『闇属性黒猫の異世界救出物語』〜魔物転生!?いや人間になりたい!

藤村ゆんた

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第一章 

24話 教会と凍える寒さ

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我輩は黒猫である。まだ名前は…無いのかあるのか分からない。
 
…。

どうも、僕です。今現在黒猫の身で、貴族の家、クローゼル家に居候させてもらっています。正しくは、ナーシアという少女に飼われている状態かな。

僕の名前については、ナーシアが僕に向かって『エヴィールディタ(発音は合ってるか分からない)』と呼びかける事が多いけど、僕の名前を付けてくれて呼んでくれているのか、それとも異世界語で『猫』って呼んでくれているのか、はたまた『ちょっとおいで』的な呼びかけ言葉なのか分からない。僕はナーシアのどんな呼びかけにも駆け寄ってるけどね。

今日はナーシアが外に出掛けていて家に居ない。ナーシアがいつもと違う豪華なドレス姿で、ゼフィルスさんと馬車に乗ったけど…一体何の用事なんだろう?言葉が分からないと、ナーシアが何をしに何処へ行くか分からないから不便だ。

昨日、ナーシアが『厄災』というとんでもない呪いに掛かっている事を知った。もう心配で堪らない。
ナーシアが呪いに掛かっている以上、どんな時でもナーシアの側に居て、呪いから守る黒猫ナイトになろうって誓ったのに…肝心のナーシア自身が、僕を屋敷疎か自分の部屋からも出てほしくないみたいだ。僕がナーシアについて行こうと思っても、ナーシアの部屋から出る前に抱っこされてベットに戻されてしまう。
ナーシアが僕を抱っこして、部屋の外に連れてってくれる時もあるけど、その時はずっと抱っこしたままで、結局最後に部屋に戻されてしまうし。
僕が何か粗相をしたり、逃げ出すんじゃないかって心配しているのかな…。そんな事ちっともないのに。

だから僕が部屋の外に出て出る時は、ナーシアが眠っている時か出掛けている時ぐらい。

飼い猫が外に勝手に出て欲しくないだろうけど、でも、僕はナーシアの事が心配だ。呪いから守る黒猫ナイトになる以上、ナーシアと今日は絶対離れる訳にはいかなかった。だけど、ナーシアを困らせる事もしたくない。
それならナーシアにバレないように側に居れば良いじゃないかというのが僕の考えた結果だった。

影裂界でナーシアの部屋にワープ出来るし、ナーシアがどんな場所に行っても僕はナーシアの元に駆けつける事が出来る自信がある。だけど、ワープでナーシアの前にいきなり現れる訳には行かない。だから今日はナーシアの側に始めから付いていく事にした。

***

さて、僕が今日どこに居るかというと…一言で言えば空とナーシアのカバン近くにいる。

ナーシアに気付かれないよう、僕は分裂して二手に別れる事にした。先ずはカラスになって上空からナーシアの馬車を追う僕、そしてプチトマトサイズのミニドラゴンになってナーシアのカバンのキーホルダー部分にしがみ付いて身体を固定し、暗黒魔法の幻影でアクセサリーに見えるようにした僕。なんというか…もう1人の自分と感覚を全て共有しているような、だけど、どちらも僕自身に変わらない相変わらず不思議な感じ。森で迷った時に散々細かく分身して遊んだから、もう慣れたもんだけどね。二体に別れるくらいどうって事ない。あれ、こういうのカッコ良く言うと、並列思考って言うんだっけ? 分かんないや。

ナーシアの手がいつもより倍の大きさに見える…。
ミニドラゴンである僕は、馬車内のナーシアと近距離だし、ナーシアの向かいにはゼフィルスさんと使用人のビュラさんが居るから緊張感が凄い。大丈夫、ナーシア達には僕の姿が、薔薇と蔦を象った銀のレリーフに見えている筈…!勿論、ナーシアに身に着けて貰う物なので、装飾は僕なりに抜かりなくイメージして幻影を形作った。ナーシアの瞳の色に似た小さな桃色の宝石をレリーフに散りばめる事も些細なオシャレも忘れない!

幻影は動いたらバレるので、カバンの金具に尻尾を引っ掛けて、宙ぶらりんの状態で身動き一つせずに居る。こんな訳の分からない体でも、流石にキツイ状態には変わりなかった。

空ではカラスになって馬車の上空から周りを偵察していた。馬車はスピードもそんなに早くなくて、追いつくのは簡単だった。飛ぶのに疲れて馬車の屋根の上に静かに降りて一休みしていたら、御者の人に嫌な顔をされてしまった。はぁ…鞭で追い払われる前に飛び立つか。

