『闇属性黒猫の異世界救出物語』〜魔物転生!?いや人間になりたい!

藤村ゆんた

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第一章 

28話 絵本で勉強

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ばっとナーシアと話すビュラさんに期待の目を向けるが、二人とも、「ミュラ*神*物語」とか「古****魔法*研究*」とか、「******」とか、僕の頭上で もう僕が殆ど聞き取れない難しい話をして盛り上がっている。

うーん…ビュラさんに、言葉や文字を教えてもらえる方法…一体どうやって…。そもそも僕の方から言葉を伝えられないし…。

悩みながら、ナーシアの席で開きっぱなしになっている革表紙の古い本に前脚を伸ばす。細かな文字の装飾と、儀式の様子が連想されたような絵。描かれた線をなぞるように視線を這わせていると、優しく頭を撫でられる。

「**、***エヴィー*好き**絵***、物語**********」

ナーシアが僕の話をしてくれているような気がした。


ナーシアとビュラさんの小休憩が終わり、勉強が再開した。確かお昼頃ここに来たから、もう夕方になっている頃かな。かれこれ僕はビュラさんに言葉や文字を教えてもらう作戦を猫脳内で練り続けている訳だけど、全然アイデアが浮かばない。猫になって脳の容量が縮んでしまったかな。

ビュラさんが何か本を探すために席を外し、ナーシアが僕を抱えながら本を読む。ナーシアが何かを唱えると、まるで色ペンで重要なところを書き出した授業ノートみたいに分厚い文献の黒いインクの文字の色が変わった。
ナーシアがそれをみて、考え込んだり納得したりしている。ナーシアって本当に10歳?凄いなぁ…ナーシアの年ではみんなこんな分厚くて古い文献を使って授業を行うものなのか。

あ、ビュラさんが帰ってきた。
僕にも授業して下さい~とビュラさんの足元に擦り寄るが、伝わる気がちっともしない。あーどうしよう。

ビュラさんの手には、10冊程の大きい本があった。机の上に置いてある分厚い本に比べたら、ビュラさんの持ってきた本は随分と薄い。一体何の本かな。

ビュラさんが椅子に座り、持ってきた大きくて薄い本の一冊を机の上に置いた時、本の表紙が見えた。
ゴツくて怖いドラゴンとお姫様を守る騎士の姿。僕のいた世界でも見たことがあるような絵だけど、この世界のお伽話だろうか?

『おいで』

本を置いた席に座るビュラさんが僕を呼んだ。はーい、喜んで!
ビュラさんが膝をポンポンと片手で叩くので、僕はビュラさんの膝の上にぴょんと飛び乗って失礼させてもらう。

僕の前には、先程見えたお伽話のような表紙の本があった。近くで見るとよく見える。ゴツゴツした灰色のドラゴンは黒い煙を吐いているし、ティアラを付けたお姫様はフワフワのドレスを着て妖精みたいに綺麗だ。だけど、一番目立つのは、表紙の中央に真っ白な剣をドラゴンに向かって真っ直ぐ構えている騎士。かっこよくデザインされた軽装の鎧は黄金色にギラギラ光っていて、如何にも物語の主人公と伺える。

ビュラさんが僕を膝の上に抱き、本を開くと、表紙の絵と同じ繊細なタッチで描かれた絵が現れた。ふぉぉぉ、これ絵本だ!
木で作られた簡素な小屋や畑を耕して煤けた民族衣装を着た人達。これは…集落?、村かな。

『君は、エヴィーと言ったね。…お嬢様の仰った通り、本当に絵が好きなのか』

身を乗り出して絵に夢中になっている僕にビュラさんが声をかける。見た目はキリリッとしてて冷たい印象を受けるのに、とても穏やかで優しい声。

僕は「ニャー」と元気良く返事をする。絵なら言葉が分からなくても何を描いているか僕にだって分かるからね!
『そうか』とビュラさんは僕を撫でてくれた。

『これは、『始まりの勇者アウス』の物語だ』

始まりの勇者?何それ面白そう!と僕は期待に胸を膨らませた。どんな物語か楽しみだなぁ。

『…と言っても分からないか。ほら、ページをめくってあげよう』

ビュラさんの次に続いた言葉を聞いて、ガーンとショックを受ける。ビュラさんはページを次々にめくり、僕は絵をじっくり堪能する間も無く『ああああ』と悲痛の声を心の内で漏らした。
せっかくの『始まりの勇者アウスの物語』は3分足らずで幕を下ろし、ビュラさんは別の絵本に手を伸ばす。
その時、ナーシアがビュラさんに何か話した。
ナーシアから話を聞いたビュラさんは次のページに伸ばしかけていた手を下ろし、『始まりの勇者アウスの物語』の絵本の最初のページをもう一度開く。

え!?ナーシア凄い何を言ってくれたの!?

