄せる。

その行動をよくよく振り返って、はっとした。コミュニケーション手段がないから無意識で猫らしい仕草をしてしまったけど、よくよく考えたらなんか良くない気がした。本来なら僕は男子高校生猫の姿になって少女に甘えてる猫の姿だからって、ベタベタしないよ。ナーシアからはされるがままになるけどね!

ナーシアの指の隙間からナーシアを見る。病弱な訳でも、怪我をしている訳でもないし…あんなに恐ろしい呪いがかかっているようには正直とても思えない姿だ。
うーん、もう一度呪いについて調べる必要がありそうだ。


******

ナーシアが眠りについたのを確認し、黒霧化してナーシアの枕元から音一つ立てず降りた。

調べるのは勿論先程の呪いの事。

確か内容はこう書いてあった。

『  魔法スキル制限  / 呪解不可  /  受難  /  クローゼル  /  不吉  /  女  /  病魔  /  短命  /  誘起  /  災害  /  凶禍  /  血族  /  /  魔物  /  誘引  /  死   』

『受難、不吉、災害、凶禍』は、災いの類いだ。

『病魔』と『呪解不可』が文字通りの意味なら、『病気になる』『呪いは解けない』ということになる。

そして『魔法スキル制限』は、魔法スキルに何か制限が掛かっているという意味かな。
ナーシアのステータスは強そうに思えた。あんなに魔力があってスキルもあるのに、野良犬三匹に苦戦していたのは『魔法スキル制限』という呪いの効果のせいかもしれない。

気になるのは『誘起』『誘引』という言葉。
確か文字通りに読んで『誘って起こさせる(人為的に)』『誘い引きこむ(そうなるように仕向ける)』って言う意味だったと思う。
これらは何を誘って何を起こさせるかだけど…それはもう何となく分かっていた。

ナーシアのステータスから呪いの内容を見たとき、言葉の一つ一つから強烈な思念を感じた。その時に、言葉同士の強い結びつきも感じた。

『クローゼル、血族、女』に『誘起』『誘引』が強く結びつき、『魔物、不吉、災害、凶禍、病魔、受難、短命、死』の順で『誘起』『誘引』に引っ張られているような吸い寄せられているようや結びつきを見せていた。

つまり、この呪いは『クローゼル家の血族の女』に掛けられた呪いであり、呪いにかかった者は『厄災』を引き寄せてしまう体質になると言う事だろう。

そのことに気付き、ハッと思い出す。

そういえば、ナーシアに初めて会った時、ナーシアは野良犬三匹に襲われていた。あれが誘引された『厄災』?
いや、待って…思い返せば野良犬にしては凶暴な顔つきだったし…なんか目が真っ赤だった。
もしかして…あれ、魔犬だったりして。呪いの言葉の中で、『誘起』『誘引』に今一番引き寄せやすいのが『魔物』だし、あの普通に凶暴な野良犬だと思っていた犬トリオは『魔物』という可能性が高いのかもしれない。

あぁ、あの時完全に体力とスキルしか見てなかった。普通の犬かと思ってたよ。ちゃんと見ていれば良かった。

…あれ、ていうか僕も一応魔物じゃん!!!!!!
僕はじゃあナーシアの呪いによって引き寄せられるべくしてこうなったって事!?!?

あーー!!!だからみんな嫌そうな顔してたのか!!
呪いの内容を知っていれば、ナーシアに近づくモノはみんな不吉なモノって大体想像つく。

そう思ったら、ゼフィルスさんが僕を飼うことを許したの不思議だ。
魔物かもしれない黒猫を、娘を襲うかもしれない黒猫を、よく娘の部屋で飼うことを許したね。みんな僕の事を避けてるけど…ナーシアの事はどうでもいいんだろうか。

うーん、でも屋敷で働いている人達は、ナーシアに対して凄く暖かく接しているように見えるんだけどなぁ。
ゼルフィスさんだって、なんか表情が硬くてナーシアの撫で方がぎこちなくて、どことなく不器用そうだけど、ゼルフィスさんなりのナーシアへの愛情が溢れんばかり伝わってくるんだよねぇ。

むーん、ナーシアの我儘だから許されたにしちゃ、ちょっと納得いかないけど…。
それなら僕は誰よりもナーシアを厄災から守ってあげる存在になれば良いのか。

こうして僕は、呪いを解く方法を探しつつ、魔物からナーシアを守り続ける黒猫ナイトになる事を決めた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

処理中です...