次に疲れたら馬車を追い越して、馬車が追いつくまで休む事にした。異世界でもカラスは嫌われる鳥の部類か…。嫌悪される事が徐々に慣れつつある自分が虚しく思えた。

腰に剣を下げた騎士っぽい人…護衛の方が5人、ナーシア達の馬車を守るような形で騎乗して付いてきている。やはりナーシアの呪いの事もあり、護衛もそれなりに対策しているのだろう。次は馬にでも種族変化しようかなと、やたら毛並みの良い五匹の騎馬に目をやる。絹のような白馬にプラチナブロンドの金の馬、筋肉隆々の一際大きい体躯の茶馬、尻尾と鬣がウェーブのかかった灰色の馬、…馬って結構カッコいいし、綺麗なんだなぁ。僕が馬になったら黒馬になるんだろうなぁ。それはそれでカッコいいから良いか。

気がついたら家や建物が徐々に少なくなっていて、平原が広がっていた。もうナーシアの住む街を抜けたのか。
そういえば街でナーシアの屋敷程、立派な屋敷は見かけなかった。ナーシアは凄いお嬢様なんだなぁ、と改めて思う。

馬車の中では、ゼフィルスさんとナーシアが和やかな雰囲気で親子仲良さげに話をしている。その様子を、目を細めて微笑ましそうに見るビュラさん。だけど、その目付きは相変わらず鋭い。

ビュラさんって、よく見れば若いなぁ。身体も線が細いし、18才くらいかな。髪は全体に薄い水色で、毛先に近付くほど白い。常にゼフィルスさんの側に居るから、もしかして執事なのかも…ってうわ、ゼフィルスさんがこっちを見てる!

いや、ち、違うよね~、バレてないよね~。
きっと僕じゃなくてナーシアのカバンを見てるんだよね。

『***、*********』

ゼフィルスさんが僕の方を見ながらナーシアに向かって話しかけた。

『***?』

ナーシアが首を傾げた後、カバンに目をやる。そして不思議そうな表情をしながら…銀薔薇のキーホルダーに化けている僕に触れた。

やっばい、バレてるぅぅ~!?!?

僕キーホルダーの触感じゃないとバレないように必死に身体を固めた。
いや、まだ僕の正体まではバレていないだろう。バレたとしても、なんか銀のキーホルダーに見えるへんな生き物だと思う筈。取り敢えず握り潰されたらお終いだ。

僕の真上では、ナーシアが僕に触れながら、ゼフィルスさんとお話する声が聞こえる。何話しているんだろう。怖い。
話が終わった後、ナーシアは僕の方をじっと見つめ、最後何かポツリと呟いて触れるのを辞めた。

え、大丈夫…?普通のアクセサリーだと思った?バレなかったの?

僕の不安を他所に、そのあとナーシアは馬車の外の景色を眺め始めた。ゼフィルスさんもだ。
よ、良かった。取り敢えずなんとも思われなかった?と内心ホッとする。この状態じゃ、息も吐けないからね。

あれ、なんか視線が…って今度は執事のビュラさんがめっちゃガン見してる!目つきが鋭い人から迫力増し増しで視線が刺さりそう。ビュラさんにジーッと注視され、ふっと視線を逸らされた。ん?…またバレなかった?

その後ちらっと何度かビュラさんには見られたけど、ビュラさんは特にナーシアとゼフィルスさんには何も言わず、馬車は目的にたどり着いた。
ビュラさんが凄くキーホルダー(僕)を気になっている様子だったけど、それ以外は特に何事も無く着いた。

馬車が泊まったのは、青白くて大きな建物の前だった。縦に長いキューブが集まったような造りで、全体的にカクカクとしている。建物の壁の上部は殆どステンドグラスになっていて、まるで建物の天井部分が浮いているように見える。今まで見たことがない変わった建物だけど、青白くて比較的シンプルな形の造りに大きなステンドグラスの建物は教会に似ている。
カラスの身体で少し近づいて良く見ると、ステンドグラスの側面には、水、風、草、火、月、太陽などを連想させる紋章が幾何学的に描かれていた。数学や科学の教科書の表紙に出てきそうな絵図だと思った。

ナーシア達を出迎えるように扉から現れたのは、神官服のような豪華かな服を着た初老の男性と、ヴェールで顔を覆った白い服の女性達。
ゼフィルスさんがナーシアをエスコートして優雅に馬車を降りると、彼等は手を組んで片膝をつき、神に祈るようなポーズで詠唱のような言葉を述べた後、歓迎するように和かに笑みを浮かべてナーシア達に話しかけていた。
その様子を見ていた僕は、この建物は教会という認識で恐らく間違いはないだろうと思った。

挨拶が終わったようで、ナーシア達が神官服の男性に案内されて教会の扉を通る。

っ!?

ナーシアは教会で何をするんだろう、とワクワクした気持ちでいたその時、途轍もない寒気と共に身体中がスーーッと冷たくなる感覚が襲った。まるでエタノール液に全身が浸って染み込んだみたいに、身体の芯からスースーして、冷たくて、怖くて、気持ち悪い。

一体何が起きたのか。身体中が吹き抜けになったかのような寒さと共に混乱した。

うっ、早くここから出なきゃ…この教会は危険だ!
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