ビュラさんがページをめくらないうちにと目をかっ開いて村の絵を観察していると、なんとビュラさんが絵本の物語を突然語り始めた。えええっビュラさん!?
それから、僕はビュラさんが語る絵本の物語に耳をピンと立たせて熱中した。

ある日、国の外れの貧しい集落に生まれた輝かしいブロンドの髪を持つ赤子の元へ天使が舞い降り、神々の祝福が与えられた。赤子は成長し、天使と天空に行ったり、怪力で竜を持ち上げたり、魔物の軍からから集落を身一つで守り抜いたなどと幼い頃から数々の伝説を作り、成人を迎える頃には『勇者アウス』と人々に呼ばれるようになる。
勇者は神のお告げによって聖女と出会い、心強い仲間と共にパーティを組み、多くの人々を救済するようになった頃、魔大陸に居る筈の魔王がアーフィタリア大陸に突如攻め入ってきた。魔王は人々を蹂躙し、世界征服を目的にライェンツ王国を拠点に城を乗っ取りお姫様が囚われの身になってしまう。ライェンツ王国の王様に囚われの姫を助けるように頼まれ、勇者達は魔王を倒して無事に姫を救出し、お姫様と結婚してめでたしめでたし。

『始まりの勇者アウス』の物語はざっと要約するとこんな話だった。何処かで聞いた事があるような、とてもありふれた物語らしい話。
だけど語り口調が、物語では天使を天上から舞い降りた美しい者とか、魔王を身も心も闇に染まった醜悪なる物と呼んだり、表現の誇張が凄かった。神様とか天使とか出て来たけど、この世界の宗教的な物語なのかな。

ビュラさんが絵本を読み終わったら、ナーシアのお勉強会はお開きになった。最後の方、僕がビュラさんを独り占めしちゃったせいで、ナーシアはちっともビュラさんに教えてもらわずに書物を読んでいた。…ごめんなさいナーシア、せっかくのお勉強会なのに…。
それなのにナーシアは、僕に向かって『良かったね!エヴィー』と嬉しそうに笑いかけてくれる。ナーシアぁぁ、君こそが天上から舞い降りた美しくて可愛い天使だよ!

ビュラさんの話す声を聞きながら文字を読んでいくと、不思議とどこの文字をビュラさんが読んでいるのか何となく分かった。やっぱりビュラさんのスキルのお陰だよね、これ絶対。


…早く言葉や文字を覚えて、沢山文献読み漁って、ナーシアの呪いを解いてあげるからね。



****


ナーシアがゼフィルスさんと夕食を食べに行っている時間、僕は書庫室に忍び込んでいた。
消灯しているから暗い。だけど、猫の僕には元々夜目が効くから薄暗くても本棚を視界にきっちりと捉えられていた。んー、ビュラさんに読んでもらった絵本はどこにあるかな…?流石に夜目の効く猫といっても、これだけ本があって暗くてどれも同じ色に見えたらどれがどれだか分からない。
試しに黒神術を使って書庫室全体に黒霧を広げて埋めつくす。僕の身体を構成するこの黒魔力自体に既に感覚器官が備わっているようだったから、こうやって書庫室全体の物を直接触れて見れば分かるかも、と思ったけど…。

これは、予想以上に凄い…!本のシミや匂い、壁の小さなキズまで、手に取るよう分かる。視界では黒霧のせいで更に真っ黒になって見えないのに、頭の中に書庫室全体の物が見え過ぎる程によく視えた。
便利だなぁ、黒霧にこんな使い方があったなんて。

目的の絵本も簡単に見つけられ、黒霧を身体に戻して絵本を読む。予習復習は大切だからね。

そうして僕は、ナーシアが自室に戻るギリギリの時間まで、絵本の文字とビュラさんの発音を照らし合わせながら一人コツコツと勉強した。
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